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審決分類 審判 一部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H05K
管理番号 1073353
異議申立番号 異議2002-72470  
総通号数 40 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-07 
確定日 2003-02-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第3273087号「電子部品受渡し装置および電子部品装着方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3273087号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 【1】手続の経緯
特許第3273087号の請求項1〜5に係る発明についての出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成5年6月29日(優先日、平成4年11月27日)の出願であって、平成14年1月25日にその発明について特許権の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議申立人芝崎京子(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされたものである。

【2】特許異議申立について
1.本件発明
特許第3273087号の請求項1〜5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりのものである。
2.申立て理由の概要
申立人は、請求項1〜2に係る発明の構成要件である「支持部材位置ずれ修正部」は、出願当初明細書に記載されていないばかりでなく、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できるように記載されておらず、請求項3に係る発明の構成要件である「トレイ位置ずれ修正部」は、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できるように記載されておらず、請求項4に係る発明の構成要件である「支持部材基準マークの位置ずれを検出する工程」は、出願当初明細書に記載されていないばかりでなく、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できるように記載されておらず、請求項5に係る発明の構成要件である「第1位置ずれ検出工程」は、発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できるように記載されていないから、請求項1〜5に係る発明は、特許法第36条第5項第1号ないし第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
3.判断
(1)請求項1,2に関して
申立人は、請求項1,2について、
a)「支持部材位置ずれ修正部」が具体的にどのような構成、作用をなすのかは、発明の詳細な説明には全く記載がなく、「支持部材位置ずれ修正部」が具体的にどういう構成のものなのか、又「支持部材位置ずれ修正部」と「位置ずれ修正手段」の関連構成及び「支持部材位置ずれ修正部」と「カートリッジ位置ずれ修正部」との関連構成を導き出せる記載についても記載されていない。しかも、「支持部材位置ずれ修正部」は出願当初の明細書には全く記載されていない。
b)請求項1には、「位置ずれ修正手段」と「支持部材基準マークを読み取る読取り手段」との技術的関連が記載されておらず、読取り手段からの情報をどのような構成要件を介して処理、演算して位置ずれ修正手段を駆動させるのか明らかでない。
c)明細書には、「位置ずれ修正部」の具体的な定義がないから、これが「X軸方向移動装置42およびY軸方向移動装置35より構成されている位置ずれ修正手段」の一部分の構成に該当するのか、情報の演算装置に該当するのか、その両方をさすのか不明瞭である。
と主張する。
しかしながら、願書に添付した明細書の段落【0040】〜【0043】、【0056】〜【0063】の記載によれば、本願の、特に部品供給パレットとカートリッジを用いる実施例においては、まず最初にCCDカメラ120によって全てのカートリッジの基準マーク132と、部品供給パレット16の2個のパレット基準マークが読み取られて、これらの本来あるべき位置との誤差がRAMに格納され、次いで最初の部品の吸着が、カートリッジ基準マーク132の前記誤差データに基づいて、本来あるべき位置から吸着位置が修正された形で行われるとともに、部品供給パレット16がベース10に再固定されるとき、部品供給パレット16のパレット基準マークの位置が再度読み取られて、前回のパレット基準マーク位置との読み取りデータとの差が、各カートリッジ基準マーク132の本来あるべき位置からの誤差データに加算されて吸着位置が再修正され、修正後のデータに基づいて部品の吸着が行われるものと認められる。また、段落【0077】には、「部品供給パレット16のみに基準マークを設け、部品供給パレット16のベース10に対する固定位置誤差のみに基づいてカートリッジ130の取付位置誤差を求め、部品吸着具66の移動距離を修正するようにしてもよい。」とも記載されており、このことは、カートリッジ130の取付位置が部品供給パレット16に対して相対的に定まっている場合には、各カートリッジ130毎の吸着位置の本来あるべき位置との誤差が、部品供給パレット16のベース10に対する本来あるべき位置からの誤差に基づいて算出され、それに基づいて各回の吸着を行い得ることを示している。
してみれば、請求項1,2の発明における「支持部材位置ずれ修正部」が、部品供給パレット16等の支持部材において吸着位置の位置ずれを修正する部分であって、最初に読取り手段によって読み取られた支持部材の基準マークの位置と本来あるべき位置との誤差をRAMに格納し、カートリッジの取付位置が支持部材に対して相対的に定まっている場合には、各カートリッジ吸着位置の本来あるべき位置との誤差を算出して吸着位置を修正し、支持部材を再固定するときには基準マークを再度読み取って、前回の読み取りデータとの差を各カートリッジ吸着位置の誤差データに加算して、吸着位置を修正するものであること(その修正のやり方は、段落【0060】〜【0062】に明記されている。)は明らかであり、「カートリッジ位置ずれ修正部」が、各カートリッジにおいて吸着位置の位置ずれを修正する部分であって、読取り手段によって読み取られた各カートリッジの基準マークの位置と各カートリッジ基準マークの本来あるべき位置からの誤差(各カートリッジ吸着位置の誤差データ)に基づいて最初の吸着位置を修正するとともに、支持部材を再固定するときには「支持部材位置ずれ修正部」における支持部材の読み取りデータの差をこれに加算することによって、吸着位置を再修正するものであることは明らかである。
