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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C10M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C10M
管理番号 1074893
異議申立番号 異議2002-71653  
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-05 
確定日 2003-04-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第3244996号「水溶性金属加工用油剤」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3244996号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3244996号の請求項1に係る発明は、平成7年2月24日に特許出願され、平成13年10月26日にその特許権の設定登録がなされ、その後、ビー・ピー・ジャパン株式会社(以下、申立人1という。)、足立泰守(以下、申立人2という。)及び片山誠(以下、申立人3という。)より特許異議が申立てがなされたものである。

2.特許異議申立てについての判断
(1)本件発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 油剤100重量部中に、下記の一般式で表されるポリオキシアルキレングリコール0.1〜80重量部及び炭素数6〜10のモノカルボン酸及び/又はジカルボン酸1〜25重量部を含有する油剤であって、
HO-(CH2CHO)a-(CH2CH2O)b-(CH2CHO)c-H
| |
CH3 CH3
(但し、上記式中a,b及びcは1以上の整数である。)
上記ポリオキシアルキレングリコールの分子量が500〜30000であり、且つ下記の方法によって測定したその水溶液の曇点が5〜60℃であることを特徴とする水溶性金属加工用油剤。
曇点の測定方法:上記ポリオキシアルキレングリコールの1重量%水溶液を調製し、その調製液を加熱し、目視により白濁を確認した温度を曇点とする。」

(2)特許異議の申立ての理由の概要
(2-1)申立人1は、証拠として、下記の甲第1〜7号証を提示して、(ア)本件発明は、甲第7号証を参照すれば、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである、(イ)本件発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と主張している。
甲第1号証:米国特許第3,374,171号明細書(以下、「甲号証a 」という。)
甲第2号証:米国特許第4,452,712号明細書(以下、「甲号証b 」という。)
甲第3号証:米国特許第4,670,168号明細書(以下、「甲号証c 」という。)
甲第4号証:米国特許第5,354,835号明細書(以下、「甲号証d 」という。)
甲第5号証:米国特許第2,825,693号明細書(以下、「甲号証e 」という。)
甲第6号証:米国特許第4,927,550号明細書(以下、「甲号証f 」という。)
甲第7号証: BASFの発行した技術情報紙(以下、「甲号証g」とい う。)

(2-2)申立人2は、証拠として、下記の甲第1号証及び甲第2号証を提示して、(ウ)本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と主張している。
甲第1号証:特公昭40-14480号公報(以下、「甲号証h」という 。)
甲第2号証:BASF社の技術資料「界面活性剤」BC.1987(以下 、「甲号証i」という。)

(2-3)申立人3は、証拠として、下記の甲第1〜4号証及び参考資料1、2を提示して、(エ)本件発明は、参考資料1、2を参照すれば、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである、(オ)本件発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と主張している。
甲第1号証:特開平7-316581号公報(以下、「甲号証j」という 。)
甲第2号証:米国特許第4,452,711号明細書(以下、「甲号証k 」という。)
甲第3号証:BASF社のカタログ、1991、BASFコーポレーショ ン(以下、「甲号証l」という。)
甲第4号証:「潤滑」第25巻第3号(1980)145〜151頁(以 下、「甲号証m」という。)
参考資料1:青木樹脂工業株式会社製品のデータシート及び試験成績表
参考資料2:青木樹脂工業株式会社製品のカタログ

(3)甲号各証等の記載内容
甲号証a(米国特許第3,374,171号明細書)には、その抄訳を参照すれば、「請求項1 大量の水と約5から約40重量%の水溶性アルカノールアミンと、1分子中に約6個から約9個の炭素原子を持ち、直鎖有機酸及び分枝有機酸からなる群から選ばれた約0.1から約9重量%の飽和有機酸と、約0.5から約20重量%の水溶性ポリオキシアルキレングリコールとを含む潤滑剤組成物。」(第9欄64行-73行)、「開示の要約・・・
この組成物は金属の機械加工作業における切削用液体としてとくに有用である。」(第1欄15-20行)、「・・・有機酸成分は、・・・1分子あたり約1から約5個の炭素原子を持った比較的低い分子量の酸は、錆防止剤として満足に機能しないし、・・・1分子中に約9個以上の炭素原子を持った酸を用いると、硬水安定性が悪く、腐蝕防止機能が低下し、高い発泡傾向を結果として生じる。・・・上記の水溶性アルカノールアミン及び飽和有機酸と組み合わせて、荷重支持剤として水溶性ボリオキシアルキレングリコールが使用される。このタイプの好ましい化合物は、エチレンオキサイドとプロビレンオキサイドとの混合物を共重合させることによって得られる・・・例えばエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの・・・実質的に無秩序に分散しているものであり、また・・・ブロック共重合体からなる重合体である。・・・」(第2欄10行-第3欄19行)と記載されている。

