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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1076245
審判番号 不服2001-2642  
総通号数 42 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-22 
確定日 2003-05-09 
事件の表示 平成 7年特許願第339478号「バーコード読取装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 7月11日出願公開、特開平 9-179927]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成7年12月26日の出願であって、平成13年1月10日に拒絶査定がされ(謄本送達日:同年1月23日)、同年2月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月22日付で手続補正がされ、これに対して、当審において、同年11月5日(発送日:同年11月12日)に、最後の拒絶理由が通知され、平成15年1月8日に手続補正がされたものである。

第2.平成15年1月8日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年1月8日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「第1のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなる第1のバーコードと第2のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなる第2のバーコードとを一方向に並べて構成したコードを読み取るバーコード読取装置であって、
被走査面上の走査軌跡における明暗パターンを検出する走査手段と、
前記第2バーコードの識別バーに対応するパターンを、前記走査手段によって検出された明暗パターンから検出する第2バーコード識別バー検出手段と、
前記走査手段によって検出された明暗パターンを前記第1のコード体系に従って復調するとともに、前記第2バーコード識別バー検出手段によって前記第2バーコードの識別バーに対応するパターンが検出された場合には、復調アルゴリズムを第2のコード体系に切り替えて、この明暗パターンに続く明暗パターンを前記第2のコード体系に従って復調する復調手段とを備えたことを特徴とするバーコード読取装置。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2のコード体系に従って復調する復調手段」に「復調アルゴリズムを第2のコード体系に切り替えて、」との限定を付加し、「復調アルゴリズムを第2のコード体系に切り替えて、第2のコード体系に従って復調する復調手段」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物の記載
当審の拒絶の理由に引用された下記の各刊行物には、以下の事項が記載されている。
(1)刊行物1(特開平4-276881号公報)
ア.「【請求項1】バーコードに付加されているアドオンバーコードを読み取るアドオンバーコード読取方式において、アドオンバーコード付のバーコードを読み取って計測した白バーおよび黒バーの幅を計数するバー幅カウンタ(3)と、このバー幅カウンタ(3)が計数した白バーおよび黒バーの幅をもとに、スタートガードバー(SB)を検出するスタートガードバー検出回路(40)、センターバー(CB)を検出するセンターバー検出回路(41)、およびエンドガードバー(EB)を検出するエンドバー検出回路(42)と、これら回路によって検出したSB、CB、EBをもとにバーコードの右ブロックを検出し、この検出した右ブロックから所定モジュール数の位置にバーコードがあったときにこれをアドオンバーコードと判定して読み取るように構成したことを特徴とするアドオンバーコード読取方式。」(第2頁左欄第2行〜16行、特許請求の範囲の記載)

イ.「図1および図2において、バー幅カウンタ3は、アドオンバーコード付きのバーコードを読み取って計測した白バーおよび黒バーの幅を計数するものである。スタートガードバー検出回路40は、スタートガードバー(SB)を検出するものである。
【0005】センターバー検出回路41は、センターバー(CB)を検出するものである。エンドガードバー検出回路42は、エンドガードバーを検出するものである。」(第2頁左欄第48行〜右欄第7行)

ウ.「図1において、検出器1は、He-Neレーザから放射され、ポリゴンミラーミラによって走査されたビームによりバーコードを照射し、反射して戻ってきた光を検出してその強度を電気信号に変換するものである。
【0009】A/D2は、検出器1によって検出されたバーコードからの信号をディジタル信号に変換するものである。バー幅カウンタ3は、A/D2によってディジタルの信号に変換された後の信号から、バーコードの白バー、黒バーの値を計数(クロック数を計数)するものである。」(第2頁右欄第32行〜41行)

エ.「図1のバー幅カウンタ3によって計数したバー幅データから、スタートガードバー(SB)、センターバー(CB)、エンドガードバー(CB)をそれぞれ検出し、これらをもとに、
UPC系のUPC/Aバーコード
ENA13桁バーコード
EAN13桁バーコード
UPC/Eバーコード
などにおける、S1ないしS6のうちの該当する信号を出力することが可能となる。」(第3頁右欄第33行〜42行)

オ.「図3のフローチャートの順序に従い、図4を参照して図1および図2の構成の動作を詳細に説明する。図3において、SS1は、復調(1)を行う。これは、図2のバーコード検出回路4がバー幅データから検出したスタートガードバー(SB)、センターバー(CB)、エンドガードバー(EB)より生成したSS1ないしSS6のうちの該当する信号をもとに、図4の(イ)のメイン部の左キャラクタおよび右キャラクタを元の数値などのデータに復調する。」(第3頁右欄第47行〜第4頁左欄第5行)

