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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1075828
審判番号 不服2001-216  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-10 
確定日 2003-04-24 
事件の表示 平成 3年特許願第349446号「電磁弁」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 1月25日出願公開、特開平 6- 17959]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【一】本願発明
本願は、平成3年12月9日に出願された特許出願であって、その請求項1に係る発明は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】 コイルと、前記コイル近傍に配置されているヨークと、前記ヨークに固定された鉄心と、先端が前記鉄心に接する方向および離れる方向に回動可能なアーマチュアと、前記アーマチュアの回動により移動しこれによって弁座の開閉を行なう弁体と、前記アーマチュアを鉄心から離れる方向に回動させる第1のスプリングと、前記弁体を押圧する第2のスプリングとを備え、又前記ヨーク、鉄心、アーマチュアのうちの少なくとも一つの部品が磁力を与えた時の残留磁気が大である材料にて構成され、前記コイルにパルス状の通電を行なうことにより前記残留磁気が大である部品の磁気作用によって前記アーマチュアの先端を鉄心に吸着させて弁を閉じ又コイルに残留磁気を消すためのパルス状の通電を行なうことによって弁を開くようにした電磁弁。 」
【二】引用例
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された刊行物「実願昭61-120504号(実開昭63-25888号)のマイクロフィルム」(以下「刊行物1」という。)及び「実公平3-2074号公報」(平成3年1月21日出願公告、以下「刊行物2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されているものと認める。
なお、原査定の拒絶理由通知書においては、
「 記
・請求項 1
・引用文献等 1
・備考
引用文献1には……
引用文献2には……設計的事項であると認められる。」
と記載されて、「・引用文献等」の欄の記載では引用文献2の表示が脱落しているが、「・備考」の欄において、引用文献2における記載事項を示し、さらに「前記引用文献1および2の電磁弁において、ヨーク、鉄心、アーマチュアのうちの少なくとも一つの部品が磁力を与えた時の残留磁気を大きな材料で構成することは当業者が適宜設定し得た設計的事項であると認められる。」と記載しているから、前記原査定の拒絶理由通知書は、引用文献2を拒絶の理由に引用していることは明らかと認められる。
そして、請求人においても、平成12年6月5日付意見書、平成13年2月20日付手続補正書において、前記引用文献2が拒絶の理由に引用されていることを理解した上で、意見を述べている。
(1)刊行物1
ア)「本考案はガスの開閉を電磁石の吸着力を利用して安全且つ確実に行なえるようにしたガス用の電磁弁、特にプランジャー形に対応するフラッパー型電磁弁に関する。」(明細書第1頁第14〜17行)
イ)「本考案はガス流入口から同流出口へ向う通路に開設された弁口に、閉弁方向に弁ばねを附勢した弁板を開閉自在に設けると共に、この弁板を枢軸を支点に揺動し且つ電磁装置のヨーク体に対向せしめた吸着板に取付け、前記電磁装置のヨーク体の外端面とカバー体の間に永久磁石からなるマグネット体を介装固設してなるものである。」(明細書第3頁第7〜14行)
ウ)「コイル10にマグネット体11のNS極の磁力が増加する方向に電流(パルス電圧)を流すと、ヨーク体12の端面12aに吸着板13が吸着される。吸着板13は枢軸17にて上下揺動式に支持され、且つそれに弁板14が取付けられているから吸着板13がヨーク体12に吸着されると弁板14は弁口15の弁座15aから離間し開弁する。