甲号証b(米国特許第4,452,712号明細書)には、その抄訳を参照すれば、「請求項1 (a)(1)1個のポリオキシエチレン鎖と、そのポリオキシエチレン鎖に結合している2個のポリオキシプロピレン鎖とを含むポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体混合物で、混合物中のポリオキシプロピレン鎖の平均分子量が少なくとも900であり、混合物中のポリオキシエチレン鎖が混合物の約10〜80重量%を構成している約1.0〜20重量%水溶性混合物と、(2)一般式CmH2m-n-r+2(COOH)rで示される約0.5〜10重量%の水溶性力ルボン酸と、(ここで、mは11から36までの整数であり、n=0、2、4又は6であり、r=1又は2である)(3)約0.5〜10重量%の水溶性アルカノールアミンと、(4)水とからなる合成潤滑剤組成物の水溶液を金属対象物に塗布する工程と、(b)金属対象物上で金属加工操作を行う工程とからなる金属加工方法。」(第9欄43行-66行)、「この発明の背景 この発明は、アルミニウム及びアルミニウム合金の冷間圧延及び熱間圧延のような金属加工作業・・・で使用する水溶性潤滑剤組成物に関するものである。」(第1欄8行-12行)、具体例として、
「実施例 成分 含有量(重量%)
1 ポリオキシプロピレン・ポリオキ 10
シエチレン・ポリオキシプロピレ
ンブロック共重合体の混合物で、
ポリオキシプロピレン鎖の平均分
子量は約1700で、ポリオキシ
エチレン鎖が混合物の約20重量
%を構成するもの(プルロニック
17R2)
オレイン酸 2
トリエタノールアミン 1.6
非珪素樹脂の消泡剤(MAZU 50〜100ppm
DF2502)
水 残余部分
・・・
4 ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン- 5
ポリオキシプロピレンブロックコポリマー混
合物 ポリオキシプロピレン鎖平均分子量が
約2500、ポリオキシエチレン鎖が混合物の約4
0%を構成する(プルロニック 25R4)
ラウリン酸 1
エチルジイソプロパノールアミン 2
ポリエチレングリコール(1000)ジオレアート 1
非シリコン消泡剤 50〜100ppm
(MAZU DF 2502)
水 残余」(第6欄)
と記載されている。

甲号証c(米国特許第4,670,168号明細書)には、その抄訳を参照すれば、「この発明は、切削、研削、旋削、フライス削り及びドリルを含む種々の金属加工作業において、潤滑剤及び冷却剤として使用するに適した組成物の水溶液に関するものである。」(第1欄5行-8行)、「請求項1 (a)ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ランダム又はブロックポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体又はそれらの混合物から選ばれた2〜20重量%の水溶性ポリグリコールと、(b)-般式
R-CH-COOM R-CH-COOM
| 又は |
CH2-COOM CH2-COOH
で表わされる中和され又は一部中和されたアルキル又はアルケニルコハク酸約0.6〜12重量%と、(c)水とからなることを特徴とする、水溶性の金属加工用組成物。
但しRは直鎖又は分枝鎖で飽和又は不飽和のC5〜C18基でMはK、Na又はLiである。」(第4欄末行-第5欄18行)、「請求項4 上記ポリグリコールが、1個のポリオキシエチレン鎖と、そのポリオキシエチレン鎖に結合された2個のポリオキシプロピレン鎖とを含んだポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体の混合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。」(第5欄26行-30行)、実施例において、
「具体例 成分 含有量(重量%) A. ポリオキシプロピレン・ポリオキシ 5.0
エチレン・ポリオキシプロピレン
ブロック共重合体混合物、ポリオキシ
プロピレン鎖の分子量=1700、
ポリオキシエチレン鎖は混合物の約
20重量%
(プルロニック17R2)
2-ドデセニルコハク酸 5.0
KOH 1.8
水 88.2」(第4欄)と記載されている。

甲号証d(米国特許第5,354,835号明細書)には、その抄訳を参照すれば、塩分除去法に関してプルロニック25R-2の1%水溶液の曇点が29℃であることが記載されている(第7欄表1参照)。