カ.「SS2は、予めオペレータが設定したアドオンフラグがオンか否かを判別する。…YESの場合は、SS3ないしSS6の処理を行う。

SS4でこの右ブロックから所定モジュール数の位置にあるアドオンバーコードを復調し、…
YESの場合には、既述したSS4、SS5をアドオンバーコードの復調(2)、アドオン有フラグを付加し、SS7に進む。」(第4頁左欄第6行〜27行)

キ.「図4は、バーコード/アドオンバーコード説明図を示す。図4の(イ)は、アドオンバーコード付のバーコード例(UPC系)を示す。ここでメイン部は、図示のように、マージン部、レフトガードバー(LGB)、左側キャラクタ、センターバー(CB)、右側キャラクタ、ライトガードバー(RGB)、マージン部などから構成されている。アドオン部は、メイン部のバーコードに付加的に設けたものであって、本実施例では、メイン部の右キャラクタ(右ブロック)のライトガードバー(RGB)から7ないし10モジュールの位置にスペッシャルレフトガードバー(SLGB)を見付け、これに続いてアドオン部のキャラクタを検出するようにしている。」(第4頁右欄第6行〜18行、図4を参照)

上記ア.及びイ.の事項を参照すると、刊行物1には、
バーコードに付加されているアドオンバーコードを読み取るアドオンバーコード読取方式において、アドオンバーコード付のバーコードを読み取って計測した白バーおよび黒バーの幅を計数するバー幅カウンタ(3)と、このバー幅カウンタ(3)が計数した白バーおよび黒バーの幅をもとに、スタートガードバー(SB)を検出するスタートガードバー検出回路(40)、センターバー(CB)を検出するセンターバー検出回路(41)、およびエンドガードバー(EB)を検出するエンドバー検出回路(42)と、これら回路によって検出したSB、CB、EBをもとにバーコードの右ブロックを検出し、この検出した右ブロックから所定モジュール数の位置にバーコードがあったときにこれをアドオンバーコードと判定してバーコードを読み取るように構成したアドオンバーコード読取方式が記載されている。

上記ウ.の事項を参照すると、刊行物1には、
検出器1は、走査ビームによりバーコードを照射し、反射光を検出してその強度を電気信号に変換し、
A/D2は、ディジタル信号に変換し、バー幅カウンタ3がバーコードの白バー、黒バーの値(クロック数)を計数することが記載されている。

上記エ.の事項を参照すると、刊行物1には、
バー幅データから、スタートガードバー(SB)、センターバー(CB)、エンドガードバー(CB)をそれぞれ検出し、これらをもとに、各バーコード体系の該当する信号を出力することが記載されている。

上記オ.の事項を参照すると、刊行物1には、
フローチャートのSS1において、復調(1)を行い、この復調(1)では、検出したスタートガードバー(SB)、センターバー(CB)、エンドガードバー(CB)より生成した信号をもとに、メイン部の左キャラクタおよび右キャラクタを復調することが記載されている。

上記カ.の事項を参照すると、刊行物1には、
フローチャートのSS1よりも後のステップであるSS4において、復調(2)を行うこと、この復調(2)では、アドオンバーコードの復調を行うことが記載されている。

上記キ.の事項を参照すると、
バーコード/アドオンバーコードは、メイン部とアドオン部とを一方向に並べて構成したコードであり、
メイン部は、左側キャラクタ、センターバー(CB)、及び右側キャラクタを、レフトガードバー(LGB)とライトガードバー(RGB)によって囲んでなる構成を有し、
アドオン部は、アドオン部キャラクタの左側にスペッシャルレフトガードバー(SLGB)を配置した構成を有していることが記載され、
また、このスペッシャルレフトガードバー(SLGB)は、ライトガイドバー(RGB)から7ないし10モジュールの位置に配置されることが記載され、
また、アドオン部の検出については、スペッシャルレフトガードバー(SLGB)を見つけ、これに続いてアドオン部のキャラクタを検出することが記載されている。

