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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1077548
審判番号 不服2001-22272  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-13 
確定日 2003-05-30 
事件の表示 平成 5年特許願第234937号「ジルコニア製光ファイバコネクタ部品」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 3月10日出願公開、特開平 7- 63950]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件発明
本願は、平成5年9月21日の出願(国内優先権主張 平成4年9月29日)であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のもの(以下、「本件発明」という。)と認める。

「光ファイバを接続するコネクタを用いるプラグであって、光ファイバを挿着保持したフェルールを備え、前記フェルールは、主として酸化セリウムを安定化剤とするジルコニアセラミックスで形成されており、酸化セリウムがジルコニアセラミックス全体の12〜20重量%含まれ、かつジルコニアの結晶相は単斜相が10%以下、正方相が70%以上であることを特徴とするプラグ。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である、特開平4-144962号公報(以下、「引用例1」という。)には、

「重量パーセントで酸化セリウムを3.0%以上20%以下含有し、残部が実質的に酸化ジルコニウムから成ることを特徴とする高靱性精密部品。」(特許請求の範囲)、

「(産業上の利用分野) 本発明はLSIやICなどの半導体製造装置のワイヤボンディングに使用するボンディングキャピラリ、光ファイバを接続する光コネクタ用部品、さらには各種ワイヤガイド用部材として使用される高靱性精密部品に係り、特に高靱性で過酷な使用環境にも充分耐え、寿命の長い高靱性精密部品に関する。」(第1頁左下欄第10行〜第17行)、

「(従来の技術) 半導体製造装置のボンディングキャピラリや光コネクタ用材料など、繰り返して荷重を受ける精密部品には、特に機械的強度が優れた材料が使用されている。」(第1頁右下欄第1行〜第5行)、

「本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、機械的強度および靱性が大きく、したがって先端を細径にすることが可能であり、高密度のワイヤボンディングを可能とするワイヤボンディングキャピラリ等に使用される高靱性精密部品を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第12行〜第17行)

「[発明の構成] (課題を解決するための手段と作用)本願発明者等は上記目的を達成するため、種々のセラミックス材に関し、調査研究を重ねた結果、重量%で酸化セリウム(CeO2)を3.0〜20%含有し、残部が実質的に酸化ジルコニウムから成る部品を形成したときに、高い靱性有し、細径形状に形成したとしても優れた強度を有する精密部品が得られた知見に基づいて本発明を完成するに至った。・・・また酸化セリウムは3.0〜20重量%含有される。この酸化セリウムは、酸化ジルコニウムを部分的に安定化させる安定剤として機能し、精密部品の靱性および強度を高める作用を有する。・・・次に本発明の目的とする特性を有する精密部品の製造工程について、前記のボンディングキャピラリを例にとり説明する。 すなわち、まず酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムの各原料粉を上記組成となるように秤量しボールミル等で混合する。・・・得られた混合粉は室温下でプレス成形してグリーン成形体に加工する。・・・穿孔加工を終了した後、この成形体を所定条件下で焼結する。・・・例えば焼結温度1400〜1600℃、焼結時間0.5〜4時間であればよい。・・・本発明に係る高靱性精密部品は、上記のようにワイヤボンディングキャピラリの他に、光コネクタ用部材や各種ワイヤガイドなど高靱性を必要とする部品材料に適用される。しかしながらその適用範囲は上記の部品に限らず、複雑な形状を有し肉薄で欠けやクラックが発生し易い全ての精密部品に対して応用することができる。」(第2頁左下欄第18行〜第3頁左下欄第10行)、

「[発明の効果] 以上説明の通り、本発明に係る高靱性精密部品によれば、破壊靱性値が従来品より大幅に向上するため、微細形状に加工した場合においても、欠けやクラックを発生せず、高精度な加工が可能となる。特にこの高靱性精密部品をワイヤボンディングキャピラリとして使用した場合には、先端部へのAu線やリードフレーム粉の付着が少なく、また、高温強度、耐熱衝撃性が大きいためヒートショックによる欠け、摩耗が少なく、長寿命化を図ることができるだけでなく、・・・」(第5頁左上欄第13行〜同頁右上欄第9行)、

との記載が認められる。

以上によれば、引用例1には、
「光ファイバを接続するコネクタ用部材を含む高靱性精密部品であって、前記部材は、主として酸化セリウムを安定化剤とするジルコニウム焼結体で形成されており、酸化セリウムがジルコニウム焼結体全体の3.0〜20重量%含まれていることからなる前記高靱性精密部品」(以下「引用発明」という。)が記載されている。