甲号証e(米国特許第2,825,693号明細書)には、その抄訳を参照すれば、「請求項1 (1)ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン化合物のブロック共重合体で、その構造中に疎水性のオキシプロピレン基と、親水性のオキシエチレン基と、反応性の水素原子を持った有機物に由来する有機遊離基とを持ったものであって、上記化合物はオキシプロピレン基がすべて反応性水素原子の場所で有機遊離基に結合しているポリオキシプロピレン鎖の中に存在しており、それによって疎水性ポリオキシプロピレン重合体を構成しており、オキシエチレン基はポリオキシエチレン鎖中でポリオキシブロビレン重合体に結合しており、混合物中の疎水性ポリオキシプロピレン重合体の平均分子量は、ヒドロキシルナンバーで測定すると少なくとも900であり、オキシエチレン基は全ブロック共重合体の15〜19重量%を構成して存在しているもの、約5から約20%と、(2)へテリックオキシエチレン・オキシ1,2-プロピレンジオールで、その中では、エチレンオキサイドと1,2-プロピレンオキサイドとが、重量で1部のエチレンオキサイドに対して少なくとも3分の1の1,2-プロピレン基として結合しており、上記ジオールは単一分子中にオキシエチレンとオキシ1,2-プロピレン基を含んでおり、上記基に原因する少なくとも300の分子量を持つもの、約5から約20%と、(3)亜硝酸ナトリウムとエタノールアミンの各約1から12%と、(4)不飽和な高分子脂肪酸約0.01から約5%とを含む水を基剤とする組成物からなる金属加工用潤滑剤濃縮物。」(第6欄64行-第7欄18行)、「この発明は・・・種々の金属切削及び加工作業に適した水性潤滑剤組成物に関するものである。」(第1欄15-18行)、
「必要ならば、・・・耐摩耗剤をこの発明の組成物に少量加えることができ、その中では脂肪酸とくに不飽和脂肪酸が最適である。そのような脂肪酸の中には、飽和脂肪酸、例えばカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ノベルミチン酸、ステアリン酸が含まれ、不飽和脂肪酸、例えばパルモレイン酸、オレイン酸、リシノレイン酸、エルカ酸、リノレイン酸及びそれらの混合物が含まれる。」(第5欄13行-21行)と記載されている。

甲号証f(米国特許第4,927,550号明細書)には、その抄訳を参照すれば、「この発明は、・・・鉄系金属の腐蝕防止に関するものであり、また、金属加工作業における工具の摩耗を減少させる組成物に関するものである。」(第1欄5行-8行)、「請求項1 濃縮物の形の水性のアルカリ性金属加工用液体であって、オルト燐酸の塩と、濃縮物の約5重量%までの量のダイベイシックダイオイック酸と、キレート剤と、中和用塩基とからなり、本質的には燐酸塩を含まない金属加工用液体。」(第9欄38行-46行)、「この発明の組成物は、必要に応じてこの組成物に潤滑性を与えるために、水溶性潤滑剤を任意に含ませることができる。・・・潤滑剤としての使用に適した材料を例示・・・水中で分子を逆に溶解するようにしているポリオキシエチレンとポリオキシプロピレン鎖の存在によって特徴づけられており、・・・ブロック共重合体が最も好ましい潤滑剤である、・・・潤滑剤をこの発明の組成物中に含ませるときには、組成物の均質性を維持する目的で、結合剤を用いるのが好ましいことが多い。一般に、・・・どのような水溶性界面活性剤でもこの機能を果たす。界面活性剤は例えば有機酸の添加によって組成物内で形成されてもよく、・・・その場で界面活性剤を生成するのに有用な最も好ましい材料は、短い鎖の酸であり、とくに6個から10個の炭素原子を持った酸である。なぜならば、それらは泡立ちを防ぎ、硬水からすぐに塩析されず、比較的安価だからである。例えば、カプリル酸がとくに適していることがわかった。」(第5欄9行-第6欄66行)と記載されている。

甲号証g(BASFの発行した技術情報紙)には、BASF社の製品であるプルロニック17R2の平均分子量が2150、その1%水溶液の曇点が35℃であることが記載されている。

甲号証h(特公昭40-14480号公報)には、「2 アルカノールアミン、一分子当り炭素原子数6〜12個を有する飽和又は不飽和の脂肪族力ルボン酸及びポリオキシアルキレングリコールを含有する水性潤滑性組成物。」(特許請求の範囲第2項)、「本発明は切削用液体に関するものであり、特に金属加工の際に潤滑剤・・・として使用するに適する水溶性組成物に関するものである。」(第1頁左欄18〜20行)、「有機酸成分は、主として腐食防止剤として作用し、アルカノールアミンと結合してアミン酸塩の形にて腐食防止剤となる」(第1頁右欄27-30行)、「一分子当たり炭素原子数が1〜5個を有する酸は防錆剤として満足する作用を示さない、・・・一分子当たり炭素原子数が12個以上を有する酸の使用は、発泡の傾向が大きいこと・・・及び耐腐食性が減少するすること・・・が発見された。」(第2頁左欄4〜12行)、「アルカノールと有機酸との組合わせにおいて、適当な負荷支持剤の使用・・・この目的のために、水溶性ポリオキシアルキレングリコールが最も有効である・・・このタイプの適当な化合物は、10〜75重量%のエチレンオキサイド及び90〜25重量%の1・3-プロピレンオキサイドを有する共重合物を包含する。」(甲第1号証2頁左欄17〜24行)」と記載されている。