以上を勘案すると、刊行物1には、
左側キャラクタ、センターバー(CB)、及び右側キャラクタを、レフトガードバー(LGB)とライトガードバー(RGB)によって囲んでなるメイン部と、アドオン部キャラクタの左側にスペッシャルレフトガードバー(SLGB)を配置したアドオン部とを一方向に並べて構成したバーコード/アドオンバーコードの読取方式であって、
走査ビームにより上記バーコード/アドオンバーコードを照射し、反射光を検出してその強度を電気信号に変換する検出器と、ディジタル信号に変換するA/Dと、バーコードの白バー、黒バーの値を計数してバー幅データを出力するバー幅カウンタとから成る走査手段と、
上記走査手段によって検出され出力された上記バー幅データからスタートガードバー(SB)、センターバー(CB)、エンドガードバー(CB)をそれぞれ検出し、検出したスタートガードバー(SB)、センターバー(CB)、エンドガードバー(CB)より生成した信号をもとに、メイン部の左キャラクタおよび右キャラクタを復調する手段と、
上記バーコード/アドオンバーコードの上記メイン部の右ブロックを検出し、この検出した右ブロックから所定モジュール数の位置にバーコードがあったときにこれをアドオンバーコードと判定して、上記アドオン部の上記スペッシャルレフトガードバー(SLGB)を見つける手段と、上記スペッシャルレフトガードバー(SLGB)に続いて上記アドオン部のキャラクタを検出する手段とアドオンバーコードを復調する手段とを備えたバーコード/アドオンバーコードの読取方式の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。

(2)刊行物2(特開平5-233866号公報)
ア.「【従来の技術】コード体系の異なる2つのバーコードを組み合わせたバーコードとしては、アドオンバーコード付バーコードがある。」(第2頁右欄第30行〜32行)

イ.「【0005】図5は、右ブロックと左ブロックを備えたUPC系バーコード(UPC/A、EAN8、EAN13)をメインバーコードとするアドオンバーコード付バーコードのシンボル構成を示す図である。
【0006】メインバーコードシンボルMBSは、左側マージン部LMと、左側ガードバーLGBと、左側キャラクタ部LCと、センターバーCBと、右側キャラクタ部RCと、右側ガードバーRGBと、右側マージン部RM1により構成されている。
【0007】アドオンバーコードシンボルABSは、スペシャル左側ガードバーSLGBと、アドオンキャラクタ部ACと、右側マージン部RM2により構成されている。」(第2頁右欄第33行〜45行)

ウ.「【0008】左側ガードバーLGBは、読取り出力がバーコードシンボルの読取り出力か否かを判定するために設けられる。また、この左側ガードバーLGBは、左側キャラクタ部LCの左端部に位置しており、左側マージン部LMとを仕切る機能も有する。
【0009】なお、詳細な説明は省略するが、他のガードバーRGB,SLGBも、左側ガードバーLGBと同じ機能を有する。」(第2頁右欄第46行〜第3頁左欄第3行)

上記ア.〜ウ.の事項を参照すると、刊行物2には、従来例として、
コード体系の異なる、メインバーコードシンボルMBSとアドオンバーコードシンボルABSの2つのバーコードを組み合わせたアドオンバーコード付バーコードにおいて、
メインバーコードシンボルMBSの両側に、左側ガードバーLGBと右側ガードバーRGBを設け、また、アドオンバーコードシンボルABSの左側にスペシャル左側ガードバーSLGBを設け、
左側ガードバーLGBは、読取り出力がバーコードシンボルの読取り出力か否かを判定するために設けられ、同じように、右側ガードバーRGBも、
アドオンバーコードシンボルABSの左側に設けられたスペシャル左側ガードバーSLGBも、読取り出力がバーコードシンボルの読取り出力か否かを判定するために設けられているアドオンバーコード付バーコードの発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。

(3)刊行物3(特開平3-229384号公報)
ア.「バーコードを形成した記号面を、バーコードを構成するバーに交差する方向にレーザ光で走査し、前記記号面からの反射光を受光手段で電気信号に変換して、この電気信号から前記バーコードを識別するようにしたバーコード読取装置において、
前記レーザ光の記号面上での走査位置を、その走査線に交差する方向に変位させ、前記記号面に複数本の走査線を形成させる走査位置可変手段と、
バーコードの一方端のバーを横切る走査線を形成したレーザ光に対応した前記受光手段出力に基づいて、バーコードを前記一方端側から識別する第1識別手段と、
バーコードの他方端のバーを横切る走査線を形成したレーザ光に対応した前記受光手段出力に基づいて、バーコードを前記他方端側から識別する第2識別手段と、
前記第1識別手段および第2識別手段の各識別結果を合成する合成手段とを備えたことを特徴とするバーコード読取装置。」(第1頁左下欄第5行〜右下欄第5行、特許請求の範囲の記載)