同じく、特開平3-159960号公報(以下、「引用例2」という。)には、

「従来技術とその問題点 酸化イットリウム(イットリア)を含むジルコニア(イットリア安定化ジルコニア)は、従来から高強度かつ高靱性のセラミックス材料として、良く知られている。この材料粉末を成形し、焼結して得られる焼結体は、構成粒子の大部分が準安定な正方晶からなっている。この様な焼結体に外部からの力が加えられた場合には、内部に存在する亀裂先端の応力集中点において、準安定な正方晶粒子が単斜晶へと応力誘起変態し、その際に発生する体積膨張が亀裂の進展を抑制する。このため、イットリア安定化ジルコニアは、高強度かつ高靱性という優れた特性を発揮する。」(第1頁右下欄第1行〜第13行)、

「本発明によるジルコニア焼結体が高強度かつ高靱性を発揮する基本的な機構は、公知のイットリア安定化およびセリア安定化ジルコニア焼結体のそれとほぼ同様であり、焼結体内部の微細亀裂の先端での正方晶から単斜晶への応力誘起変態が、亀裂の進展を抑制するものである。」(第3頁右上欄第9行〜第14行)、

との記載が認められる。

以上によれば、引用例2には、
「(従来技術として)イットリア安定化およびセリア安定化ジルコニア焼結体は、焼結体に外部からの力が加えられた場合には、内部に存在する亀裂先端の応力集中点において、準安定な正方晶(正方相)粒子が単斜晶(単斜相)へと応力誘起変態し、その際に発生する体積膨張が亀裂の進展を抑制するため、高強度かつ高靱性という優れた特性を発揮するものであること。」が記載されている。

3.相違点についての検討及び判断
3.1 本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ジルコニウム焼結体」は、酸化セリウムを安定化剤とするジルコニウムの焼結体であるから、本件発明の「ジルコニアセラミックス」に相当する。
また 一般に、光ファイバを接続するコネクタは、プラグとアダプタとから構成され、プラグには光ファイバを挿入保持するフェルールが装着されているものが広く知られているから、「プラグ」及び「プラグ内に挿着されるフェルール」は、「光ファイバを接続するコネクタ用部材」に他ならない。 したがって両者は、「光ファイバを接続するコネクタ用部材であって、前記部材は、主として酸化セリウムを安定化剤とするジルコニアセラミックスで形成されており、酸化セリウムがジルコニアセラミックス全体の12〜20重量%含まれることを特徴とする前記コネクタ用部材。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本件発明では、「酸化セリウムを安定化剤とするジルコニアセラミックス」が、光ファイバ接続用コネクタに用いるプラグに挿着される「フェルール」に用いられるのに対して、引用発明では、単に、「光ファイバ接続用コネクタ部材」に用いられる点。

[相違点2]本件発明では、ジルコニアの結晶相について「単斜相が10%以下、正方相が70%以上である」と規定しているのに対し、引用発明では、結晶相の組成について格別規定していない点。

3.2 判断
[相違点1]について
従来、光ファイバ通信に用いられるコネクタは、プラグとアダプタとから構成され、フェルールに光ファイバを挿通し、これと一体化させた状態でプラグ内に挿着保持されるものである。このように、「フェルール」は光ファイバ接続用コネクタの構成部材として周知慣用のものであるから、「酸化セリウムを安定化剤とするジルコニアセラミックスが、コネクタ用部品に用いられる」旨の教示があれば、当該「ジルコニアセラミックス」を「フェルール」用の構成素材とすることは、当業者が格別困難なく想到し得ることと認められる。

[相違点2]について
一般に、酸化セリウムで部分安定化したジルコニアセラミックスは、構成粒子の大部分が正方相からなるものが(単斜相の僅少なものが)、高強度かつ高靱性という優れた特性を発揮することは広く知られているから(例えば、上記引用例2参照)、引用発明において、ジルコニアセラミックスを高強度かつ高靱性にするために、正方相の割合を多く、単斜相の割合を少なく設定することは、当業者が容易に想到し得ることであり、その際、単斜相の上限を10%、正方相の下限を70%とすることは当業者が適宜設計し得る事項であると認められる。

そして、引用例1には、「本発明に係る高靱性精密部品によれば、破壊靱性値が従来品より大幅に向上するため、微細形状に加工した場合においても、欠けやクラックを発生せず、高精度な加工が可能となる」、「高温強度、耐熱衝撃性が大きいためヒートショックによる欠け、摩耗が少なく、長寿命化を図ることができる」旨記載されており(引用例1の[発明の効果]の欄)、これらから見て、本件発明の効果(加工性・耐環境性の向上)は予測し得る範囲のものであり、格別なものとは云えない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件の請求項1に係る発明は、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-03-25 
結審通知日 2003-04-01 
審決日 2003-04-15 
出願番号 特願平5-234937
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 畑井 順一
吉田 禎治
発明の名称 ジルコニア製光ファイバコネクタ部品  
代理人 高野 弘晋  
代理人 水野 勝文  
代理人 小花 弘路  
代理人 水野 勝文  
代理人 小花 弘路  
代理人 岸田 正行  
代理人 岸田 正行  
代理人 水野 勝文  
代理人 高野 弘晋  
代理人 小花 弘路  
代理人 岸田 正行  
代理人 高野 弘晋  

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