甲号証i(BASF社の技術資料「界面活性剤」)には、BASF社の製品である「プルロニック」界面活性剤及び「プルロニック R」界面活性剤について一般的な説明の記載と共に、その構造、曇点等の物性が示されており、このブロックポリマーが消泡性に優れ、切削油、研磨液に使用されることが記載され、第15頁には酸化プロピレンの部分の分子量と酸化エチレン部分の比率と関連して消泡剤としての最適範囲が記載されている。

甲号証j(特開平7-316581号公報)には、「【請求項1】 ポリエーテル(A)および一般式(1)で示される化合物(B)を含有することを特徴とする水溶性金属加工油。
O R3
‖ /
R1-C-NHR2N (1)
\
R4
(式中、R1は炭素数5〜21のアルキル基またはアルケニル基、R2は炭素数1〜6のアルキレン基、R3、R4は水素、炭素数1〜22のアルキル基またはアルケニル基。)
【請求項2】 該ポリエーテル(A)が一般式(2)で示される化合物(a
)である請求項1記載の水溶性金属加工油。 R5-[O-(EO)m-(AO)n-R6]p (2)(式中、R5は1〜6価の炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、R6は水素または炭素数1〜6の炭化水素基、Eはエチレン基、Aは炭素数3〜4のアルキレン基、mおよびnは10〜100の整数、pは1〜6の整数。)・・・【請求項4】 切削油または研削油用である請求項1〜3のいずれか記載の水溶性金属加工油。」(請求項1〜4)、「特定のポリエーテル系潤滑基油・・・に脂肪族カルボン酸とジアミンとのアミド誘導体を配合することにより潤滑性に優れ、潤滑油との分離性が良好であることを見い出し、本発明に達した。」(段落【0004】)、「本発明において、ポリエーテル(A)としては、アルキレンオキシドの炭素数が2〜4のエチレンオキシド(以下EOと略す)、プロピレンオキシド(以下POと略す)およびブチレンオキシド(以下BOと略す)のランダムまたはブロック付加体が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノールなどの一価のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコール、トリメチルプロパノール、ソルビトールなどの多価アルコールのEO・POまたはEO・BOランダム付加またはブロック付加が挙げられる。これらのうち好ましくは一般式(2)で示される化合物(a)である。」(段落【0005】)、「本発明の組成物には、通常の防錆剤、酸化防止剤、極圧添加剤、油性向上剤などの任意成分を加えることができる。」(段落【0010】)と記載され、水溶性金属加工油の具体例として、第4頁の表1の実施例2〜5には、ポリエーテル(A)がポリエチレングリコール(PEG)とプロピレンオキサイド(PO)からなる、分子量が2500〜5000のブロック共重合と、脂肪族カルボン酸とジアミンとのアミド誘導体からなる化合物(B)と、その他にトリエタノールアミンと、セバシン酸、カプリル酸と、ノニオン活性剤、水とからなる水溶性金属加工油が記載されている。

甲号証k(米国特許第4,452,711号明細書)には、その抄訳を参照すれば、「1.(a)約1.0〜20重量%の、単独ポリオキシエチレン鎖及び該ポリオキシエチレン鎖に接続された2つのポリオキシプロピレン鎖を含むポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの水溶性混合物であって、前記混合物中の前記ポリオキシプロピレン鎖の平均分子量が少なくとも900であり、前記混合物中のポリオキシエチレン鎖が混合物の約10〜80重量%を構成する、水溶性混合物;(b)約0.5〜10重量%の、一般式 CmH2m-n-r+2(COOH)r(ここでm=11〜36であり,n=0,2,4又は6であり,r=1又は2である。)で表わされる水溶性カルボン酸;(c)約0.5〜10重量%の水溶性アルカノールアミン;及び(d)残余の水を含む潤滑組成物。」(第7欄41〜60行、請求項1)が記載され、具体例として、実施例1及び4に、上記甲号証bの実施例1及び4と同一の水溶性潤滑剤組成物が記載されている。

甲号証l(BASF社のカタログ)には、その抄訳を参照すれば、BASF社の製品であるプルロックブロックポリマー界面活性剤の一覧が記載され、「25R4」の1%水溶液の曇点が40℃であることが記載されている。

