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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1076379 |
異議申立番号 | 異議2002-70006 |
総通号数 | 42 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-01-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-01-04 |
確定日 | 2003-03-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3183108号「付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3183108号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続きの経緯 本件特許第3183108号は、平成7年7月3日に出願された特願平7-189873号の出願に係り、平成13年4月27日にその設定登録がなされた後、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社から特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知及び明細書の記載に関する再度の取消理由の通知に対し、平成15年2月5日付けで、先の訂正請求を取り下げた上で改めて訂正請求がなされたものである。 [2]訂正前の本件特許に対する特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、訂正前の本件特許に対し下記甲第1号証〜甲第7号証を提示し、本件請求項1〜4に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明であり、若しくは甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、さらに本件明細書には記載の不備があるから、本件は、特許法第29条第1項第3号若しくは同条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第36条第4項の規定を満足しない出願に対して特許されたものであって、その故に、本件請求項1〜4に係る特許は取り消されるべきである旨、主張している。 記 甲第1号証:特公昭47-40447号公報 甲第2号証:特開平2-97560号公報 甲第3号証:特公平5-417号公報 甲第4号証:特公平4-45537号公報 甲第5号証:伊藤邦雄編「シリコーンハンドブック」日刊工業新聞社、 1990年8月31日発行、384〜402,422〜430頁 甲第6号証:特開平5-5064号公報 甲第7号証:信越シリコーン technical data 「オイル技術資料(4)」 [3]本件訂正請求 (1)訂正事項 本件訂正請求は、本件明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正事項を個別に列挙すれば以下のとおりである。 (1-1)訂正事項a-1 請求項1における「(1)1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を2個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00004〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が200〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100重量部 (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」を 「(1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100重量部 【化1】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に訂正する。 (1-2)訂正事項a-2 請求項2,3を削除する。 (1-3)訂正事項a-3 請求項4の「耐油部品用である請求項1,2又は3記載のシリコーンエラストマー耐油組成物。」を「耐油部品用である請求項1記載のシリコーンエラストマー耐油組成物。」に訂正して、これを請求項2とする。 (1-4)訂正事項b-1 明細書の段落【0011】の記載「1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を2個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00004〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が200〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様)と、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量と、白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部とを配合することにより」を 「(1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様) 【化2】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部を配合することにより」に訂正する。 (1-5)訂正事項b-2 明細書の段落【0012】の記載「(1)1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を2個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00004〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が200〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部 (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」を 「(1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部 【化3】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に訂正する。 (1-6)訂正事項b-3 明細書の段落【0013】における「アルケニル基を2個以上」を「アルケニル基を3個以上」に、「0.0004〜0.0002モル」を「0.0005〜0.0002モル」に、「200〜200000センチポイズ」を「5000〜200000センチポイズ」に、訂正する。 (1-7)訂正事項b-4 明細書の段落【0014】の記載「上記オルガノポリシロキサンとしては、下記一般組成式(3) R1aR2bSiO[4-(a+b)]/2 ・・・(3) (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R2は同一又は異種のアルケニル基であり、a,bはそれぞれ1≦a<3、0<b≦0.1、1<a+b<3、好ましくは1.8<a≦2.2、0.0005≦b≦0.05、1.9≦a+b≦2.25、特に0.002≦b≦0.02を満たす数である。)で示されるものを好適に使用することができる」を 「上記オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で「示されるものを使用する。 【化4】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。)」に訂正する。 (1-8)訂正事項b-5 明細書の段落【0015】における「上記式(3)において」を「上記式(1)において」に、「また、R2は」を「また、アルケニル基は」に訂正する。 (1-9)訂正事項b-6 明細書の段落【0016】における「上記式(3)において」を「上記式(1)において」に、「アルケニル基を2個以上」を「アルケニル基を3個以上」に、「0.00004」(2箇所)を「0.00005」に、各訂正する。 (1-10)訂正事項b-7 明細書の段落【0017】における「分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同士はその間に平均して100〜800個、特に150〜500個程度のジオルガノシロキサン単位(繰り返し単位)を介して位置していることが好ましく、」を「分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同士はその間に平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位(繰り返し単位)を介して位置しているもので、」に訂正する。 (1-11)訂正事項b-8 明細書の段落【0018】における「また、上記オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が200〜200000cp、好ましくは500〜100000cpである必要があり、粘度が200cpより低いと硬化物が脆くゴム物性が不十分となり、200000cpを超えると粘度が高くなりすぎて液状ゴムとしての成形性のメリットが失われてしまう。」を「また、上記オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が5000〜200000cp、特に10000〜200000cpである必要がある。