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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1078027
異議申立番号 異議2001-71053  
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-09 
確定日 2003-05-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3096645号「酸の含有率が高いマクロモノマーおよびその製造方法」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3096645号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3096645号は、平成8年12月13日(パリ条約による優先権主張1995年12月15日、アメリカ)に出願された特願平8-333177号に係り、平成12年8月4日に設定登録がなされた後、東亞合成株式会社から特許異議の申立てがあり、平成13年7月11日付けで取消理由が通知され、平成14年1月23日付けで特許権者より特許異議意見書が提出され、平成14年5月21日付けで特許権者及び特許異議申立人に審尋がなされ、平成14年7月26日付けで特許異議申立人より回答書が提出され、平成14年11月22日付けで特許権者より回答書および上申書が提出され、平成15年3月20日付けで特許権者より再び上申書が提出されたものである。

[2]特許異議申立についての判断
(1)特許異議申立理由の概要
特許異議申立人東亞合成株式会社は、
甲第1号証(特開昭57-94398号公報)、
甲第2号証(特開平6-92703号公報)、
甲第3号証の1(JOHN C. BEVINGTON著、大津隆行、他3名訳「ラジカル重合」、株式会社東京化学同人、1966年7月20日発行、148〜153頁)、
甲第3号証の2(大津隆行著「改訂 高分子合成の化学」、(株)化学同人、1979年1月10日発行、86〜89頁)、
甲第3号証の3(高分子学会編「高分子の合成と反応(1)」共立出版株式会社、1992年5月25日発行、54〜57頁)、
甲第4号証(米国特許第5,231,131号明細書)、
甲第5号証(実験報告書、青山政裕 他1名、平成13年3月30日付作成)、
甲第6号証(実験報告書、青山政裕 他1名、平成13年3月30日付作成)、
甲第7号証の1(J.BRANDRUP 他1名編「POLYMER HANDBOOK」、John Wiley & Sons, Inc.1975年発行、II-57頁〜II-58頁、II-95頁)、
甲第7号証の2(特開昭56-152802号公報)、
甲第7号証の3(帰山享二著「カルボキシル基をもつ連鎖移動剤の存在下におけるスチレンの重合と重合体のグラフト化反応」、日本化学雑誌、1967年発行、88巻、7号、783〜786頁)を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるか、又は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であり、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるか、又は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるものであり、本件請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるものであるから、いずれも取り消されるべきものであると主張する。
(2)本件発明
本件特許第3096645号の請求項1〜2に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明2」という。)は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 (I)(a) 少なくとも50重量%の式
【化1】

(式中、R2はHまたはCH3である)を有するモノマー単位、(b) 2〜50重量%の式
【化2】

(式中、nは0または1であり、Xは炭素原子1〜9個のアルキル、アリールまたはアルカリールのジラジカル結合基であり、mは2〜50であり、R3はHまたはCH3であり、そしてR4はHまたは炭素原子1〜4個のアルキル基である)を有するモノマー単位、および(c) 0〜10重量%の式
【化3】

(式中、R2はHまたはCH3であり、R5は炭素原子1〜8個のアルキル基または炭素原子1〜8個のヒドロキシアルキル基である。但し、R2がHの場合、R5はC1〜C8アルキルではない)を有するモノマー単位からなり、そしてa+b+c=2〜1,000であるランダムコポリマー、上記重量%はマクロモノマーの全重量基準である、および(II) 式
【化4】

〔式中、R1はH、炭素原子1〜8個のアルキル基、炭素原子1〜8個のヒドロキシアルキル基およびXn(CH2CH2O)m-R4(式中、X、n、mおよびR4は前記定義した通りである)よりなる群から選択される〕を有し、かつ前記ランダムコポリマーの一端にのみ結合する末端基からなるマクロモノマー。
【請求項2】 少なくとも50重量%の式
CH2=C(R2)(C(O)OH)(式中、R2はHまたはCH3である)を有する少なくとも1種の酸モノマー、2〜50重量%の式CH2=C(R3)(C(O)OXn(CH2CH2O)m-R4)(式中、nは0または1であり、Xは炭素原子1〜9個のアルキル、アリールまたはアルカリールのジラジカル結合基であり、mは2〜50であり、R3はHまたはCH3であり、そしてR4はHまたは炭素原子1〜4個のアルキル基である)を有する少なくとも1種のコモノマー、および0〜10重量%の炭素原子1〜8個のアルキル基を有するアルキルメタクリレートまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記重量%は生成するマクロモノマーの全重量基準である、を、コバルト(II)およびコバルト(III)の錯体よりなる群から選択される連鎖移動剤または付加分裂機構によって連鎖移動を行うことのできる有機連鎖移動剤の存在下、有機溶媒中においてフリーラジカル重合させる、請求項1記載のマクロモノマーの製造方法。」
(3)刊行物の記載事項
(a)甲第1号証(特開昭57-94398号公報)
「(A)一般式