甲号証m(「潤滑」第25巻第3号)には、水溶性切削油剤について一般的な記載があり、第14頁右欄5〜10行に水溶性切削油剤に配合されるさび止め剤として、さび止め性に優れ、消泡性のよい化合物として低級脂肪族酸(カプリル酸、カプリン酸など)などの第3級アルカノール塩類が例示されている。

参考資料1(青木樹脂工業株式会社製品のデータシート及び試験成績表)には、青木樹脂工業株式会社の製品であるポリエーテル「ブラウノンEP-1550」の化学構造式及び物性が記載され、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位の比が50/50であり、総分子量が3000、1%水溶液の曇点が53.1℃である点が記載されている。

参考資料2(青木樹脂工業株式会社製品のカタログ)には、第23頁の表中にポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの総分子量が2000〜3000、曇点が36.0〜48.0℃であるものが記載されている。

(4)対比・判断
申立人1〜3の申立ての理由(ア)〜(オ)からみて、特許法第29条第1項第3号について本件発明と甲号証c及びjとを対比し、また、特許法第29条第2項について本件発明と甲号証a〜mとを対比し、判断する。
(i)特許法第29条第1項第3号について
(ア)甲号証cには、前記した内容からみて、水溶性ポリグリコールと中和され又は一部中和されたアルキル又はアルケニルコハク酸とを組み合わせた水溶性の金属加工用組成物が記載され、その水溶性ポリグリコールとして、具体的にポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体(本件発明の一般式で表される特定の構造を有する共重合体に相当する)混合物(プルロニック17R2)が記載され、「プルロニック17R2」は甲号証gの記載によれば、平均分子量が2150、1%水溶液の曇点が35℃である。そして、「中和され又は一部中和されたアルキル又はアルケニルコハク酸」は本件発明の「脂肪酸のジカルボン酸」に含まれるものであって、その炭素数においても、RがC5、C6 のアルキル又はアルケニル基である場合、コハク酸の炭素数4を含めると一分子中の炭素数は9又は10となるので、本件発明における炭素数9又は10のジカルボン酸に相当するものであるから、本件発明において一般式で表される特定の構造(以下、「リバースブロック型共重合体」という。)、特定の分子量及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールと炭素数9又は10のジカルボン酸を含有する水溶性金属加工用油剤は、甲号証cに記載の水溶性の金属加工用組成物の範囲内に、一応包含されるものである。
しかし、i)甲号証cにはポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体混合物(プルロニック17R2)と組み合わせる中和され又は一部中和されたアルキル又はアルケニルコハク酸としては、2-ドデセニルコハク酸(炭素数14)の一例しか示されておらず、一分子中の炭素数が9又は10であるアルキル又はアルケニルコハク酸を配合した水溶性金属加工用油、即ち、本件発明の水溶性金属加工用油は具体的には記載されておらず、更に炭素数9又は10である該コハク酸を組み合わせた他の水溶性ポリグリコールを含む水溶性金属加工用油さえ具体的に記載されていないこと、ii)その効果を検討すると、本件発明が特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコール及び特定の炭素数のモノ及び/又はジカルボン酸を組み合わせて使用することにより、潤滑性、浸透性及び消泡性に優れた水溶性金属加工用油剤を得ることができるという、甲号証cに記載されていない効果を奏するものであることを併せて考慮すれば、甲号証cには、上記したような本件発明の特有の作用効果を奏する水溶性金属加工用油剤までもが、記載されているとすることはできない。
したがって、本件発明は、甲号証cに記載された発明ではない。