200000cpを超えると粘度が高くなりすぎて液状ゴムとしての成形性のメリットが失われてしまう。」に訂正する。 (1-12)訂正事項b-9 明細書の段落【0021】における「ここで耐油性の観点からは、上記オルガノポリシロキサンが比較的低分子量(例えば25℃の粘度で200〜50000cp、特に300〜10000cp、とりわけ500〜5000cp程度)の場合、アルケニル基は分子鎖両末端のケイ素原子のみに結合したものであることが好ましく、またオルガノポリシロキサンが比較的高分子量(例えば25℃の粘度で5000〜200000cp、特に10000〜200000cp程度)の場合には、アルケニル基は少なくとも分子鎖途中のケイ素原子、特に分子鎖両末端及び分子鎖途中のケイ素原子に結合したものであることが好ましい。」を「ここで耐油性の観点からは、上記オルガノポリシロキサンが比較的高分子量(例えば25℃の粘度で5000〜200000cp、特に10000〜200000cp程度)の場合には、アルケニル基は少なくとも分子鎖途中のケイ素原子、特に分子鎖両末端及び分子鎖途中のケイ素原子に結合したものであることが好ましい。」に訂正する。 (1-13)訂正事項b-10 明細書の段落【0022】の「本発明では、このようなオルガノポリシロキサンとして特に下記のようなものが好適に使用される。(A)下記一般式(1)で示され、・・・とりわけ500〜5000cpであるオルガノポリシロキサン。」を「本発明では、このようなオルガノポリシロキサンとして下記のものが使用される。」に訂正する。 (1-14)訂正事項b-11 明細書の段落【0023】、段落【0024】を削除する。 (1-15)訂正事項b-12 明細書の段落【0025】における「【化4】」を「【化5】」に、化学構造式を指示する「(2)」を「(1)」に訂正する。 (1-16)訂正事項b-13 明細書の段落【0026】における「次に、第2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3〜6個有するものであり、下記一般組成式(4) R4c(H)dSiO(4-c-d)/2 ・・・(4) (但し、式中R4は同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、好ましくは脂肪族不飽和結合を有しないものがよい。cは0.8≦c≦2.2の正数、dは0.005≦d≦1.0の正数であり、0.8<c+d≦3.0である。好ましくは1.6≦c≦2.0、0.01≦d≦0.8、1.6<c+d≦2.5、特には0.05≦d≦0.8である。)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に使用される。」を「次に、第2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3個又は4個有するものであり、下記一般組成式(2) R4c(H)dSiO(4-c-d)/2 ・・・(2) (但し、式中R4は同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、好ましくは脂肪族不飽和結合を有しないものがよい。cは0.8≦c≦2.2の正数、dは0.005≦d≦1.0の正数であり、0.8<c+d≦3.0である。好ましくは1.6≦c≦2.0、0.01≦d≦0.8、1.6<c+d≦2.5、特には0.05≦d≦0.8である。)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に使用される。」に訂正する。 (1-17)訂正事項b-14 明細書の段落【0028】における「上記式(4)の」を「上記式(2)の」に訂正する。 (1-18)訂正事項b-15 明細書の段落【0029】における「上記式(4)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)を3〜6個、特に4〜5個有することが必要であり」を、「上記式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)を分子鎖途中に3個又は4個有することが必要であり」に訂正する。 (1-19)訂正事項b-16 明細書の段落【0030】における「なお、ケイ素原子に結合した水素原子は、分子鎖末端に位置するものであっても、分子鎖途中に位置するものであってもよい。」を「ケイ素原子に結合した水素原子は、分子鎖途中に位置するものである。」に訂正する。 (1-20)訂正事項b-17 明細書の段落【0034】の記載を「【化6】 (式中pは0又は正数を示す。)」に訂正する(即ち、構造式8個のうち、2〜5番目の4個を削除する。)。 (1-21)訂正事項b-18 明細書の段落【0042】における「実施例1」を「参考例1」に、「下記式(5)」を「下記式(3)」に訂正する。 (1-22)訂正事項b-19 明細書の段落【0043】における「【化6】」を「【化7】」に、構造式を指示する「(5)」を「(3)」に訂正する。 (1-23)訂正事項b-20 明細書の段落【0046】における「実施例2」を「実施例1」に、「上記式(5)」を「上記式(3)」に訂正する。 (1-24)訂正事項b-21 明細書の段落【0047】における「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 (1-25)訂正事項b-22 明細書の段落【0048】における「実施例3」を「実施例2」に、「実施例2」を「実施例1」に、「下記式(6)」を「下記式(4)」に訂正する。 (1-26)訂正事項b-23 明細書の段落【0049】における「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 (1-27)訂正事項b-24 明細書の段落【0050】における「【化7】」を「【化8】」に、構造式を指示する「(6)」を「(4)」に訂正する。 (1-28)訂正事項b-25 明細書の段落【0051】における「実施例4」を「実施例3」に、「上記式(5)」を「上記式(3)」に訂正する (1-29)訂正事項b-26 明細書の段落【0052】における「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 (1-30)訂正事項b-27 明細書の段落【0053】における「下記式(7)」を「下記式(5)」に訂正する。 (1-31)訂正事項b-28 明細書の段落【0054】における「【化8】」を「【化9】」に、構造式を指示する「(7)」を「(5)」に訂正する。 (1-32)訂正事項b-29 明細書の段落【0055】における「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 (1-33)訂正事項b-30 明細書の段落【0056】における「実施例2」を「実施例1」に、「下記式(8)」を「下記式(6)」に訂正する。 (1-34)訂正事項b-31 明細書の段落【0057】における「【化9】」を「【化10】」に、構造式を指示する「(8)」を「(6)」に訂正する。 (1-35)訂正事項b-32 明細書の段落【0058】における「実施例1」を「参考例1」に訂正する。 (1-36)訂正事項b-33 明細書の段落【0059】(表)における「実施例1」を「参考例1」に、「実施例2」、「実施例3」、「実施例4」を、「実施例1」、「実施例2」、「実施例3」に、それぞれ訂正する。 (2)訂正可否の検討 (2-1)訂正事項a-1は、請求項1において、第(1)成分であるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及び第(2)成分であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンをそれぞれ限定するものであるが、、前者の限定事項は、いずれも訂正前の請求項3に記載されていたものであり、後者の限定事項は、訂正前の明細書の段落【0026】、段落【0029】、段落【0030】、段落【0031】、段落【0034】、段落【0043】、段落【0050】等に記載されていたものであるから、当該訂正は、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をするものである。 (2-2)訂正事項a-2は、単に請求項2〜3を削除するものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をするものであることは明らかである。 (2-3)訂正事項a-3は、訂正前の請求項4において、請求項2,3の削除に伴い、請求項番号を整理するものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で特許請求の範囲の減縮をし、また明りょうでない記載の釈明をするものである。 (2-4)訂正事項b-1〜b-33は、上記特許請求の範囲の訂正に対応させて発明の詳細な説明の記載をこれに整合させるものであるから、訂正前の明細書に記載した事項の範囲内で明りょうでない記載の釈明をするものである。) (2-5)そして、これら訂正により実質上特許請求の範囲が拡張若しくは変更されるものでもない。 したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項ただし書第1、3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項で準用する同法第126条第2項、第3項の規定に適合するものである。 [4]本件発明 本件発明は、訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される以下のとおりのもの(以下、順次「本件第1発明」及び「本件第2発明」という。)と認める。 