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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E05D
管理番号 1071854
異議申立番号 異議2002-71310  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-05-24 
確定日 2003-01-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第3232402号「合成樹脂製下枠」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3232402号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件発明
特許第3232402号(平成8年11月7日出願。平成13年9月21日設定登録。)の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 合成樹脂製の下枠本体に下レールを取付けた合成樹脂製下枠において、
前記下枠本体を、中空形状で下面見込み方向中間に縦取付片を有すると共に、この縦取付片よりも室外寄り中空部内に補強連結板を垂直に対して斜めに一体的に有するものとしたことを特徴とする合成樹脂製下枠。
【請求項2】 前記下枠本体下面と縦取付片とに亘ってほぼL字状の補強金具を設けた請求項1記載の合成樹脂製下枠。」

2.引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1、実公平4-25512号公報(異議申立人佐藤文徳提出の甲第1号証)には、
a.「樹脂製の窓枠でも取付強度を強くできるようにした窓枠の取付装置を提供することを目的とする。」(3欄1〜3行)
b.「窓枠2は上枠8と下枠9と左右の縦枠10,10を方形枠状に連結したものである。」(4欄8〜9行)
c.「下枠9は室内、外側凹部35,36を有すると共に、・・・前記室内、外側凹部35,36には内、外下レール38,39が係着されている。」(4欄43行〜5欄5行)
と記載され、これらの記載からみて、刊行物1には、「樹脂製の下枠9に下レール38,39を取付けた樹脂製下枠」の発明が記載されているものと認める。

同刊行物2、特開平8-47985号公報(平成8年2月20日公開)(異議申立人佐藤文徳提出の甲第2号証)には、以下の記載がある。
a.「本発明は建築用材、特に新規な窓枠、ドアフレームなどに係り、またある種の熱可塑性樹脂を押出して製造されるそのような用材・製品に係る。」(1欄48〜50行)
b.「中空断面部材の一方の面から垂直かつ長手方向に3つのフランジ部材がほぼ平行な関係で伸び、中空断面部材の反対の面から長手方向かつ垂直に1つのフランジ部材が伸びているのが好ましい。」(3欄46〜50行)
c.「中央の中空断面部材は、その中央中空部の長さに沿って垂直な配位で長手方向に伸びる1つ以上のリブ部材をもっていてもよい。一方、好ましい態様の場合、この中央の中空部はそこを通って長手方向に伸びる波形のリブ部材をもっていてもよい。この波形は図面に示したようにさまざまな設計のものとすることができ、本明細書ではねじり安定具という。好ましい態様の場合、中央の断面部材から伸びる3つのフランジ部材を有する面は、たとえば窓ガラスや窓枠のような垂直の可動パネルを受容・保持することができるみぞ様またはU字形の凹みを形成している。本発明の好ましい構造体はまた、水平スライドドア用のドアフレームまたは天窓の窓枠を形成することもできよう。実際本発明の好ましい構造体は建築物のいかなるタイプの開口部のフレーム・枠として使用することができる。また、本発明の好ましい構造体において、3つのフランジ部材と反対側の面から伸びる単一のフランジは時として取付または固定フランジといわれることがある。このフランジによって、窓枠またはドアフレームを建築物に取付けて固定するのである。窓枠の場合、側部は一般に「縦枠(抱き)」といわれ、頂部は一般に「上枠(ヘッダ)」といわれ、底部は「下枠(敷居)」といわれる。」(4欄3〜24行)
d.「図1は、本発明の高精細度異形材のひとつの具体例の断面図である。中空部11とねじり安定化用リブ12を有する中央の中空断面部材10、みぞ様の凹み15を形成するフランジ14、および取付または固定用フランジ16が示されている。」(6欄6〜10行)
さらに、図1には、中央の中空断面部材10が、その下面見込み方向中間に取付または固定用フランジ16を有すること、この取付または固定用フランジ16よりも室外寄り中空部内にねじり安定化用リブ12を垂直に対して斜めに一体的に有することが示されている。
これらの記載からみて、刊行物2には、「合成樹脂製下枠であって、中空断面部材が、中空形状で下面見込み方向中間に取付または固定用フランジを有すると共に、この取付または固定用フランジよりも室外寄り中空部内にねじり安定化用リブを垂直に対して斜めに一体的に有する合成樹脂製下枠」の発明が記載されているものと認める。

