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審決分類 |
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 G03G 審判 全部申し立て 特29条の2 G03G 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 G03G |
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管理番号 | 1076303 |
異議申立番号 | 異議2002-72047 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-07-16 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-08-19 |
確定日 | 2003-03-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3256823号「カラートナー」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3256823号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3256823号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年12月27日に特許出願され、平成13年12月7日に設定登録がなされ、その後、特許異議申立人花王株式会社(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成14年10月25日付けで取消理由通知がなされ、その後平成15年1月21日付けで再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年2月10日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 a.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を有するカラートナーにおいて、該結着樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、さらに、酸価をAVとしたとき、下記に示す次式 2000<Mn<7000 (a) 5≦AV×<S2>/Mn≦200 (b) を満足する結着樹脂を用いることを特徴とするカラートナー。」 を、 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を有するカラートナーにおいて、該結着樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、さらに、酸価をAVとしたとき、下記に示す次式 2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c)を満足する結着樹脂を用いることを特徴とするカラートナー。」 と訂正する。 b.訂正事項b 発明の詳細な説明の【0019】の記載 「【課題を解決するための手段及び作用】 本発明の目的は、結着樹脂のGPCにより測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、および該結着樹脂の酸化AVが下記に示す式(a),(b)を満足する場合のトナーにより達成される。」 を、 「【課題を解決するための手段及び作用】 本発明の目的は、結着樹脂のGPCにより測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、および該結着樹脂の酸化AVが下記に示す式(a),(b),(c)を満足する場合のトナーにより達成される。」 と訂正する。 c.訂正事項c 発明の詳細な説明の【0020】の記載 「2000<Mn<7000 (a) 5≦AV×<S2>/Mn≦200 (b) 」 を、 「2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c) 」 と訂正する。 d.訂正事項d 発明の詳細な説明の【0153】の記載 「実施例2〜9 実施例1と同様な方法で樹脂製造例2〜9のポリエステル樹脂を現像剤化し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。」 を、 「実施例2〜4及び参考例1〜5 実施例1と同様な方法で樹脂製造例2〜9のポリエステル樹脂を現像剤化し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。」 と訂正する。 e.訂正事項e 発明の詳細な説明の【0155】の記載 「実施例1〜9に比べ定着性の点でオフセット性に問題があり、また高温保存性の点で実用上支障がある。」 を、 「実施例1〜4及び参考例1〜5に比べ定着性の点でオフセット性に問題があり、また高温保存性の点で実用上支障がある。」 と訂正する。 f.訂正事項f 発明の詳細な説明の【0159】の記載 「【表1】 」 を、 「【表1】 」 と訂正する。 g.訂正事項g 発明の詳細な説明の【0160】の記載 「【表2】 」を、 「【表2】 」 と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、請求項1を限定するものであるから、特許請求の範囲の滅縮を目的とした明細書の訂正に該当する。上記訂正事項b〜gは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項および第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 (1)特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、請求項1に係る発明は、申立人が提出した甲第2号証である実験成績証明書を参酌すると、その出願の日前の特許出願であってその出願後に出願公開がされた特願平6-188882号の願書に最初に添付された明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであり、また、本件出願は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていないものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。 (2)本件の請求項1に係る発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を有するカラートナーにおいて、該結着樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、さらに、酸価をAVとしたとき、下記に示す次式 2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c)を満足する結着樹脂を用いることを特徴とするカラートナー。」 (3)29条の2について (3)-1.引用先願明細書及び実験成績証明書の記載事項 当審が通知した取消理由通知に引用した先願明細書:特願平6-188882号(特開平8-30027号公報〔申立人が提出した甲第1号証〕参照)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を含有してなる電子写真用トナーにおいて、該結着樹脂の主成分が線状ポリエステルであり、かつ該結着樹脂の粉砕性指数が14〜40であることを特徴とする電子写真用トナー。 … 【請求項5】 電子写真用トナーがカラー電子写真用トナーである請求項1〜4いずれか記載の電子写真用トナー。 …」(特許請求の範囲) 「【産業上の利用分野】本発明は、電子写真用トナーおよび該トナーを含有してなる現像剤組成物に関する。さらに詳しくは、トナー、特にカラートナーに必要とされる透明性、定着面の平滑性に優れた電子写真用トナーおよび現像剤組成物に関する。又、本発明は、非接触熱定着方式を用いる電子写真用トナーおよび現像剤組成物、非磁性トナー用現像剤組成物に関する。」(【0001】) 「また、フルカラー電子写真法では、複数回の現像を行い、同一の転写材上に色の異なる数種のトナー層の重ね合わせ行うが、このようなカラー電子写真法ではトナー用バインダーが持つべき条件として下記の事項が挙げられる。 (1)定着したトナーは、光に対して乱反射して、色再現を妨げることのないように、トナー粒子の形が原形を留めないほど、完全溶融に近い状態となることが必要である。 (2)そのトナー層の下に存在する、異なった色調のトナー層の色調を妨げない程度の透明性を有するバインダー樹脂でなければならない。 