「【請求項1】 (1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100重量部 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万重量部に対して白金金属として0.1〜500重量部 を含有してなることを特徴とする付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物。 【請求項2】 耐油部品用である請求項1記載のシリコーンエラストマー耐油組成物。」 [5]特許異議申立てについて [5-1]特許法第29条の規定の適用について (1)甲号証各刊行物の記載事項 (i)甲第1号証には、「(A)1分子につき2個のビニル基を有し、2個以上のビニル基が結合したシリコン原子はなく、その他の有機基はメチル、・・・から選ばれる基であり、少くとも有機基の50%はメチル基であるポリジオルガノシロキサンであって、・・・、および (B)シリコン原子に結合した水素原子を有するシリコン含有化合物の混合物よりなる組成物であって、・・・(B)は本質的に、 (イ)1分子につきシリコン原子に結合した水素原子2個ならびにメチル、エチル、・・から選ばれる有機基を含むオルガノシロキサン化合物であって、各シリコン原子は水素原子2個以上を直接結合することはなく、1分子につき500個以下のシリコン原子を有するオルガノシロキサン化合物、および (ロ)シリコン原子に結合する水素原子を1分子に3ないし10個並びにメチル、エチル、・・・から選ばれる有機基を含むオルガノシロキサン化合物であって、各シリコン原子は水素原子2個以上を直接結合することはなく、1分子につき75個以下のシリコン原子を有するオルガノシロキサン化合物とよりなる混合物であり、・・・(イ)および(ロ)が混合物(B)の10重量%(注:「100重量%」の誤記と認められる。)を形成することを特徴とするシリコンゴム原料組成物。」(特許請求の範囲)の発明が記載され、「本発明の組成物を硬化すると、(A)1分子につき2個のビニル基を有するポリジオルガノシロキサン、(2)1分子にシリコン原子に結合した水素原子3ないし10個を含むオルガノシロキサン化合物および白金触媒のみに由来する硬化組成物に比し、物理的性状たとえば引張強度、伸び、引裂度およびその組み合わせがはるかに改善された組成物が得られる。」(8欄31〜39行)と記載されている。 (ii)甲第2号証には、「(A)ケイ素原子に結合せるビニル基が1分子中に少なくとも2個存在し、ケイ素原子に結合せる残余の有機基が脂肪族不飽和を含まぬ置換又は非置換の1価の炭化水素基であり、25℃における粘度が50〜100,000cPであるポリオルガノシロキサン100重量部 (B)一般式 R1Si(OSiR22H)3(式中R1はC1〜C4のアルキル基又はフェニル基、R2はC1〜C4のアルキル基を表す) で示されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン、ケイ素原子に結合せる水素原子の数が(A)のケイ素原子に結合せるビニル基1個に対して0.5〜3.0個となる量 (C)白金系触媒、パラジウム系触媒、及びロジウム系触媒からなる群より選ばれた触媒、(A)と(B)の合計量に対し触媒金属元素の量として0.1〜100ppmとなる量 及び (D)充填剤 50〜1000重量部 からなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載され、この発明は、熱伝導性を付与するために充填剤の配合量を多くする必要があったところ、「充填剤の配合量を増しても良好な機械的特性を保持」(2頁左上欄20行〜右上欄1行)する特性を有するものであることが記載されている。 (iii)甲第3号証には、「分子鎖末端が式 (CH2=CH)aR13-aSiO0.5 (ここにR1は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、aは1〜3の整数)で示されるオルガノシロキシ基で封鎖された、主鎖がR22SiO単位と (CH2=CH)bR32-bSiO単位、 (ここにR2、R3はそれぞれR1と同一または異種の脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、bは1〜2の整数)で示されるオルガノシロキシ単位からなるものであるオルガノシロキサン 100重量部、(2)分子鎖末端が式 HR42SiO0.5(ここにR4メチル基(決定注:「R4はメチル基」の誤記と認める。)、エチル基またはプロピル基)で示されるオルガノシロキシ基で封鎖された、実質的に式 HR5SiO(ここにR5は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基)、式 HSiO1.5で示されるシロキシ単位を含有しない、上記第一成分中の≡Si(CH=CH2)基1個に対し≡SiH結合を0.6〜3.0個供給する量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン (3)充填剤 0〜300重量部、 (4)触媒量の白金または白金化合物 とからなることを特徴とする射出成形用シリコーンゴム組成物。」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載され、「本発明は射出成形用シリコーンゴム組成物、特には1次成形後のポストキュアをする必要がなく、しかも圧縮永久歪みの小さいシリコーンゴム成形品を与えることができるので、射出成形用シリコーンゴム組成物に有用とされるシリコーンゴム組成物に関するものである。」(1頁右下欄14〜19行)と記載されている。 (iv)甲第4号証には、「PH8〜12を呈する沈澱珪酸を含有してなることを特徴とする医療用硬化性オルガノポリシロキサン組成物。」(特許請求の範囲)の発明が記載され、「従来のPH7.5以下を呈する沈澱珪酸を含有してなるオルガノポリシロキサン硬化物を放射線により滅菌消毒を行なうと、材質の劣化が起こって、該試験でブランクとのPHの差が1.5以上となり、これらの規格に適合することができないという欠点があった。」(1頁右下欄12〜17行)ところ、この発明は、上記の構成により「放射線による滅菌消毒によっても材質の劣化がなく、・・・の”PH”の項目に適合することのできる、医療用硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供するものである。」(1頁右下欄19行〜2頁左上欄1行)の記載がなされている。 (v)甲第5号証には、「付加型液状シリコーンゴム」について記載され、主成分たる脂肪族不飽和結合を有するシリコーンオイルについては、「通常末端にビニル基を有するものが多く用いられており,強さ,伸びなどの特性面から側鎖への導入も行われている」(385頁)こと、第2の成分であるハイドロジェンポリシロキサンについては、「分子中にSiH結合を有する比較的低分子量のポリマーであり,通常は1分子中に3個以上のSiH基を有するものが使用される」(386頁)ことが、記載されている。 (vi)甲第6号証には、「(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン 100重量部、 (B)1分子中に少なくとも2個の珪素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン 本成分中の珪素原子結合水素原子のモル数と(A)成分中の珪素原子原子結合アルケニル基のモル数の比が(0.5:1)〜(20:1)となるような量、 (C)白金系触媒 (A)成分と(B)成分の合計量100万重量部に対して白金金属として0.1〜500重量部、および (D)分子中に脂肪族不飽和結合および珪素原子結合水素原子を有しないオルガノポリシロキサン油または脂肪族不飽和結合を有しない炭化水素油 1〜80重量部 からなることを特徴とする、鉱物油をベースとする潤滑油に常時接触して使用されるガスケット用シリコーンゴム組成物。」(請求項1)の発明が記載され、「本発明者らは上記問題点を解消すべく研究した結果、付加反応型シリコーンゴム組成物に特定のオルガノポリシロキサン油または特定の炭化水素油を添加配合してなるシリコーンゴム組成物は、その硬化物がエンジンオイル等の鉱物油をベースとする潤滑油に常時接触しても膨潤の度合いが小さくなり、ガスケットとしての機能性、耐久性が飛躍的に向上することを確認し、本発明に到達した。」(2頁右欄11〜18行)と記載されている。 (vii)甲第7号証には、シリコーンオイルの粘度と分子量の関係を示すグラフが示されている。 (2)対比・検討 (2-1)本件第1発明の新規性の有無について 甲第1号証には、ビニル基を有するポリジオルガノシロキサンと1分子中に存在するシリコン原子に結合した水素原子の数が異なる2種のオルガノシロキサン化合物を使用しすることにより、その硬化物の物理的性状の改善を図った発明が記載されているが、1分子中に存在するビニル基数については、上記のとおり、「2個」と明確に規定されており、この点で既に本件第1発明とは相違している。 甲第2号証には、ケイ素原子に結合せるビニル基が1分子中に少なくとも2個存在するポリオルガノシロキサン、一般式 R1Si(OSiR22H)3 (式中R1はC1〜C4のアルキル基又はフェニル基、R2はC1〜C4のアルキル基を表す) で示されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び白金系の触媒及び充填剤の所定量からなる、硬化物に熱伝導性を与えるシリコーンゴム組成物に関する発明が記載されているが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおける基≡SiHは、上記式で示されるとおり、分子末端に位置するものとされており、この点で既に本件第1発明とはやはり相違している。 