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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1074576
審判番号 不服2001-10500  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-06-21 
確定日 2003-04-11 
事件の表示 平成11年特許願第276394号「写真自販機」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 4月13日出願公開、特開2001-100304]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (手続の経緯及び本願発明)
本願は、平成11年9月29日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1〜2に係る発明は、平成14年9月13日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1〜2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】被写体の写真を撮影して販売する写真自販機であって、上記被写体の全身を俯瞰撮影する第1のカメラと、被写体を略目の高さからアイレベルでバストアップ撮影する第2のカメラと、被写体の全身を仰視する第3のカメラが縦に並べて配置され、上記3台のカメラのうち撮影するカメラを順次切り換えるカメラ選択手段と、上記カメラで撮影された被写体の撮影画像を表示する画像表示手段と、上記撮影画像と他の画像を合成する画像合成手段と、上記画像合成手段で合成された合成画像を印刷する印刷手段とを備え、上記画像表示手段は、上記3台のカメラによる3種類のカメラアングルで撮影された被写体の全身俯瞰画像、バストアップ画像、全身仰視画像をそのつど入れ替えて表示するとともに各撮影画像をリアルタイム表示するようになっており、上記カメラ選択手段は、被写体が上記画像表示手段にリアルタイム表示される撮影画像を見ながら所望のカメラを選択して撮影を行い、このように撮影された撮影画像に対して合成される所望の文字や図形等を入力するタッチペンを備えていることを特徴とする写真自販機。」
(引用例)
これに対して、当審の拒絶の理由に引用した特開平11-234603号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下のような記載がある。
イ、被写体に対する角度が異なるように配置された複数の撮影手段と、該複数の撮影手段が撮影した画像をプリントするプリンタ手段とを有することを特徴とする映像プリント供給装置。(特許請求の範囲の請求項1)
ロ、前記複数の撮影手段が被写体を囲むように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の映像プリント供給装置。(特許請求の範囲の請求項6)
ハ、前記撮影手段が撮影した1つ又は複数の画像を表示する表示手段を有し、該表示手段上に前記複数の撮影手段が同時に撮影した画像を順次切り替えて表示することを特徴とする、請求項1に記載の映像プリント供給装置。(特許請求の範囲の請求項9)
ニ、カメラ配設部10には、図2に示すように、撮影手段としての5台のCCDカメラ11〜15が配置されている。(第3頁左欄第7〜9行)
ホ、図4は、本実施形態における制御系の構成を示すブロック図である。この図に示すように、5台のCCDカメラ11〜15は制御部40に接続され、映像信号を制御部40に送信する。・・・また、制御部40からは各カメラ・・・に制御信号が送られる。さらに、制御部40からは、表示すべき映像信号がモニタ2に送られ、プリントデータがプリンタ50に送られる。制御部40はパソコンに相当する構成とすることができ、CPU、ROM、RAMの他に入出力インターフェース等を備える。(第3頁左欄第31〜44行)
ヘ、ここで、モニタ画面2には、操作説明の表示の後、どれかのカメラが撮影している映像に切り替えて表示するように構成することもできる。また、モニタ画面2に表示する映像を映すカメラをユーザが指定する(切り替える)ようにしても良い。あるいは、5台のカメラ11〜15が現在撮影している映像を順番に切り替えてモニタ画面2に表示するようにしてもよい。(第3頁右欄第23〜29行)
ト、一方、モニタ画面2の表示も切り替えられ、モニタ画面2には、5台のカメラ11〜15により同時撮影された映像(静止画)が順番に所定の時間間隔で表示される。このモニタ画面2に順次表示される5つの映像は、被写体(ユーザ)を取り囲むように配置された5台のカメラ11〜15により同時に撮影された画像であり、すなわち、1つの被写体を同時に異なるカメラアングルで撮影した画像である。(第3頁右欄第41〜48行)
チ、1台から5台の任意の台数のカメラでの撮影をユーザが指定できるようにすれば、ユーザが好む画像だけをプリントすることが可能になる。また、その場合、台数の指定だけでなく、どのカメラで撮影(プリント)するかの指定もできることが良い。例えば、2台のカメラで撮影・プリントする場合、カメラ13と15を指定してやれば、正面と左側面の絵(被写体の画像)をプリントすることができる。また、カメラ12と14を指定してやれば、右斜め及び左斜めの絵を得ることができる。もちろん、3台、4台のカメラを指定した場合も同様である。(第4頁右欄第6〜16行)