イ.「本実施例では、反射光14および駆動装置12などを含んで走査位置可変手段が構成されている。
記号面18からの反射光は、集光レンズ19を介して受光手段であるフォトダイオード20に入射して電気信号に変換される。この電気信号は二値化回路21で、バーコード17を構成する白バー,黒バーに対応した「1」、「0」の信号に二値化される。この二値信号は、異なる種類のバーコードに対応して設けた第1の読取ユニット22Aと第2の読取ユニット22Bに共通に与えられる。すなわち、現在用いられているバーコードには、JAN、コード39、NW-7などの複数の種類のバーコードがあるが、本実施例では第1,第2の読取ユニット22A,22Bを設けて、これらで異なる種類のバーコードの識別をそれぞれ行わせるようにして、2種類のバーコードに対応するようにしている。」(第3頁右下欄第14行〜第4頁左上欄第11行)

ウ.「読取ユニット22Aは、第1識別回路31Aおよび第2識別回路32Aならびに合成回路33Aを有している。たとえば、第1識別回路31Aでは入力される二値信号を順に処理することにより左端バー17L(第2図参照)から順に識別を行い、また第2識別回路32Aでは入力される二値信号を一旦バッファ(図示せず)に格納して、最後に入力された二値信号から順に処理することにより、右端バー17Rから順に(すなわち右端バー17Rを基準として)識別処理を行う。合成回路33は、第1および第2識別回路31A,32Aからの各識別結果を合成して、最終的にバーコード17を識別する。」(第4頁左上欄第12行〜右上欄第4行)

エ.「同一種類のバーコードであれば、桁数は一定であるので、合成回路33Aではその種類のバーコードの桁数に基づいて、第1,第2識別回路31A,32Aからの識別結果を容易に合成することができる。すなわち、たとえばバーコード17が示す情報が「a0123a」である場合に、第1識別回路31Aの識別結果が「a012」であって、第2識別回路32Aの識別結果が「23a」であるとすると、合成回路33Aでは、当該バーコード17の桁数が6桁であることに基づいて、容易にバーコード17が表す情報「a0123a」の全部を再生することができる。」(第4頁右下欄第10行〜第5頁左上欄第1行)

オ.「本実施例では、レーザ光の走査位置を、その走査線に対して交差する方向に変位させるようにして、記号面18をレーザ光で複数回走査し、バーコード17の左端バー17Lを横切る走査線を描いたレーザ光に対応した二値化回路21からの検出信号に基づいてバーコード17の左側のバーコード部分40Lを第1識別回路31A,31Bで識別し、右側バー17を横切る走査線を描いたレーザ光に対応した検出信号に基づいてバーコード17の右側のバーコード部分を第2識別回路32A,32Bで検出するようにしている。」(第5頁左上欄第2行〜13行)

上記ア.及びイ.の事項を参照すると、刊行物3には、
複数のバーにより構成されたバーコードの記号面18からの反射光は、フォトダイオード20に入射して電気信号に変換され、バーコードを構成する二値信号とされ、
この二値信号は、異なる種類のバーコードに対応して設けた第1の読取ユニット22Aと第2の読取ユニット22Bに共通に与えられ、第1,第2の読取ユニット22A,22Bを設けて、これらで異なる種類のバーコードの識別をそれぞれ行わせるようにして、2種類のバーコードに対応するバーコード読取装置が記載されている。

上記ウ.及びエ.の事項を参照すると、刊行物3には、
バーコード読取ユニット22Aは、第1識別回路31Aおよび第2識別回路32Aならびに合成回路33Aを有し、第1識別回路31Aでは入力される二値信号を順に処理することにより左端バー17Lから順に識別を行い、また第2識別回路32Aでは入力される二値信号を一旦バッファに格納して、最後に入力された二値信号から順に処理することにより、右端バー17Rから順に右端バー17Rを基準として識別処理を行い、合成回路33は、第1および第2識別回路31A,32Aからの各識別結果を合成してバーコード17を識別するバーコード読取装置が記載されている。

