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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D06F
管理番号 1070394
異議申立番号 異議2001-72450  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-07-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-06 
確定日 2002-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3143101号「洗濯機」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3143101号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3143101号(請求項の数2)に係る発明についての出願は、平成6年11月11日に特許出願した特願平6-277384号の一部を平成10年4月24日に新たな特許出願とした特願平10-114587号の一部をさらに平成12年1月26日に新たな特許出願(特願2000-21858号)とし、平成12年12月22日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その全請求項に係る特許について、申立人・株式会社東芝より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年3月4日に訂正請求(後日取下)がなされ、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年10月1日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断

(1) 訂正の内容
平成14年10月1日になされた訂正請求において、特許権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の
「攪拌翼を内部に備えた洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、
前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられて前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されていることを特徴とする洗濯機。」を
「攪拌翼を内部に備えた洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプ及び前記水道給水用電磁弁は洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵され、 前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ且つ前記バックパネルの上面側から風呂水給水ホースを接続し得るように上向きに開口し、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記呼び水供給口の壁に当てられることにより前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられた後、前記呼び水ホースを介し前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されていることを特徴とする洗濯機。」
と訂正する。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の
「攪拌翼を有する洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎ脱水を行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記吐出室の上部に連通し、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、
前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の下流で前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
また前記水道給水用電磁弁の下流で壁に当てられた後呼び水は呼び水ホースに導かれ、前記呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ呼び水が供給されるようにしたことを特徴とする洗濯機。」を
「攪拌翼を有する洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎ、脱水を行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記吐出室の上部に連通し、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
前記壁に当てられた後に呼び水は、前記呼び水ホースに導かれ、この呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるようにしたことを特徴とする洗濯機。」
と訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書の段落【0012】において、
「洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、」と「前記風呂水吸水ポンプは」の間に「前記風呂水吸水ポンプ及び前記水道給水用電磁弁は洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵され、」を挿入すると共に、
「前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられて前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されている」とあるを
「前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ且つ前記バックパネルの上面側から風呂水吸水ホースを接続し得るように上向きに開口し、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記呼び水供給口の壁に当てられることにより前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられた後、前記呼び水ホースを介し前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されている」と訂正する。
エ.訂正事項d
明細書の段落【0013】において、
「前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の下流で前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記水道給水用電磁弁の下流で壁に当てられた後呼び水は呼び水ホースに導かれ、前記呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ呼び水が供給されるようにした」とあるを
「前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
前記壁に当てられた後に呼び水は、前記呼び水ホースに導かれ、この呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるようにした」と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、明細書の段落【0028】、【0029】、【0032】及び図1、2の記載に基づいて、風呂水吸水ポンプ及び水道給水用電磁弁の配置箇所を限定し、同段落【0030】及び図1、2の記載に基づいて、風呂水吸水口のホース接続口を限定し、同段落【0017】、【0033】、【0044】、【0046】及び図2、3の記載に基づいて、水道給水用電磁弁から風呂水吸水ポンプに供給される呼び水の経路を限定し、同段落【0044】及び図3の記載に基づいて、水道水給水用電磁弁の吐出口の下流での流れ方及び呼び水が風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれる態様を限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
また、上記訂正事項bは、「すすぎ」と「脱水」との間に「、」を入れて記載内容をより明りょうにすると共に、同段落【0017】、【0033】、【0044】、【0046】及び図2、3の記載に基づいて、水道給水用電磁弁から風呂水吸水ポンプに供給される呼び水の経路を限定しようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
さらに、上記訂正事項c及びdは、上記訂正事項a及びbとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記いずれの訂正事項も、新規事項の追加に該当せず、「自動的に呼び水を行いポンプ運転に支障がなく、使い勝手の良い風呂水給水ポンプ付の全自動洗濯機を提供する」という課題に変更を及ぼすものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3) むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断

(1) 申立ての概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特開昭57-192595号公報)、甲第2号証(特開平2-161195号公報)、甲第3号証(特開平6-23190号公報)、甲第4号証(特公平1-51279号公報)及び甲第5号証(特開平2-33487号公報)を提出すると共に、本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1及び2に係る発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

(2) 本件の請求項1及び2に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、平成14年10月1日になされた訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「2.(1) ア.及びイ.」の項参照。)。

(3) 甲各号証
特許異議申立人が証拠として提出した甲第1号証乃至甲第5号証には、それぞれ、以下のような発明が記載されている。
a)甲第1号証(特開昭57-192595号公報)
パルセータ12を内部に備えた洗濯脱水槽11とモータ14と電磁給水弁6とポンプ20とを有し、前記電磁給水弁6あるいは前記ポンプ20から前記洗濯脱水槽11に給水し、また前記モータ14で前記パルセータ12や前記洗濯脱水槽11を回転駆動して洗濯やすすぎ、脱水を行い、前記ポンプ20及び前記電磁給水弁6は洗濯機上部の天板2の後部に設けた操作箱3に内蔵された全自動洗濯機。(公報第2頁左下欄第15行〜第3頁右上欄第7行及び第1、3、4図参照。)
