ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03D |
---|---|
管理番号 | 1074663 |
審判番号 | 不服2002-7040 |
総通号数 | 41 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-02-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-04-23 |
確定日 | 2003-04-10 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第193477号「写真感光材料乾燥装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 2月14日出願公開、特開平 9- 43824]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年7月28日に出願されたものであって、本願の請求項1に係る発明は、平成14年3月5日付け手続補正書、平成15年1月22日付け手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 一方の面のみに乳剤面が形成された写真感光材料を搬送するために少なくとも1か所の湾曲する搬送経路を有する写真感光材料乾燥装置であって、 前記湾曲する搬送経路が上方に向かって凸であり、かつ前記乳剤面が内側を向くターン部の内側に、当該ターン部を通過する写真感光材料に熱風を供給するための熱風供給手段が設けられ、 前記写真感光材料よりも外側にローラおよびガイドが設けられ、 前記ローラおよびガイドよりも外側に前記熱風供給手段から供給された熱風を吸い込むための熱風吸込手段が設けられており、 さらに前記湾曲する搬送経路を囲むように、前記熱風吸込手段の吸込み口に前記熱風を案内するためのフードが取り付けられてなることを特徴とする写真感光材料乾燥装置。」 (なお、本願明細書について、平成14年5月1日付けで手続補正がなされたが、これは平成14年12月3日付けで却下されたので、本願発明は上記のとおり認定した。) 【2】引用例 1.これに対して、当審における、平成14年12月24日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願の日前の昭和44年7月14日に頒布された刊行物である特公昭44-15876号公報(以下、「引用例1」という。)には、 (a)「従来、・・・製品品質、写真性能等の問題を伴なつた。本発明の目的は製品品質の良好なる感光材料を得ること、乾燥速度の大なること、・・・の塗布乾燥方式を得ることにある。」(第1欄第21〜33行) (b)「本発明の一実施例を図に示す。図面中1は可撓性支持体、・・・5は第2塗布部、6は第2乾燥部、・・・8は空気室、9は排気室、・・・11は案内ロールを示す。矢印は可撓性支持体および空気の進行方向を示す。・・・第1乾燥部4は特願昭39-13504号に示す如き乾燥方法を行なう乾燥部材より成り、塗布層面を乾燥させる。すなわち溶剤含有塗布層面に空気室8より多孔板または細隙板を通して垂直または適当な角度をもつて乾燥空気を吹きつけ、この空気の風圧により空気室壁面と塗布層面とが接触しないようにすると同時に、乾燥用空気吹きつけ面の反対側を案内ロールにより支持し、ロール支持方向変換点に設けられた適当なる張力調節機構により可撓性支持体への張力を調節しつつ、該支持体を蛇行状に搬送させ乾燥させる。」(第1欄第34行〜第2欄第13行) (c)「この乾燥方式においては、支持体搬送方向変換点の一方をロール支持方向変換、他方を空気支持方向変換となし、未乾燥状態の溶剤含有塗布剤の塗布された面を固体面に全く接触することなく搬送するために、ロール支持方向変換点に設けられたトルクモーター等の適当な張力調節機構によつて、可撓性支持体への張力を乾燥用空気の吹きつけによる可撓性支持体面に与えられる風圧による力とつりあうように調節し、反対側空気支持方向変換点における空気支持が発生原因となる可撓性支持体の切断故障に到る搬送片寄りを乾燥用吹きつけ面の反対側に配装した案内ロールとの摩擦により防止する。