上記オ.の事項を参照すると、刊行物3には、
第1の種類のバーコードに対応する第1の読取ユニット22Aの第1識別回路31Aにより第1の種類のバーコードの左端バー17Lが識別され、第2識別回路32Aにより第1の種類のバーコードの右端バー17Rが識別されて、第1の種類のバーコードが合成され、
第2の種類のバーコードに対応する第2の読取ユニット22Bの第1識別回路31Bにより第2の種類のバーコードの左端バー17Lが識別され、第2識別回路32Bにより第2の種類のバーコードの右端バー17Rが識別されて、第2の種類のバーコードが合成されることが記載されている。

以上を勘案すると、刊行物3には、
第1の種類のバーコードデータを左端バーと右端バーで囲んでなる第1の種類のバーコードと第2の種類のバーコードデータを左端バーと右端バーで囲んでなる第2の種類のバーコードとを読み取るバーコード読取装置であって、
記号面をレーザ光により走査し電気信号に変換され二値化回路のバーコードを構成する二値信号とされた検出信号から、第1の種類のバーコードの左端バーと右端バーを検出し、第1の種類のバーコードを合成する第1の読取ユニットと、
記号面をレーザ光により走査し電気信号に変換され二値化回路のバーコードを構成する二値信号とされた検出信号から、第2の種類のバーコードの左端バーと右端バーを検出し、第2の種類のバーコードを合成する第2の読取ユニットとを備え、
前記第1の読取ユニットは、前記走査手段により検出され、対応した二値化回路21の検出信号から第1の種類のバーコードの左右のバーを識別して、第1の種類のバーコードを合成するとともに、
前記第2の読取ユニットは、第2の種類のバーコードの左端バーと右端バーが検出された場合には、第2の種類のバーコードに対応する二値信号を復調し、第2の種類のバーコードを合成するバーコード読取装置の発明(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されている。

3.対比・判断
(1)対比

本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
ア.刊行物1記載の発明の「メイン部とアドオン部とを一方向に並べて構成したバーコード/アドオンバーコード」は、本願補正発明の「第1のコード体系による第1のバーコードと第2のコード体系による第2のバーコードとを一方向に並べて構成したコード」に相当する。

イ.刊行物1記載の発明の「左側キャラクタ及び右側キャラクタ」、「アドオン部キャラクタ」は、それぞれ、本願補正発明の「第1のコード体系によるデータ」、「第2のコード体系によるデータ」に相当する。

ウ.刊行物1記載の発明の「レフトガードバー(LGB)とライトガードバー(RGB)」は、メイン部を識別するガードバーであるから、本願補正発明の「第1のコード体系によるデータを囲む固定パターンの識別バー」に相当し、また、「レフトガードバー(LGB)とライトガードバー(RGB)を左右に配置したメイン部」は、本願補正発明の「第1のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなる第1のバーコード」に相当する。

エ.刊行物1記載の発明の「スペッシャルレフトガードバー(SLGB)」は、アドオン部キャラクタの左端に配置された固定バーであり、第2のコード体系によるデータに配置された固定バーである点では、本願補正発明の「第2のコード体系によるデータを囲んでなる固定パターンの識別バー」の一方のバーと一致し、
また、刊行物1記載の発明の「スペッシャルレフトガードバー(SLGB)を左に配置したアドオン部」は、右側の識別バーがなく、左側の識別バーが固定バーである第2のバーコードに相当しているから、
第2のコード体系によるデータに固定バーを配置した第2のバーコードである点では、本願補正発明の「第2のバーコード」と一致する。

オ.刊行物1記載の発明の「走査ビームにより上記バーコード/アドオンバーコードを照射し、反射光を検出してその強度を電気信号に変換する検出器と、ディジタル信号に変換するA/Dと、バーコードの白バー、黒バーの値を計数してバー幅データを出力するバー幅カウンタとから成る走査手段」は、本願補正発明の「被走査面上の走査軌跡における明暗パターンを検出する走査手段」に相当する。

カ.刊行物1記載の発明の「アドオン部の上記スペッシャルレフトガードバー(SLGB)を見つける手段」は、
検出した右ブロックから所定モジュール数の位置にバーコードがあったときにこれをアドオンバーコードと判定して見つけるものであり、SLGBは固定パターンのバーであるから、
前記第2バーコードのバーを検出する第2バーコードバー検出手段である点では、本願補正発明の「第2バーコードバー検出手段」と一致する。