b)甲第2号証(特開平2-161195号公報)
吸込管7とチェック弁6と羽根車4と気水分離機能を有する渦巻室9、吐出側後室17と吐出口11と呼び水を注入する注入孔12とを備えたポンプ部と、前記羽根車4を回転駆動するポンプモータ2を備えたモータ部とを有し、前記注入孔12から呼び水が供給され、前記羽根車4の回転により前記吸込管7から吸水された水は前記チェック弁6を介して前記羽根車4に導かれ前記吐出側後室17を通り吐出口11から吐出するように構成され、前記吐出口11と前記注入孔12が前記羽根車4より高い位置に設けられ、かつ、前記吐出側後室17の上部に連通している渦巻ポンプ1。(公報第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第14行及び第1、2図参照。)
c)甲第3号証(特開平6-23190号公報)
攪拌翼を内部に備えた洗濯槽10と洗濯用モータ12と水道からの水の供給を開始及び停止させるための電磁弁16と浴槽B内の水を吸い上げることができるポンプ手段20とを有し、前記電磁弁16あるいは前記ポンプ手段20から前記洗濯槽10に給水し、また前記洗濯用モータ12で前記攪拌翼や前記洗濯槽10を回転駆動して洗濯やすすぎ、脱水を行う家庭用自動洗濯機Aであって、前記ポンプ手段20は、浴槽Bからの浴槽水供給口と洗濯槽10への吐出口と呼び水供給口とを備えたポンプ部と、駆動部とを有し、前記呼び水供給口から呼び水が供給され、前記浴槽水供給口から吸水された浴槽Bからの水は吐出口から吐出するように構成され、前記浴槽水供給口は前記吐出口および前記呼び水供給口より高い位置に設けられ、前記電磁弁16の吐出口から吐出した水が前記電磁弁16の吐出口の下流で前記洗濯槽10に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記電磁弁16の吐出口から前記ポンプ手段20の呼び水供給口に導かれるに際し前記電磁弁16の吐出口より前記ポンプ手段20の前記呼び水供給口へ供給されるように呼び水通路28が形成され、あるいは、前記電磁弁16の下流で呼び水は呼び水通路28に導かれ、前記呼び水通路28を介して前記ポンプ手段20の前記呼び水供給口へ呼び水が供給されるようにした洗濯機。(公報第3頁左欄段落【0010】〜【0011】及び第1図参照。)
d)甲第4号証(特公平1-51279号公報)
給水栓69に接続された吐水パイプ72を回動自在に支承し、その先端の吐水口73のほぼ回転軌跡上に洗濯側給水口84、脱水側給水口91をそれぞれ設け、吐水口73と各給水口とを開放形とすることにより、視覚によって水の出水状態が容易に確認でき、覆設形のホース配管等による水の止め忘れという不都合もなくなり、断水等による逆流防止も兼ねるようにした洗濯機。(公報第4頁第7欄第3〜15行及び第1、2、4、5図参照。)
e)甲第5号証(特開平2-33487号公報)
ポンプ本体Bの吐出口12から吐出された水が気水分離室3内の壁に当って上下に分かれ、呼水口13と吐出側管16とに別れて吐出するようにした自吸式ポンプ。(公報第2頁左下欄第20行〜右下欄第13行及び第3図参照。)

(4) 対比・判断
本件発明1及び2と上記甲第1乃至5号証に記載の発明とを対比すると、上記甲各号証に記載の発明は、少なくとも本件発明1を特定する事項である、「水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ」た構成、あるいは、少なくとも本件発明2を特定する事項である、「水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ」た構成を備えていない。
そして、本件発明1及び2は上記各構成により、自動呼水動作が可能な風呂水給水ポンプを有する洗濯機として、「風呂水の水道管への逆流のない安全な方式となる」という明細書に記載の効果を奏するものである。
確かに、上記甲第3号証に記載の洗濯機は、水道給水用電磁弁(電磁弁16が相当)の吐出口の下流に、呼び水ホース(呼び水通路28が相当)に通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられるものではあるが、このものは、単に呼び水の経路を開示しているだけであり、風呂水の水道管への逆流防止という課題の示唆もなく、そのための具体的な構成、即ち、「呼び水供給口が水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され」た構成、または、「水道給水用電磁弁の吐出口と呼び水供給口との間に一定の空間距離を設け」た構成、さらに、水道給水用電磁弁から吐出した水がその吐出口の下流で「呼び水供給口の壁に当てられ」る構成を示唆するものでもない。
さらに、上記甲第4号証には、給水栓側の吐水口と洗濯機側の給水口とを開放形とすること、即ち、該吐水口と該給水口とに一定の空間距離を設けることで、断水等による逆流防止を図るようにした洗濯機が記載されてはいるが、このものは、風呂水給水ポンプを介した風呂水の水道管への逆流防止のための構成ではないため、同号証で開示する構成を、上記甲第3号証に記載の洗濯機に適用して、風呂水給水ポンプを介した風呂水の水道管への逆流防止を図ること自体、当業者といえども容易に想到し得ないところである。
また、上記甲第1号証には、風呂水吸水ポンプ及び水道給水用電磁弁を洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵した洗濯機が、上記甲第2号証には、呼び水口付きポンプそれ自体の構造が、上記甲第5号証には、自吸式ポンプそれ自体の構造が、それぞれ開示されているにすぎない。