(式中R1は水素原子又はメチル基、R2はエチレン基またはプロピレン基、nはR2がエチレン基の場合は2〜30であり、R2がプロピレン基の場合は2〜15を表わす。)で示される不飽和単量体を1〜90重量%、及び、
(B)カルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体及び/又はそのアルカリ金属塩を10〜99重量%含有する(A)(B)成分の共重合体であることを特徴とするスケール防止剤。」(特許請求の範囲第1項)、
「更に詳しくは、上記一般式で示される(A)成分とはポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート即ちポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート……である。」(2頁右下欄17〜3頁左上欄2行)、
「(A)成分が共重合物中に占める含有量は1〜90重量%好ましくは5〜50重量%が効果的であり、」(3頁左上欄8行〜10行)、
「(B)成分であるカルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体はアクリル酸、メタクリル酸……で好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸である」(3頁左上欄13行〜17行)、
「(B)成分が共重合物中に占める含有量は10〜99重量%、好ましくは50〜95重量%であり、50重量%以下では水溶性が低下し保存安定性にかける欠点を有している。」(3頁左上欄18行〜同頁右上欄2行)及び
「次の実施例は本発明によるスケール防止剤A〜Dと比較品E〜Fについて炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウムに対する効果をおのおの比較した。
スケール防止剤A〜Fの組成
試料A:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(EO付加モル数2)とアクリル酸との共重合物(10:90重量比)……
試料C:ポリエチレングリコールモノメタクリレート(EO付加モル数2)とメタクリル酸との共重合物(20:80重量比)……
試料A〜Dの製造
試料Aは水溶媒中に、10重量%のポリエチレングリコールモノメタクリレート(EO付加モル数2)と90重量%のアクリル酸と、これら単量体総重量を基として10重量%の連鎖移動剤を溶解し、次に還流付近まで熱上げし、同1.5重量%の過硫酸アンモニウムを加えて反応を完結させ、製造した。
試料B-Dもほぼこれに準じた条件にて製造した。」(3頁左下欄9行〜4頁左上欄1行)が記載されている。
(b)甲第2号証(特開平6-92703号公報)には、
「 (A)下記の(1) 、(2) に示された単量体を重合して得られる共重合体及び/又は該共重合体の金属塩と(B) 徐放性分散剤を必須成分とするセメント混和剤。
(1) 不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体
(2) アクリル酸系単量体及び/又は不飽和ジカルボン酸系単量体」(特許請求の範囲の請求項1)
「単量体(1) が下記の一般式(a) 、単量体(2) が下記の一般式(b) 、(c) で表される単量体群から選ばれる1種以上の単量体である請求項1に記載のセメント混和剤。
一般式(a)
【化1】

〔式中、R1、R2:水素、メチル基、(CH2)m2COOM1 、〔(CH2)m3COO〕2M2 、
(CH2)m4CONH(AO)n2X2
【化2】

(CH2)m6COO(AO)n5X5
AO:炭素数2〜3のオキシアルキレン基
m1〜m6:0〜2の整数
n1〜n5:3〜500 の整数
M1:水素、1価金属、アンモニウム基、アミノ基又は置換アミノ基
M2:2価金属
X1〜X5:水素、炭素数1〜3のアルキル基〕
一般式(b)
【化3】