コイル10に印加する電流はパルス電圧であり、電流を取除いてもマグネット体11でヨークへの吸着は保持され、開弁状態を保つ。」(明細書第3頁第16行〜第4頁第5行)
エ)「ガス漏れ等によりセンサーが働らく異常時においてNS極の磁力を打ち消す方向にパルス電流を流すと、マグネット体11で開弁保持されていた弁板14は直ちに磁力消失するため、弁ばね16にて吸着板13を押し閉弁する。」(明細書第4頁第6〜10行)
オ)「マグネット体11は永久磁石の鉄片よりなり、これをボビンケース10aの中空縦孔10b内においてヨーク体(固定鉄心)12の後端面に対向するよう間隔をおいてカバー体20にて不動状一体に固定するように取付ける。」(明細書第5頁第12〜16行)等の記載があり、併せて図面を参照すると、
“コイル10と、ヨーク体12と、ヨーク体12の後端面に対向するよう配置されたマグネット体11と、中央寄りの部分が前記ヨーク体12に接する方向および離れる方向に回動可能な吸着板13と、前記吸着板13の回動により移動しこれによって弁座15aの開閉を行なう弁板14と、前記吸着板13をヨーク体12から離れる方向に回動させる弁ばね16とを備え、前記コイル10に前記マグネット体11のNS極の磁力が増加する方向にパルス状の通電を行なうことにより前記吸着板13をヨーク体12に吸着させて弁を開き又前記コイル10に前記マグネット体11のNS極の磁力を打ち消す方向にパルス状の通電を行なうことによって弁を閉じるようにした電磁弁”
が記載されているものと認められる。
(2)刊行物2
カ)「内部ケース20は上部が開放した有底籠枠状に形成し、底部に弁座11を有する弁口2を一体に設ける。枢支部8は突片を内向きに突出するよう一体に設けたもので、ピン孔8aを有する。このピン孔8aを利用して可動弁体7をピン9にて枢着する。吸着板6は可動弁体7の上面に固着し、弁ゴム10はその下側に弁ばね13を介して遊動可能に取付ける。吸着板6は磁性体により形成する。」
の記載が認められる。
【三】対比・判断
(1)本願発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の“コイル10”、“ヨーク体12”、“吸着板13”、“弁板14”、“弁座15a”が、それぞれ、機能上、本願発明の「コイル」、「鉄心」、「アーマチュア」、「弁体」、「弁座」に対応し、また、刊行物1に記載された発明における“弁ばね16”は、アーマチュアを鉄心から離れる方向に回動させる機能の点で、本願発明の「第1のスプリング」に対応する。
したがって、両者は、
コイルと、鉄心と、前記鉄心に接する方向および離れる方向に回動可能なアーマチュアと、前記アーマチュアの回動により移動しこれによって弁座の開閉を行なう弁体と、前記アーマチュアを鉄心から離れる方向に回動させる第1のスプリングとを備え、前記コイルにパルス状の通電を行なうことにより磁気回路構成部品の磁気作用によって前記アーマチュアを鉄心に吸着させて弁を動作させ又コイルに前記磁気作用を消す方向のパルス状の通電を行なうことによって弁を逆動作するようにした電磁弁
で一致し、次の相違点a〜dで相違する。
[相違点a]
本願発明は、電磁弁が「前記コイル近傍に配置されているヨーク」を備え、前記鉄心は「前記ヨークに固定された」ものであるのに対して、刊行物1には、本願発明の「ヨーク」に相当する部材についての明確な言及がなく、前記鉄心とヨークとの関係も明確でない点
[相違点b]
前記鉄心に接する方向および離れる方向に移動するアーマチュアの部分が、本願発明ではアーマチュアの「先端」であるのに対して、刊行物1に記載されたものでは、アーマチュア(吸着板13)の中央寄りの部分である点
[相違点c]
本願発明は、電磁弁が「前記弁体を押圧する第2のスプリング」を備えるのに対して、刊行物1には直接的な記載がない点
[相違点d]
本願発明は、「前記ヨーク、鉄心、アーマチュアのうちの少なくとも一つの部品が磁力を与えた時の残留磁気が大である材料にて構成され」て、前記弁の動作が「前記残留磁気が大である部品の磁気作用」によって行われ、又前記動作の逆動作が「残留磁気を消す」ことによって行われるのに対して、刊行物1に記載された発明では、前記磁気回路構成部品である、ヨーク、鉄心、アーマチュアのうちの少なくとも一について、残留磁気に関して言及されたものでない点