したがって、本件発明1及び2が上記甲各号証に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5) むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
洗濯機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 攪拌翼を内部に備えた洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプ及び前記水道給水用電磁弁は洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵され、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ且つ前記バックパネルの上面側から風呂水吸水ホースを接続し得るように上向きに開口し、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記呼び水供給口の壁に当てられることにより前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられた後、前記呼び水ホースを介し前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】 攪拌翼を有する洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎ、脱水を行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記吐出室の上部に連通し、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
前記壁に当てられた後に呼び水は、前記呼び水ホースに導かれ、この呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるようにしたことを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は給水,洗い,濯ぎ,脱水等の工程を自動的に遂行する全自動洗濯機に係り、さらに詳細には、風呂水吸水ポンプを備えた全自動洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】
風呂の残り湯を洗濯水に利用して水道水の節水を図ることが従来から行われている。
【0003】
そして、風呂水を給水するための手段として、投げ込み式の風呂水吸水ポンプを浴槽内に入れ、このポンプを介して浴槽内の水を洗濯槽内に送水するタイプのものがある。
【0004】
また、他の例として、洗濯機に風呂水吸水ポンプを内蔵し、このポンプを介して浴槽内の水を洗濯槽内に送水するタイプのものもある。この場合使用されるポンプは、当然自吸水式のポンプとなり、呼び水の方式については1回目の呼び水を行うと、ポンプに内蔵した逆止弁により呼び水がポンプの吸い込み側へ戻らない構造としている。
【0005】
なお、洗濯機に風呂水吸水ポンプを内蔵し、このポンプを介して浴槽内の水を洗濯槽内に送水する先行技術としては、例えば特開昭57-117894号公報,特開昭57-117895号公報、および特開平6-23190号公報等を挙げることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、投げ込み式の風呂水吸水ポンプを利用する場合は、ホースとリード線とが絡み合い、作業性,収納性共に悪いという点で難点がある。
【0007】
一方、洗濯機に風呂水吸水ポンプを内蔵するタイプのものは、従来一般に、洗濯機の下方にポンプを設置するようにしており、呼び水タンクを必要とするばかりでなく、洗濯機下方のポンプから洗濯槽開口部に至る配管長も長くなり、その分コストアップの原因となる。また、呼び水については、逆止弁組立て不良や逆止弁にごみや髪の毛が挾まった場合には、呼び水はサイホン現象により、吸水ホースを通って逆流してしまい、吸水ポンプ使用の度に、呼び水を行う必要が生じる。
【0008】
なお、前掲の特開昭57-117894号および特開昭57-117895号公報には、呼び水タンクを不要とした風呂水吸水ポンプ付の洗濯機が提案されているが、その場合であってもポンプは洗濯機の下方に設けられている。
【0009】
また、前掲の特開平6-23190号公報にも呼び水タンクを不要とした風呂水吸水ポンプ付の洗濯機が提案されている。
【0010】
しかし、同公報には、非常に簡略化された図が掲載されているのみであって、またその文中にもポンプが洗濯機のどの部分に組み込まれているかの具体的説明がなく、先の2公知例と同様、ポンプは洗濯機の下方に設置されるのか、あるいはそれ以外の個所に設置されるのか一切不明であり、ポンプを洗濯機の下方に設置した場合に特有の効果を示唆する記載も一切開示されていない。また、呼び水に対する具体的な方式の開示もない。
【0011】
本発明は、風呂水吸水ポンプの呼び水の具体的方式を提供するものであって、その目的とするところは、従来に比べて、洗濯機の使い初めにおいても、使用者が呼び水を行う必要がなく、万一逆止弁の取付け不良や、異物の挾まりなどで呼び水がなくなっても自動的に呼び水を行いポンプ運転に支障がなく、使い勝手の良い風呂水吸水ポンプ付の全自動洗濯機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本願発明は、次のように構成する。