リ、そして、タイトル文字や背景画像などの付加画像供給機能を内蔵し、撮影した画像との合成を可能に構成してやれば、本発明による疑似動画画像あるいは非現実画像に従来のプリントクラブと同様の背景画像をプラスして、更に面白い画像を供給することが可能となる。(第4頁右欄第24〜29行)
ヌ、本実施形態では、被写体の画像と背景画像(予め装置内に格納されているタイトル文字や図柄等)とを合成する場合、図示しない背景画像供給装置から供給される背景画像と各カメラが撮影する画像とを図示しない合成器により合成し、その合成された画像をモニタ・ディスプレイ2に表示する。もちろん、5台のカメラが撮影した画像をすべて一緒に背景画像と合成するわけではなく、順次各カメラの画像と背景画像とを合成するものである。合成の有無をユーザが指定できるようにしても良い。あるいは、合成に使用するカメラをユーザが指定するようにしても良い。この場合、本実施形態では最大5つの合成画像が得られることになる。
【0034】被写体であるユーザは、自分の画像と背景画像が合成されたモニター画面を、ハーフミラー8を介して視認することになる。そして、そのモニター画面を確認しながら、背景画像内における自分のポーズや構図を決定し、操作パネル3に設けられた撮影ボタン(図示せず)を押す。これによって5台のカメラが同時に撮影を実行し、前記実施形態と同様、撮影した5枚の画像(静止画)を順番に所定の時間間隔でモニタ・ディスプレイ2に表示する。(第5頁左欄第15〜35行)
ル、以上説明したように、本発明の映像プリント供給装置によれば、異なるカメラアングルで撮影した画像をプリントして供給することができるので、従来のものに比べて面白味のあるプリントを供給することができる。(第5頁右欄第12〜16行)
ヲ、請求項6の構成により、複数の撮影手段が被写体を囲むように配置されるので、被写体を様々な角度から撮影して被写体の多様な側面を撮影することができる。(第5頁右欄第31〜34行)
ワ、上記イ、〜ヲ、の記載からみて、引用例1には、被写体の写真を撮影して販売する映像プリント供給装置であって、上記被写体を撮影するCCDカメラ11〜15が横に並べて配置され、上記5台のカメラのうち撮影するカメラを順次切り換える制御部40と、上記カメラで撮影された被写体の撮影画像を表示するモニタ・ディスプレイ2と、上記撮影画像と他の画像を合成する合成器と、上記画像合成手段で合成された合成画像を印刷するプリンタ50とを備え、上記モニタ・ディスプレイ2は、上記5台のカメラによる5種類のカメラアングルで撮影された被写体の画像をそのつど入れ替えて表示するとともに各撮影画像をリアルタイム表示するようになっており、上記制御部40は、被写体が上記モニタ・ディスプレイ2にリアルタイム表示される撮影画像を見ながら所望のカメラを選択して撮影を行う映像プリント供給装置、が開示されている。
同じく引用した登録実用新案公報第3049553号(以下、「引用例2」という。)には、「2は正面モニタであって、該正面モニタ2は、前記予め登録された背景イメージから選択されたものと、内蔵CCDカメラによって映し出された被写体5の撮影像との合成映像を所定のフレーム枠内に表示するようになっており、」(第5頁第21〜23行)、「なお、本実施例では補助カメラ4の角度調整を左右方向について示したが、これに限定されるものではなく、アーム3を伸縮自在に構成して前後方向移動可能にすることも、上下方向に移動または首振り回動自在にして角度調整や高さ調整可能な構成にすることも任意である。」(第6頁第7〜10行)及び「撮影者5が横向きの顔を撮影したいときには操作部10に設けられた切換スイッチ等を操作することにより、この横顔撮影用に増設した補助カメラ4を主カメラと切換えて動作させることにより、正面モニタ2にその補助カメラからの撮影画像を表示させることができるから、従来の如く横目で正面モニタ2を確認したり、横を向いた際に映像がずれたり、また斜め横顔を撮影した際にも目線が合わず不自然となることもなくなり、背景イメージと自身の正面以外の横を向いたポーズとのマッチングを直視して確認することができる。」(第7頁第9〜16行)との記載がある。
同じく引用した特開平10-108112号公報(以下、「引用例3」という。)には、「撮像手段で撮像した動画を映像メモリに格納し、映像データとして映像表示手段に出力した後に、映像表示手段の画面に対して座標入力手段を直接操作することにより、データ書き込みをしたい位置に任意の静止画像データや図形データを入力することができる。また、座標入力装置の操作にて操作メニューを選択し、静止画像データを呼び出し、任意の位置にデータ書き込みを行うこともできるため、時間を要する例えばアニメやキャラクターデザインなどの複雑な図形データ書き込みも容易に行うことができる。」(第3頁左欄第27〜36行)及び「落書き画面45では、映像メモリ14に取り込まれた映像データに液晶タブレット5の座標入力装置(ペン)を用いて任意のデータ書き込みすると方法と、ハードディスク11にメモリされた静止画像データを貼り付けることでデータ書き込みする方法とがある。画面の左に表示されている「えんぴつ」を選択すると、ウインドウ45bに表示された映像データにフリーハンドによる任意の書き込みをすることができる。「スタンプ」を選択すると、画面下方に表示されている複雑なアニメやキャラクターデザインを図形化した画像45aをペンで選択して所望の位置に貼り付けることができる。」(第5頁左欄第31〜41行)との記載がある。