キ.刊行物1記載の発明の「走査手段によって検出され出力された上記バー幅データから上記メイン部のデータを復調する手段」は、本願補正発明の「前記走査手段によって検出された明暗パターンを前記第1のコード体系に従って復調する復調手段」に相当する。

ク.刊行物1記載の発明の、「アドオン部の上記スペッシャルレフトガードバー(SLGB)を見つける手段」、「これに続いて上記アドオン部のキャラクタを検出する手段」及び「アドオンバーコードを復調する手段」は、
第2バーコードの固定バーが検出された場合には、この固定バーの明暗パターンに続く明暗パターンを検出して第2のコード体系に従って復調する復調手段である点では、本願補正発明の「第2のコード体系に従って復調する復調手段」と一致する。

ケ.刊行物1記載の発明の「バーコード/アドオンバーコードの読取方式」は、本願補正発明の「バーコード読取装置」に相当する。

したがって、両者は以下の点で一致し、以下の各点で相違する。

<一致点>
第1のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなる第1のバーコードと第2のコード体系によるデータに固定バーを配置してなる第2のバーコードとを一方向に並べて構成したコードを読み取るバーコード読取装置であって、
被走査面上の走査軌跡における明暗パターンを検出する走査手段と、
前記第2バーコードの固定バーを検出する第2バーコードバー検出手段と、
前記走査手段によって検出された明暗パターンを前記第1のコード体系に従って復調するとともに、前記第2バーコードバー検出手段によって前記第2バーコードの固定バーが検出された場合には、この明暗パターンに続く明暗パターンを前記第2のコード体系に従って復調する復調手段とを備えたバーコード読取装置。

<相違点>
(ア)第2のバーコードが、
本願補正発明では、第2のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなるのに対し、
刊行物1記載の発明では、SLGBを左側のみに配置している点。

(イ)第2のバーコードバー検出手段が、
本願補正発明では、識別バーに対応する明暗パターンから第2のバーコードの識別バーを検出する第2のバーコード識別バー検出手段であるのに対し、
刊行物1記載の発明では、メイン部から所定の位置にあるSLGBを検出する手段である点。

(ウ)復調手段が、
本願補正発明では、第2バーコードの識別バーに対応するパターンが検出された場合には、第2のコード体系に従って復調するのに対し、
刊行物1記載の発明では、SLGBのパターンに続いて、アドオン部のキャラクタのパターンを検出して復調する点。

(エ)復調手段が、
本願補正発明では、復調アルゴリズムを第2のコード体系に切り替えて、第2のコード体系に従って復調するのに対し、
刊行物1記載の発明では、復調アルゴリズムを第2のコード体系に切り替える構成を備えていない点。

(2)判断
上記の相違点(ア)については、
刊行物1には、異なる種類のコード体系のバーコードを一方向に並べたバーコードが開示されていると共に、
バーコードのデータを左端バーと右端バーによって囲んでなるバーコードとして複数の異なる種類のバーコード体系があることが開示されており、

また、刊行物3には、第1の種類のバーコードデータを左端バーと右端バーで囲んでなる第1の種類のバーコードと第2の種類のバーコードデータを左端バーと右端バーで囲んでなる第2の種類のバーコードとを読み取るバーコード読取装置が記載され、
異なる種類のコード体系のバーコードとして、バーコードデータを左端バーと右端バーで囲んでなる複数の種類のバーコードを用いることが開示されているから、

刊行物3記載の発明を参照すれば、
上記刊行物1記載の発明の、メイン部とアドオン部とを一方向に並べて構成したバーコード/アドオンバーコードのメイン部とアドオン部とを、左端バーと右端バーで囲む複数の種類のバーコードに変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

また、上記の相違点(イ)及び(ウ)については、
刊行物2には、従来例として、
コード体系の異なる、メインバーコードシンボルMBSとアドオンバーコードシンボルABSの2つのバーコードを組み合わせたアドオンバーコード付バーコードにおいて、
アドオンバーコードシンボルABSの左側に設けられたスペッシャル左側ガードバーSLGBも、メインバーコードMBSの左側ガードバーLGBと同様に、読取り出力がバーコードシンボルの読取り出力か否かを判定するために設けられることが記載されており、
刊行物2の従来技術においては、SLGBが、LGBと同様に、バーコードの明暗パターンから検出され、読取り出力がバーコードシンボルであることを示す識別バーとして用いられることが開示されているから、

