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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1074286
審判番号 不服2000-14358  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-05-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-07 
確定日 2003-04-15 
事件の表示 平成 5年特許願第267158号「動力伝達装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 5月12日出願公開、特開平 7-119802、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明
本願は、平成5年10月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤを軸方向に一体的に備えた複合遊星ギヤを、ピニオン軸を介して軸心まわりの回転可能に支持しているキャリアと、前記大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤの一方および他方と噛み合うサンギヤおよびリングギヤとを有し、前記キャリヤ,サンギヤ,およびリングギヤのうちの1つが反力要素として機能し、他の2つの間で動力伝達を行う遊星歯車式の動力伝達装置において、
前記大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤは何れも噛合歯が周方向に捩じれているとともに、動力伝達時に該噛合歯の捩れに起因して生じる軸方向の力が互いに向き合う方向となるように、該噛合歯の捩れ方向が定められていることを特徴とする動力伝達装置。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、下記の刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というにある。
〈引用刊行物〉
刊行物1;特開平3-135841号公報

3.引用刊行物の記載事項
上記刊行物1(特開平3-135841号公報)には、複合プラネタリギヤによる入力トルク比例式の差動制限機能発生手段と、差動制限トルクによる動力配分制御に関して、下記の事項ア、イが図面とともに記載されている。
ア;「〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、本発明の4輪駆動車の動力配分制御装置は、入力側の第1のサンギヤ,一方の出力側の第2のサンギヤをピニオン部材の第1,第2ピニオンに噛合せ、他方の出力側のキャリヤで上記第1,第2のピニオンを軸支する複合プラネタリギヤ式センターディファレンシャル装置を備えた4輪駆動車において、第1列の上記第1のサンギヤと第1のピニオン,第2列の上記第2のサンギヤと第2のピニオンをはすば歯車にし、上記第1列と第2列のギヤ噛合い点に作用するスラスト荷重の差が、上記第1,第2のピニオンの一方の端面に作用するようにねじれ角を設定し、上記第1列と第2列のギヤ噛合い点に作用する分離,接線荷重の合成力が、上記第1,第2のピニオンの軸受に作用するように構成し、上記第1,第2のピニオンの一方の端面と軸受の部分との摩擦力により、差動回転中に入力トルクに比例した差動制限トルクが発生するように構成するものである。」(第3頁左下欄3行〜右下欄2行)

イ;「更に、差動制限機能について述べると、第1,第2のサンギヤ51,53および第1,第2のピニオン52,54が所定のねじれ角を有するはすば歯車になっている。そして第1,第2のピニオン52,54のねじれ角を異にして、第1,第2のサンギヤ51,53との噛合い点に作用するスラスト荷重を相互にキャンセルすること無くピニオン軸58方向に作用させ、スラストワッシャ27の部分で滑り摩擦力が発生する。また、第1列,第2列の噛合い点に作用する分離荷重と接線荷重との合成力を第1,第2のピニオン52,54,ピニオン軸58,ニードルベアリング26の部分に作用させて、ころがり摩擦力が発生する。そしてこれらの摩擦力によりピニオン回転に対し反対方向の摩擦トルク,即ち差動制限トルクが生じるものである。」(第6頁左上欄13行〜右上欄7行)

4.当審の判断
刊行物1に記載された上記記載事項ア、イを知り得た当業者であれば、所定のねじれ角を有するはすば歯車で第1,第2のピニオン52,54と第1,第2のサンギヤ51,53を構成すれば、その噛合い点に作用するスラスト荷重はキャンセルすることができることは容易に理解することができる技術事項と認められる。
しかしながら、本願発明は、大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤを軸方向に一体的に備えた複合遊星ギヤを、ピニオン軸を介して軸心まわりの回転可能に支持しているキャリアと、前記大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤの一方および他方と噛み合うサンギヤおよびリングギヤとを有し、前記キャリヤ,サンギヤ,およびリングギヤのうちの1つが反力要素として機能し、他の2つの間で動力伝達を行う遊星歯車式の動力伝達装置にあっては、そのそれぞれの噛合い点にラジアル荷重によるモーメントとスラスト荷重によるモーメントとが生じることから、ラジアル荷重によるモーメントとは逆方向のモーメントをスラスト荷重により作用させるために、大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤの噛合歯の捩れ方向を、動力伝達時に噛合歯の捩れに起因して生じる軸方向の力が互いに向き合う方向となるように定めているものであって、刊行物1に記載された発明から理解できるような噛合い点に作用するスラスト荷重をキャンセルするものではなく、大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤの噛合歯の捩れ方向を定める技術的意義が刊行物1に記載された発明とは明確に相違するものであるから、刊行物1に記載された上記技術事項を知り得た当業者といえども、上記本願発明のように大径ピニオンギヤおよび小径ピニオンギヤの噛合歯の捩れ方向を定めることは、容易に想到することができる事項であるとは認めることができない。
また、本願発明の上記技術事項が本願出願前当業者に知られていた事項であるとも認めることができない。
そうすると、刊行物1に記載された発明に本願出願前周知の事項を総合勘案したとしても、本願発明の上記技術事項を想到するための契機がないものであるから、本願発明の上記技術事項は、当業者が容易に想到することができるものとは認めることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-04-02 
出願番号 特願平5-267158
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 秋月 均
常盤 務
発明の名称 動力伝達装置  
代理人 池田 治幸  

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