同じく引用した登録実用新案公報第3062192号(以下、「引用例4」という。)には、「カメラ2は、被写体10の頭部から足部までの全身を含む画像を撮影可能な視野を持っているが、この実施形態のカメラ2は操作兼画像表示パネル3からの指示操作に応じて移動枠2Aの中で 上下方向の所望の位置に移動可能に構成され、頭部方向から見下ろした被写体画像あるいは頭部方向を見上げた被写体画像を撮影可能に構成されている。」(第9頁第2〜6行)との記載がある。
(対比・判断)
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、後者の「映像プリント供給装置」、「CCDカメラ11〜15」、「制御部40」、「モニタ・ディスプレイ2」、「合成器」、「プリンタ50」は、夫々前者の「写真自販機」、「カメラ」、「カメラ選択手段」、「画像表示手段」、「画像合成手段」、「印刷手段」に相当するから、両者は、被写体の写真を撮影して販売する写真自販機であって、上記被写体を撮影する複数のカメラが並べて配置され、上記複数のカメラのうち撮影するカメラを順次切り換えるカメラ選択手段と、上記カメラで撮影された被写体の撮影画像を表示する画像表示手段と、上記撮影画像と他の画像を合成する画像合成手段と、上記画像合成手段で合成された合成画像を印刷する印刷手段とを備え、上記画像表示手段は、上記複数のカメラによる複数種類のカメラアングルで撮影された被写体の画像をそのつど入れ替えて表示するとともに各撮影画像をリアルタイム表示するようになっており、上記カメラ選択手段は、被写体が上記画像表示手段にリアルタイム表示される撮影画像を見ながら所望のカメラを選択して撮影を行う写真自販機、で一致し、
Aカメラの台数が、前者は、3台であるのに対して、後者は、5台である点、
Bカメラの並べ形が、前者は、縦であるのに対して、後者は、横である点、
C撮影される画像が、前者は、全身俯瞰画像、バストアップ画像、全身仰視画像であるのに対して、後者は、5種類のカメラアングルで撮影された被写体の画像である点、
D前者は、撮影画像に対して合成される所望の文字や図形等を入力するタッチペンを備えているのに対して、後者は、そのような記載が無い点で相違する。
そこで先ず、相違点Aについて検討すると、カメラの台数をどのぐらいにするかというようなことは、当業者が適宜決定できる単なる設計変更に過ぎない。
次に、相違点Bについて検討すると、一般に、カメラが複数台あるときに、それらを、どのように並べるかというようなことは、当業者が適宜決定できる設計的な事項に過ぎない。そして、引用例1には、カメラを横に並べることが開示され、「被写体に対する角度が異なるように配置された複数の撮影手段」(上記イ、)と記載されているから、当業者であれば、これらの開示および記載に基づいて、「横」から「縦」を推考するようなことは容易になし得ると言え、また、そのことによって格別顕著な作用効果が生ずるものでもない。
次に、相違点Cについて検討すると、一般に、通常のカメラで人物を撮影する際に、カメラアングルを選択し、全身俯瞰画像、バストアップ画像、全身仰視画像等を得られるように撮影する方法は、従来周知の手段に過ぎない。また、写真自販機の分野においても、被写体を撮影する際に、カメラアングルを選択するようなことは、従来周知(例えば、上記引用例2の補助カメラ4の角度調整や高さ調整が可能であり、上記引用例4のカメラ2は、頭部方向から見下ろした被写体画像あるいは頭部方向を見上げた被写体画像を撮影可能であり、特開平10-239760号公報には、「上記実施例では、カメラ32を垂直及び水平方向で首振りさせるとともに、昇降部49によりカメラ32の高さも調整したが、本発明はこれに限定されることなく、垂直及び水平方向での首振りのみや、カメラ32の高さ調整だけを行うようにしてもよい。更には、カメラ32の高さ調整と垂直方向又は水平方向での首振りとを行うようにしてもよい。」(第8欄第44〜50行)と記載され、特開平11-160785号公報には、「撮像手段3には、複数のCCDカメラ203a、203b、203c、203d、203eが用いられる。これらは異なる撮像角度を有し、被写体17を様々な角度から撮像する。」(第11欄第40〜44行)と記載され、図2からは、複数のCCDカメラ203a、203b、203c、203d、203eが、被写体17を下から撮像している様子が窺える。)の技術手段に過ぎない。
そして、上記相違点AおよびBの構成をとれば、当然に、相違点Cの構成が得られるものである。
最後に、相違点Dについて検討すると、引用例3に「ペン」を用いることが開示されている。
そして、引用例1と引用例3とは、技術分野が同じであるから、引用例1に引用例3に開示された技術を適用することは、当業者なら容易になし得ると言え、当該適用によって格別顕著な作用効果が生ずるものでもない。
(むすび)
以上のとおり、本願発明は、引用例1、引用例3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-24 
結審通知日 2003-02-04 
審決日 2003-02-17 
出願番号 特願平11-276394
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司越河 勉  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 國島 明弘
柏崎 正男
発明の名称 写真自販機  
代理人 森本 直之  

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