一つは、攪拌翼を内部に備えた洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプ及び前記水道給水用電磁弁は洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵され、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ且つ前記バックパネルの上面側から風呂水吸水ホースを接続し得るように上向きに開口し、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記呼び水供給口の壁に当てられることにより前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられた後、前記呼び水ホースを介し前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されていることを特徴とする。
【0013】
もう一つの発明は、上記同様の風呂水吸水ポンプ及び水道給水電磁弁とを備えた洗濯機であって、
前記吐出口と前記呼び水口は前記吐出室の上部に連通し、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
前記壁に当てられた後に呼び水は、前記呼び水ホースに導かれ、この呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるようにしたことを特徴とする。」
【0014】
【0015】
そして、上記構成をなすことにより、風呂水吸水ポンプ運転の前、或いは運転と同時に給水電磁弁からポンプケーシング内に自動的に呼び水を行うため、逆止弁の性能不良により、ポンプケーシング内の呼び水が少なくなっても、使用者が呼び水を追加することなく、風呂水吸水運転を実行できるものである。
【0016】
また、洗いの風呂水吸水,すすぎの風呂水吸水等全ての風呂水吸水運転時に自動呼び水動作を行わせるようにしているので、洗いとすすぎ行程の間で逆止弁に不具合が発生した場合にも、支障なく風呂水吸水を行うことが出来るものである。
【0017】
さらに、自動呼び水を行う給水電磁弁の吐出口と呼び水供給口とは一定の空間距離を持って形成しているため、風呂水吸水ポンプ運転時、呼び水ホースからでてくる、風呂水が給水弁を通って水道配管に逆流することを防止できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図面の一実施例にもとづいて説明すると、図1において、1は洗濯機のトップカバー、2は洗濯機の運転を制御するコントローラで、コントローラ2は、トップカバー1の前方に内蔵され、タイマー機能を有するマイクロコンピュータ等で構成されている。
【0019】
3は洗濯機の運転内容を作業者が外部から指示するメンブレンスイッチである。
【0020】
4はトップカバーの中央部に大きく開口した洗濯物投入口6を覆う蓋で、支点5を軸にして上方に開くものである。
【0021】
7は洗濯兼脱水槽(以下、洗濯槽と略称する)8と外槽9との間に洗濯物が落下するのを防止するカバーで、外槽9の上部に設けられている。
【0022】
10は洗濯槽8の壁面に穿設された脱水孔である。
【0023】
11はバランスリングで、洗濯槽8の上端に固着され、脱水運転時洗濯槽8に発生する振動の振幅を低減する。
【0024】
外槽9は、吊り捧12により外枠21の上部に吊るされており、バネ13を介挿することにより外槽9を弾性支持している。
【0025】
14は撹拌翼で、洗濯槽8の底部中央に回転自在に設置され、洗濯及びすすぎ時には、短時間周期で正逆転する。
【0026】
15はモータで、モータ15の動力をモータプーリ16,ベルト17,従動プーリ18,クラッチ・減速部19を介して、洗濯,すすぎ時には撹拌翼14を、また脱水時には洗濯槽8と撹拌翼14とを共に駆動する。
【0027】
20は外枠21を支承する脚部、22は外槽9の底部に設けた排水孔で、排水孔22の下流側には、コントローラ2からの指令で開閉する排水電磁弁23と排水ホース24とを有する。
【0028】
25はバックパネルであり、後述の風呂水吸水ポンプ26及び給水電磁弁31が内蔵されている。
【0029】
26はケーシングを抗菌剤入りの合成樹脂でケーシングを成形した風呂水吸水ポンプで、トップカバー1のバックパネル25に内蔵されている。
【0030】
27は抗菌剤入りの風呂水吸水ホースで、その接続端はOリング28を介してポンプ26の上面に設けた風呂水吸水口26aに着脱自在に装着される。
【0031】
図2は、バックパネル25を取り除いてその内部構造を示す図であって、1aはトップカバー1に設けた、水道水を洗濯槽内に供給する注水口と風呂水供給の吸水口とを共用化した水道水注水口兼風呂水吸水口で、この水道水注水口兼風呂水吸水口1aからはソフナーも投入される。
【0032】
風呂水吸水ポンプ26は、風呂水吸水口26a,風呂水吐出管26bを備えている。バックパネル25内には、更に蓋スイッチ29及び給水電磁弁31を内蔵しており、給水電磁弁31は、水道水蛇口へホースにより連通される水道水受入れ口30を一体に設けている。
【0033】
33は呼び水供給口、34は給水電磁弁31から吐出された水道水の一部を風呂水吸水ポンプに呼び水として供給する呼び水ホースである。
【0034】
風呂水吸水ポンプ26の縦断面を示す図4において、40は合成樹脂にて一体成形されたケーシングであって、ポンプランナーを収納するポンプケーシング部分とモータを収納するモータ保持部とポンプとモータとの形成されたカップリング収納部とを備えている。更に、ケーシング40は、冷却用通水路40e,メカニカルシールからの漏水を排出する水抜き穴40f,蒸気抜き穴40g及び40h,排出室40i等を一体的に構成している。