(イ)甲号証jには、前記した内容からみて、ポリエーテル(A)と一般式(1)で示される脂肪族カルボン酸とジアミンとのアミド誘導体からなる化合物(B)とを含有する水溶性金属加工油が記載され、その実施例2〜5にポリエーテル(A)としてポリエチレングリコールとプロピレンオキサイドからなる、分子量が2500〜5000のブロック共重合体と化合物(B)とセバシン酸とカプリル酸とが含まれる水溶性金属加工油が記載されている。
しかし、甲号証jに記載の水溶性金属加工油は脂肪族カルボン酸とジアミンとのアミド誘導体を必須の構成として含むものであり、かつ、ポリエチレングリコールとプロピレンオキサイドからなるブロック共重合が本件発明のリバースブロック型共重合体であるとの記載はなく、その曇点についても記載されていない。したがって、本件発明は、甲号証jの脂肪族カルボン酸とジアミンとのアミド誘導体(化合物(B))を必須の構成とせず、ポリオキシアルキレングリコールがリバースブロック型共重合体であり、その水溶液の曇点が5〜60℃である」点において、本件発明は上記甲号証jに記載の水溶性金属加工油とは明確に相違しており、本件発明は上記甲号証jに記載された発明とは認められない。
なお、申立人3はその甲号証jの実施例3に記載されているPEG1500・PO(50・50) MW=3000のポリエーテルは式(2)の定義に基づいて検討すればポリエチレングリコール単位のブロックの両端にプロピレンオキサイドからなるブロックを有するリバースブロック型の重合体であり、かつ参考資料1に記載の曇点が53.1℃であるブラウノンEP-1550との重合単位の構造、割合及び分子量が一致していることから上記実施例3のポリエーテルの曇点は本件発明の数値範囲にあるものと主張している。しかし、甲号証jの式(2)はポリエーテル(A)の好ましい例として記載されているものであり、実施例3のポリエーテルが式(2)で表さた場合の具体例であると認定しえないので、実施例3のPEG1500・PO(50・50) MW=3000のポリエーテルブロック重合体がリバースブロック型共重合体であると断定できるものではない。そして、重合単位の構造、割合及び分子量が一致しているとする具体的な根拠は他に見当たらないので、実施例3のポリエーテルが参考資料1に記載のブラウノンEP-1550であるとはいえず、また、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの3つの製品の分子量と曇点が記載されている参考資料2を参照しても、直ちに実施例3等のポリエーテルの曇点が本件発明の数値範囲にあるものともいえない。
したがって、申立人3の上記主張は採用しない。

(ii)特許法第29条第2項について
(ア)甲号証cには、上記(i)の(ア)で示したように、一分子中の炭素数が9又は10であるアルキル又はアルケニルコハク酸を配合した水溶性金属加工用油は記載されておらず、しかも該コハク酸の炭素数と水溶性金属加工用油剤の潤滑性、浸透性、消泡性との関連性及び炭素数が9又は10である該コハク酸が炭素数が10より多い該コハク酸に比較し優れていることを示唆する記載がなされておらず、甲号証cのコハク酸の中から特に炭素数が9又は10であるコハク酸を選択して、本件発明の特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールと組み合わせて使用することによる、潤滑性、浸透性及び消泡性に優れた水溶性金属加工用油剤を想到することが当業者において容易であるとはいえない。

(イ)甲号証b及びkには、前記した内容からみて、アルミニウム及びアルミニウム合金の冷間圧延及び熱間圧延のような金属加工作業で使用する水溶性潤滑剤組成物として、1個のポリオキシエチレン鎖と、そのポリオキシエチレン鎖に結合している2個のポリオキシプロピレン鎖とを含むポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体(リバースブロック型共重合体に相当する)混合物と水溶性力ルボン酸(式中のmは11〜36であるから、カルボキシル基の炭素も含めると炭素数は12〜38となる)と水溶性アルカノールアミンと水とからなる潤滑剤組成物が記載され、それぞれの実施例1にはプルロニック17R2とオレイン酸(炭素数18)、実施例4にはプルロニック25R4とラウリン酸(炭素数12)を含む潤滑剤組成物が記載されている。
そして、プルロニック25R4は、本件発明の実施例1で使用しているポリオキシアルキレングリコール(A)と同一であり、またプルロニック17R2は、上記(i)の(ア)で示したように、リバースブロック型共重合体であって、平均分子量2150、1%水溶液の曇点が35℃であるから、本件発明の特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールに含まれるものである。また本件発明の水溶性金属加工用油剤も水溶性アルカノールアミンと水を含有する態様を含むものである。
そこで、甲号証c、b及びkの水溶性金属加工用油剤と本件発明の水溶性金属加工用油剤とを比較すると、両者はポリオキシアルキレングリコールと組み合わせるカルボン酸の炭素数の点において相違する。
以下この相違点について検討する。
甲号証aには、前記した内容からみて、水溶性アルカノールアミンと、炭素数6〜9の飽和有機酸と、水溶性ポリオキシアルキレングリコールとを含有する、金属の機械加工作業における切削用液体として有用である潤滑剤組成物が記載され、水溶性ポリオキシアルキレングリコールについて、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体の例としてブロック共重合体が例示され、炭素数6〜9の飽和有機酸については、対応するアミン酸塩を生成し、主として腐蝕防止剤として機能し、炭素数が1〜5の酸は錆防止剤として満足に機能しないし、また炭素数9以上の酸を用いると腐食防止機能が低下し、高い発泡傾向を結果として生じる旨記載されている。