このようにフルカラー複写機用のトナー用バインダーとしては、定着温度領域が広いだけではなく、樹脂の透明性と、定着されたときに定着面がフラットになることも要求されており、モノカラー複写機用で要求される、定着温度領域が広く耐オフセット性の高いという性能に加え、要求される条件がさらに厳しくなっている。 従って、モノカラートナー用に開発された耐オフセット性を向上させる方法が、そのままフルカラートナー用バインダーに適用できないのが現状である。例えば多価カルボン酸を用いポリエステル中に三次元構造を持たせることにより、トナーの耐オフセット性を向上させる方法が、特開昭57?109825号公報、特公昭59?11902号公報に開示されている。しかし、これらの方法では耐オフセット性を向上させることはできるが、架橋酸成分量が多いため、得られるトナーの弾性が大きくなり、従って比較的低温領域では定着面はフラットにならず、フルカラートナー用としては、色再現という面から問題があった。 以上のように、適度な硬さを持つと共に、トナーの基本特性である帯電安定性、低温定着性、及びフルカラートナー特性である透明性、定着面の平滑性を同時に満足する事は極めて難しい。 本発明の目的は、かかる課題を解決すべく、耐衝撃性に優れるため長期間の使用においても高画質が維持でき、低温低湿・高温高湿の何れの環境下においてもそれらの影響が極めて小さく、透明性が高く、低温定着が可能で、平滑な定着面を形成することのできる電子写真用トナー及び現像剤組成物を提供することにある。更に本発明の目的は、非接触熱定着方式に要求される低分子量バインダーに適度な硬さをもたせることにより、トナーの微粉化等を防ぎ長期間使用においても高画質を維持することができる電子写真用トナー及び現像剤組成物を提供することにある。」(【0012】〜【0017】) 「製造例1(樹脂Aの製造) ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 700g ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 975g フマール酸 435g ジメチルテレフタレート 194g ハイドロキノン 1g 以上の物質(フマール酸が全酸成分中90mol%)を通常のエステル化触媒(酸化ジブチルスズ)と共にガラス製3Lの4つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を取付、電熱マントルヒーター中で窒素気流下、前半230℃常圧、後半200℃減圧にて攪拌しつつ反応を進めた。得られた線状ポリエステル樹脂は酸価7.1KOHmg/g、水酸基価13.5KOHmg/g、高化式フローテスター軟化温度108.6℃、流出開始温度82.8℃、粉砕性指数は22.8であった。」(【0046】【0047】) 「製造例3(樹脂Cの製造) ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 875g ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 813g テレフタル酸 249g イソフタル酸 125g フマール酸 290g ハイドロキノン 1g 以上の物質(フマール酸が全酸成分中52mol%)を用い、製造例1と同様の装置、同様の方法にて反応を進めた。 得られた線状ポリエステル樹脂は酸価5.9KOHmg/g、水酸基価19.8KOHmg/g、高化式フローテスター軟化温度107.8℃、流出開始温度89.9℃、粉砕性指数は25.8であった。」(【0050】【0051】) 「製造例6(樹脂Fの製造、比較用) ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 700g ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 975g テレフタル酸 332g フマール酸 255g 無水トリメリット酸 15g ハイドロキノン 1g 以上の物質(フマール酸が全酸成分中46mol%)を用い、製造例1と同様の装置、同様の方法にて反応を進めた。得られた分岐ポリエステル樹脂は酸価27.8KOHmg/g、水酸基価15.1KOHmg/g、高化式フローテスター軟化温度107.2℃、流出開始温度79.8℃、粉砕性指数は18.8であった。」(【0056】【0057】) 「実施例1 下記組成の材料をボールミルで混合後、加圧ニーダーにて溶融混練し、冷却後、通常の粉砕・分級工程を経て、平均粒径8μmのカラートナーを調製した。 樹脂A 100部 C.I.ピグメントレッド 115部 ビスコール550P(三洋化成社製) 2部 以上の処方で得た未処理トナー100重量部に対し疎水性シリカR-972(日本アエロジル社製)0.3重量部を添加し、トナー1とした。」(【0060】) 「実施例3 実施例1における樹脂Aを樹脂Cに代える以外は同様に調製し、表面処理まで行い、トナー3とした。」(【0062】) 「実施例5 樹脂A 100部 C.I.ピグメントブルー15:3 5部 ビスコール550P(三洋化成社製) 2部 以上の処方で得た未処理トナー100重量部に対し疎水性シリカR?972(日本アエロジル社製)0.3重量部を添加し、トナー5とした。」(【0064】) 「比較例5 実施例5における樹脂Aを樹脂Fに代える以外は同様に調製し、表面処理まで行い、比較トナー5とした。」(【0074】) 「(4)透明性 樹脂の透明性は、画像電子学会チャート No.22のコピーをOHPで投影し、波長400nm〜70nmの範囲における分光透過率を測定し、そのMaxの透過率とMinの透過率の差が50%以上を○、50%未満を×とした。なお、定着後の平滑性が悪いと、透明性も悪くなるため、透明性の評価により、平滑な定着面が得られたか否か判断することができる。(【0082】) 「 」(【0086】) 「 」(【0087】) 「【発明の効果】本発明の電子写真用トナー又は現像剤組成物を用いると、耐衝撃性に優れるため長期間使用においても高画質が維持でき、低温低湿・高温高湿の何れの環境下においてもそれらの影響が極めて小さく、また透明性が高く、平滑な定着面を形成することができるとともに、低温定着が可能である。」(【0089】) 申立人が提出した甲第2号証である「実験成績証明書」(平成14年7月25日 花王株式会社化学品研究所第3研究室第1グループ 青木克敏 作成)には、以下の事項が記載されている。 「2.実験方法 1)特開平8-30027号公報の製造例3(樹脂Cの製造)に記載の方法に従ってポリエステル樹脂を製造した。 ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 875g ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 813g テレフタル酸 249g イソフタル酸 125g フマール酸 290g ハイドロキノン 1g 以上の物質を通常のエステル化触媒(酸化ジブチルスズ)と共にガラス製3Lの4つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を取付、電熱マントルヒーター中で窒素気流下、前半230℃常圧、後半200℃減圧にて攪拌しつつ反応を進め、線状ポリエステル樹脂を得た。 2)特開平8-30027号公報の製造例6(樹脂Fの製造)に記載の方法に従ってポリエステル樹脂を製造した。 ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 700g ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス (4-ヒドロキシフェニル)プロパン 975g テレフタル酸 332g フマール酸 255g 無水トリメリット酸 15g ハイドロキノン 1g 以上の物質を用い、製造例3と同様の装置、同様の方法にて反応を進め、線状ポリエステル樹脂を得た。 … 4.結果 … … 5.考察 以上の結果より、特開平8-30027号公報の製造例3(樹脂Cの製造)及び製造例6(樹脂Fの製造)を追試し、得られたポリエステル樹脂の数平均分子量Mn、平均二乗慣性半径<S2>、酸価AVを測定した結果、これらの樹脂はいずれも式(a)、(b)を満足するものであった。」 (3)-2.対比、判断 申立人が、先願明細書記載の製造例3(樹脂Cの製造)及び製造例6(樹脂Fの製造)の追試実験により製造したポリエステル樹脂の数平均分子量Mn、平均二乗慣性半径<S2>、酸価AVを測定した結果は、上記「実験成績証明書」に記載のとおりであり、いずれも訂正後の式(a)及び(c)を満足していない。 したがって、申立人が提出した甲第2号証である実験成績証明書を参酌しても、本件発明は先願明細書に記載された発明とすることはできない。 (4)36条について 上記訂正により、請求項1に係るカラートナーの発明は、その結着樹脂について、数平均分子量は、訂正前の2000≦Mn≦7000という一般的な範囲から、より優れた特有の効果を奏することが訂正後の実施例により明らかな範囲2070≦Mn≦3800に限定されるとともに、平均二乗慣性半径も、より優れた特有の効果を奏することが訂正後の実施例により明らかな範囲3600≦<S2>≦10700に特定され、また、AV×<S2>/Mnも、より優れた特有の効果を奏することが訂正後の実施例により明らかな範囲5.0<AV×<S2>/Mn<93.0に限定された。 したがって、上記訂正により、本件明細書には、本件発明に係るカラートナーに関し、訂正後の請求項1で規定される上記各範囲について、それを支持すべく充分な実施例が記載されていると認められる。また、本件明細書には、Mn、<S2>、AV×<S2>/Mnの意味及びこれらが特定の範囲となるべきことについて説明されているし、上記訂正により、従来技術との構成及び効果上の差違も明らかにされている。したがって、本件発明の技術的意義は明らかになっている。 また、本件明細書には、訂正後の請求項1で規定される各範囲を満たす結着樹脂の具体的製法も、訂正後の実施例等に記載されているから、当業者であれば、本件発明に係るカラートナーを容易に製造することができる。 したがって、本件出願は、明細書の記載が不備であるとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 カラートナー (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を有するカラートナーにおいて、該結着樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、さらに、酸価をAVとしたとき、下記に示す次式 2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c) を満足する結着樹脂を用いることを特徴とするカラートナー。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明はカラー電子写真法に用いられるカラートナーにおいて現像性,保存性が良好で、特に定着性にすぐれ、かつ高温保存性も良好で、しかも十分な定着面の平滑性を有し、カラートナーに重要な混色における色再現性に特にすぐれたカラートナーに関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42-23910号公報及び特公昭43-24748号公報等に記載されている如く、多数の方法が知られているが、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで、該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱,圧力或は溶剤蒸気などにより定着し複写物を得るものである。 【0003】 上述の最終工程であるトナー像を紙などのシートに定着する工程に関しては種々の方法や装置が開発されている。現在最も一般的な方法は加熱ローラーによる圧着加熱方式である。 【0004】 加熱ローラーによる圧着加熱方式は、トナーに対し離型性を有する材料で表面を形成した加熱ローラーの表面に、被定着シートのトナー像面を加圧下で接触しながら通過せしめることにより定着を行なうものである。この方法は加熱ローラー表面と被定着シートのトナー像とが加圧下で接触するため、トナー像を被定着シート上に融着する際の熱効率が極めて良好であり、迅速に定着を行なうことができ、高速度電子写真複写機において非常に有効である。しかしながら、上記方法では、加熱ローラー表面とトナー像とが溶融状態で加圧下で接触するためにトナー像の一部が定着ローラー表面に付着・転移し、次の被定着シートにこれが再転移していわゆるオフセット現象を生じ、被定着シートを汚すことがある。加熱定着ローラー表面に対してトナーが付着しないようにすることが加熱ローラー定着方式の必須条件の一つとされている。 【0005】 すなわち定着温度領域の広い耐オフセット性の高いトナー用バインダー樹脂の開発が望まれているのが現状である。 【0006】 また、2色カラー複写機や、フルカラー複写機の検討及び実用化も多くなされている。例えば「電子写真学会誌」Vol22.No1(1983)や「電子写真学会誌」Vol25.No1.P52(1986)の如く色再現性,階調再現性の報告もある。 【0007】 しかしテレビ,写真,カラー印刷物の様に実物と直ちに対比されることはなく、また、実物よりも美しく加工されたカラー画像を見なれた人々にとっても、現在実用化されているフルカラー電子写真画像は必ずしも満足しうるものとはなっていない。 【0008】 フルカラー電子写真法では、複数回の現像を行い、同一支持体上に色の異なる数種のトナー層の重ね合わせを必要とするカラー電子写真法ではカラートナーが持つべき必要な条件としては下記の事項が挙げられる。 【0009】 ▲1▼ 定着したトナーは、光に対して乱反射して、色再現を妨げることのないように、トナー粒子の形が判別できないほどのほぼ完全溶融に近い状態となることが必要である。 【0010】 ▲2▼ そのトナー層の下にある異なった色調のトナー層を妨げない透明性を有する着色トナーでなければならない。 【0011】 従来、フルカラートナー用結着樹脂の定着温度領域を拡げる目的では特開昭57-208559号,同58-11954号,同59-228661号各公報で、オフセット防止剤を用いる方法が開示されているが、流動性が低下し二成分系現像剤ではキャリアのオフセット剤によるスペント化が促進され、さらにフルカラー用としては透明性が低下する欠点を有する。 【0012】 また特開昭57-109825号公報,特開昭59-11902号公報では多価カルボン酸を用いた三次元構造を持たせたポリエステル樹脂、また特開平2-272459号公報,特開平3-72505号公報に多官能開始剤を用いてまたマクロモノマーを用いた(特開平3-203746号公報)分岐または三次元構造のビニル系樹脂により、耐オフセット性を向上させる方法が開示されているが、架橋または分岐が多いためトナー化した際の弾性が大きくなり、比較的低温領域では定着面の平滑性がなくフルカラートナーとしては色再現という点では問題がある。この問題を解決するためにソフトセグメントであるコハク酸を導入したポリエステル樹脂(特開昭59-7960号,同59-9669号各公報)が提案されているが、トナー保存性の点では十分でなく未だに定着面の平滑性改良としても、まだ不十分であると言わざるをえない。 【0013】 以上の様に定着温度領域を拡げることと、トナーとしての帯電特性,流動性,耐久性,透明性,定着面の平滑性、さらに耐ブロッキング性を含めたトナー保存性を同時に満足することは難しい。 【0014】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、上記の問題点を改良した新規なカラートナーを提供することにある。 【0015】 すなわち、本発明の目的は、光に対し乱反射して色再現を妨げることのないように平滑な定着面を形成する熱ローラー定着用カラートナーを提供することにある。 【0016】 さらに本発明の目的は、流動性に優れ、凝集を起こさず、耐衝撃性にも優れている熱ローラー定着用カラートナーを提供することにある。 【0017】 さらに本発明の目的は、荷電性が良好でしかも使用中に常に安定した荷電性を示し、鮮明でカブリのない画像の得られるカラートナーを提供することにある。 【0018】 さらに本発明の目的は、保存性が良好であり低湿下の環境においても安定した現像性を有するカラートナーを提供することにある。 【0019】 【課題を解決するための手段及び作用】 本発明の目的は、結着樹脂のGPCにより測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、および該結着樹脂の酸化AVが下記に示す式(a),(b),(c)を満足する場合のトナーにより達成される。 【0020】 2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c) 【0021】 これは以下の理由によるものである。 【0022】 <S2>/Mnとはポリマー分子個々の平均的な広がりを表わし、この分子の平均的な広がりと樹脂の酸価との積が、トナーとしての定着性,保存性および低湿下での現像性に相関性があることを本発明者らは見い出した。 【0023】 カラートナーには一般のモノクロトナーと異なり、定着面の平滑性が重要であることは先に述べたが、<S2>/Mnの値が特にこの定着面の平滑性に相関性が強く、分子の平均的な広がりが熱ロール定着時における分子の熱によるモビリティー(動きやすさ)の指標となり、これが大きいほど平滑性のある定着性には有利であるが、これが大きすぎるとトナーとしての保存性が著しく低下する。