【0035】
41はケーシング40に組み合わせられるケーシングカバーであって、ケーシングカバーには、吸込室形成壁41c,吸込室41d等が一体に形成されている。
【0036】
42はポンプのランナーであり、ランナーシャフト49の端部に固着される。
【0037】
43はポンプモータでそのシャフト43aは、絶縁性材料で製作されたカップリング45を介してランナーシャフト49に接続される。46はケーシングカバー吸込室41d内に設けられポンプ内の水が吸い込み側に流出するのを防止する逆止弁である。
【0038】
ケーシング40とケーシングカバー41とのあいだには、仕切り板44が介挿され、この仕切り板は、ランナー室と吸込室41dとを区画し、ランナー42の水込み口に一致して開口した吸い込み穴により両室が連通している。
【0039】
47はケーシング40とケーシングカバー41との接合面の機密を保つパッキングである。48はポンプ室とカップリング室との水密を保つメカニカルシールである。
【0040】
図5は、ケーシングカバー41及び仕切り板44を取り除いて示した正面図であり、ケーシング40と一体に形成した上ボリュート40a1,下ボリュート40a2には、ランナー42の方向に突出した分離壁40b1及び40b2と、分離壁のランナー回転方向に隣接してボリュートの内外を連通する戻り水穴40c1及び40c2を備えている。下ボリュート40a2の上端には、水平方向に延びた気泡防止リブ40dを設ける。
【0041】
上下のボリュートの外側には、排出室40iが形成され、この室は上方では大きな容積を有する気水分離室の機能を備えている。
【0042】
気水分離室の一部がモータ保持部の方向に膨出して、前述の冷却用通水路40eを構成する。
【0043】
図6は、図5のY-Y線に沿う断面図であり、ケーシングカバー41と一体に吐出管26bが接続される吐出口41aと呼び水ホース34が接続される呼び水口41bが形成されている。
【0044】
電源スイッチを「入」にして、風呂水コーススタートボタンを押すと、15秒間給水電磁弁31に通電され、水道水が給水される。水道水の吐出口からでた水は、呼び水供給口33の壁に当たり、水道水の一部は呼び水ホース34を通してケーシングカバー41の呼び水口41bからポンプ内へ呼び水として供給される。15秒経過すると給水電磁弁31の通電が停止し、ポンプ26が起動される。
【0045】
モータ43が回転すると、モータシャフト43,カップリング45,ランナーシャフト49を介して、ランナー42がP方向に回転する。ランナー42の回転により吸込室41dは負圧となり、吸水口26aに接続された吸水ホース27内の空気を吸い込み吐出口40iから排出しながら風呂水を吸水する。この時ランナー42内に吸い込まれた空気は、分離壁40b1,分離壁40b2,戻り水穴40c1,戻り水穴40c2,気泡防止リブ40dの効果により、短時間で空気と水を分離する構造としている。また、冷却水路40eには吸水された風呂水が循環し、モータを冷却するとともに、モータの騒音を吸収している。吸込室41dと排出室40iを分離する仕切り板44のリブ44aは、ケーシング41の吸込室形成壁41cとはラビリンス構造で取り付けられている。またランナー先端部42aと仕切り板44のギャップmは1mm以上とし、ランナー42,平面部42bと仕切り板44のギャップは0.6〜1.3mmにしている。吸水された風呂水は、従来のこの種ポンプと同様の送水方法によりランナー42を介して排出室40iに送られ、排出室40iに送られた風呂水は、その後、風呂水吐出管26bを介して洗濯槽8内に供給される。
【0046】
【発明の効果】
以上本発明によれば、風呂水吸水ポンプ運転時に給水電磁弁より、自動的に呼び水を行わせることにより、1回目の使用から、使用者が呼び水する必要がなく、しかも、ポンプのケーシング内の呼び水の漏れを防止する、逆止弁に不具合が生じた場合も吸水運転に支障がなく、使い勝手が良く、信頼性の高い風呂水吸水ポンプを提供できる。また、給水電磁弁の吐出口と呼び水供給口一定の空間距離を設けてあるので、風呂水の水道管への逆流のない安全な方式となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の全自動洗濯機の一実施例を示す全体的内部構造説明図である。
【図2】
バックパネルを取り除いてその内部構造を示した平面図である。
【図3】
図2のX-X線に沿う断面図である。
【図4】
風呂水吸水ポンプの内部構造を示す縦断面図である。
【図5】
ケーシングカバー及び仕切り板を除去してポンプ内部を示す正面図である。
【図6】
図5のY-Y線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1…トップカバー、8…洗濯槽(洗濯兼脱水槽)、25…バックパネル、26…風呂水吸水ポンプ、31…給水電磁弁、33…呼び水供給口、34…呼び水ホース。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を
「攪拌翼を内部に備えた洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプ及び前記水道給水用電磁弁は洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵され、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ且つ前記バックパネルの上面側から風呂水給水ホースを接続し得るように上向きに開口し、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記呼び水供給口の壁に当てられることにより前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられた後、前記呼び水ホースを介し前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されていることを特徴とする洗濯機。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を
