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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1070151 |
審判番号 | 不服2001-4990 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-04-02 |
確定日 | 2003-01-06 |
事件の表示 | 特願2000-153101「ゴルフクラブ」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 2月27日出願公開、特開2001- 54595]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯の経緯及び本願発明の認定 1.本件出願は、平成11年6月8日に出願された特願平11-160913号に基づく優先権を主張して、平成12年5月24日に出願され、平成13年2月14日付けで拒絶査定がなされ、平成13年4月2日付けで拒絶査定不服の審判請求がされた。なお、平成13年4月27日付けの手続補正は却下された。 2.本願の特許請求の範囲の記載 本願の請求項1〜5に係る発明は、平成12年12月21日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 【請求項1】冷間加工度が15%以上の加工組織であるβ型チタン合金をヘッドのフェース部の材料としたことを特徴とするゴルフクラブ。(以下、この発明を「本願発明」という。) 【請求項2】β型チタン合金からなる冷間加工材を直接時効した材料をヘッドのフェース部の材料としたことを特徴とするゴルフクラブ。 【請求項3】β型チタン合金でβ単一相からなる冷間加工材を直接時効した材料をヘッドのフェース部の材料としたことを特徴とするゴルフクラブ。 【請求項4】前記材料は、熱間圧延でβ単一相に仕上げ、冷間加工後直接時効したことを特徴とする請求項2または3記載のゴルフクラブ。 【請求項5】β型チタン合金でβ単一相からならなり冷間加工度が15%以上の加工組織である冷間加工材を直接時効した材料をヘッドのフェース部の材料としたことを特徴とするゴルフクラブ。 第2 本願発明と引用例記載の発明の対比 本件優先日前に頒布された特開平11-19255号公報(以下「引用例1」という。)には、「この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みて成されたもので、シャフトの取付精度を高くすることができ、製造も容易で、強度が高い金属製のゴルフクラブヘッドとその製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0004】)、「ここで、フェース面部材10は、ボールをヒットする部分であり高い強度が要求されるので、チタン合金である各種β型チタンで、2.5mmから3.5mmの範囲で適宜の厚さであり、また、ヘッド本体中空部12とシャフト取付用パイプ14は、ヘッド本体の重量を軽くし重心位置を上方に位置させるために、1.2mm程度の厚さの各種β型チタンにより形成している。」(段落【0012】)、及び「フェース面部材10を、冷間又は熱間で鍛造し、塑性変形させて、所定の湾曲形状に形成するとともに、表裏面の溝10aを形成する。」(段落【0013】)との各記載がある。 これら記載からみて、引用例1には、「冷間加工されたβ型チタン合金をヘッドのフェース部の材料としたゴルフクラブ」(以下「引用例発明」という。)が記載されているものと認めることができる。 そうすると、本願発明と引用例発明とは、「冷間加工されたβ型チタン合金をヘッドのフェース部の材料としたゴルフクラブ」の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点:β型チタン合金の加工組織について、本願発明が「冷間加工度が15%以上の加工組織」と限定しているのに対し、引用例発明にはかかる限定がない点。 第3 相違点についての判断 引用例1に、「強度が高い金属製のゴルフクラブヘッドとその製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0004】)と記載があるとおり、ゴルフクラブヘッドに高い強度が要求されることは当業者の技術常識といいうることであり、他方、冷間加工によって形成される材料の強度がその加工度に依存することも当業者にとって周知と認められる(「鉄と鋼」(1986)第6号69〜75頁掲載の「β型チタン合金Ti-15V-3Cr-3Sn-3Alの加工性および熱処理特性」と題する論文、及び特開昭63-250445号公報にそのことが記載されている。)。 そうすると、引用例発明において、高い強度を有するフェース部を得るために、実験等により最適な加工度を決定することは、当業者の通常の創作活動の範囲内であって、本願発明が「冷間加工度が15%以上」との限定によって進歩性を有するためには、その限定が本件出願当時の技術常識と乖離した数値であり、かつその数値により当業者が予測できないほどの顕著な作用効果を奏するものでなければならない。 ところが、特開昭62-151551号公報(以下「引用例2」という。)に、「β型チタン合金であるTi-15V-3Cr-3Sn-3Al合金の冷間加工材の製造方法に関する」(1頁左下欄末行〜右下欄1行)、及び「冷間加工を冷間加工度50%以上で実施する」(3頁左上欄7行)との記載があることにかんがみれば、β型チタン合金の冷間加工度が15%以上であることは、むしろ本件出願当時の技術常識ということができる。したがって、前示のことから、相違点に係る本願発明を特定する事項は、当業者が容易に採用できたものというよりない。 なお、請求人は、引用例発明の冷間鍛造は冷間加工性が乏しいと主張するが、本願発明自体、冷間加工が冷間鍛造を包含しない旨限定するものではないから、無意味な主張である。 よって、本願発明は引用例発明並びに周知技術及び引用例2記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 なお、本件については、平成14年10月9日付けで上申書が提出されているが、同上申書記載の補正案によっても、本願発明の進歩性を認めることができず、補正書提出機会を与える必要性を認めない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないから、本願の請求項2〜5に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-10-22 |
結審通知日 | 2002-10-29 |
審決日 | 2002-11-11 |
出願番号 | 特願2000-153101(P2000-153101) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神 悦彦 |
特許庁審判長 |
小沢 和英 |
特許庁審判官 |
津田 俊明 鈴木 秀幹 |
発明の名称 | ゴルフクラブ |
代理人 | 外山 邦昭 |
代理人 | 牛木 護 |