本発明者らはこの分子のモビリティーに着目してさらに結着樹脂の化学的親和性を示す指標である酸価との関係を鋭意検討した結果、酸価は分子のモビリティーにより紙との親和性での定着性に係るのみでなく、保存性、さらに低湿下でのトナーに過剰に蓄積する電荷を緩和し、特に低湿下でおこるトナーのチャージアップ防止に効果を有することを見い出し、上記の式(a),(b)を導くに至った。 【0024】 これをさらに詳細に説明すると、Mnが2000以下では電荷緩和効果が著しい反面トナーとしての保存性が悪く、Mnが7000以上では電荷緩和効果が小さくまた定着性も悪化する。 【0025】 一方、AV×<S2>/Mnが5未満の場合は、トナー粒子間凝集性が小さいためトナーの流動性がよく、保存性の点で優れているが、ポリマー分子の広がりが小さくまた酸価成分による紙との親和性も小さいため定着性が悪く、十分な定着面の平滑性が得られない。さらに低湿下におけるトナー電荷緩和効果も小さいためか、現像性が著しく低下する。また着色剤の分散性も十分ではなく着色力の点で劣る。 【0026】 またAV×<S2>/Mnが200を超える場合は、定着性の点では高温(200℃以上)の熱ロール定着でホットオフセットが発生しやすく、またトナー粒子間凝集性も高く、保存性が十分でない。また着色剤が凝集したドメインで樹脂中に分散するためか、この場合も十分な着色力が得られない。 【0027】 本発明の結着樹脂は、好ましくはAV×<S2>/Mnが6以上195未満、より好ましくはAV×<S2>/Mnが7以上193未満が好ましい。 【0028】 本発明に用いられる結着樹脂としては、少なくとも酸価を有する結着樹脂でかつ分子鎖のひろがり,分子骨格のコンホメーションを制御する必要があり、このための代表的な結着樹脂としてポリエステル樹脂,ビニル系樹脂等があげられる。 【0029】 分子鎖のひろがり、分子骨格のコンホメーションを制御するに際し、その合成方法は特に限定しないが、分子骨格のコンホメーションを制御しやすいポリエステル樹脂合成のほんの一例として以下に述べると、1種類以上のジエステル化合物と3官能以上のモノマーとの3種類以上のエステル交換反応で重縮合反応を進める。より具体的に述べると ジカルボン酸A(A=HOOC-R1-COOH)と2倍モルのジオールB(B=HO-R2-OH)とでジエステル化合物BABを合成する。 【0030】 【化1】 【0031】 次にジオールC(C=HO-R3-OH)と2倍モルのジカルボン酸D(D=HOOC-R4-COOH)とでジエステル化合物DCDを合成する。 【0032】 【化2】 【0033】 ジエステル化合物BABとジエステル化合物DCDとさらに三官能以上のモノマーを必要に応じて加え、ジエステル化合物同士および多官能モノマーの3つのエステル交換反応により重縮合をすすめ、ジエステル化合物のモル比率等の調整で分子鎖のコンホメーションを制御する。上述のポリエステルの合成の場合、 【0034】 【化3】 という規則性で容易に分子鎖のコンホメーションの骨子が決められ、これに三官能モノマーの三次元性を構築して「分子鎖のひろがり」が決定される。ただし本発明はこの合成法だけに限定されるものではない。 【0035】 またビニル系樹脂の場合は、酸基含有ビニル系モノマーとラジカル重合開始剤とを重合途中に複数回に分けて添加し、分子鎖のひろがりと酸価を制御する方法があげられる。 【0036】 本発明に用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。 【0037】 本発明に用いられるポリエステル樹脂は、全成分中45〜55mol%がアルコール成分であり、55〜45mol%が酸成分である。 【0038】 アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(イ)式で表わされるビスフェノール誘導体; 【0039】 【化4】 【0040】 また(ロ)式で示されるジオール類; 【0041】 【化5】 等のジオール類が挙げられる。 【0042】 また、3価以上のポリオール類としてグリセリン、ソルビット、ソルビタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類が挙げられる。 【0043】 また、全酸成分中50mol%以上を含む2価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのべンゼンジカルボン酸類又はその無水物;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたこはく酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。 【0044】 また3価以上のポリガルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、トリメリット酸モノメチルエステル、ナフタリントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸等が挙げられる。 【0045】 ビニル系樹脂を生成するためのビニル系モノマーとしては、次のようなものが挙げられる。 【0046】 例えばスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレンの如きスチレン及びその誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンの如きエチレン不飽和モノオレフィン類;ブタジエンの如き不飽和ジオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、沸化ビニルの如きハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルの如きビニルエステル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンの如きビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドンの如きN-ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドの如きアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体;前述のα,β-不飽和酸のエステル、二塩基酸のジエステル類が挙げられる。 【0047】 また、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸の如き不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物の如き不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルの如き不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸の如き不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸の如きα,β-不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物の如きα,β-不飽和酸無水物、該α,β-不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。 【0048】 また、ラジカル重合性の3官能以上の開始剤としては、トリス(t-ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t-ブチルパーオキシ)シラン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス-(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン等のラジカル重合性多官能重合開始剤があり、これらの開始剤を用いて前述した方法で、本発明トナーにおける結着樹脂を合成することができる。 【0049】 本発明の目的に適合するカラートナーの着色剤としては下記の顔料または染料が挙げられる。尚、本発明において耐光性の悪いC.I.Disperse Y164;C.I.Solvent Y77及びC.I.Solvent Y93の如き着色剤は、推奨できないものである。 【0050】 染料としては、例えばC.I.ダイレクトレッド1;C.I.ダイレクトレッド4;C.I.アシッドレッド1;C.I.ベーシックレッド1;C.I.モーダントレッド30;C.I.ダイレクトブルー1;C.I.ダイレクトブルー2;C.I.アシッドブルー9;C.I.アシッドブルー15;C.I.ベーシックブルー3;C.I.ベーシックブルー5;C.I.モーダントブルー7等がある。 