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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03C
管理番号 1074498
審判番号 不服2001-21402  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-29 
確定日 2003-04-04 
事件の表示 平成 6年特許願第111215号「写真フイルム巻き込み装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年12月 8日出願公開、特開平 7-319124]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年5月25日の出願であって、平成13年10月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月27日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年12月27日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成13年12月27日付の手続補正を却下する。
〔理由〕
平成13年12月27日付手続補正書の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、引用例1(特開平6-67348号公報)には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 少なくとも2個の遮光性ポリスチレン系樹脂成形部品を結合したパトローネ本体と、このパトローネ本体の中に回転自在に収納された遮光性熱可塑性樹脂製スプールと、このスプールに終端を係止して巻きつけられた写真フイルムとからなることを特徴とする写真フイルムパトローネ。」(第2頁左欄第2〜7行)

「・・・等に開示された写真フイルムパトローネは、未使用状態では写真フイルムの先端までもパトローネ本体内に収納しておき、スプールを回転させることによって写真フイルムの先端をパトローネ本体外に送り出す機能を有している。このような写真フイルムパトローネは、パトローネ本体も2個以上の樹脂成形部品を組み合わせることによって構成されている。」(第2頁右欄第15〜23行)

「図3は、本発明を用いた写真フイルムパトローネの一例を示す。この写真フイルムパトローネ1は、ポリスチレン系のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)樹脂を用いて射出成形されたケース体2a,2bからなるパトローネ本体2と、熱可塑性樹脂材料で成形されたスプール3と、スプール3に終端部を係止して巻きつけられた写真フイルム4とからなる。ケース体2a,2bの各々の両側面には半円状の切欠き5a,5bが形成され、ケース体2a,2bを結合したときに、スプール3のキー3aを露出させるとともにスプール3の軸受開口5となる。また、スプール3には一対のフランジ6が一体に設けられ、写真フイルム4をスプール3に巻き付けるときにその幅方向の位置規制を行うとともに、前記軸受開口を通してパトローネ本体内に光が入り込むことを防ぐ。」(第3頁左欄第39行〜同頁右欄第3行)

「符号10は写真フイルム出入口9を遮光するテレンプを示す。」(第3頁右欄第16〜17行)

「【0037】
ケース体2a,2bを射出成形で作り、各々のポート部内壁にテレンプ10を貼付した後、ケース体2aをホルダー16に嵌め込む。ケース体2aの切欠5aに写真フイルムの終端部を係止したスプール3を保持させ、写真フイルム4を写真フイルム出入口9から引き出した状態にしてから他方のケース体2bを被せて仮組みを行う。これにより、ケース体2a,2bの互いに溶着される部分が接し合うようになる。
【0038】
写真フイルム出入口9から出ている写真フイルム4をニップローラ23の上に置き、ソレノイド26を駆動する。これにより、揺動板20とともにニップローラ23が上昇し、写真フイルム4はニップローラ23,29間に挟持される。このとき、ブレーキ25は回転許容状態としておく。その後モータ18が駆動され、トルクリミッター19,カプラー17を介し、スプール3には写真フイルム巻き込み方向の回転トルクが与えられる。これによりスプール3が巻き込み方向に回転し、写真フイルム4のパトローネ本体2内への巻き込みが開始される。」(第6頁右欄第19〜37行)

前記記載事項と図面の記載からみて、引用例1には、「相互に結合される2つの遮光性ケース部品からなり、写真フイルムを出し入れするための写真フイルム出入口を有するパトローネ本体と、前記パトローネ本体に回転自在に収納され、写真フイルムが巻き付けられるスプールと、前記スプールの両端部に係合し、前記写真フイルムの側辺に当接するフランジと、前記写真フイルム出入口を遮光するテレンプとからなるパトローネの前記スプールを回転させることにより写真フイルムを巻き付け、未露光の写真フイルムを巻き込むための写真フイルム巻き込み装置において、
前記スプールを回転させるモータと、写真フイルムに接触し、写真フイルムを両面から挟持する2つのローラとを設け、前記モータによりスプールを回転させて写真フイルムを巻き付けることを特徴とする写真フイルム巻き込み装置」が記載されている。