甲第3号証には、分子鎖末端が式 (CH2=CH)aR13-aSiO0.5 (ここにR1は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、aは1〜3の整数)で示されるオルガノシロキシ基で封鎖された、主鎖がR22SiO単位と (CH2=CH)bR32-bSiO単位、 (ここにR2、R3はそれぞれR1と同一または異種の脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基、bは1〜2の整数)で示されるオルガノシロキシ単位からなるものであるオルガノシロキサン 、 分子鎖末端が式 HR42SiO0.5 (ここにR4はメチル基、エチル基またはプロピル基)で示されるオルガノシロキシ基で封鎖された、実質的に式 HR5SiO(ここにR5は脂肪族不飽和基を含まない非置換または置換1価炭化水素基)、式 HSiO1.5で示されるシロキシ単位を含有しない、上記第一成分中の≡Si(CH=CH2)基1個に対して≡SiH結合を0.6〜3.0個供給する量のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、 充填剤及び 、 白金または白金化合物の、各所定量 からなることを特徴とする射出成形用シリコーンゴム組成物に関する発明が記載されているが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンにおける基≡SiHは、やはり分子末端に位置するものと規定されており、この点で本件第1発明とは相違するものである。 甲第4号証には、医療用に供される放射線滅菌処理による材質の劣化を防止した硬化性のオルガノシロキサン組成物についての発明が記載されているが、具体的実施例の記載をみても、付加反応硬化型の実施例(実施例1,3,4)では、アルケニル基を2個、しかも両末端に有するものが記載されているだけで、本件第1発明は記載されていない。 以上の次第で、本件第1発明は甲第1号証〜甲第4号証のいずれに記載された発明ともすることはできない。 (2-2)本件第1発明の進歩性の有無について 甲第1号証〜甲第4号証には、上記で検討したとおり、いずれも付加反応硬化型のポリオルガノシロキサン組成物に関する発明が記載されてはいるが、いずれもそれぞれの目的に対応して特定の構成上の要件を規定するものであり、これらには、本件第1発明で規定する、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンについての要件を採用すること、またそれによりもたらされる耐油性についての効果を示唆する記載を見出すことはできない。 また、甲第5号証には、付加型液状シリコーンゴムについての一般的な記載がなされているが、具体的に本件第1発明の構成、また、その際の耐油性の改善については全く記載されていない。 甲第6号証には、耐油性を改善した、耐久性あるガスケットになり得るシリコーンゴム組成物に関する発明が記載され、その点では本件第1発明と軌を一にする発明が記載されていると認められるが、その手段は、(D)成分としての分子中に脂肪族不飽和結合および珪素原子結合水素原子を有しないオルガノポリシロキサン油または脂肪族不飽和結合を有しない炭化水素油を添加することよりなり、本件第1発明で採用する構成を示唆する記載は見出せない。 甲第7号証は、粘度と分子量の換算を示すグラフが示されているにすぎない。 以上示したとおり、甲第1号証〜甲第4号証に甲第5号証〜甲第7号証の記載事項を加えても、これから、本件第1発明で採用する構成を示唆する記載を見出すことはできない。 他方、本件第1発明は、その採用する構成により、その硬化物が耐油性、特に持続性のある耐油性を有するという点で、優れた付加硬化型のシリコーンオラストマー組成物を提供するという効果を奏し得たものと認められる。 したがって、本件第1発明が甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2-3)本件第2発明の新規性、進歩性の有無について 本件第2発明は、本件第1発明の耐油性組成物を耐油部品用として用途を付したものに相当するから、本件第1発明と同様、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明とも、また、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。 [5-2]特許法第36条第4項の規定の適用について 特許異議申立人は、本件発明(訂正前の請求項1〜4に係る発明)のすべての実施例で、石英粉末と炭酸マグネシウムを含有しているが、これらは任意成分であり、請求項1〜4に係る発明の効果は、実施例と比較例で裏付けられていない点で、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項の規定を満足しない不備があることを主張している。 しかしながら、これら充填剤は耐油性向上剤として周知のものであるから、これを使用して本件発明の耐油性の効果を確認したものと認められ、この点に格別の記載の不備を認めることはできない。 [6]むすび 以上のとおりであるから、本件特許異議申立人の提示する証拠及び主張する理由によっては、訂正後の本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に訂正後の本件請求項1及び2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100重量部 【化1】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万重量部に対して白金金属として0.1〜500重量部 を含有してなることを特徴とする付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物。 【請求項2】 耐油部品用である請求項1記載のシリコーンエラストマー耐油組成物。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、エンジンオイル等の鉱物油をベースとし、各種添加剤が添加された潤滑油等の油と高温下で長時間接触してもゴム物性の低下が小さく、良好な一般物性を有し、かつ耐久性に優れたシリコーンゴムを与え、ガスケット等として好適に使用できる付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 シリコーンゴム成形体は、優れた耐熱性、耐寒性、低圧縮永久歪を有するため自動車、車両、船舶、飛行機等のロッカーカバーガスケット、オイルパンパッキン、ヘッドカバーパッキン、シリンダーライナーパッキン、バルブステムシール、オイルフィルター、シーリング、シャフトシール等のガスケット用途に用いられている。 【0003】 しかしながら、近年のエンジンオイルの高性能化に伴い、エンジンオイルには鉱物油又は合成炭化水素油に加えて各種の添加剤(粘度指数向上剤、油性向上剤、極圧添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、錆止め剤等)が使用されており、このため、これらのオイルと一時的或いは常時接触する環境で用いられるガスケット、パッキン、シール材などの耐油部品として使用する場合、シリコーンゴム成形体は高温下で長時間使用されると亀裂が発生したり、軟化劣化し、ゴム弾性を失うなどの問題が発生している。 【0004】 このような欠点を改良する方法としては、シリコーンゴムに3,3,3-トリフルオロプロピル基を導入する方法が知られているが、この方法で得られたシリコーンゴムはコストが高く、限られた用途にしか使用できない。 【0005】 また、上記のようなシリコーンゴムの劣化は、エンジンオイルが成形体に浸透し、高温下でシロキサン結合を切断するために発生するもので、オイルによる膨潤を防ぐためシリコーンゴム組成物に結晶性シリカなどの無機充填剤を加える方法もあるが、この場合は無機充填剤の添加量が多すぎるとゴム物性を低下させることになり、また液状ゴムの場合には粘度上の制約も大きい。 【0006】 更に、塩基性フィラーを充填し、高温下で酸化劣化したオイルを中和する方法も知られているが、その効果は不十分なものであり、しかも塩基性フィラーを増量したり、その塩基性を高めると、フィラー自体の影響をシロキサンが受けることになってしまうという問題があった。 【0007】 また、膨潤度を下げるため付加官能基を有しないオルガノポリシロキサンを添加する方法が特開平5-5604号公報に提案されているが、この方法はシロキサン結合の切断に対する本質的な解決にはなっていない。 【0008】 なお、シロキサン結合の切断に対しては、オルガノポリシロキサンの付加官能基を増やし、架橋密度を高めることが効果的であるが、単純に官能基を増やすとシリコーンゴム組成物の硬度が上がり、ゴム物性が急激に失なわれてしまうことになる。 【0009】 従って、ガスケット等として好適な耐油耐久性に優れたシリコーンゴムを与えるシリコーンゴム組成物の開発が望まれる。 【0010】 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、エンジンオイル等の鉱物油をベースとし、各種添加剤が添加された潤滑油等の油と高温下で長時間接触してもゴム物性の低下が小さく、一般物性に優れ、かつ耐久性に優れたシリコーンゴムを与える付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物、特には各種ガスケットなどに好適に使用される耐油部品用のシリコーンエラストマー耐油組成物を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段及び作用】 本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様) 【化2】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部 を配合することにより、鉱物油又は合成炭化水素油に加えて各種の添加剤が使用されているエンジンオイル等の油と高温下で長時間接触していても亀裂の発生、軟化劣化、ゴム弾性を失うなどの問題が発生することがなく、ゴム物性の低下が小さく、それ故、良好な一般物性を有し、かつ耐久性に優れたシリコーンゴムを与える付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。 