このようにして第1乾燥部を通過し乾燥させられた可撓性支持体は次に第2塗布部において適当な方法によつて、第1塗布部で塗布された面の反対面に溶剤含有塗布剤を塗布される塗布された支持体は第2乾燥部に入る。 第2乾燥部の構造は第1乾燥部を上下転倒した構造をもつたもので、乾燥空気の風圧および張力調整も前記同様の考え方に基づいて調整される。第2塗布部において塗布された溶剤含有塗布層は第2乾燥部において乾燥され、結果として両面塗布された可撓性支持体が捲取部に捲取られることになる。」(第2欄第18行〜第3欄第2行) (d)「本発明による第1の効果は・・・第3に、空気支持可撓性支持体搬送における搬送の不安定片寄りを、本発明によるロール支持方向変換点における張力調節機構の設置および乾燥用空気吹きつけ面の反対側を案内ロールで支持させることにより解決した。そしてまたこの塗布乾燥方式は乾燥空気の吹き付速度と支持体の張力、そして乾燥空気温度の適当な選定等により垂れ式乾燥方式において問題となるカーリングによる折れの発生を全く生じないようにすることが可能であり塗布面が未乾の状態でロールと接触することなく両面に塗布層を設けることができるので、スリ傷、カキ傷等の発生を少なくすることができる。」 (第3欄第3〜28行) (e)「発明は片面塗布装置のブロツクが2つで両面塗布するので片面塗布のみで製僅とする感光材料の製造には1ブロツクずつ別々に働らかせ、2基の装置として能率的に働らかせることができる。」(第3欄末行〜第4欄第4行) (f)「実施例 図面に示した如き、前記説明の構成からなる塗布乾燥方式によつて、・・・乾燥空気温度20〜40℃の条件でレントゲン用フイルム、ロールフイルム、印刷用フイルムの両面連続塗布乾燥を行なつた。」 (g)「特許請求の範囲 1 可撓性支持体の両面に塗布層を有する感光材料製造において、可撓性支持体面に乾燥用空気を吹きつけ、この風圧により乾燥用空気吹き出し装置と塗布層面とが接触しないようにすると同時に乾燥用空気吹きつけ面の反対側を案内ロールにより支持せしめ、方向変換点に設けられた適当なる張力調節機構により可撓性支持体への張力を調節しつつ、該支持体を蛇行状に搬送する部材と該部材を上下転倒させた部材と塗布装置を適宜配設して直列に連接させ、反転機構を用いることなく、両面塗布乾燥させることを特徴とする両面塗布乾燥方式。」(第4欄特許請求の範囲の項) の記載があり、また、上記(b)、(g)および図面の記載からみて、第2乾燥部6において、感光材料(可撓性支持体)を蛇行状に搬送する部材が記載されており、該部材は上方に向かって凸である複数の湾曲する搬送経路が記載され、また、図面の第2塗布部5においては、搬送される感光材料は一方の面のみに溶剤含有塗布層面が形成されていると認められるから、これらの記載及び図面等を参照すると、 引用例1には、 「一方の面のみに溶剤含有塗布層面が形成された感光材料を搬送するために複数の湾曲する搬送経路を有する感光材料乾燥装置であって、 前記湾曲する搬送経路が上方に向かって凸であり、かつ前記溶剤含有塗布層面が内側を向く支持体搬送方向変換点の内側に、当該支持体搬送方向変換点を通過する感光材料に乾燥空気を吹きつけるための乾燥用空気吹き出し装置が設けられ、 前記感光材料よりも外側に案内ロール11が設けられている、 ことを特徴とする感光材料乾燥装置。」の発明(以下、「引用発明」という。) が開示されているものと認める。 2.また、同じく、平成1年8月29日に頒布された刊行物である特開平1-214857号公報(以下、「引用例2」という)には、 「この連通口28付近には乾燥部14内に搬送ローラ32が一対設けられて感光材料Pを挟持した後に一対の搬送ローラ34へと送り出すようになっている。これらの搬送ローラ32、搬送ローラ34間にはガイド板36が設けられ、水平方向に送り出された感光材料Pを垂直下方へと方向転換させるようになっている。」(第2頁右上欄第2〜8行) と記載されている。 3.また、同じく、平成6年10月18日に頒布された刊行物である特開平6-289571号公報(以下、「引用例3」という)には、 「【0033】図中16a,16bはフィルムガイド体であって、フィルムガイド体16a,16bの内面側に平坦なガイド面17a,17bを有し、フィルムガイド体16a,16bの下端側にはカール取りローラー5a,5bの外形の一部と合致する曲成部18a,18bが形成されている。