してみれば、支持部材位置ずれ修正部やカートリッジ位置ずれ修正部の構成や作用、両者の関連構成は明白であると共に、これらと支持部材基準マークを読み取る読取り手段との関連構成も明白である。また、これら支持部材位置ずれ修正部やカートリッジ位置ずれ修正部が情報の演算装置を含むことは当然であり、その処理、演算方法も当業者において自明の範囲のものである。さらに、段落【0063】に「X軸方向移動装置42およびY軸方向移動装置35が支持部材位置ずれ修正部を備えた位置ずれ修正手段を構成している。つまり、位置ずれ修正手段は、上記支持部材位置ずれ修正部に加えて、前記カートリッジ位置ずれ修正部を備えるものなのである。」と明記されていることから、支持部材位置ずれ修正部やカートリッジ位置ずれ修正部が位置ずれ修正手段の一部であって、該位置ずれ修正手段は、X軸方向移動装置とY軸方向移動装置で構成されることも明らかであり、またこのことから、位置ずれ修正手段と支持部材基準マークを読み取る読取り手段との技術的関連(当然、支持部材基準マークを読み取る読取り手段とは別個のものである。)も明白である。
そして、「支持部材位置ずれ修正部」という言葉自体は、出願当初の明細書に記載されていないが、支持部材位置ずれ修正部に相当する構成は、出願当初の明細書に全て記載されている。
したがって、申立人が主張するa)〜c)の点はいずれも採用できない。
(2)請求項3に関して
申立人は、請求項3について、
d)「トレイ位置ずれ修正部」が具体的に発明を実施可能にする上でどのような構成のもので、トレイ位置ずれ修正部と位置ずれ修正手段の関連構成がどのような構成なのか発明の詳細な説明には全く記載がない。
e)請求項3にはトレイ位置ずれ修正手段とトレイ基準マークを読み取る読取り手段との関係が記載されておらず、読取り手段からの情報をどのような構成要件を介して処理、演算して位置ずれ修正手段を駆動させるのか明らかでない。
と主張する。
しかしながら、願書に添付した明細書の段落【0067】には、「部品収容トレイ208に付されたトレイ基準マーク216をCCDカメラ248により撮像して部品収容トレイ208の位置誤差を検出し、部品取出しロボット220のX軸,Y軸方向の移動距離を修正することにより電子部品64を確実に取り出すことができる。」と記載されているから、部品収容トレイ208を用いる場合も、部品供給パレット16を用いる場合であってカートリッジ130の取付位置が部品供給パレット16に対して相対的に定まっている場合と同様の操作が行われることは当業者が容易に想到しうるところである。
してみれば、トレイ位置ずれ修正部と位置ずれ修正手段の関連構成や、トレイ位置ずれ修正手段とトレイ基準マークを読み取る読取り手段との関係が、支持部材位置ずれ修正部と位置ずれ修正手段の関連構成や、位置ずれ修正手段と支持部材基準マークを読み取る読取り手段との関係と、情報の処理、演算のやり方も含めて同様であることは当業者が容易に想到しうるところであるから、申立人が主張するd)、e)の点はいずれも採用できない。
(3)請求項4に関して
申立人は、請求項4について、
f)「支持部材基準マークの位置ずれを検出する工程」は、出願当初の明細書には記載されておらず、しかもこの工程が、請求項4の発明を実施可能とする上でどのような構成のもので、【0040】、【0041】、【0057】のどの工程を指すのか不明瞭である。
と主張する。
しかしながら、(1)で前述したように、「支持部材基準マークの位置ずれを検出する工程」が、まず最初にCCDカメラ120によって部品供給パレット16の2個のパレット基準マークが読み取られる工程と、部品供給パレット16が再固定されるとき、部品供給パレット16のパレット基準マークが再度読み取られる工程の両方を指していることは明らかであり、その工程の役割も前述したとおりである。そして、「支持部材基準マークの位置ずれを検出する工程」という言葉自体は、出願当初の明細書に記載されていないが、支持部材基準マークの位置ずれを検出する工程に相当する構成は、出願当初の明細書に全て記載されている(「第1位置ずれ検出工程」、「第2位置ずれ検出工程」、「第3位置ずれ検出工程」についても同様である。)。
したがって、申立人が主張するf)の点は採用できない。
(4)請求項5に関して
申立人は、請求項5について、
g)第1位置ずれ検出工程における固定位置誤差が具体的に何を基準としたどのような誤差をいうのか明らかでなく、段落【0040】〜【0043】には、第1位置ずれ検出工程と第2位置ずれ検出工程の順序が請求項5の工程の順序と逆に記載されている。
と主張する。
しかしながら、請求項5の「第1位置ずれ検出工程」が、(1)で前述した、最初にCCDカメラ120によって部品供給パレット16の2個のパレット基準マークが読み取られて、本来あるべき位置との誤差がRAMに格納される工程であることは明らかである。 また、段落【0040】〜【0043】には、「第2位置ずれ検出工程」のあとに「第1位置ずれ検出工程」が記載されてはいるが、その順序については、どちらが先であるとも特には記載されていない。そして、これらの工程はどちらが先であっても変わりがないことは当業者において明らかであるから、当業者はどちらを先に行う場合も想定しうる(同時に行うことも同様である。)のであって、それを請求項においては、「第1位置ずれ検出工程」を「第2位置ずれ検出工程」の前段に記載したものと解することができる。
したがって、申立人が主張するg)の点は採用できない。
(5)以上詳述したとおりであるから、申立人が主張する点はいずれも採用することができない。

以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-01-30 
出願番号 特願平5-186794
審決分類 P 1 652・ 534- Y (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深澤 幹朗  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 尾崎 和寛
ぬで島 慎二
登録日 2002-01-25 
登録番号 特許第3273087号(P3273087)
権利者 富士機械製造株式会社
発明の名称 電子部品受渡し装置および電子部品装着方法  

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