【0051】 顔料としては、ナフトールイエローS,ハンザイエローG,パーマネントイエローNCG,パーマネントオレンジGTR,ピラゾロンオレンジ,ベンジジンオレンジG,パーマネントレッド4R,ウオッチングレッドカルシウム塩,ブリリアントカーミン3B,ファストバイオレットB,メチルバイオレットレーキ,フタロシアニンブルー,ファーストスカイブルー,インダンスレンブルーBC等がある。 【0052】 好ましくは顔料としてはジスアゾイエロー,不溶性アゾ顔料,銅フタロシアニン,染料としては塩基性染料,油溶性染料が適している。 【0053】 特に好ましくはC.I.ピグメントイエロー17;C.I.ピグメントイエロー15;C.I.ピグメントイエロー13;C.I.ピグメントイエロー14;C.I.ピグメントイエロー12;C.I.ピグメントレッド5;C.I.ピグメントレッド3;C.I.ピグメントレッド2;C.I.ピグメントレッド6;C.I.ピグメントレッド7;C.I.ピグメントブルー15;C.I.ピグメントブルー16または下記で示される構造式(I)を有する、フタロシアニン骨格に置換基を2〜3個置換した銅フタロシアニン系顔料などである。 【0054】 【化6】 【0055】 染料としては、C.I.ソルベントレッド49;C.I.ソルベントレッド52;C.I.ソルベントレッド109;C.I.ベイシックレッド12;C.I.ベイシックレッド1;C.I.ベイシックレッド3bなどである。 【0056】 その含有量としては、OHPフィルムの透過性に対し敏感に反映するイエロートナーについては、結着樹脂100重量部に対して12重量部以下であり、好ましくは0.5〜7重量部が好ましい。 【0057】 12重量部以上であると、イエローの混合色であるグリーン,レッド,また、画像としては人間の肌色の再現性に劣る。 【0058】 その他のマゼンタ,シアンのカラートナーについては、結着樹脂100重量部に対しては15重量部以下、より好ましくは0.1〜9重量部が好ましい。 【0059】 本発明に係るカラートナーには、負荷電特性を安定化するために、荷電制御剤を配合することも好ましい。その際トナーの色調に影響をあたえない無色または淡色の負荷電制御剤が好ましい。 【0060】 本発明のカラートナーには現像剤としてキャリアを併用することもでき、キャリアとしては、例えば表面酸化または未酸化の鉄,ニッケル,銅,亜鉛,コバルト,マンガン,クロム,希土類等の金属及びそれらの合金または酸化物及び磁性フェライトなどが使用できる。またその製造方法として特別な制約はない。 【0061】 また、上記キャリアの表面を樹脂等で浸漬する系は、特に好ましい。その方法としては、樹脂等の被覆材を溶解剤中に溶解もしくは懸濁せしめて塗布しキャリアに付着せしめる方法、単に粉体で混合する方法等、従来公知の方法がいずれも適用できる。 【0062】 キャリア表面への固着物質としてはトナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン,モノクロロトリフルオロエチレン重合体,ポリフッ化ビニリデン,シリコーン樹脂,ポリエステル樹脂,スチレン系樹脂,アクリル系樹脂,ポリアミド,ポリビニルブチラール,ニグロシン,アミノアクリレート樹脂,塩基性染料及びそのレーキ,シランカップリング剤,シリカ微粉末,アルミナ微粉末,ジアルキルサリチル酸の金属錯体または金属塩などを単独或は複数で用いるのが適当である。 【0063】 上記の化合物の処理は、キャリアが前記条件を満足するよう適宜決定すれば良いが、一般的には総量で本発明のキャリアに対し0.1〜30重量%(好ましくは0.5〜20重量%)が好ましい。 【0064】 これらキャリアの平均粒径は20〜100μm、好ましくは25〜70μm、より好ましくは25〜65μmを有することが好ましい。 【0065】 特に好ましい態様としては、フェライトであり、その粒度分布が、22μmより小さいキャリア粒子が1〜20%、16μmより小さいキャリア粒子が3%以下、62μm以上のキャリア粒子が2〜15%、88μm以上のキャリアが2%以下であるコート磁性フェライトキャリアがあげられる。 【0066】 なお、キャリアの平均粒径および粒度分布の測定はマイクロトラック粒度分析計(日機装株式会社)のSRAタイプを使用し0.7〜125μmのレンジ設定で行なった。 【0067】 上記コートフェライトキャリアは粒径分布がシャープであり、本発明のトナーに対し好ましい摩擦帯電性が得られ、さらに電子写真特性を向上させる効果がある。 【0068】 本発明に係るカラートナーと混合して二成分現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、1重量%〜15重量%、好ましくは2重量%〜13重量%にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が1重量%未満では画像濃度が低くなり、15重量%を超えるとカブリや機内飛散を増加せしめ、現像剤の耐用寿命を短縮しがちである。 【0069】 また、重合体のJIS K-0070に準じた方法で測定した酸価が1〜50mgKOH/gであることが好ましく、更に好ましくは1〜40mgKOH/gである。 【0070】 本発明のカラートナーは離型剤を含有してもかまわない。 【0071】 本発明に用いられる離型剤としては次のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また、酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。また、極性基を有する離型剤としては次のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類、また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。 【0072】 本発明に用いられる離型剤の量は、結着樹脂100重量部あたり0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部が望ましい。これは、離型剤の量が、20重量部を超えると、耐ブロッキング性や耐高温オフセットが悪いものとなり、0.1重量部より少ないと、離型効果が小さい。 【0073】 また、これらの離型剤は、通常、樹脂を溶剤に溶解し、樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、混練時に混合する方法で結着樹脂に含有される。 【0074】 本発明に係るトナーには荷電特性を安定化するために荷電制御剤を配合しても良い。その際トナーの色調に影響を与えない無色または淡色の荷電制御剤が好ましい。本発明においては、負荷電性現像剤を使用したとき、本発明は一層効果的になり、その際の負荷電制御剤としては例えばアルキル置換サリチル酸の金属錯体(例えばジ-tert-ブチルサリチル酸のクロム錯体または亜鉛錯体またはアルミニウム錯体)の如き有機金属錯体が挙げられる。負荷電制御剤をトナーに配合する場合には結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部添加するのが良い。 【0075】 本発明に用いられる負帯電性流動化剤としては、着色剤含有樹脂粒子に添加することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得るものであれば、どのようなものでも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン微粉末,ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ,乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末をシランカップリング剤,チタンカップリング剤,シリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ、酸化チタン、アルミナ等がある。 【0076】 例えば乾式製法シリカとしては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。 【0077】 SiCl2+2H2+O2→SiO2+4HCl 【0078】 また、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内であることが望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。 【0079】 本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。 【0080】 AEROSIL(日本アエロジル社) 130 200 300 380 TT600 MOX170 MOX80 COK84 Ca-O-SiL(CABOT Co.社) M-5 MS-7 MS-75 HS-5 EH-5 Wacker HDK N 20 V15 (WACKER-CHEMIE GMBH社) N20E T30 T40 D-C Fine Silica(ダウコーニングCo.