【0012】 従って、本発明は、 (1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部 【化3】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部 を含有してなることを特徴とする付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物を提供する。 【0013】 以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物の第1成分は、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズ(cp)であるオルガノポリシロキサンである。 【0014】 上記オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で示されるものを使用する。 【化4】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) 【0015】 上記式(1)においてR1は非置換又は置換の一価炭化水素基で、炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。また、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等の炭素数2〜8、特に2〜4のアルケニル基である。 【0016】 上記式(1)において、各置換基は異なっていても同一であってもよいが、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モル、好ましくは0.00005〜0.00015モルである必要がある。オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005モルに満たないと十分な耐油性能が得られず、0.0002モルを超えると高硬度となり、ガスケットとして必要なゴム物性が得られない。 【0017】 なお、分子中に含有されるアルケニル基は、分子鎖末端あるいは分子鎖途中のいずれのケイ素原子に結合したものであってもよいが、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するものであることが、硬化速度あるいは硬化物の物性などの点から好ましい。また、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同士はその間に平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位(繰り返し単位)を介して位置しているもので、アルケニル基間のジオルガノシロキサン単位の数が少なすぎると一般的なゴム物性に劣るものとなる場合があり、また介在するシロキサン単位数が多すぎると耐油性能に劣るものとなる場合がある。 【0018】 また、上記オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が5000〜200000cp、特に10000〜200000cpである必要がある。200000cpを超えると粘度が高くなりすぎて液状ゴムとしての成形性のメリットが失われてしまう。 【0019】 上記オルガノポリシロキサンの平均重合度、即ち分子中のケイ素原子の数は、80以上、通常100〜5000、特に150〜2000程度が好適である。 【0020】 更に、上記オルガノポリシロキサンの分子構造は、主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖末端がトリオルガノシロキシ単位で封鎖された直鎖状構造を有するジオルガノポリシロキサンであるのが一般的であるが、部分的には分岐状や環状の骨格を有していてもよい。 【0021】 ここで耐油性の観点からは、上記オルガノポリシロキサンが比較的高分子量(例えば25℃の粘度で5000〜200000cp、特に10000〜200000cp程度)の場合には、アルケニル基は少なくとも分子鎖途中のケイ素原子、特に分子鎖両末端及び分子鎖途中のケイ素原子に結合したものであることが好ましい。 【0022】 本発明では、このようなオルガノポリシロキサンとして下記のものが使用される。 【0023】 【0024】 【0025】 【化5】 (但し、式中R1は上記と同様の意味を示し、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜8の一価炭化水素基であり、n,mはn≧200、m≧1であり、m+nがオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基であり、分子鎖両末端のR3がいずれもアルケニル基以外の基である場合mは3以上の正数である。) 【0026】 次に、第2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するものであり、下記一般組成式(2) R4c(H)dSiO(4-c-d)/2 …(2) (但し、式中R4は同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、好ましくは脂肪族不飽和結合を有しないものがよい。cは0.8≦c≦2.2の正数、dは0.005≦d≦1.0の正数であり、0.8<c+d≦3.0である。好ましくは1.6≦c≦2.0、0.01≦d≦0.8、1.6<c+d≦2.5、特には0.05≦d≦0.8である。) で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に使用される。 【0027】 上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、架橋剤として作用するもので、第3成分の白金系触媒の存在下、第2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合原子が第1成分のオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基に付加反応し、その結果、架橋して硬化に至るものである。 【0028】 上記式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子結合水素原子以外の有機基、即ちR4としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などの前記したR1と同様の同一又は異種の好ましくは脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜12の一価炭化水素基が挙げられる。 【0029】 上記式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)を分子鎖途中に3個又は4個有することが必要であり、前記水素原子が2個未満では十分なゴム物性が得られず、7個を超えると架橋点が集中するため耐油性能が低下してしまう。 【0030】 ケイ素原子に結合した水素原子は、分子鎖途中に位置するものである。 【0031】 上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば基本的に2官能性シロキサン単位(=SiO2/2)の繰り返し単位からなり、単官能性シロキシ単位(≡SiO1/2)で封鎖された直鎖構造のものを用いることができ、3官能性シロキサン単位(-SiO3/2)やSiO2単位などの分岐状や三次元網状構造を有するものあるいは環状構造のものを使用することもできる。 【0032】 なお、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度、即ち1分子中のケイ素原子数は3〜300、特に4〜100程度であることが好ましく、分子量に特に制限はないが、25℃での粘度が800cp以下、通常0.5〜800cp、より好ましくは1〜500cp程度であることが好ましい。 【0033】 このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、下記化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。 【0034】 【化6】 【0035】 第2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、その1分子中に含まれるケイ素原子結合水素原子のモル数と第1成分のオルガノポリシロキサンの1分子中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1、好ましくは1:1〜3:1となるような量である。ケイ素原子結合アルケニル基のモル数1に対してケイ素原子結合水素原子のモル数が0.5より小さいと硬化性オルガノポリシロキサン組成物が十分に硬化することができず、また、5より大きいと硬化が不十分となったり、発泡することがある。 【0036】 次に、第3成分の白金系触媒は、シリコーンエラストマー組成物を硬化させるための触媒である。この白金系触媒としては、具体的に塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィン類との錯化合物、白金黒、白金を担持させたもの等が挙げられる。 【0037】 白金系触媒の添加量は、第1、2成分の合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部、好ましくは1〜100部であり、0.1部未満では硬化が十分に進行せず、500部を超えると不経済になる。 