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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F16H
管理番号 1074871
異議申立番号 異議2002-73154  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-11-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-27 
確定日 2003-04-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第3300941号「リニアアクチュエータ」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3300941号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3300941号の請求項1及び2に係る発明は、平成11年4月21日に特許出願され、平成14年4月26日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人・株式会社ミツバ(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立ての理由の概要
申立人は、請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証(特開平7-174204号公報)及び甲第2号証(特開昭62-21894号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきである旨、主張している。

3.本件の請求項1及び2に係る発明
本件の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」「本件発明2」という。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定される下記のとおりのものである。

【請求項1】
固定筒内部に駆動筒が配され、前記固定筒の内部にネジ軸が回転自在で、かつ、軸方向に移動しないように配され、前記ネジ軸をモータによって回転させることにより、このネジ軸と螺合しているナットとこのナットに保持されている前記駆動筒とが軸方向に移動するリニアアクチュエータであって、
前記ナットの外周部に突出部を設け、
前記モータをON状態またはOFF状態にする第1リミットスイッチと第2リミットスイッチとを設け、
前記固定筒内部に軸方向に沿って移動自在にスイッチロッドを配し、
前記スイッチロッドの一端部に第1停止部を配し、
前記スイッチロッドの他端部に第2停止部を配し、
前記スイッチロッドの両端の間に作動片を設け、
前記ナットの突出部が前記スイッチロッドの第1停止部を押圧させることにより、前記スイッチロッドの作動片が移動して前記第1リミットスイッチを動作させて、前記駆動筒が前記固定筒から最も突出した状態で停止させ、
前記ナットの突出部が前記スイッチロッドの第1停止部と第2停止部の間を移動するときは、前記スイッチロッドの作動片が移動せず、
前記ナットの突出部が前記スイッチロッドの第2停止部を押圧させることにより、前記スイッチロッドの作動片が移動して前記第2リミットスイッチを動作させて、前記駆動筒が前記固定筒内部に最も収納された状態で停止させる
ことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記固定筒内部に軸方向に沿ってスライド溝を設け、このスライド溝に沿って前記スイッチロッドが軸方向のみに移動自在にした
ことを特徴とする請求項1記載のリニアアクチュエータ。

4.甲号証に記載された発明
申立人が証拠として提示した甲第1号証及び甲第2号証には、それぞれ以下のような発明が記載されている。

(1)甲第1号証:特開平7-174204号公報

(イ)「【発明の要約】本願発明は、上記した基本的な問題を解決し、駆動ナットを有効に停止させようとうるものであり、駆動ロッドのためのチューブ状保護ハウジング内の内部突起が限界位置にあるナットのキャッチを構成する一方、上記チューブ状保護ハウジングの一端がスイッチを操作するように構成される。」(段落【0005】)
(ロ)「一方の限界位置にある上記ナットが上記駆動部2に対して完全に引かれると、このナットは上記バネ・クリップ9を押し、そしてこれにより上記保護チューブ6を引っ張る。上記ロックリング13が上記コイルバネ16に弾接するとともにこれを幾分圧縮する一方、上記チューブ全体が上記駆動部2に向かって動き、まず上記面取り部Bが、次いで上記チューブの外表面が上記マイクロ・スイッチ20のボタン19に係合させられる。これにより直接的にあるいは電子回路を介してモータ電流が遮断され、この瞬間から上記モータを反対方向に回転するべく活動化することのみが可能となる。上記の動きの最初の部分の間、上記保護チューブは駆動状態に戻り、上記ロックリングは上記二つのコイルバネの間に位置することになる。」(段落【0011】)
(ハ)「もう一方の限界位置では、上記駆動ナット4が上記ポリマー製ブッシュ8を押し、このことが上記保護チューブを上記ロックリング13が上記コイルバネ15を幾分圧縮するように引き、これにより、上記保護チューブ6の表面および引き続いて上記面取り部Bが上記マイクロ・スイッチ17のボタン18に対する係合状態から離脱し、モータ電流を直接的にまたは間接的に遮断させる。可能な方向のみへの即座の反転の後、上記保護チューブは上記コイルバネ15によって駆動状態に押し戻され、上記マイクロ・スイッチの接触は、それらの駆動状態を回復する。」(段落【0012】)

(2)甲第2号証:特開昭62-21894号公報

(ニ)「ボールナット16は、最終的にカラー48と係合して棒28をボールねじ14の軸に平行に電動機12から離すように押すまで電動機12から離れて行く。その結果、手段52がスイッチ50から外れてスイッチ50の状態が変化する。これによってスイッチ50は電動機12に印加される電圧の極性を反転させるので、ボールねじ14の回転方向及びボールナット16の線運動の方向が反転する。ボールナット16は電動機12に向って線形に運動を開始し、ストップカラー46に係合して手段52をスイッチ50に向って押すと全プロセスが反転される。ボールナット16の線形往復運動はシャフト35及びシャワーヘッドに伝達される。シャフトの動程及びその振動の振幅はストップカラー46及び48の位置によって制御される。」(第5ページ右上欄第8行乃至左下欄第3行)