社) Fransol(Fransil社) 【0081】 さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。 【0082】 疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。 【0083】 そのような有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α-クロルエチルトリクロルシラン、ρ-クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。 【0084】 本発明に用いられる流動化剤として、前述した乾式法シリカを、次に挙げるアミノ基を有するカップリング剤或いは、シリコーンオイルで処理したものを本発明の目的を達成する為に必要に応じて用いてもかまわない。 【0085】 そのようなアミノ基を有するシリコーンオイルとしては例えば以下のものがある。 【0086】 【0087】 なお、アミン当量とは、アミン1個あたりの当量(g/eqiv)で、分子量を1分子あたりのアミン数で割った値である。 【0088】 本発明に用いられる流動化剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。トナー100重量部に対して流動化剤0.01〜8重量部、好ましくは0.1〜4重量部使用するのが良い。 【0089】 本発明の静電荷像現像用トナーを作製するには結着樹脂、着色剤及び/又は磁性体、荷電制御剤またはその他の添加剤を、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により充分混合し、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び練肉して樹脂類を互いに相溶せしめ、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級して本発明のトナーを得ることができる。 【0090】 さらに、流動化剤とトナーをヘンシェルミキサーの如き混合機により充分混合し、トナー粒子表面に添加剤を有する本発明の静電荷像現像用現像剤を得ることができる。 【0091】 本発明に係る結着樹脂の特性の測定法は以下に示す通りである。後述の実施例もこれらの方法に基づいている。 【0092】 酸価・OH価の測定法 1)酸価について 試料を精秤し、混合溶媒に溶かし水を加える。この液をガラス電極を用いて0.1N-NaOHで電位差滴定を行い酸価を求める(JIS K1557-1970に準ずる。)。 【0093】 (2)ガラス転移温度Tg 示差熱分析測定装置(DSC測定装置),DSC-7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。 【0094】 測定試料は5〜20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。 【0095】 これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。 【0096】 この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。 【0097】 このときの吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を本発明におけるガラス転移温度Tgとする。 【0098】 (3)分子量の測定(樹脂) GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。 【0099】 すなわち、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流す。試料が樹脂の場合は、樹脂をロールミルで素通し(130℃,15分)したものを用いる。また、試料が現像剤の場合は、現像剤をTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として0.05〜0.6重量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。 【0100】 なお、カラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良く、例えば、Waters社製のμ-styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA-801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。 【0101】 (4)分子量分布の測定(長鎖アルキルアルコール,長鎖アルキルカルボン酸) (GPC測定条件)装置:GPC-150C(ウォーターズ社) カラム:GMH-HT30cm2連(東ソー社製) 温度:135℃ 溶媒:o-ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加) 流速:1.0ml/min 試料:0.15%の試料を0.4ml注入 【0102】 以上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を使用する。さらに、Mark-Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出される。 【0103】 (5)光散乱法による平均二乗慣性半径の<S2>の測定 本発明においては静的光散乱法により平均二乗慣性半径の測定を行う測定装置は大塚電子(株)製、光散乱光度計DLS-700を用いた。 【0104】 また静的光散乱法では試料の示差屈折率の試料濃度に対する変化率(dn/dc)の測定が必要であり、dn/dcの測定は大塚電子(株)製、高感度示差屈折計DRM-1020を用いた。 【0105】 測定手順は、樹脂においてはTHF(テトラヒドロフラン)に溶解後、0.2μmのフィルターに濾過精製したものをさらにTHFにより精密に濃度調整する。この濃度調整した試料により散乱光強度および測定角を変化させ、以下に示す式より平均二乗慣性半径<S2>を求めた。 【0106】 またトナーの場合はTHFを溶媒として用いるソックスレー抽出方法で可溶分のみをとりだしこれを遠心分離機により分離し、上澄み液を0.2μmのフィルターで濾過精製し、上述した方法と同様の方法で測定する。 【0107】 樹脂の重量平均モル質量をMw,粒子散乱因子をP(θ),第二ビリアル係数をA2とすると次式が成立する。 【0108】 【数1】 θとcとは独立変数であるので、kは任意に選ぶ。 【0109】 θ=0ではP(θ)=1となるのでC=0の直線とθ=0の直線は1点で縦軸を切れる。この切片の値でMwが得られる。A2はθ=0の直線の傾きから決定されP(θ)は分子の形態に関係なく 【0110】 【数2】 と展開できジムプロットを用いc=0の直線の勾配から平均二乗慣性半径<S2>を求めることができる。 【0111】 (6)トナーの帯電量の測定(図1) 現像剤担持体上からサンプリングした現像剤を秤量後、底に500メッシュ(磁性粒子の通過しない大きさに適宜変更可能)の導電性スクリーン3のある金属製の測定容器2に測定サンプルを入れ金属製のフタ4をする。このときの測定容器2全体の重量を秤りW1(g)とする。次に、吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を250mmAqとする。この状態で充分(約2分間)吸引を行ないトナーを吸引除去する。このときの電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで8はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。また、吸引後の測定容器全体の重量を秤りW2(g)とする。この摩擦帯電量T(μC/g)は下式の如く計算される。 【0112】 T(μC/g)=(C×V)/(W1-W2) 【0113】 (7)グロス(光沢度)測定法 VG-10型光沢度計(日本電色製)を用い、色度測定に用いた各ベタ画像を試料として、測定を行う。 【0114】 測定としては、まず定電圧装置により6Vにセットする。次いで投光角度、受光角度をそれぞれ60°に合わせる。 【0115】 0点調整及び標準板を用い、標準設定の後に試料台の上に前記試料画像を置き、さらに白色紙を3枚上に重ね測定を行い、標示部に示される数値を%単位で読みとる。この時S,S/10切替SWはSに合わせ、角度,感度切替SWは45-60に合わせる。 【0116】 尚、画像濃度1.5±0.1の試料を使用する。 【0117】 【実施例】 以下、製造例および実施例により本発明を説明する。 