同刊行物3、実公平6-29431号公報(異議申立人佐藤文徳提出の甲第3号証)には、
a.「アングル形状の一方の支持片を下枠に当て、他方の支持片を建物壁面にねじによって固定して下枠のだれを防ぐ下枠のだれ止め金具において、・・・」(3欄15〜17行)
b.「10はだれ止め金具であり、上支持片10aと下支持片10bとによって大略アングル形状に形成されていて・・・」(3欄37〜38行)
と記載され、また、第1図には、下枠が、本体とその下面より垂下し被取付面に接する部分(以下、「縦片」という。)を有し、だれ止め金具10を、下枠本体下面と縦片とに亘って設けることが示されており、これらの記載からみて、刊行物3には、「下枠本体下面と縦片(本体下面より垂下し被取付面に接する部分)とに亘って大略アングル形状のだれ止め金具を設けた下枠」の発明が記載されているものと認める。

3.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明の「樹脂製」、「下枠」は、それぞれ本件発明1の「合成樹脂製」、「下枠本体」に相当し、刊行物1記載の発明の「樹脂製の下枠に下レールを取付けたもの」は、全体として「合成樹脂製下枠」といえるから、両者は、「合成樹脂製の下枠本体に下レールを取付けた合成樹脂製下枠」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:下枠本体が、本件発明1では、中空形状で下面見込み方向中間に縦取付片を有すると共に、この縦取付片よりも室外寄り中空部内に補強連結板を垂直に対して斜めに一体的に有するものであるのに対し、刊行物1に記載された発明では、少なくとも縦取付片は有しない点。

上記相違点について検討するために刊行物2をみると、刊行物2記載の発明の「下枠の中空断面部材」、「取付または固定用フランジ」、「ねじり安定化用リブ」は、それぞれ本件発明1の「下枠本体」、「縦取付片」、「補強連結板」に相当するので、刊行物2には、本件発明1の上記相違点に係る構成が記載されており、刊行物1に記載された発明の下枠本体に刊行物2記載の発明を適用して、本件発明1のような構成とすることは当業者が容易に想到できたことといえる。しかも、本件発明1が奏する効果も、刊行物1及び2に記載の発明から当然予測される程度のものであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、権利者は意見書で、「刊行物2に記載されたものは、・・・一般的な薄壁異形押出建築用材であり、・・・本件特許発明1の合成樹脂製下枠と全く相違します。」と主張するが、刊行物2には、上記のとおり、窓枠の縦枠、上枠、下枠についての言及があり、当該主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用してさらに、「下枠本体下面と縦取付片とに亘ってほぼL字状の補強金具を設けた」という構成を付加するものである。そこで刊行物3をみると、刊行物3記載の発明の「大略アングル形状のだれ止め金具」が、本件発明2の「ほぼL字状の補強金具」に相当し、刊行物3記載の発明の「縦片」は、本体下面より垂下し被取付面に接する点で、本件発明2の「縦取付片」に相当するので、刊行物3には上記構成が記載されている。したがって、本件発明1についての検討事項をふまえて考えると、刊行物1記載の発明に刊行物2及び3記載の発明を組み合わせて本件発明2のような構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。しかも、本件発明2が奏する効果も、刊行物1,2及び3記載の発明から当然予測される程度のものであって格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明2は、刊行物1,2及び3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、権利者は意見書で、「刊行物3には、合成樹脂下枠の補強金具とは関係のない「取付金具」が記載されているのみであり、」と主張するが、刊行物3記載の発明のだれ止め金具は、下枠のだれを防ぐためのもので、下枠の補強機能を有しているのは明らかであり、当該主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-11-27 
出願番号 特願平8-294988
審決分類 P 1 651・ 121- Z (E05D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 忠夫  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 山口 由木
新井 夕起子
登録日 2001-09-21 
登録番号 特許第3232402号(P3232402)
権利者 ワイケイケイエーピー株式会社
発明の名称 合成樹脂製下枠  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 高橋 邦彦  
代理人 浜本 忠  

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