フィルムガイド体16a,16bは、上下に位置する上下のカール取りローラー5a,5b間に相対向して配設されており、フィルムガイド体16a,16b間にフィルムガイド路18が形成されている。」(第5欄段落番号0033) と記載されている。 4.また、同じく、平成6年12月22日に頒布された刊行物である特開平6-347976号公報(以下、「引用例4」という)には、 「【請求項2】 ローラーとターンガイドの組み合わせにより感光材料の搬送方向を変える機構を備えた連続現像処理装置において、該ターンガイドの感光材料進行方向の後端部を平面形状とすることを特徴とする現像処理装置。 【請求項3】 ローラーとターンガイドの組み合わせにより感光材料の搬送方向を変える機構を備えた連続現像処理装置において、該ターンガイドの感光材料進行方向の後端部を搬送曲面とは逆に屈曲させたことを特徴とする現像処理装置。」(特許請求の範囲の請求項2〜3) と記載されている。 5.また、同じく、昭和61年1月29日に頒布された刊行物である実願昭59-101592号(実開昭61-15498号)のマイクロフィルム(以下、「引用例5」という)には、 「フード室5の上部にはラッパ状に形成された熱風捕集フード3が設けられ、該熱風捕集フード3内の上部には吸引ファン6が配設されている。」(第4頁第15〜18行) 「乾燥炉1の運転に伴い炉内の熱風が図示矢印Aの如く入口および出口の上部から漏出しようとすると、該熱風は吸引ファン6の吸引作用によって熱風捕集フード3内に捕集される。」(第5頁第6〜9行) と記載されている。 6.また、同じく、平成1年7月4日に頒布された刊行物である実願昭62-194805号(実開平1-99470号)のマイクロフィルム(以下、「引用例6」という)には、 「19は、炉本体4の搬入口2の上方に連設されて炉内から洩れ出す熱風を排気ファン20で吸引排出する排気フードである。」(第8頁下から第2行〜第9頁第1行) と記載されている。 7.また、同じく、平成7年3月3日に頒布された刊行物である特開平7-55346号公報(以下、「引用例7」という)には、 「【0020】一方、炉体1の物品入口2および物品出口3の上方近傍にフード13,13が被せられ、このフード13,13には排気筒14が接続される。排気筒14には必要に応じて排気ファン15が設けられる。」(第3欄第42〜45行) と記載されている。 【3】対比・判断 1.本願発明と引用発明とを対比するに、後者の「溶剤含有塗布層面」、「感光材料」、「複数の湾曲する搬送経路」、「支持体搬送方向変換点」、「乾燥空気」、「吹きつける」、「乾燥用空気吹き出し装置」、「案内ロール11」が、それぞれ、その機能に照らして、前者の「乳剤面」、「写真感光材料」、「少なくとも1か所の湾曲する搬送経路」、「ターン部」、「熱風」、「供給する」、「熱風供給手段」、「ローラ」に相当するから、両者は、 「一方の面のみに乳剤面が形成された写真感光材料を搬送するために少なくとも1か所の湾曲する搬送経路を有する写真感光材料乾燥装置であって、 前記湾曲する搬送経路が上方に向かって凸であり、かつ前記乳剤面が内側を向くターン部の内側に、前記写真感光材料に熱風を供給するための熱風供給手段が設けられ、 前記写真感光材料よりも外側にローラが設けられ、 てなることを特徴とする写真感光材料乾燥装置。」の点で一致し、次の点で相違する。 (1)相違点1 熱風供給手段について、本願発明は、ターン部の内側に設けられているのに対して、引用発明では、搬送経路内の内側全体に乾燥空気(本願発明の熱風に相当する。)を供給するように設けることが開示されているのみであって、設置場所については特に限定して記載されていない点。 (2)相違点2 本願発明は、ガイドが設けられているのに対して、引用発明では、特に記載されていない点。 (3)相違点3 本願発明は、前記湾曲する搬送経路を囲むように、吸込み口に前記熱風を案内するためのフードが取り付けられた熱風吸込手段を有しているのに対して、引用発明では、特に記載されていない点。 2.そこで、これらの相違点について検討する。 (1)相違点1について 本願発明および引用発明ともにターン部を含む搬送経路の内側に熱風供給手段が設けられている点で同一であり、該熱風供給手段を搬送経路内のどの部分に設けるかについては、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計事項であると認められ、本願発明のようにターン部の内側に熱風供給手段を設けることは、当業者にとっては容易に成し得るものと認められる。 なお、本願の出願当初の明細書には、「【0013】熱風供給手段2は、ターン部Tの内側からターン部Tを通過する感光材料5へ熱風を当てることができるものであればいかなるものでもよく、たとえば送風機の吹出口にヒータを取り付けたものなどが採用される。また、適宜の位置に取り付けられたヒータおよび送風機によって発生された熱風をダクトを通してターン部Tを含む搬送経路1のほぼ全長にわたって感光材料5に熱風を当てることができるようにしたものでもよい。・・・」(段落番号0013)と記載されている。 なお、出願人代理人は、平成15年1月22日付け意見書で「引用文献1においては、上向きに凸となる支持体の内側全体に亘る空気室8を設けており、この空気室8の壁の孔または細隙から乾燥空気を支持体に供給するようにしておりますが、この方式は支持体に満遍なく乾燥空気を吹きつけて乾燥速度を上昇させることを目的としており、本願発明のように湾曲部における感光材料のたるみを防いで当該感光材料を正確に経路に沿って搬送させることを意図したものではありません。」(第2頁)と述べているが、湾曲部以外に熱風を供給していないため、本願発明における湾曲部以外の搬送経路において、正確に経路に沿って搬送させることができるのかどうか、また、湾曲部以外の搬送経路においてキズを与えないようにできるのかどうかについては、請求項1に係る発明の構成からは不明であり、上記出願人代理人が主張する本願発明の効果は極めて限定的なものと言わざるを得ない。 (2)相違点2について 一般的に、感光材料等のシート状物を搬送する装置において、該シート状物を搬送経路に沿って正確に搬送する際、ローラとともにガイドを設けることは、本願出願前周知の技術であり(例えば、引用例2〜4参照)、引用発明においても、ローラの他にガイドを設けることを阻害する格別の理由もないと考えられるから、引用発明において、上記周知の技術を適用し本願発明の構成とすることに格別の困難性はなく、当業者であれば容易に想到し得たものとするのが相当である。 (3)相違点3について 一般的に、排気装置において、排気したい気体が存在する箇所の排気効率を高めるために吸込み口に前記排気気体を案内するためのフードが取り付けられた排気気体吸込手段を設けることは、本願出願前周知の技術であり(例えば、引用例5〜7参照)、引用発明においても、排気したい熱風(引用発明の乾燥空気に相当する。)が存在する箇所である湾曲する搬送経路を囲むように吸込み口に前記熱風を案内するためのフードが取り付けられた熱風吸込手段を設けることを阻害する格別の理由もないと考えられるから、引用発明において、上記周知の技術を適用し本願発明の構成とすることに格別の困難性はなく、当業者であれば容易に想到し得たものとするのが相当である。 3.作用効果について 結局、前記各相違点は、格別のものではなく、また、前記各相違点を総合的に検討しても奏される効果は当業者が予測できる範囲内のものと認められる。 【4】むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、本願出願前に頒布された各刊行物に記載された発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-02-07 |
結審通知日 | 2003-02-12 |
審決日 | 2003-02-25 |
出願番号 | 特願平7-193477 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 星野 浩一 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
國島 明弘 青木 和夫 |
発明の名称 | 写真感光材料乾燥装置 |
代理人 | 佐木 啓二 |
代理人 | 朝日奈 宗太 |