【0118】 (樹脂製造例1) テレフタル酸 33mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 67mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) で酢酸マグネシウムを触媒としてこれらを縮合させ、テレフタル酸1molとビスフェノール誘導体2molが縮合したジエステル化合物Aを合成する。 【0119】 次に フマル酸 67mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 33mol% (R=エチレン基,x+y=2.1) で上述と同様に縮合させジエステル化合物Bを合成する。 【0120】 次に ジエステル化合物A 50mol% ジエステル化合物B 49.5mol% トリメリット酸 0.5mol% でジブチル錫オキサイドを触媒として縮重合反応させてポリエステル樹脂(1)を得た。 【0121】 GPCによる数平均分子量Mn=3800,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=3600(Å)2,酸価12,Tg=60.3℃であった。 【0122】 (樹脂製造例2) ジエステル化合物A 45mol% ジエステル化合物B 45mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 4.5mol% (R=エチレン基,x+y=2.2) テレフタル酸 5mol% トリメリット酸 0.5mol% で触媒として三酸化アンチモンを用い縮重合反応させて、ポリエステル樹脂(2)を得た。 【0123】 GPCによる数平均分子量Mn=3100,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=6400(Å)2,酸価16,Tg=58.1℃であった。 【0124】 (樹脂製造例3) 実施例1のジエステル化合物A 22mol% フマル酸 35mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 30mol% (R=エチレン基,x+y=2.1) テレフタル酸 12.5mol% トリメリット酸 0.5mol% で触媒としてジブチル錫オキサイドを用いて縮重合させ、ポリエステル樹脂(3)を得た。 【0125】 GPCによる数平均分子量Mn=2070,平均二乗慣性半径<S2>=10700(Å)2,酸価18,Tg=56.5℃であった。 【0126】 (樹脂製造例4) テレフタル酸 67mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 33mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) で触媒として酢酸カルシウムを用いて縮合させ、ジエステル化合物Cを得た。次に ジエステル化合物C 45mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 47mol% (R=エチレン基,x+y=2.1) テレフタル酸 4mol% トリメリット酸 1mol% マレイン酸 3mol% で触媒としてジブチル錫オキサイドを用いて縮重合反応させ、ポリエステル樹脂(4)を得た。 【0127】 GPCによる数平均分子量Mn=3600,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=11000(Å)2,酸価1.7,Tg=60.3℃であった。 【0128】 (樹脂製造例5) 樹脂製造例1のジエステル化合物A 50mol% 樹脂製造例1のジエステル化合物B 46mol% トリメリット酸 2mol% ドデセニルコハク酸 2mol% で触媒として三酸化アンチモンを用いて縮重合反応を行ない、ポリエステル樹脂(5)を得た。 【0129】 GPCによる数平均分子量Mn=2700,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=5400(Å)2,酸価25,Tg=58.1℃であった。 【0130】 (樹脂製造例6) 樹脂製造例1のジエステル化合物A 40mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 10mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) フマル酸 30mol% テレフタル酸 18mol% トリメリット酸 1mol% ドデセニルコハク酸 1mol% で触媒としてモノブチル錫オキサイドを用いて縮重合反応を行ない、ポリエステル樹脂(6)を得た。 【0131】 GPCによる数平均分子量Mn=2800,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=14400(Å)2,酸価36,Tg=56.9℃であった。 【0132】 (樹脂製造例7) テレフタル酸 67mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 33mol% (R=エチレン基,x+y=2.2) で上述と同様に縮合させ、ジエステル化合物Dを合成する。 【0133】 ジエステル化合物A 49mol% ジエステル化合物D 50mol% ペンタエリスルトール 1mol% で触媒としてジブチル錫オキサイドを用いて縮重合させ、ポリエステル樹脂(7)を得た。 【0134】 GPCによる数平均分子量Mn=6000,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=6700(Å)2,酸価15.1,Tg=61.5℃であった。 【0135】 (樹脂製造例8) 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 67mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) アジピン酸 33mol% で触媒として酢酸カルシウムを用いてこれらを縮合させ、ジエステル化合物Eを合成する。 【0136】 次に、 ジエステル化合物E 49mol% テレフタル酸 50mol% グリセリン 1mol% で触媒として三酸化アンチモンを用いて縮重合反応し、ポリエステル樹脂(8)を得た。 【0137】 GPC測定による数平均分子量Mn=3500,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=16000(Å)2,酸価28,Tg=58.7℃であった。 【0138】 (樹脂製造例9) 樹脂製造例8におけるジエステル化合物Eを用い、 ジエステル化合物E 50mol% ナフタリン-1,5-ジカルボン酸 10mol% テレフタル酸 39mol% トリメリット酸 1mol% で触媒として三酸化アンチモンを用いて縮重合反応し、ポリエステル樹脂(9)を得た。 【0139】 GPC測定による数平均分子量Mn=3700,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=1600(Å)2,酸価18,Tg=62.5℃であった。 【0140】 (樹脂製造例10) 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 53mol% (R=プロピレン基,x+y=2.2) フマル酸 47mol% で触媒としてジブチル錫オキサイドを用いて縮重合反応を行ない、ポリエステル樹脂(10)を得た。 【0141】 GPC測定による数平均分子量Mn=1900,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=38000(Å)2,酸価22,Tg=55.8℃であった。 【0142】 (樹脂製造例11) ネオペンチルグリコール 5mol% テレフタル酸 50mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 15mol% (R=エチレン基,x+y=2.1) 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 30mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) でモノブチル錫オキサイドを用いて縮重合反応させて、ポリエステル樹脂(11)を得た。 【0143】 GPC測定による数平均分子量Mn=3500,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=40000(Å)2,酸価23,Tg=63.2℃であった。 