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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1070179
審判番号 不服2001-18755  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-18 
確定日 2003-01-09 
事件の表示 平成11年特許願第 75254号「写真フィルム用印画紙焼付け方法及び写真フィルム用印画紙焼付け装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年11月16日出願公開、特開平11-316421]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成4年3月23日に出願した特願平4-65304号の一部を特願平11-75254号として平成11年3月19日に新たな特許出願としたものであって、特許請求の範囲の請求項4に係る発明は、平成12年5月15日付け、平成13年3月8日付け及び平成13年11月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項4に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)
「スプロケット駆動用透孔を無くした写真フィルムの有効撮影領域と一方の縁部との間の無孔な非撮影領域上で、写真フィルムの長さ方向に所定の長さ離間して記録された信号の数により露光すべきコマのサイズを示すコマサイズ信号と、前記非撮影領域でコマサイズ信号に近接して記録されたコマ番号とを判別して検出し、判別された前記コマサイズ信号に含まれる前記信号の数を計数し、計数した数に基づいて、予め記憶された複数のマスクの開口サイズの内の1つを選択し、前記選択に基づいてマスクの開口を変えた後、前記マスクの中心位置と前記コマサイズ信号に隣接する有効撮影領域の中心位置とをほぼ一致するように位置決めし、前記写真フィルム上の画像を印画紙に焼付けることを特徴とする写真フィルム用印画紙焼付け装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された特開平3-105336号公報(以下、「引用例1」という)、及び原査定の備考欄で引用された本願の出願日前に頒布された特開平2-64621号公報(以下、「周知例1」という)、同じく特開平2-64622号公報(以下、「周知例2」という)、同じく特開平2-67537号公報(以下、「周知例3」という)にはそれぞれ、次の事項が記載されている。
引用例1;
(1)本発明は、フイルム上に記録されたトリミング情報に基づいてトリミングプリントを行うトリミングプリントシステムの改良に関するものである。(公報第1頁右下欄2〜4行)
(2)第1図に示されているように、トリミング中心位置を特定する横基準位置マーク28a,縦基準位置マーク28bと、画角サイズを特定する画角マーク29をネガフイルム30のサイドにプリントする。なお、横基準位置マーク28aと縦基準位置マーク28bは、確定したトリミング枠38の各辺の中心に記録され、容易にトリミング中心位置を検出できるようになっている。(公報第2頁左下欄下から2行〜右下欄6行)
(3)フイルムキャリア44の左横にはデータ読み取り装置58が配置され、ネガフイルム30のプリント位置より1コマ手前のコマに記録されたトリミングマーク28a,28b及び29を検出する。このデータ読み取り装置58は、第1図に示されているように、横基準位置マーク28aを検出する第1イメージセンサ58aと、縦基準位置マーク28bを検出する第2イメージセンサ58bと、画角マーク29を検出する第3イメージセンサ58cとから構成されている。なお、データ読み取り装置58の位置は、フイルムキャリア44上であってもよい。また、バーコードでトリミング条件が記録されている場合には、データ読み取り装置としてバーコードリーダが用いられる。(公報第3頁右上欄9行〜左下欄2行)
(4)トリミングプリントを行う場合には、データ読み取り装置58の第1イメージセンサ58aと第2イメージセンサ58bの基準位置情報に基づき、パルスモータ48を駆動してフイルムキャリア44を移動させて、トリミング中心をプリント中心位置に位置合わせする。また、第3イメージセンサ58cの画角情報(選択されたトリミング枠H1〜H3,V1〜V3)に該当するデータをメモリ87aから読み出し、このデータに基づいてパルスモータ66,68の駆動を制御して焼付け倍率を調節するとともに、これに併せてパルスモータ74を制御してカラーペーパー64の移送調整を行う。(公報第4頁左上欄16行〜右上欄8行)
(5)標準サイズのプリントのみが続く場合には、ネガフイルム30及びカラーペーパー64を一定速度で移送させて順次プリントを行う。他方、ネガフイルム30の移送中にデータ読み取り装置58によりトリミングマーク(28a,28b,29)を検出した場合には、そのコマを通常のプリント位置にセットし、標準プリントの場合と同様にスキャナー84によって測光した後、基準位置マーク28a,28bの検出結果に基づいてフイルムキャリア44を駆動して、トリミング中心をプリント中心位置に位置合わせする。また、メモリ87aのデータに基づいてズームレンズ60を駆動して焦点距離を調整し、ペーパーマスク62を駆動して焼付け範囲を調整するとともに、これに合わせてカラーペーパー64の移送調節を行う。(公報第4頁右下欄7行〜第5頁左上欄2行)