引用例1記載の発明のニップローラ(23,29)は、ブレーキ(25)が働いていない状態でも、写真フィルムにある程度の巻き込み負荷を掛けているものであり、かつ、引用例1記載の発明における「写真フィルム出入口」、「遮光するテレンプ」、及び「モータ」は、本願補正発明における「写真フィルム通路」、「光密に覆う遮光部材」、及び「回転手段」にそれぞれ相当するものであるので、本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本願補正発明と引用例1記載の発明は「相互に結合される2つの遮光性ケース部品からなり、写真フイルムを出し入れするための写真フイルム通路を有するパトローネ本体と、前記パトローネ本体に回転自在に収納され、写真フイルムが巻き付けられるスプールと、前記スプールの両端部に係合し、前記写真フイルムの側辺に当接するフランジと、前記写真フイルム通路を光密に覆う遮光部材とからなるパトローネの前記スプールを回転させることにより写真フイルムを巻き付け、未露光の写真フイルムを巻き込むための写真フイルム巻き込み装置において、
前記スプールを回転させる回転手段と、写真フイルムに接触し、写真フイルムを両面から挟持する2つのローラとを設け、前記2つのローラの内、少なくとも一方のローラを介して、前記写真フイルムに巻き込み負荷を与え、前記回転手段によりスプールを回転させて写真フイルムを巻き付けているときには、前記写真フイルムにテンションをかけて、写真フイルムに巻き込み負荷を掛けていることを特徴とする写真フイルム巻き込み装置」で両者の構成は一致し、次の点で両者の構成は相違する。

相違点(A):
本願補正発明は、回転手段をスプールに直結しているのに対して、引用例1記載の発明は、回転手段をトルクリミッターを介してスプールに連結している点。

相違点(B):
写真フィルムを両面から挟持する2つのローラが、本願補正発明は、写真フィルムの被写体が露光される画面を除く部分に接触するのに対して、引用例1記載の発明は、そのことについての記載が無い点。

相違点(C):
本願補正発明は、ブレーキ手段を設け、2つのローラの内少なくとも一方のローラを介して、20〜350グラムの範囲内で写真フィルムに巻き込み負荷を掛けているのに対して、引用例1記載の発明は、引用例1の段落〔0038〕の状態の時、2つのローラによって写真フィルムを挟持して、写真フィルムに巻き込み負荷を掛けているが、ブレーキが働いておらず、かつ「20〜350グラムの範囲内」の明示が無い点。

上記相違点について検討する。
相違点(A)について:
フィルムの巻き込みにおいて、回転手段をフィルム巻き込み部材に直結する点は周知技術(例えば、特開昭60-56761号公報、特開平1ー257937号公報、特開昭60-28641号公報、特開昭62-52537号公報、特開昭63-264738号公報、及び特開昭63-313139号公報参照。)であって、本願補正発明のように回転手段をスプールに直結するか、引用例1記載の発明のように、回転手段をトルクリミッターを介してスプールに連結するかは、当業者が必要に応じて適宜に採用しうる設計変更にすぎず、相違点(A)の本願補正発明の構成は格別な構成とは認められない。

相違点(B)について:
写真フィルムを両面から挟持する2つのローラが、写真フィルムの画面を除く部分に接触する点は、この出願前に公知(例えば、特開昭59-220734号公報参照。)である。
引用例1記載の発明のニップローラ(23,29)に、上記公知の点を採用して、相違点(B)の本願補正発明のような構成にすることに、格別の困難性は認められない。

相違点(C)について:
引用例1記載の発明のニップローラ(23,29)は、ブレーキ(25)が働いていない状態でも、写真フィルムにある程度の巻き込み負荷を掛けており、一種のブレーキ手段としての働きもしているものである。
そして、巻き込みに適した写真フィルムの巻き込み負荷は、スプールを回転させる回転手段の力の強弱等によっても変動するものであるので、本願補正発明の「20〜350グラムの範囲内」という点に臨界的意義は認められない。
したがって、相違点(C)の本願補正発明の構成は、引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易にできる設計変更にすぎないものと認める。

そして、前記相違点(A),(B),及び(C)における本願補正発明の構成による効果は、引用例1、及び特開昭59-220734号公報の記載と周知技術から予測される範囲のものである。

したがって、この補正は、特許法第17条の2第3項第2号の補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際、同法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができるものでなく、同法第17条の2第4項の規定において準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年12月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成13年5月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
相互に結合される2つの遮光性ケース部品からなり、写真フイルムを出し入れするための写真フイルム通路を有するパトローネ本体と、前記パトローネ本体に回転自在に収納され、写真フイルムが巻き付けられるスプールと、前記スプールの両端部に係合し、前記写真フイルムの側辺に当接するフランジと、前記写真フイルム通路を光密に覆う遮光部材とからなるパトローネの前記スプールを回転させることにより写真フイルムを巻き付け、未露光の写真フイルムを巻き込むための写真フイルム巻き込み装置において、
前記スプールに連結されスプールを写真フイルムの巻き込み方向に回転させるモータと、前記パトローネ本体外で写真フイルムを両面から挟持する2つのローラと、前記2つのローラの内、少なくとも一方のローラを介して写真フイルムに巻き込み負荷を与えるブレーキ手段とを設け、前記モータの回転によりスプールを回転して写真フイルムを巻き付けているときには、前記ブレーキ手段により、20〜350グラムの範囲内で写真フイルムに巻き込み負荷を与えるようにしたことを特徴とする写真フイルム巻き込み装置。」

