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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1077427
審判番号 不服2002-7554  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-04-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-30 
確定日 2003-06-09 
事件の表示 平成2年特許願第210564号「心臓および血管の肥大および肥厚の治療剤」拒絶査定に対する審判事件〔平成3年4月9日出願公開,特開平3-83957,請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 1.本願発明
本願は平成2年8月10日の出願(パリ条約による優先権主張:1989年8月11日(ドイツ国))であって,その請求項に係る発明は,平成12年9月6日付け手続補正書にて補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認める。

2.原査定の理由の概要
平成14年1月18日付け拒絶査定によると,拒絶査定の理由は,平成12年3月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,すなわち「この出願に係る発明は,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。」というものである。
そして,拒絶査定には備考として次の点が指摘されている。
特願平1-235895号の当初明細書には,ACE阻害剤のシラザプリルについて,高血圧処置の投薬量が2.5〜5mg/日であり,所望の効果を奏するための投薬量は,0.5〜10mg/日である旨記載され(公開公報第4頁左下欄),さらに,実施例1においてシラザプリル0.5mgを含有する錠剤を製造していることから,抗高血圧投与量以下の有効量のACE阻害剤を含有する治療剤についても記載されているものと認められる。

3.当審における判断
特願平1-235895号の当初明細書には以下の記載がある。(なお,摘記箇所については特開平2-121922号公報の該当個所による。)
(1) ACE阻害剤は,血管損傷後の血管壁肥厚によって,そして更にACE阻害剤による高血圧の処置に普通の濃度と同一オーダーの濃度で新動脈内膜の形成及び血管口径の減少を抑制することが本発明の範囲において立証された。(3頁左下欄10〜14行)
(2) 殊に好ましいシラザプリルに対しては,一般に,1日当り経口的に約0.5〜10mg,好ましい2.5〜5mgの投薬量を用いるべきである。シラザプリルによる高血圧の処置に対して治療的に好ましいと立証された投薬量は2.5〜5mg/日である。(4頁左下欄1〜6行)
これらの記載は,ACE阻害剤は,新動脈内膜の形成及び血管口径の減少を抑制する用途のために高血圧の処置の際と同様の量を必要とし,ACE阻害剤であるシラザプリルについてもそのことを示したものといえる。

一方,本願の請求項1及び2に係る発明は,心臓及び血管の肥大及び肥厚の治療のために有効とするACE阻害剤の量は「抗高血圧投与量以下」で足りることをその発明の構成とするものである。
そうすると,この投与量の点で,本願請求項1及び2に係る発明と特願平1-235895号の当初明細書に記載された発明とは相違すると認められる。
なお,シラザプリルについて,高血圧の処置に対して治療的に好ましいと立証された投薬量より少ない量が記載されているとしても(上記摘記事項(2)),この記載はあくまでも高血圧の処置に必要な量と同等なものとして提示された範囲の一部に過ぎないものと認められ,また,そもそも本願の請求項1及び2に係る発明はシラザプリルを含まないものであることから,この記載をもって,本願の請求項1及び2に係るACE阻害剤について,心臓及び血管の肥大及び肥厚の治療のに必要な量が「抗高血圧投与量以下」で足りることまで開示されているものとはいえない。

4.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1及び2に係る発明は,特願平1-235895号の当初明細書に記載された発明と同一であると認めることはできない。
また,ほかに本願について拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-05-15 
出願番号 特願平2-210564
審決分類 P 1 8・ 16- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 とし子田村 聖子岩下 直人  
特許庁審判長 眞壽田 順啓
特許庁審判官 横尾 俊一
松浦 新司
発明の名称 心臓および血管の肥大および肥厚の治療剤  
代理人 西村 公佑  
代理人 高木 千嘉  

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