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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E06B
管理番号 1075978
審判番号 無効2002-35423  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-02 
確定日 2003-04-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第2758370号発明「断熱形材」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2758370号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

平成 6年12月14日 出 願
平成10年 3月13日 特許登録(特許第2758370号)
平成10年11月25日 異議申立(異議平成10-74982号)
平成11年 7月22日 取消理由通知
平成11年10月12日 特許異議意見書
平成11年10月12日 訂正請求書
平成11年11月10日 特許異議の決定(訂正を認め、特許維持)
平成14年10月 2日 本件無効審判請求
平成14年11月11日 審判請求書副本送達

2.当事者の主張

(1)請求人は、本件特許を無効とする理由として次のように主張し、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
本件発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証、及び本件特許出願前に周知・慣用の技術(例えば甲第3〜6号証参照)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、同法第123条第1項第2号により、無効とすべきである。
甲第1号証(特開平4-323486号公報)
甲第2号証(実公昭60-28769号公報)
甲第3号証(特開平6-146736号公報)
甲第4号証(特開平6-146738号公報)
甲第5号証(実願昭56-113084号(実開昭58-20091号)のマイク口フィルム)
甲第6号証(「YKKap ビル用総合カタ口グ‘93-‘94 ウインドウ・ドア他編」1993年3月、YKKアーキテクチュラルプロダクツ株式会社発行、372頁)
(2)審判長は、被請求人に対して、平成14年11月11日付けで審判請求書副本を送達し(送達日平成14年11月15日)期間を指定して答弁する機会を与えたが、被請求人からは何ら応答はなかった。

3.本件発明

本件発明は、平成11年10月12日付けの訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「アルミニウム合金製押出形材からなる室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面及び見込み面に対して非平行であり、前記室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しており、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」
そして、本件発明によれば、「断熱材が開口部構成部材の室外側の面および見込み面に対して非平行をなし、断熱形材を構成する室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接触させたので、室外側部材および室内側部材にかかる荷重や外力は突条や接触面を介して開口部構成部材により受けられ、室外側部材および室内側部材にかかる外力や荷重は断熱材にほとんどかからず、断熱材の破壊のおそれがなく、取付け強度が高くなり、断熱形材の延命化が達成される。」(明細書段落番号0018参照)という作用効果を奏するものである。