甲号証hには、前記した内容からみて、アルカノールアミン、炭素数6〜12個の飽和又は不飽和の脂肪族力ルボン酸及びポリオキシアルキレングリコールを含有する水性潤滑性組成物が記載され、ポリオキシアルキレングリコールとしてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合物が示され、炭素数6〜12の脂肪族カルボン酸は主として腐食防止剤として作用し、炭素数1〜5を有する酸は防錆剤として満足する作用を示さない、炭素数12以上を有する酸の使用は、耐腐食性が減少すること、発泡の傾向が大きいことが記載されている。

甲号証jには、(i)の(イ)で示したようにポリエーテル(A)と一般式(1)で示される脂肪族カルボン酸とジアミンとのアミド誘導体からなる化合物(B)とを含有する水溶性金属加工油が記載され、その実施例2〜6にポリエーテル(A)として分子量が2500〜5000のポリエチレングリコールとプロピレンオキサイドからなるブロック共重合体、上記ポリエーテル(A)と化合物(B)以外の成分としてセバシン酸(炭素数10)、カプリル酸(炭素数8)と含む水溶性金属加工油が記載されている。

甲号証eには、前記した内容からみて、金属切削及び加工作業に適した水性潤滑剤組成物として、構造中に疎水性のオキシプロピレン基と、親水性のオキシエチレン基と、反応性の水素原子を持った有機物に由来する有機遊離基とを持った、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン化合物のブロック共重合体と、へテリックオキシエチレン・オキシ1,2-プロピレンジオールと、亜硝酸ナトリウムと、エタノールアミンと、不飽和な高分子脂肪酸とを含む金属加工用潤滑剤が記載され、必要ならばとして、耐摩耗剤をこの組成物に少量加えることができると記載され、耐摩耗剤の中では脂肪酸とくに不飽和脂肪酸が最適であり、そのような脂肪酸の例として炭素数の大きい長鎖の脂肪酸及び不飽和脂肪酸の例とともにカプリン酸が例示されている。

甲号証fには、前記した内容からみて、鉄系金属の腐蝕防止性、金属加工作業における工具の摩耗を減少させる組成物に関する金属加工用液体が記載されており、この組成物に潤滑性を与えるために水溶性潤滑剤を含ませることができ、耐摩耗剤の好ましい例として、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレン化合物のブロック共重合体が例示され、更に潤滑剤を含ませるときには結合剤を用いることが好ましく、この結合剤として水溶性界面剤がこの機能を果たし、この界面活性剤を生成する脂肪酸として短い鎖の酸である6個から10個の炭素原子を持った酸、例えば、カプリル酸(炭素数8)が特に適しており、泡立ちを防ぐと記載されている。
してみると、甲号証a、e、f、h及びjには、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等を含む水溶性ポリオキシアルキレングリコールからなる水溶性の金属加工用油剤において、カプリル酸(炭素数9)、カプリン酸(炭素数10)、セバシン酸(炭素数10)等の炭素数が6〜12程度の短い鎖の脂肪族カルボン酸を防錆剤、腐食防止剤、耐摩耗剤、結合剤等の目的で組み合わせること及び上記脂肪族カルボン酸は発泡が少ないものであることが示されている。また甲号証mには、前記した内容からみて、水溶性切削油剤に配合されるさび止め剤として、さび止め性に優れ、消泡性のよい化合物として低級脂肪族酸(カプリル酸、カプリン酸など)などの第3級アルカノール塩類が例示されている。
しかし、いずれの上記甲号証にも脂肪族カルボン酸の炭素数と潤滑性との関連性についは記載も示唆もされておらず、かつ、特に上記特定の炭素数の脂肪族カルボン酸を特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールと組み合わせて使用すること示唆する記載はない。
そして、本件発明は本件特許明細書の段落【0017】の【表1】及び段落【0023】の【表2】に記載の実施例3とカルボン酸がラウリン酸(炭素数12)である点で異なる比較例4とを比較すると実施例3は消泡性だけでなく潤滑性においても明らかに優れており、この効果は、脂肪族カルボン酸の炭素数と潤滑性との関連性について言及する記載も示唆もされていない甲号証a、e、f、h、j及びmの記載事項から予測し得るものではない。
してみると、甲号証c、b及びkに記載の特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールに組み合わせる脂肪族カルボン酸として甲号証a、e、f、h、j及びmに記載の炭素数の少ない低級の脂肪族カルボン酸を使用するば、泡の発生が抑えられことまでは予測し得るかもしれないが、潤滑性に優れた効果が得られることまでは予測し得るものではないから、本件発明の特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールに炭素数6〜10の脂肪族カルボン酸を組み合わせて使用することによる、潤滑性、浸透性及び消泡性に優れた水溶性金属加工用油剤を想到することが当業者において容易であるとはいえない。