「攪拌翼を有する洗濯槽と洗濯用モータと水道給水用電磁弁と風呂水吸水ポンプとを有し、前記水道給水用電磁弁あるいは前記風呂水吸水ポンプから前記洗濯槽に給水し、また前記洗濯用モータで前記攪拌翼や前記洗濯槽を回転駆動して洗濯やすすぎ、脱水を行う洗濯機であって、
前記風呂水吸水ポンプは、風呂水吸水口と逆止弁とポンプランナーと気水分離機能を有する吐出室と吐出口と呼び水口とを備えたポンプ部と、前記ポンプランナーを回転駆動するモータを備えたモータ部とを有し、前記呼び水口から呼び水が供給され、前記ポンプランナーの回転により前記風呂水吸水口から吸水された風呂水は前記逆止弁を介して前記ポンプランナーに導かれ前記吐出室を通り吐出口から吐出するように構成され、
前記吐出口と前記呼び水口は前記吐出室の上部に連通し、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
前記壁に当てられた後に呼び水は、前記呼び水ホースに導かれ、この呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるようにしたことを特徴とする洗濯機。」と訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落【0012】において、
「洗濯やすすぎを行う洗濯機であって、」と「前記風呂水吸水ポンプは」の間に「前記風呂水吸水ポンプ及び前記水道給水用電磁弁は洗濯機上部のトップカバーの後部に設けたバックパネルに内蔵され、」を挿入すると共に、
「前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられて前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されている」とあるを
「前記吐出口と前記呼び水口は前記ポンプランナーより高い位置に設けられ、前記風呂水吸水口は前記吐出口および前記呼び水口より高い位置に設けられ且つ前記バックパネルの上面側から風呂水吸水ホースを接続し得るように上向きに開口し、
前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に、呼び水ホースに通じる呼び水供給口が前記水道給水用電磁弁の吐出口に対して一定の空間距離を持って配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口から吐出した水が前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記呼び水が前記水道給水用電磁弁の吐出口から前記風呂水吸水ポンプの呼び水口に導かれるに際し前記呼び水供給口の壁に当てられることにより前記水道給水用電磁弁の吐出口より上の位置に上げられた後、前記呼び水ホースを介し前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるように水路が形成されている」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落【0013】において、
「前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の下流で前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、また前記水道給水用電磁弁の下流で壁に当てられた後呼び水は呼び水ホースに導かれ、前記呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ呼び水が供給されるようにした」とあるを
「前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流に呼び水ホースに通じる呼び水供給口が配置され、前記水道給水用電磁弁の吐出口と前記呼び水供給口との間に一定の空間距離を設けてあり、前記水道給水用電磁弁から吐出した水は前記水道給水用電磁弁の吐出口の下流で前記呼び水供給口の壁に当てられて前記洗濯槽に導かれる水と呼び水とに分けられ、
前記壁に当てられた後に呼び水は、前記呼び水ホースに導かれ、この呼び水ホースを介して前記風呂水吸水ポンプの前記呼び水口へ供給されるようにした」と訂正する。
異議決定日 2002-10-08 
出願番号 特願2000-21858(P2000-21858)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (D06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩澤 克利平上 悦司金丸 治之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 和泉 等
千壽 哲郎
登録日 2000-12-22 
登録番号 特許第3143101号(P3143101)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 洗濯機  
代理人 小川 勝男  
代理人 外川 英明  
代理人 小川 勝男  

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