5.対比、判断
(1)本件発明1について

本件発明1と上記甲第1号証に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、引用発明の「駆動ナット4」が本件発明1の「ナット」に相当し、以下同様に、「バネ・クリップ9」が「第1停止部」に、「マイクロ・スイッチ20」が「第1リミットスイッチ」に、「ポリマー製ブッシュ8」が「第2停止部」に、「マイクロ・スイッチ17」が「第2リミットスイッチ」に、それぞれ相当すると認められる。
そして、便宜上、引用発明の「チューブ状保護ハウジング」も、本件発明1の「スイッチロッド」も、共に「スイッチ部材」であり、スイッチ部材上の、スイッチを動かす部分を「作動部」と考えると、一致点及び相違点は、以下のようになる

一致点
「固定筒内部に駆動筒が配され、前記固定筒の内部にネジ軸が回転自在で、かつ、軸方向に移動しないように配され、前記ネジ軸をモータによって回転させることにより、このネジ軸と螺合しているナットとこのナットに保持されている前記駆動筒とが軸方向に移動するリニアアクチュエータであって、
前記ナットの外周部に突出部を設け、
前記モータをON状態またはOFF状態にする第1リミットスイッチと第2リミットスイッチとを設け、
前記固定筒内部に軸方向に沿って移動自在なスイッチ部材を配し、
前記スイッチ部材の一端部に第1停止部を配し、
前記スイッチ部材の他端部に第2停止部を配し、
前記スイッチ部材に作動部を設け、
前記ナットの突出部が前記スイッチ部材の第1停止部を押圧させることにより、前記スイッチ部材の作動部が移動して前記第1リミットスイッチを動作させて、前記駆動筒が前記固定筒から最も突出した状態で停止させ、
前記ナットの突出部が前記移動自在な部材の第1停止部と第2停止部の間を移動するときは、前記スイッチ部材の作動部が移動せず、
前記ナットの突出部が前記移動自在な部材の第2停止部を押圧させることにより、前記スイッチ部材の作動部が移動して前記第2リミットスイッチを動作させて、前記駆動筒が前記固定筒内部に最も収納された状態で停止させる
ことを特徴とするリニアアクチュエータ。

相違点1
「スイッチ部材」が、本件発明1は「スイッチロッド」であるのに対し、引用発明は「チューブ状保護ハウジング」である点。

相違点2
「作動部」が、本件発明1では「スイッチロッド」の「両端の間」に設けられた「作動片」であるのに対し、引用発明は、「チューブ状保護ハウジング」の一端側の「面取り部B」及び「チューブの外表面」である点。

次に、相違点について検討する。

相違点1について
スイッチを作動させるための部材をロッド状とすることは、甲第2号証に「棒28」として記載されていて、本願出願時点で公知の技術手段である。そして、甲第1、2号証ともリニアアクチュエータという同一の技術分野に属するものであることを考慮すると、甲第2号証によって公知である前述の技術手段を引用発明に適用して、引用発明の「チューブ状保護ハウジング」を「スイッチロッド」に置き換えることは、当業者にとって格別困難なことではないと認められる。

相違点2について
甲第2号証に記載された、アクチュエータのストローク限界でスイッチの状態を変化させる部分である「手段52」は、前述のスイッチ部材に相当する「棒28」上に存在するものの、「ストップカラー46及び48」の間に位置していない。つまり、甲第2号証に記載された「手段52」の位置が、本件発明1のスイッチロッドの「両端の間」に相当する位置ではない。

そして、甲第2号証に記載されたものでは、引用発明と同様、アクチュエータの短縮限界で動くスイッチ部材の端周辺にスイッチを配置することが必須となり、設計上想定できる配置形態が制限される結果、スイッチ回りを、アクチュエータの移動方向に短く設計することが困難であり、「多種多様のストローク仕様にも容易に対応することができる」効果や「軸周りがコンパクトになる」効果(本件明細書の段落【0027】の記載を参照。)を期待できない。よって、本件発明1の相違点2に係る事項が、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に導き出させたとすることができない。

結局、本件発明1が、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。

(2)本件発明2について
本件発明2と、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本件発明2は本件発明1の構成を具備し、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2が、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-03-17 
出願番号 特願平11-113136
審決分類 P 1 652・ 121- Y (F16H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 内田 博之
秋月 均
登録日 2002-04-26 
登録番号 特許第3300941号(P3300941)
権利者 日本電産シバウラ株式会社
発明の名称 リニアアクチュエータ  
代理人 梶原 辰也  

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