【0038】 本発明組成物には、これら必須成分に加えて強度を向上させたり、耐油性を更に向上させるなどの目的で各種の充填剤を混入することが望ましい。充填剤として具体的には、二酸化チタン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、シリカエアロゲル、酸化鉄、ケイソウ土、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、シラザン処理シリカ、沈降性シリカ、ガラス繊維、酸化マグネシウム、酸化第2クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、α石英、焼成クレー、石綿、カーボン、黒鉛、コルク、合成繊維等が挙げられる。補強を目的とする場合には、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等のシリカ、又はこれらを表面処理したものが好ましく、耐油性向上剤としては、ケイソウ土、石英粉等の吸油量の大きい充填剤、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の塩基性粉が好ましい。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。例えば前記の補強性充填剤の場合、第1成分のオルガノポリシロキサン100部に対して1〜100部、特に5〜50部程度配合することができ、また増量性の充填剤などその他の充填剤の場合には第1成分100部に対して0〜300部程度配合することができる。 【0039】 本発明のシリコーンエラストマー耐油組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリミキサー、ドウミキサー(ニーダー)などのゴム練り機を用いて均一に混合した後、必要に応じて加熱処理を施すことにより得ることができる。このようにして得られるシリコーンゴム組成物は、金型加圧成形、押し出し成形などの種々の成形法によって必要とされる用途に成型することができ、その成型条件は別に限定されないが、60〜250℃、特に80〜220℃の温度で数秒〜数時間の範囲が好ましい。 【0040】 【発明の効果】 本発明の付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物は、エンジンオイル等の鉱物油をベースとし、各種添加剤が添加された潤滑油等の油と高温下で長時間接触してもゴム物性の低下が小さく、一般物性に優れ、かつ耐久性に優れたシリコーンゴムを与えるもので、自動車、車両、船舶、飛行機等のロッカーカバーガスケット、オイルパンパッキン、ヘッドカバーパッキン、シリンダーライナーパッキン、バルブステムシール、オイルフィルター、シーリング、シャフトシール等のガスケット用途など、特に耐油部品に有効に使用することができる。 【0041】 【実施例】 以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。 【0042】 〔参考例1〕 粘度1000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.000125モル/g、1分子中のビニル基の数:2個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:216)60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続け、ゴムコンパウンドを得た。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に下記式(3)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.95部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0043】 【化7】 【0044】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、シリコーンゴムシートを得た。 【0045】 得られたシリコーンゴムシートについて、JIS K6301加硫ゴムの物理的試験法に規定された方法に準拠して一般物性(硬度、引張強さ、破断伸び、引裂強さ〔A〕)の測定を行い、同様に試験油に175℃で3日及び1週間浸漬した後の一般物性(硬度、引張強さ、破断伸び)を測定し、耐油性を評価した。なお、試験油としては、ゴム劣化の促進試験としてトヨタ純正キャッスルオイル5W-30SG級をフラスコ中でガラス管を通してエアーを吹き込みながら175℃で70時間強制劣化させたものを使用した。 【0046】 〔実施例1〕 粘度20000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000086モル/g、1分子中のビニル基の平均数:4.1個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:208)60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続け、ゴムコンパウンドを得た。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に上記式(3)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.16部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0047】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0048】 〔実施例2〕 実施例1と同様にしてシリコーンゴムベースを得た後、これに更に下記式(4)で示されるメチルハイドロジェンシロキサン環状体0.75部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合した。 【0049】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0050】 【化8】 【0051】 〔実施例3〕 粘度50000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000052モル/g、1分子中のビニル基の平均数:3.25個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:375)30部に、粘度10000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000102モル/g、1分子中のビニル基の平均数:3.89個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:178)30部、比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続け、ゴムコンパウンドを得た。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000102モル/g)30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に上記式(3)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.00部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0052】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0053】 〔比較例1〕 粘度5000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.000062モル/g、1分子中のビニル基の数:2個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:436)60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続けた。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に下記式(5)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.86部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0054】 【化9】 【0055】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行った後、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0056】 〔比較例2〕 実施例1のジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続けた。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に下記式(6)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体1.52部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0057】 【化10】 【0058】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行った後、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 以上の結果を表1に示す。 【0059】 【表1】 【0060】 表1の結果より、本発明に係わるゴムシート(実施例)は、一般物性及び耐油性、耐久性に優れているのに対して、比較例1のゴムシートは耐油性、耐久性に劣り、比較例2のゴムシートは初期物性、特に伸びと引裂強さが小さくてシール材としては不十分なものであり、耐油性に劣ることが確認された。 |