4.無効理由について

請求人主張の無効理由について検討する。
(1)請求人提出の刊行物及びその記載事項
(ア)甲第1号証(特開平4-323486号公報)
甲第1号証には次の記載が認められる。
・3頁左欄16〜17行には、「屋内側部材3Aと屋外側部材3Bとの間には断熱部材3Cが配設されている」と記載され、
・3頁左欄22〜29行には、「屋外側部材3Bにはフランジ3bが一体に形成されており、屋外側部材3Bはこのフランジ3bにて躯体24にビス締めされて固定されている。屋内側部材3Aにはポケット3c及びポケット3cから連続するフランジ3dが一体に形成されており、屋内側部材3Aは、このポケット3d(審決注:3cの誤記)にて駆体24に固定された屋内造作材25に保持されると共にフランジ3dにて駆体24にビス締めされて固定されている。」と記載され、
・図5には、断熱部材3Cが駆体24の室外側の面及び見込み面に対して非平行に設けられ、また、屋内側部材3Aのフランジ3dの面及びポケット3cが躯体及び駆体に固定された屋内造作材に接し、屋外側部材3Bのフランジ3bの面が躯体に接している状態が図示されている。
以上によれば、甲第1号証には次の発明が記載されていると認められる。
「屋外側部材と屋内側部材の相互の対向部間を1本の断熱部材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱部材は、躯体の屋外側の面及び見込み面に対して非平行であり、前記屋外側部材と屋内側部材とは、各部材にそれぞれ設けたポケットあるいはフランジの面によって躯体あるいは屋内造作材に対して接している断熱形材。」
(以下、甲第1号証に記載された発明を「甲第1号証発明」という。)
(イ)甲第2号証(実公昭60-28769号公報)
・第1図、2頁左欄7〜13行には、「本考案二重窓用上枠材Aは、外窓上枠1と内窓上枠4とが断熱材7によって連結されているが、その連結の仕方は外窓上枠の後面板lbと、内窓上枠の前面板4aとが対向し、それら各面板の上・下2辺において断熱材7,7によって両上枠が接触することのないよう、換言すれば離隔的に連結せられている。」と記載され、
・第2図には、外窓竪枠3、内窓竪枠6の各々が2箇所の突条あるいは面、または広幅の面によって柱等の開口部構成部材に接することができるようになっていることが示されている。
(ウ)甲第3号証(特開平6-146736号公報)
甲第3号証には、以下に示す甲第4号証に記載された技術的事項と同様の技術的事項が記載されている。
(エ)甲第4号証(特開平6-146738号公報)
・2頁右欄31〜38行(段落番号〔0008〕)には、「本実施例は縦辷り出し窓について示すもので、窓枠1は、左右の縦枠2,2と上枠4と下枠5を方形に組んでなるものである。本実施例においては、断熱性を高めるために、これらの枠をそれぞれアルミニウム押し出し形材でなる室内側枠材2a,4a,5aおよび室外側枠材2b,4b,5bと、これらの間にそれぞれ2枚ずつかしめ付けによりそれぞれ結合し、内部に空間部を形成した硬質ゴムあるいはプラスチック製板材6とより構成している。」と記載され、
・2頁右欄39〜42行(段落番号〔0009〕)には、「7,8はこれらの枠材2〜5の室内側枠材2a,4a,5aと室外側枠材2b,4b,5bにそれぞれ設けた溝状の気密材装着部9,10に装着した内周側気密材7および外周側気密材であり」と記載され、
・3頁左欄15〜18行(段落番号〔0011〕)には、「図4は該障子11の気密材7,8の当接部の構造を示し、図5、図6は気密材7,8とその窓枠1側当接部との当接状態を示す図1、図2の部分拡大図である。」と記載されている。
上記記載及び特に図2、図6の記載から、甲第4号証には、アルミニウム押し出し形材でなる室内側枠材に、縦辷り出し窓と当接する気密材の取付け片を設けた構造が記載されている。
(オ)甲第5号証(実願昭56-113084号(実開昭58-20091号)のマイク口フィルム)
・明細書4頁6〜11行には、図1、図2に示された実施例について、「図中、(1)はアルミ合金からなる枠体であって、左右竪枠(2)(2)、及び第2図に示す上下枠(3)(4)で構成される。(5)は外枠、(6)は内枠であって、この外枠(5)と内枠(6)は、熱伝導率の極めて小さな断熱形材(7)を介在させて一体形成される。」と記載され、
・第2実施例を示す図3において、枠体の竪枠2を外枠5と内枠6と断熱形材7から構成された構造、外枠5と内枠6は、外枠5と内枠6の各々にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所の面によって開口部構成部材(例えば柱)に対して接するように配置された構造、さらに、内枠6の開口部構成部材と反対側には扉体10の室内側板12と当接する気密材20の取付け片が設けられている構造が記載されている。
以上の記載から、甲第5号証には、アルミ合金からなる枠体の竪枠を内枠と外枠と断熱形材から構成し、内枠と外枠の各々にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所の面によって開口部構成部材(例えば柱)に対して接するように配置した構造、及び、内枠の開口部構成部材と反対側には扉の室内側板と当接する気密材の取付け片を設けた構造が記載されている。
(カ)甲第6号証(「YKKapビル用総合カタ口グ‘93-‘94 ウインドウ・ドア他編」1993年3月、YKKアーキテクチュラルプロダクツ株式会社発行、372頁)
・372頁には、「外開き窓」が記載されており、その右下の断面図には、部材名称は付されていないものの、「外枠と内枠の相互の対向部間を一本の断熱材によって結合して構成した断熱形材であって、内枠すなわち室内側部材に、外開き窓である障扉具と当接する気密材の取付け片を有している構造」が記載されている。