一般式(c)
【化4】


〔式中、R3、R6:水素、メチル基
R7、R8、R4、R5:水素、メチル基、又は(CH2)m7COOM5、M3、M5:水素、1価金属、アンモニウム基、アミノ基又は置換アミノ基、
M4:2価金属、m7:0〜2の整数〕」(特許請求の範囲の請求項2)、
「本発明に用いられる単量体(1) のポリアルキレングリコールモノエステルとしては、例えば、トリエチレングリコールモノアクリレート(3E-A)、ポリエチレングリコール(#200)モノアクリレート(4E-A)、ポリエチレングリコール(#400)モノアクリレート(9E-A)、ポリエチレングリコール(#600)モノアクリレート(14E-A)、ポリエチレングリコール(#1000) モノアクリレート(23E-A)、ポリエチレングリコール(#2000) モノアクリレート(46E-A)……トリエチレングリコールモノメタクリレート(3E-MA) 、ポリエチレングリコール(#200)モノメタクリレート(4E-MA) 、ポリエチレングリコール(#400)モノメタクリレート(9E-MA) 、ポリエチレングリコール(#600)モノメタクリレート(14E-MA) 、ポリエチレングリコール(#1000) モノメタクリレート(23E-MA) 、ポリエチレングリコール(#2000) モノメタクリレート(46E-MA)…… 等のポリエチレングリコールモノエステル類……付加モル数 500以下のポリアルキレングリコールモノエステル類、及びこれらのグリコール末端の水素をエーテル化した誘導体が好ましい。」(4頁5欄下から16行〜同頁6欄14行)、
「本発明に用いられる単量体(2) のアクリル酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸……が挙げられる。」(4頁6欄25〜27行)、
「本発明の共重合体(A) 中の単量体(1) 、(2) の割合(重量%)は、(1) :(2) =10〜99:90〜1の範囲が適しており、より好ましくは(1) :(2) =40〜99:60〜1の範囲である。」(4頁6欄35〜38行)、
「本発明の共重合体の(A) の重量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準によるGPC 測定値)は1,000〜1000,000の範囲が良く、より好ましくは5,000〜500,000 が良い。重量平均分子量が、5,000 以下では分散性が充分でない。また、1000,000以上では凝集性が顕著になるため好ましくない。」(4頁6欄41〜46行)及び
「製造例(1)
攪拌機付き反応容器に水 265部(重量部)を仕込み、攪拌しながら窒素置換し、窒素雰囲気中60℃迄昇温した。ポリエチレングリコールモノメタクリレート(9E-MA)50部、メタクリル酸ナトリウム(MA-Na)50部を仕込み、30%水酸化ナトリウム水溶液2部で溶液のpHを 9.0に調整した。窒素置換後、20%過硫酸アンモニウム水溶液10部を添加し重合を開始する。6時間反応させ重合を完了後、30%水酸化ナトリウム水溶液3部で完全中和させ、共重合物を得た。以下、製造例(1)に従って製造した本発明の共重合物の内容を表1に示す。
【表1】

」(6頁10欄26〜39行)が記載されている。
(c)甲第3号証の1(JOHN C. BEVINGTON著、大津隆行、他3名訳「ラジカル重合」、株式会社東京化学同人、1966年7月20日発行、148〜153頁)には、
「本章Bでは2分子停止の機構についてのべる。すなわち、再結合によるか、不均化によるかである。」(148頁8〜9行)、
「B.再結合停止と不均化停止
ポリマーラジカルの隣接炭素に水素原子があると、2分子停止は再結合(1)あるいは不均化(2)のいずれかでおこる。

2PCH2CXY → PCH2CXYCXYCH2P (1)
→ PCH2CHXY + PCH=CXY(2)
ある場合には、ことなった不均化形式も可能である。すなわち、メタクリル酸メチルのようにα-メチル置換モノマーではメチル基から水素原子が移動する。

2PCH2C(CH3)X → PCH2C(CH3)XH + PCH2CX=CH2 (3)」(148頁16〜23行)、
「共重合では、さらに複雑となり、n種のモノマーの共重合では、n(n+1)/2種のラジカルの再結合か、あるいは不均化による相互作用がある。」(148頁25〜27行)及び
「ポリメタクリル酸メチルラジカルはかなりの不均化停止がおこる数少ないポリマーラジカルの一つである。このことはポリメタクリル酸メチルラジカルに含まれる五つの水素原子が(2)あるいは(3)式のいずれかで不均化反応をおこしうるが、」(149頁14〜16行)が記載されている。
(d)甲第3号証の2(大津隆行著「改訂 高分子合成の化学」、(株)化学同人、1979年1月10日発行、86〜89頁)には、
「4.3 停止反応
ラジカル重合における停止反応は、原則として生長ラジカルどうしの2分子反応で起こる。」(86頁下から2〜1行)、
「4.3.1 2分子停止
a)再結合と不均化停止
2分子停止は再結合(4-28)か、不均化反応(4-29)で起こる。