第1図、第4図も参照すると、引用例1には、ネガフィルム30のサイドにプリントされたトリミング中心位置を特定する横基準位置マーク28a、縦基準位置マーク28bと、画角サイズを特定する画角マーク29を検出し、
画角マーク29を検出する第3イメージセンサ58cの画角情報(選択されたトリミング枠H1〜H3,V1〜V3)に該当するデータをメモリ87aから読み出し、このデータに基づいてパルスモータ66,68の駆動を制御して焼付け倍率を調節するとともに、これに併せてパルスモータ74を制御してカラーペーパー64の移送調整を行い、ズームレンズ60を駆動して焦点距離を調整し、ペーパーマスク62を駆動して焼付け範囲を調整し、
横基準位置マーク28aを検出する第1イメージセンサ58aと、縦基準位置マーク28bを検出する第2イメージセンサ58bの基準位置情報に基づき、パルスモータ48を駆動してフィルムキャリア44を移動させて、トリミング中心をプリント中心位置に位置合わせする、
トリミングプリントシステム、が記載されているといえる。

周知例1ないし3;
周知例1の第8図、第9図には、パーフォレーションを無くした写真フィルムが記載されている。同じく周知例2の第1図、第2図、周知例3の第7図、第8図にも、パーフォレーションを無くした写真フィルムが記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1の「ネガフィルム30」、「サイド」、「画角マーク29」、「トリミング枠」及び「ペーパーマスク62」はそれぞれ、本願発明の「写真フィルム」、「非撮影領域」、「露光すべきコマのサイズを示すコマサイズ信号」、「有効撮影領域」及び「マスク」に相当する。
また、引用例1の「画角マーク29を検出する第3イメージセンサ58cの画角情報(選択されたトリミング枠H1〜H3,V1〜V3)に該当するデータをメモリ87aから読み出し、このデータに基づいてパルスモータ66,68の駆動を制御して焼付け倍率を調節するとともに、これに併せてパルスモータ74を制御してカラーペーパー64の移送調整を行い、ズームレンズ60を駆動して焦点距離を調整し、ペーパーマスク62を駆動して焼付け範囲を調整し」の記載から、画角マーク29の画角情報に基づいて予め記憶された複数のペーパーマスク62の開口サイズの内の1つを選択し、前記選択に基づいてペーパーマスク62の開口サイズを設定していることが明らかである。
引用例1の上記記載及び「横基準位置マーク28aを検出する第1イメージセンサ58aと、縦基準位置マーク28bを検出する第2イメージセンサ58bの基準位置情報に基づき、パルスモータ48を駆動してフィルムキャリア44を移動させて、トリミング中心をプリント中心位置に位置合わせする」の記載から、トリミング枠の中心とペーパーマスク62の開口中心とを一致させていることが明らかである。
また、引用例1には、バーコードでトリミング条件が記録されている場合には、データ読み取り装置としてバーコードリーダが用いられる旨記載されているから、引用例1の発明は、バーコードで本願発明にいう「露光すべきコマのサイズを示すコマサイズ信号」を検出する場合を包含するといえる。
さらに、引用例1のトリミングプリントシステムが写真フィルム用印画紙焼付装置であることも明らかである。
したがって、両者は「写真フィルムの有効撮影領域と一方の縁部との間の非撮影領域上で、バーコードで記録された露光すべきコマのサイズを示すコマサイズ信号を検出し、前記コマサイズ信号に含まれる画角情報に基づいて、予め記憶された複数のマスクの開口サイズの内の1つを選択し、前記選択に基づいてマスクの開口を変えた後、前記マスクの中心位置と前記コマサイズ信号に隣接する有効撮影領域の中心位置とをほぼ一致するように位置決めし、前記写真フィルム上の画像を印画紙に焼付ける写真フィルム用印画紙焼付け装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1;使用する写真フィルムが、本願発明はスプロケット駆動用透孔を無くした写真フィルムであるのに対して、引用例1にはそのような写真フィルムであることの記載がない点。