(ウ)甲号証a、e、f、h、及びjに記載の水溶性金属加工用油剤は上記(ii)の(イ)で記載したとおりであり、本件発明の水溶性金属加工用油剤と比較すると水溶性ポリオキシアルキレングリコールにおいて、本件発明は特定の構造及び特定の曇点を有する点で甲号証a、e、f、h及びjのものと相違する。
以下この相違点について検討する。
甲号証のc、b及びkに記載のポリオキシアルキレングリコールの中には、リバース型ブロック共重合体であって、本件発明の数値範囲内の曇点を有するものが記載されているが、ポリオキシアルキレングリコールの特定の構造(リバースブロック型共重合体)及び曇点の特定と水溶性金属加工用油剤の潤滑性、浸透性及び消泡性に優れる特性との関連性にについて言及する記載も示唆もされていない。
また、甲号証iには、前記した内容からみて、「プルロニック R」界面活性剤が本件発明のポリオキシアルキレングリコールのリバースブロック型共重合体の構造を有し、消泡性に優れ、切削油、研磨液に使用される旨記載され、その曇点の数値も示されている。しかし、「プルロニック R」界面活性剤とともに例示されている「プルロニック」界面活性剤はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンブロック共重合体(以下、「ノーマルブロック型共重合体」という。)であって、消泡性に優れる旨示されており、ブロック共重合体のうちリバースブロック型共重合体が優位であるとの記載もなく、かつポリオキシアルキレングリコールの特定の構造及び特定の曇点と消泡性、潤滑性と浸透性に優れる特性との関連性については言及する記載も示唆もされていない。また、甲号証のc、b、k及びiには、リバースブロック型共重合体ポリオキシアルキレングリコールを炭素数6〜10の脂肪族カルボン酸とを組合わせることを示唆する記載もない。
そして、本件発明は本件特許明細書の段落【0017】の【表1】及び段落【0023】の【表2】に記載の実施例1、3と本件発明より高い曇点を有する点で異なる比較例1とノーマルブロック型共重合体であり、本件発明より高い曇点を有する点で異なる比較例3とを比較すると、実施例1、3は比較例1に対し潤滑性と、浸透性と消泡性において、また実施例1、3は比較例3に対し潤滑性と消泡性において明らかに優れており、この効果はポリオキシアルキレングリコールの特定の構造及び特定の曇点と水溶性金属加工用油剤の潤滑性、浸透性及び消泡性との関連性について言及する記載も示唆もされていない甲号証c、b、k及びiの記載事項からは予測し得るものではない。
してみると、甲号証a、e、f、h、j、mに記載の炭素数の小さい脂肪族カルボン酸に組み合わせるポリオキシアルキレングリコールとして甲号証c、b及びkに記載のものの中から特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールを選んで使用すれば、潤滑性、浸透性及び消泡性に優れるという効果が得られることは予測し得るものではないから、炭素数6〜10の脂肪族カルボン酸に本件発明の特定の構造及び曇点を有するポリオキシアルキレングリコールを組み合わせて使用することによる、潤滑性、浸透性及び消泡性に優れた水溶性金属加工用油剤を想到することが当業者において容易であるとはいえない。
甲号証dには表面活性剤であるプルロニック25R-2の曇点が29℃、甲号証gにはプルロニック17R2の平均分子量が2150、その曇点が35℃であることが、甲号証lにはプルロニック25R4の1%水溶液の曇点が40℃であることが記載されているのみで、上記判断を覆す記載は見あたらない。 l

したがって、参考資料1及び2を参酌して、甲号証a〜mの記載をいかに組み合わせても、「本件発明の特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールに炭素数6〜10の脂肪族カルボン酸を組み合わせる」という構成を導き出すことはできない。
そして、本件発明は「本件発明の特定の構造及び特定の曇点を有するポリオキシアルキレングリコールに炭素数6〜10の脂肪族カルボン酸を組み合わせる」という構成を備えることによって、潤滑性、浸透性及び消泡性に優れるという、明細書記載の効果をを奏するものであると認められる。
以上のことから、本件発明は上記甲号証a〜mに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件発明の特許は、申立人1〜3の特許異議申立ての理由及び証拠によっては特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
異議決定日 2003-03-17 
出願番号 特願平7-62180
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C10M)
P 1 651・ 121- Y (C10M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山本 昌広  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 井上 彌一
西川 和子
登録日 2001-10-26 
登録番号 特許第3244996号(P3244996)
権利者 ユシロ化学工業株式会社
発明の名称 水溶性金属加工用油剤  
代理人 酒井 正美  
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