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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47J
管理番号 1075793
審判番号 不服2001-2050  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-15 
確定日 2003-05-01 
事件の表示 平成10年特許願第232238号「調理用スライサー」拒絶査定に対する審判事件〔平成11年 5月11日出願公開、特開平11-123147、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年11月30日(優先権主張平成7年3月6日)に出願した特願平7-338141号の一部を平成10年8月3日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1および2に係る発明は、平成13年3月16日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1および2に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明1」、「本願発明2」という。)。
「【請求項1】第1支持板(1) と、この第1支持板の前方に配位された刃(3)と、この刃の前方に配位された第2支持板(2) とを備え、第2支持板(2)が刃(3)より僅かに下方に配位されており、第2支持板(2) 上から第1支持板(1) 上にかけて野菜や果物等の料理材料を摺動させることにより、料理材料が第2支持板(2) と刃(3) との間の上下間隔の厚みに薄切りされる調理用スライサーにおいて、第1支持板(1) が、前方に向けて延設されたフレーム(4) を有し、このフレーム(4) に第2支持板(2) が上下に回動可能に設けられることにより、第2支持板(2) と刃(3) との間の上下間隔が調整可能とされ、第1支持板(1) 側と第2支持板(2) 側との何れか少なくとも一方に、押圧部(81)(82)(181a)を有する調整部材(8) が移動可能に支持され、第1支持板(1) 側と第2支持板(2) 側との何れか少なくとも他方に、調整部材(8) の押圧部(81)(82)(181a)に当接する当接部(21)(22)(72)(121) が設けられ、押圧部(81)(82)(181a)と当接部(21)(22)(72)(121) との少なくとも何れか一方が斜面を形成し、調整部材(8) を移動させることにより、押圧部(81)(82)(181a)と当接部(21)(22)(72)(121) との当接箇所が変化して、第2支持板(2) を上下に移動させるようにした調理用スライサーにおいて、調整部材(8) が、第2支持板(2) の幅方向の略中央に位置する軸(9) によって、第1支持板(1) 側に回動可能に支持され、この軸(9) を挟んで、第2支持板(2) の幅方向の両側に、押圧部(81)(82)と当接部(21)(22)とが配位されていることを特徴とする調理用スライサー。
【請求項2】調整部材(8) の軸(9) が、上下方向に伸ばされたものであることを特徴とする請求項1記載の調理用スライサー。」
2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭61-35530号(実開昭62-147494号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
・「略長方形状にして両側部を上方へ突出せしめて縁体を形成すると共に、該縁体間に摺面を長手方向に二分する部分に形成した本体に於いて、摺動面中央側端面に櫛刃及び平刃を付設し、摺面を有しない抜き部分の縁体に軸受部及び長手方向に形成した案内条を設け、別に前記本体の抜き部と対応する形状で且つ端部両側方に軸を突設した回動摺面板と、両側部に掛止凹溝を設けた調整体を形成し、該本体の軸受部に回動摺面板の軸を嵌挿して、回動摺面板を支持するように調整体の凹溝と本体の案内条とを嵌合してなる野菜調理器」(実用新案登録請求の範囲)
・「本案は本体A、回動摺面板B及び調整体Cで構成されており、本体Aは略長方形状にして、両側部に縁体1を突設し、対向する縁体1を突設し、対向する縁体1間の長手方向で略二分する部分に摺面2を一体に形成し、斜め状の摺面2の中央端面部分に櫛刃体3及び平刃体4を付設し、摺面2を有しない部分を抜き部5としたものである。縁体1に於ける抜き部5の両側部分を回動摺面板B及び調整体Cを装着できる形状としたもので、下方より連通した軸受部6の下方より刃体方向に向って案内条7を設けてなるものである。」(第3頁第9〜20行)
・「本内条(案内条の誤記と思われる。)7を斜めに形成したり、或いは回動摺面板Bと調整体Cの高さ関係を予め高く形成しておくと、調整体Cの移動によって回動摺面板Bが僅かに回動し、平刃4と平面板8の高さの位置関係を調整することで野菜の切り口の大きさを調整できるものである。」(第4頁第14〜19行)
以上の記載及び図面からみて、引用例には、摺面と、この摺面の前方に配位された平刃体と、この平刃体の前方に配位された回動摺面板とを備え、回動摺面板が平刃体より下方に配位されており、回動摺面板上から摺面上にかけて野菜を摺動させることにより、野菜が回動摺面板と平刃体との上下間隔の厚みに薄切りされる野菜調理器において、摺面が、前方に向けて延設された縁体を設けた本体を有し、この本体に回動摺面板が回動可能に設けられることにより、回動摺面板と平刃体との間の上下間隔が調整可能とされ、本体に押圧部を有する調整体が移動可能に支持され、調整体を移動させることにより当接箇所が変化して、回動摺面板を上下に移動させるようにした野菜調理器が記載されている。
3.対比・判断
[本願発明1について]
本願発明1(前者)と引用例記載のもの(後者)とを対比すると、後者の「摺面」、「平刃体」、「回動摺面板」、「野菜調理器」、「縁体を設けた本体」、「調整体」は、それぞれ前者の「第1支持板」、「刃」、「第2支持板」、「調理用スライサー」、「フレーム」、「調整部材」に相当している。
したがって、両者は、第1支持板 と、この第1支持板の前方に配位された刃と、この刃の前方に配位された第2支持板とを備え、第2支持板が刃より下方に配位されており、第2支持板上から第1支持板上にかけて野菜を摺動させることにより、料理材料が第2支持板と刃との間の上下間隔の厚みに薄切りされる調理用スライサーにおいて、第1支持板が、前方に向けて延設されたフレームを有し、このフレームに第2支持板が上下に回動可能に設けられることにより、第2支持板と刃との間の上下間隔が調整可能とされ、第1支持板側に、押圧部を有する調整部材が移動可能に支持され、第2支持板側に、調整部材の押圧部に当接するようにした調理用スライサーの点で一致するが、
前者が、調整部材が、第2支持板の幅方向の略中央に位置する軸によって、第1支持板側に回動可能に支持され、この軸を挟んで、第2支持板の幅方向の両側に、押圧部と当接部とが配位されているものとの構成を有するのに対し、後者が、該構成を具備していない点で少なくとも相違している。
また、上記相違点にかかる構成が、当該分野において、周知・慣用の技術であるとも認められない。
そして、本願発明1は、上記構成を具備することにより、明細書記載の「本願の第1の発明は、スライスの厚みを自由に且つ確実に変化させることのできる、さらに、第2支持板を安定した状態で支持させることができ、料理材料を第2支持部材のどの位置で摺動させても、第2支持部材は安定した状態を保つことができるという効果を有する。」(段落番号【0028】)との効果を奏するものである。
なお、引用例中に、従来技術として実公昭52-21245号公報が示されている。この従来技術において、第2支持板(「回転俎板」)を上下に移動させる技術が示されているが、これは、幅方向の中央部において調整ねじにより直接第2支持板を上下させるものであって、本願発明1の上記構成を示唆するものではない。
したがって、本願発明1は、引用例記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
[本願発明2について]
本願発明2は、本願発明1を限定する「調整部材の軸が、上下方向に伸ばされたものであること」との発明特定事項を付加したものである。
したがって、本願発明2は、[本願発明1について]で検討したのと同様の理由により、引用例記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
[むすび]
以上のとおり、本願発明1、本願発明2は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-04-08 
出願番号 特願平10-232238
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松縄 正登川向 和実  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 櫻井 康平
岡本 昌直
発明の名称 調理用スライサー  
代理人 鮫島 武信  
代理人 鮫島 武信  

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