[相違点e]
本願発明は、前記動作時に「弁を閉じ」、前記逆動作時に「弁を開く」のに対して、引用刊行物1に記載されたものでは、前記動作時に弁を開き、前記逆動作時に弁を閉じるものである点
(2)上記各相違点について検討する。
(2-1)[相違点a]について
電磁弁において、コイル近傍に配置されるヨークを備え、鉄心を前記ヨークに固定する構成を採用することは、例示するまでもなく本件出願前周知の事項であり、刊行物1の図面の「カバー体20」もヨークと認識するのが相当と認められる。したがって、相違点aは実質上の相違点とは認められない。
仮に、刊行物1の図面の「カバー体20」をヨークと認識するのに無理があるとしても、電磁弁において、コイル近傍に配置されるヨークを備え、鉄心を前記ヨークに固定する構成を採用することが本件出願前周知の事項と認められるから、このような構成を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
(2-2)[相違点b]について
アーマチュアに対してそのどの部分で力を加えるかは設計上の選択事項にすぎず、前記鉄心に接する方向および離れる方向に移動するアーマチュアの部分を、アーマチュアの「先端」とすることが困難とはいえない。
(2-3)[相違点c]について
刊行物1には、電磁弁が「前記弁体を押圧する第2のスプリング」を備える点について、直接的な記載はないものの、図面を参照すると、吸着板13と弁板14との間にスプリングを示唆するような描写が存在するし、上記刊行物2には、本願発明の弁体に相当する弁ゴム10が弁ばね13を介して遊動可能に設けられる点が記載されているから、本願発明の「電磁弁が『前記弁体を押圧する第2のスプリング』を備える」構成は、上記刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(2-4)[相違点d]について
電磁弁において、弁体を駆動する電流が遮断された後にアーマチュア等の磁気回路構成部品に残る残留磁気によって前記弁体を前記電流により駆動された位置に維持し、前記残留磁気の消去によって前記弁体を異なる位置へ移動させるようにすることは、本件出願前周知のことと認められる(必要あれば、特開平1-224581号公報、特開昭64-61537号公報、特開昭52-105326号公報、特開昭51-75222号公報等参照)。
このような電磁弁における周知技術を考慮すると、「『前記ヨーク、鉄心、アーマチュアのうちの少なくとも一つの部品が磁力を与えた時の残留磁気が大である材料にて構成』し、前記弁の動作が『前記残留磁気が大である部品の磁気作用』によって行われ、又前記動作の逆動作が『残留磁気を消す』ことによって行われる」構成を採用することは、当業者が前記周知技術に基づいて容易に想到し得たものとするのが相当である。
(2-5)[相違点e]について
コイルへの通電時に電磁弁が開弁し、非通電時に閉弁するように構成するか、逆に、コイルへの通電時に電磁弁が閉弁し、非通電時に開弁するように構成するかは、電磁弁の用途、開弁期間と閉弁期間との関係等に応じて、当業者が適宜選択し得る程度の事項と認められるから、本願発明において、「前記動作時に『弁を閉じ』、前記動作の逆動作時に『弁を開く』」ようにした点も、当業者が容易に想到し得たものである。
(3)したがって、本願発明の構成は当業者が容易に想到し得たものであり、また、その作用効果についても、上記刊行物1、2に記載された事項及び本願出願前周知の事項から予測し得る程度のもので格別顕著なものとは認められない。
【四】むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-01-15 
結審通知日 2003-01-21 
審決日 2003-02-03 
出願番号 特願平3-349446
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川向 和実渡邉 洋  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 尾崎 和寛
ぬで島 慎二
発明の名称 電磁弁  
代理人 向 寛二  
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