刊行物2の従来技術の発明を参照すれば、刊行物1記載の発明の、SLGBをメイン部からの所定の位置にあるものとして検出する構成に代えて、
SLGBの明暗パターンを検出し、第2のバーコードの識別バーとして機能するように変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

また、同じく、刊行物3には、
記号面をレーザ光により走査し電気信号に変換され二値化回路によりバーコードを構成する二値信号とされた検出信号から、第1の種類のバーコードを第1の読取ユニットにより識別し、
また、記号面をレーザ光により走査し電気信号に変換され二値化回路によりバーコードを構成する二値信号とされた検出信号から、第2の種類のバーコードを第2の読取ユニットにより識別するバーコード読取装置の発明が記載されており、
第2の読取ユニットにより、バーコードを構成する二値信号とされた検出信号から、第2の種類のバーコードデータを左端バーと右端バーで囲んでなる第2の種類のバーコードを検出・復調されることが開示されているから、

刊行物3記載の発明をも参照すれば、第2バーコードの識別バーに対応するパターンが検出された場合には、第2のコード体系に従って復調する復調手段を用いるように変更することは当業者が容易に想到することができたものである。

そして、今回の補正による上記の相違点(エ)については、
復調手段をハードウェアでなく、復調アルゴリズムにより構成して選択すること、及び、復調アルゴリズムを切り替えてコード体系を変更することは、本願の出願の時点では、当業者にとって周知技術である(例:特開昭56-31169号公報、第3頁右上欄第4行から7行「ハードウェアで実現していた機能をソフトウェアに置換えることができるので、ハードウェアの価格を下げ、またコードの変更に対処しやすくすることができる。」:特開昭62-67628号公報、第1頁左下欄第9行から12行「デコーダ制御回路における解読プログラムを選択し実行する様にしたことを特徴とするバーコードリーダのデコーダ。」:特開平4-263381号公報、第3頁右欄第9行〜12行「読み取ったデータのうちからバーコードデータを抽出しソフトウエアを用いて、バーコードの復調を行うバーコード読取装置。」及び第3頁右欄第23行〜28行「バーコード認識部103を読み取りを希望するバーコードの種類の数だけ設け、各バーコード認識部103は対応する種類のバーコードを認識するようにする。また、このバーコード認識部103のうち所定のバーコードの種類に対応するバーコード認識部103のみ作動させる選択回路を設ける。」等の記載を参照のこと。)と認められるから、

これらの周知技術を参照すれば、第2バーコードの識別バーに対応するパターンが検出された場合に第2のコード体系に従って復調する際に、
このコード体系の切換えを復調アルゴリズムを異なるコード体系に切り替えて行うように変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

したがって、本件補正発明は、刊行物1乃至刊行物3記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成15年1月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年2月22日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりの事項により特定されるものである。
「第1のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなる第1のバーコードと第2のコード体系によるデータを固定パターンの識別バーによって囲んでなる第2のバーコードとを一方向に並べて構成したコードを読み取るバーコード読取装置であって、
被走査面上の走査軌跡における明暗パターンを検出する走査手段と、
前記第2バーコードの識別バーに対応するパターンを、前記走査手段によって検出された明暗パターンから検出する第2バーコード識別バー検出手段と、
前記走査手段によって検出された明暗パターンを前記第1のコード体系に従って復調するとともに、前記第2バーコード識別バー検出手段によって前記第2バーコードの識別バーに対応するパターンが検出された場合には、この明暗パターンに続く明暗パターンを前記第2のコード体系に従って復調する復調手段とを備えたことを特徴とするバーコード読取装置。」

2.刊行物記載の発明
当審の拒絶の理由に引用された刊行物に記載された発明は、前記第2の2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「第2のコード体系に従って復調する復調手段」を「復調アルゴリズムを第2のコード体系に切り替えて、第2のコード体系に従って復調する復調手段」へ限定した構成を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の3.に記載したとおり、刊行物1乃至刊行物3記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
本願発明も同様の理由により、刊行物1乃至刊行物3記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1乃至刊行物3記載の発明並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-02-27 
結審通知日 2003-03-04 
審決日 2003-03-19 
出願番号 特願平7-339478
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
P 1 8・ 575- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 西川 正俊
特許庁審判官 吉見 信明
前田 典之
発明の名称 バーコード読取装置  
代理人 遠山 勉  
代理人 大菅 義之  
代理人 松倉 秀実  
代理人 大菅 義之  
代理人 松倉 秀実  
代理人 遠山 勉  

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