【0144】 (樹脂製造例12) 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 30mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 20mol% (R=エチレン基,x+y=2.1) テレフタル酸 30mol% フマル酸 17mol% トリメリット酸 3mol% を触媒として三酸化アンチモンを用いて縮重合反応し、ポリエステル樹脂(12)を得た。 【0145】 GPC測定による数平均分子量Mn=10000,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=1600(Å)2,酸価10,Tg=61.5℃であった。 【0146】 (樹脂製造例13) トリメリット酸 33mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 67mol% (R=エチレン基,x+y=2.1) で触媒として酢酸カルシウムを用い、ジポリエステル化合物Fを得た。 【0147】 ジポリエステル化合物F 30mol% 式(イ)で示されるビスフェノール誘導体 20mol% (R=プロピレン基,x+y=2.3) テレフタル酸 50mol% で三酸化アンチモンを触媒として縮重合させ、ポリエステル樹脂(13)を得た。 【0148】 GPC測定による数平均分子量Mn=7000,光散乱法による平均二乗慣性半径<S2>=6300(Å)2,酸価15,Tg=60.1℃であった。 【0149】 実施例1 ポリエステル樹脂1 100重量部 銅フタロシアニン顔料 5重量部 ジ-tert-ブチルサリチル酸クロム錯体 4重量部 をヘンシェルミキサーにより十分予備混合を行った後、二軸式押出機で溶融混練し、冷却後ハンマーミルを用いて粒径約1〜2mm程度に粗粉砕した。次いでエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を多分割分級装置で分級して、重量平均粒径8.0μmのイエロー系樹脂粒子を得た。 【0150】 上記イエロー系樹脂粒子100重量部に対して、n-C4H9Si(OCH3)3で処理した疎水性酸化チタン(BET110m2/g)1.0重量部を合せてシアントナーとした。 【0151】 シアントナーをシリコーン樹脂で表面被覆した平均粒径35μmのCu-Zn-Fe系フェライト粒子とトナー濃度が6%となる様に混合して現像剤とした。この現像剤をキヤノン製カラー複写機(CLC-700)をプロセススピード150mm/secで定着ローラー温度を110℃〜200℃の間で制御できるように改造したものでトナーの定着性の評価をしたところ、表1に示すように100℃〜200℃の間でオフセットのない、定着面がフラットな鮮明な画像(グロス(光沢度)7%以上の画像)を得ることができた。 【0152】 また、このトナーおよび現像剤を50℃の環境下に1ケ月間放置した後、改造していないキヤノン製カラー複写機CLC550で現像コンスラスト350Vにて23℃/5%RHでの5000枚連続複写試験を行なったところ、初期から鮮明でハーフトーン再現性に優れた画像が得られ、5000枚の通紙後も初期とかわらぬ画像が得られた。この結果を表2に示す。 【0153】 実施例2〜4及び参考例1〜5 実施例1と同様な方法で樹脂製造例2〜9のポリエステル樹脂を現像剤化し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。 【0154】 比較例1 実施例1と同様な方法で樹脂製造例10のポリエステル樹脂10を現像剤化し実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。 【0155】 実施例1〜4及び参考例1〜5に比べ定着性の点でオフセット性に問題があり、また高温保存性の点で実用上支障がある。 【0156】 比較例2〜4 実施例1と同様な方法で樹脂製造例11〜13のポリエステル樹脂を現像剤化し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。 【0157】 比較例2は比較例1と同様に耐オフセット性に問題もあり、耐保存性も十分ではない。 【0158】 比較例3,4は数平均分子量が大きいため、定着性の点で低温側が実施例に比べ劣り、酸基の低湿下での電荷緩和効果も十分でないため、トナーのチャージアップがみられ、ハイライト再現性が耐久とともに著しく低下傾向にある。 【0159】 【表1】 【0160】 【表2】 【0161】 【発明の効果】 本発明によれば、十分な平滑性を有する定着性を低温で達成することができ、しかも高温における保存性、さらに低湿下における現像性の良好なカラートナーが得られる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 トナーの摩擦帯電量の測定装置の説明図である。 |
訂正の要旨 |
i)訂正事項a 特許請求の範囲に係る記載 「 【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を有するカラートナーにおいて、該結着樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、さらに、酸価をAVとしたとき、下記に示す次式 2000<Mn<7000 (a) 5≦AV×<S2>/Mn≦200 (b) を満足する結着樹脂を用いることを特徴とするカラートナー。」 を、 「 【請求項1】 少なくとも結着樹脂および着色剤を有するカラートナーにおいて、該結着樹脂のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、さらに、酸価をAVとしたとき、下記に示す次式 2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c) を満足する結着樹脂を用いることを特徴とするカラートナー。」 に訂正する。 ii)訂正事項b 明細書の段落【0019】の 「 【課題を解決するための手段及び作用】 本発明の目的は、結着樹脂のGPCにより測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、および該結着樹脂の酸化AVが下記に示す式(a),(b)を満足する場合のトナーにより達成される。」 を、 「 【課題を解決するための手段及び作用】 本発明の目的は、結着樹脂のGPCにより測定される数平均分子量Mn、光散乱法により測定される平均二乗慣性半径<S2>(Å)、および該結着樹脂の酸化AVが下記に示す式(a),(b),(c)を満足する場合のトナーにより達成される。」 と訂正する。 iii)訂正事項c 明細書の段落【0020】の 「 2000≦Mn≦7000 (a) 5≦AV×<S2>/Mn≦200 (b)」 を、 「 2070≦Mn≦3800 (a) 5.0≦AV×<S2>/Mn≦93.0 (b) 3600≦<S2>≦10700 (c)」 と訂正する。 iv)訂正事項d 明細書の段落【0153】の 「実施例2〜9 実施例1と同様な方法で樹脂製造例2〜9のポリエステル樹脂を現像剤化し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。」 を、 「実施例2〜4及び参考例1〜5 実施例1と同様な方法で樹脂製造例2〜9のポリエステル樹脂を現像剤化し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1及び2に示す。」 と訂正する。 v)訂正事項e 明細書の段落【0155】の 「実施例1〜9に比べ定着性の点でオフセット性に問題があり、また高温保存性の点で実用上支障がある。」 を、 「実施例1〜4及び参考例1〜5に比べ定着性の点でオフセット性に問題があり、また高温保存性の点で実用上支障がある。」 と訂正する。 vi)訂正事項f 明細書の段落【0159】の 「 【表1】 」 を、 「 【表1】 」 と訂正する。 vii)訂正事項g 明細書の段落【0160】の 「 【表2】 」 を、 「 【表2】 」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2003-02-18 |
出願番号 | 特願平6-336922 |
審決分類 |
P
1
651・
531-
YA
(G03G)
P 1 651・ 16- YA (G03G) P 1 651・ 534- YA (G03G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 菅野 芳男 |
特許庁審判長 |
矢沢 清純 |
特許庁審判官 |
六車 江一 阿久津 弘 |
登録日 | 2001-12-07 |
登録番号 | 特許第3256823号(P3256823) |
権利者 | キヤノン株式会社 |
発明の名称 | カラートナー |
代理人 | 豊田 善雄 |
代理人 | 山口 芳広 |
代理人 | 豊田 善雄 |
代理人 | 渡辺 敬介 |
代理人 | 細田 芳徳 |
代理人 | 渡邉 敬介 |
代理人 | 山口 芳広 |