相違点2;バーコードで記録された露光すべきコマのサイズを示すコマサイズ信号が、本願発明は、写真フィルムの長さ方向に所定の長さ離間して記録された信号の数により露光すべきコマのサイズを示す信号であるのに対して、引用例1にはその記載がない点。

相違点3;本願発明は、コマサイズ信号と、非撮影領域でコマサイズ信号に近接して記録されたコマ番号とを判別して検出するのに対して、引用例1には写真フィルムの非撮影領域にコマ番号を記録すること、及びコマサイズ信号とコマ番号とを判別して検出することの記載がない点。

相違点4;予め記憶された複数のマスクの開口サイズの内の1つの選択が、本願発明は、コマサイズ信号に含まれる所定の長さ離間して記録された信号の計数した数に基づくのに対して、引用例1にはその記載がない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
相違点1について;上記周知例1ないし3に示されるように、写真フィルムとして「スプロケット駆動用透孔を無くした写真フィルム」は従来周知であり、引用例1の写真フィルムとして用いることに格別の阻害要因はなく、そのようにすることは、当業者にとって容易なことである。

相違点2について;所定の長さ離間して記録されたバーコードの本数により情報を識別することは、従来周知の技術事項(特開昭60-139476号公報、特開平1-174483号公報、特開平1-245234号公報、特開平3-162093号公報参照)であり、これを写真フィルムのコマサイズ信号に適用することに格別の阻害要因はなく、そのようにすることは、当業者にとって容易なことである。

相違点3について;写真フィルムの非撮影領域にコマ番号を記録することは従来周知の技術事項であり、引用例1の写真フィルムにコマ番号を記録した際に、コマサイズ信号とコマ番号とを判別して検出することは当然に必要なことである。

相違点4について;「バーコードで記録されたコマサイズ信号を検出し、前記コマサイズ信号に含まれる画角情報に基づいて、予め記憶された複数のマスクの開口サイズの内の1つを選択する」点で本願発明と引用例1に記載された発明とは技術的に一致するものであり、バーコードとして「所定の長さ離間して記録された信号の数により信号を判別するバーコード」を採用することは「相違点2について」の項で述べたように当業者にとって容易なことであり、相違点4の本願発明の構成とすることは、引用例1の発明においてバーコードとして「所定の長さ離間して記録された信号の数により信号を判別するバーコード」を採用した際に当然に必要な構成であり、当業者にとって格別の創意を要することではない。

また、本願発明の効果も、引用例1の記載及び上記の周知技術から予測される程度のものにすぎない。

5.むすび
したがって、本願発明は、上記引用例1に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-06 
結審通知日 2002-11-12 
審決日 2002-11-26 
出願番号 特願平11-75254
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 町田 光信芝 哲央秋月 美紀子  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 柏崎 正男
國島 明弘
発明の名称 写真フィルム用印画紙焼付け方法及び写真フィルム用印画紙焼付け装置  
代理人 松隈 秀盛  
代理人 松隈 秀盛  

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