(2)本件発明と刊行物記載のものとの対比
本件発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証発明の「屋外側部材と屋内側部材」、「躯体あるいは造作材」、「断熱部材」、「ポケットあるいはフランジの面」は、本件発明の「室外側部材と室内側部材」、「開口部構成部材」、「断熱材」、「突状あるいは面、または広幅の面」に対応するから、両者の一致点及び相違点は次のとおりであると認められる。
一致点:
「室外側部材と室内側部材の相互の対向部間を1本または複数本の断熱材により結合して断熱形材を構成すると共に、前記断熱材は、開口部構成部材の室外側の面及び見込み面に対して非平行であり、前記室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ設けた突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなることを特徴とする断熱形材。」
相違点1:
本件発明の室外側部材と室内側部材はアルミニウム合金製押出形材からなるのに対し、甲第1号証発明の室外側部材と室内側部材はその材質等が不明である点。
相違点2:
本件発明の室内側形材には、辷り出し窓、開閉窓、回転窓を構成する障子枠と当接する気密材の取付け片または受け片を有しているのに対し甲第1号証発明の室内側形材は、そのような構造となっていない点。
相違点3:
本件発明の室外側部材と室内側部材とは、各部材にそれぞれ間隔を開けて設けた2箇所以上の突条あるいは面、または広幅の面によって開口部構成部材に対して接してなるのに対し、甲第1号証発明では、室内側部材は、間隔を開けて設けた2箇所の突条あるいは面によって開口部構成部材に対して接しているが、室外側部材は、広幅の面によってのみ開口部構成部材に対して接している点。

(3)相違点についての判断
(ア)相違点1について
本件発明のようなサッシ用断熱形材の室外側部材と室内側部材を、アルミニウム合金製押出形材から構成することは、例を挙げるまでもなく本件特許出願前に周知の事項にすぎず、本件発明の相違点1に係る構成は、周知の事項を限定したにすぎない。
(イ)相違点2について
本件発明のように室外側部材と室内側部材と断熱材から構成されるサッシ用断熱形材において、室内側部材に障子枠と当接する気密材の取付け片を設けることは、例えば、甲第4号証(室内側枠材に、縦辷り出し窓と当接する気密材の取付け片を設けた構造が記載されている)、甲第5号証(内枠に、扉の室内側板と当接する気密材の取付け片を設けた構造が記載されている)に記載されているように、本件特許出願前に周知の事項にすぎず、甲第1号証発明の屋内側部材を本件発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
(ウ)相違点3について
本件発明のように室外側部材と室内側部材と断熱材から構成されるサッシ用断熱形材において、本件発明の相違点3に係る構成のように、室内側部材と室内側部材の各々の部材に間隔を開けて2箇所の突条あるいは面、または広幅の面を設け、これらが柱等の開口部構成部材に接するようにすることは、甲第2号証や甲第5号証に記載されており、甲第1号証発明の屋外側部材と屋内側部材を上記相違点3に係る構成とすることは当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
(エ)作用効果について
また、本件発明の明細書記載の作用効果は、甲第1号証発明に、甲第2号証、甲第5号証に記載された技術的事項を適用することによって当然に奏する作用効果にすぎない。

5.むすび

以上のとおり、本件発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明及び本件特許出願前に周知の技術から、当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号により、無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-27 
結審通知日 2003-03-04 
審決日 2003-03-17 
出願番号 特願平6-333499
審決分類 P 1 112・ 121- Z (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 長島 和子
鈴木 憲子
登録日 1998-03-13 
登録番号 特許第2758370号(P2758370)
発明の名称 断熱形材  
代理人 佐藤 嘉明  
代理人 高橋 邦彦  
代理人 浜本 忠  

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