訂正の要旨 |
訂正事項 a.特許請求の範囲 「 【請求項1】 (1)1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を2個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00004〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が200〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100重量部 (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万重量部に対して白金金属として0.1〜500重量部 を含有してなることを特徴とする付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物。 【請求項2】 オルガノポリシロキサンが、下記一般式(1)で示され、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00004〜0.00015モルであり、かつ25℃における粘度が200〜50000センチポイズである請求項1記載の付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物。 【化1】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基、R2はアルケニル基であり、nはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数である。) 【請求項3】 オルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で示され、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズである請求項1記載の付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物。 【化1】 (但し、式中R1は上記と同様の意味を示し、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) 【請求項4】 耐油部品用である請求項1,2又は3記載のシリコーンエラストマー耐油組成物。」 を特許請求の範囲の減縮を目的として、 「 【請求項1】 (1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100重量部 【化1】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万重量部に対して白金金属として0.1〜500重量部 を含有してなることを特徴とする付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物。 【請求項2】 耐油部品用である請求項1記載のシリコーンエラストマー耐油組成物。」 と訂正する。 これに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書[0011]〜[0018]、[0021]、[0022]、[0025]、[0026]、[0028]、[0029]、[0030]、[0034]、[0042]、[0043]、[0046]〜[0059]を下記の通り訂正し、[0023]、[0024]を削除する。 「 【0011】 【課題を解決するための手段及び作用】 本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様) 【化2】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部を配合することにより、鉱物油又は合成炭化水素油に加えて各種の添加剤が使用されているエンジンオイル等の油と高温下で長時間接触していても亀裂の発生、軟化劣化、ゴム弾性を失うなどの問題が発生することがなく、ゴム物性の低下が小さく、それ故、良好な一般物性を有し、かつ耐久性に優れたシリコーンゴムを与える付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物が得られることを知見し、本発明をなすに至った。 【0012】 従って、本発明は、 (1)下記一般式(1)で示され、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同志が平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位を介して位置しているものであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズであるオルガノポリシロキサン100部 【化3】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) (2)1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを該オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子のモル数と前記オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合アルケニル基のモル数の比が0.8:1〜5:1となるような量 (3)白金系触媒を前記オルガノポリシロキサン及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計量100万部に対して白金金属として0.1〜500部を含有してなることを特徴とする付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物を提供する。 【0013】 以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物の第1成分は、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モルであり、かつ25℃における粘度が5000〜200000センチポイズ(cp)であるオルガノポリシロキサンである。 【0014】 上記オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で示されるものを使用する。 【化4】 (但し、式中R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、n,mはオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基である。) 【0015】 上記式(1)においてR1は非置換又は置換の一価炭化水素基で、炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。また、アルケニル基は、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等の炭素数2〜8、特に2〜4のアルケニル基である。 【0016】 上記式(1)において、各置換基は異なっていても同一であってもよいが、1分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を3個以上有し、オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005〜0.0002モル、好ましくは0.00005〜0.00015モルである必要がある。オルガノポリシロキサン1g当りのアルケニル基のモル数が0.00005モルに満たないと十分な耐油性能が得られず、0.0002モルを超えると高硬度となり、ガスケットとして必要なゴム物性が得られない。 【0017】 なお、分子中に含有されるアルケニル基は、分子鎖末端あるいは分子鎖途中のいずれのケイ素原子に結合したものであってもよいが、少なくとも分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するものであることが、硬化速度あるいは硬化物の物性などの点から好ましい。また、分子中のアルケニル基が結合したケイ素原子同士はその間に平均して100〜500個のジオルガノシロキサン単位(繰り返し単位)を介して位置しているもので、アルケニル基間のジオルガノシロキサン単位の数が少なすぎると一般的なゴム物性に劣るものとなる場合があり、また介在するシロキサン単位数が多すぎると耐油性能に劣るものとなる場合がある。 【0018】 また、上記オルガノポリシロキサンは、25℃における粘度が5000〜200000cp、特に10000〜200000cpである必要がある。200000cpを超えると粘度が高くなりすぎて液状ゴムとしての成形性のメリットが失われてしまう。 【0021】 ここで耐油性の観点からは、上記オルガノポリシロキサンが比較的高分子量(例えば25℃の粘度で5000〜200000cp、特に10000〜200000cp程度)の場合には、アルケニル基は少なくとも分子鎖途中のケイ素原子、特に分子鎖両末端及び分子鎖途中のケイ素原子に結合したものであることが好ましい。 【0022】 本発明では、このようなオルガノポリシロキサンとして下記のものが使用される。 