(1)引用刊行物
原査定の拒絶理由に引用された、引用例1(特開平6-67348号公報)の記載事項は、上記と同様である。

前記記載事項と図面の記載からみて、引用例1には「相互に結合される2つの遮光性ケース部品からなり、写真フイルムを出し入れするための写真フイルム出入口を有するパトローネ本体と、前記パトローネ本体に回転自在に収納され、写真フイルムが巻き付けられるスプールと、前記スプールの両端部に係合し、前記写真フイルムの側辺に当接するフランジと、前記写真フイルム出入口を遮光するテレンプとからなるパトローネの前記スプールを回転させることにより写真フイルムを巻き付け、未露光の写真フイルムを巻き込むための写真フイルム巻き込み装置において、前記スプールに連結されスプールを写真フイルムの巻き込み方向に回転させるモータと、前記パトローネ本体外で写真フイルムを両面から挟持する2つのローラとを設け、前記モータの回転によりスプールを回転して写真フイルムを巻き付けるようにしたことを特徴とする写真フイルム巻き込み装置」が記載されている。

(2)対比
引用例1記載の発明のニップローラ(23,29)は、ブレーキ(25)が働いていない状態でも、写真フィルムにある程度の巻き込み負荷を与えているものであり、かつ、引用例1記載の発明における「写真フィルム出入口」、及び「遮光するテレンプ」は、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)における「写真フィルム通路」、及び「光密に覆う遮光部材」にそれぞれ相当するものであるので、本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、本願発明と引用例1記載の発明は「相互に結合される2つの遮光性ケース部品からなり、写真フイルムを出し入れするための写真フイルム通路を有するパトローネ本体と、前記パトローネ本体に回転自在に収納され、写真フイルムが巻き付けられるスプールと、前記スプールの両端部に係合し、前記写真フイルムの側辺に当接するフランジと、前記写真フイルム通路を光密に覆う遮光部材とからなるパトローネの前記スプールを回転させることにより写真フイルムを巻き付け、未露光の写真フイルムを巻き込むための写真フイルム巻き込み装置において、前記スプールに連結されスプールを写真フイルムの巻き込み方向に回転させるモータと、前記パトローネ本体外で写真フイルムを両面から挟持する2つのローラとを設け、前記2つのローラの内、少なくとも一方のローラを介して写真フイルムに巻き込み負荷を与え、前記モータの回転によりスプールを回転して写真フイルムを巻き付けているときには、写真フイルムに巻き込み負荷を与えるようにしたことを特徴とする写真フイルム巻き込み装置」で両者の構成は一致し、次の点で両者の構成は相違する。

相違点(D):
本願発明は、ブレーキ手段を設け、2つのローラの内少なくとも一方のローラを介して、20〜350グラムの範囲内で写真フィルムに巻き込み負荷を与えるのに対して、引用例1記載の発明は、引用例1の段落〔0038〕の状態の時、2つのローラによって写真フィルムを挟持して、写真フィルムに巻き込み負荷を与えているが、ブレーキが働いておらず、かつ「20〜350グラムの範囲内」の明示が無い点。

(3)判断
相違点(D)について
引用例1記載の発明のニップローラ(23,29)は、ブレーキ(25)が働いていない状態でも、写真フィルムにある程度の巻き込み負荷を与えており、一種のブレーキ手段としての働きもしているものである。
そして、巻き込みに適した写真フィルムの巻き込み負荷は、スプールを回転させるモータの力の強弱等によっても変動するものであるので、本願発明の「20〜350グラムの範囲内」という点に臨界的意義は認められない。
したがって、相違点(D)の本願発明の構成は、引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易にできる設計変更にすぎないものと認める。

そして、前記相違点(D)における本願発明の構成による効果は、引用例1の記載から予測される範囲のものである。

なお、平成14年10月11日付回答書で、審判請求人は「写真フィルムの巻き込み時に、写真フィルムが写真フィルム通路に当接しないような位置に設けられた、2つのローラ」を追加する補正案を提示しているが、前記「写真フィルムの巻き込み時に、写真フィルムが写真フィルム通路に当接しないような位置に設けられた、2つのローラ」は、当業者が設計上当然に考慮すべき技術事項にすぎず、格別な構成とは認められない。

(4)むすび
したがって、本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本願出願前に国内で頒布された引用例1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、本願特許請求の範囲の請求項2に係る発明の審理をするまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-28 
結審通知日 2003-01-30 
審決日 2003-02-14 
出願番号 特願平6-111215
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03C)
P 1 8・ 575- Z (G03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 勇江塚 政弘越河 勉川俣 洋史  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 柏崎 正男
青木 和夫
発明の名称 写真フイルム巻き込み装置  
代理人 小林 和憲  

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