【0025】 【化5】 (但し、式中R1は上記と同様の意味を示し、R3は同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20、好ましくは1〜8の一価炭化水素基であり、n,mはn≧200、m≧1であり、m+nがオルガノポリシロキサンを上記粘度とする正数であるが、R3の少なくとも3個はアルケニル基であり、分子鎖両末端のR3がいずれもアルケニル基以外の基である場合mは3以上の正数である。) 【0026】 次に、第2成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子を、分子鎖途中に位置する[SiH(CH3)O2/2]で示される2官能性シロキサン単位として3個又は4個有するものであり、下記一般組成式(2) R4c(H)dSiO(4-c-d)/2 …(2) (但し、式中R4は同一又は異種の炭素数1〜12、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、好ましくは脂肪族不飽和結合を有しないものがよい。cは0.8≦c≦2.2の正数、dは0.005≦d≦1.0の正数であり、0.8<c+d≦3.0である。好ましくは1.6≦c≦2.0、0.01≦d≦0.8、1.6<c+d≦2.5、特には0.05≦d≦0.8である。) で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に使用される。 【0028】 上記式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子結合水素原子以外の有機基、即ちR4としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などの前記したR1と同様の同一又は異種の好ましくは脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の炭素数1〜12の一価炭化水素基が挙げられる。 【0029】 上記式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)を分子鎖途中に3個又は4個有することが必要であり、前記水素原子が2個未満では十分なゴム物性が得られず、7個を超えると架橋点が集中するため耐油性能が低下してしまう。 【0030】 ケイ素原子に結合した水素原子は、分子鎖途中に位置するものである。 【0034】 【化6】 【0042】 〔参考例1〕 粘度1000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.000125モル/g、1分子中のビニル基の数:2個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:216)60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続け、ゴムコンパウンドを得た。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に下記式(3)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.95部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0043】 【化7】 【0046】 〔実施例1〕 粘度20000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000086モル/g、1分子中のビニル基の平均数:4.1個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:208)60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続け、ゴムコンパウンドを得た。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に上記式(3)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.16部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0047】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0048】 〔実施例2〕 実施例1と同様にしてシリコーンゴムベースを得た後、これに更に下記式(4)で示されるメチルハイドロジェンシロキサン環状体0.75部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合した。 【0049】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0050】 【化8】 【0051】 〔実施例3〕 粘度50000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000052モル/g、1分子中のビニル基の平均数:3.25個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:375)30部に、粘度10000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000102モル/g、1分子中のビニル基の平均数:3.89個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:178)30部、比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続け、ゴムコンパウンドを得た。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量0.000102モル/g)30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に上記式(3)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.00部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0052】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行い、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0053】 〔比較例1〕 粘度5000csの両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.000062モル/g、1分子中のビニル基の数:2個、ビニル基間に介在するジメチルシロキサン単位の平均数:436)60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続けた。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に下記式(5)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体2.86部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0054】 【化9】 【0055】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行った後、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 【0056】 〔比較例2〕 実施例1のジメチルポリシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体60部に比表面積300m2/gのヒュームドシリカ30部、ヘキサメチルジシラザン6部、水3部をニーダーミキサーに入れ、1時間そのまま攪拌を続けた後、内部温度が150℃になるまで加熱し、更に攪拌を3時間続けた。このゴムコンパウンド90部に上記ジメチルポリシロキサン30部、石英粉末50部、炭酸マグネシウム10部を加えて均一になるまで混合した後、3本ロールに通し、シリコーンゴムベースとした。これに更に下記式(6)で示されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体1.52部と塩化白金酸の1%イソプロピルアルコール溶液を0.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1部とを添加し、均一に混合し、シリコーンエラストマー組成物を得た。 【0057】 【化10】 【0058】 この組成物を120℃で10分間プレス成形し、厚さ2mmのゴムシートを得、更にポストキュアーを200℃で4時間行った後、参考例1と同様に一般物性及び耐油性を測定した。 以上の結果を表1に示す。 【0059】 【表1】 」 |
異議決定日 | 2003-02-20 |
出願番号 | 特願平7-189873 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C08L)
P 1 651・ 531- YA (C08L) P 1 651・ 113- YA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐々木 秀次 |
特許庁審判長 |
柿 崎 良 男 |
特許庁審判官 |
舩 岡 嘉 彦 石井 あき子 |
登録日 | 2001-04-27 |
登録番号 | 特許第3183108号(P3183108) |
権利者 | 信越化学工業株式会社 |
発明の名称 | 付加硬化型液状シリコーンエラストマー耐油組成物 |
代理人 | 重松 沙織 |
代理人 | 小林 克成 |
代理人 | 久保田 芳譽 |
代理人 | 小林 克成 |
代理人 | 小島 隆司 |
代理人 | 重松 沙織 |
代理人 | 小島 隆司 |