不均化反応は水素原子の移動で起こり、不飽和と飽和の末端基をもつポリマーが50%ずつ生成する。」(88頁4〜10行)及び
「ポリマーの比放射能と数平均重合度を測定すれば、式(4-30)よりmを計算することができる。このようにして求められた再結合と不均化停止の起こる割合を表4-8に示す。

メタクリル酸メチル以外のモノ置換のビニルモノマーでは主として再結合で停止するが、メタクリル酸メチルでは不均化が優勢に起こる。このことは1,1-ジ置換基の立体効果で再結合が起こりにくく、そのうえ生長ラジカルのα位の炭素に5個の水素原子を有するために不均化が起こりやすいと考えられている。」(89頁1〜8行)と記載されている。
(e)甲第3号証の3(高分子学会編「高分子の合成と反応(1)」共立出版株式会社、1992年5月25日発行、54〜57頁)には、
「a.再結合と不均化
停止反応が成長ラジカルの二分子停止反応で起こっている場合、化学反応として見ると再結合か不均化反応である(式1.41、1.42)。

不均化反応では水素原子の移動が起こり、不飽和と飽和の末端基を持つポリマーが生成する。」(54頁5〜9行)及び
「MMAの重合の際、不均化停止で生じる末端二重結合は次に示すように2つのタイプ(A)と(B)が可能である。同1条件で重合し

た通常のポリ(MMA)の1H-NMRスペクトルを詳細に調べると5.40ppmならびに6.14ppmに(A)のビニリデン水素の吸収が観測され、従来から考えられてきたB型末端の二重結合は非常に少量であることが明らかになった(……)。」(55頁11〜16行)が記載されている。
(f)甲第4号証(米国特許第5231131号明細書)には、
「マクロモノマーは1個のエチレン系不飽和末端基を有していてグラフト共重合体の幹に重合され、そしてメタクリル酸、そのエステル類、ニトリル類、アミド類またはそれらのモノマーの混合物からなるモノマーの重合体を主として有している。
使用可能な典型的なアルキルメタクリレートはアルキル基に1〜8個の炭素原子を有し、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、……などを挙げることができる。他に使用可能な重合性モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、メタクリルアミドおよびメタアクリロニトリルである。前記したモノマーはグラフト共重合体の幹に使用してもよい。
マクロモノマーは、マクロモノマーの重量に基づいて、2〜100%、好ましくは約20〜50重量%のエチレン系不飽和酸による重合単位を有している。もしそれが唯一の成分である場合はメタクリル酸が特に好ましい。」(第3欄12〜34行)、
「幹を形成するモノマーと重合してグラフト共重合体を製造するために、末端に唯1個のエチレン系不飽和基を有するマクロモノマーを確実に得るために、Co+2基を有する触媒的に作用する連鎖移動剤、すなわちコバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマーの重合を行う。典型的には、重合の第1段階でモノマーを水混和性または水分散性の不活性有機溶媒およびコバルト連鎖移動剤と混合し、反応混合物を通常還流温度まで加熱する。それに続く工程で、追加のモノマー、コバルト触媒および2,2’-アゾビス(2-メチルブタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルペンタンニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)などのような通常のアゾ系重合触媒を加えて、所望の分子量のマクロモノマーが得られるまで重合を継続する。」(第3欄61行〜第4欄10行)及び
「好ましいコバルト連鎖移動剤または触媒は、Janowiczらの米国特許4,680,352号およびJanowiczらの米国特許4,722,984号に記載されている。最も好ましいものは、ペンタシアノコバルテート(II)およびビス(ボーロンジフロロフェニルグリオキシメート)コバルテート(II)2水和物である。」(第4欄頁11〜16行)が記載されている。(特許異議申立書14頁2行〜15頁2行の訳文による。)
(g)甲第5号証(実験報告書、青山政裕 他1名、平成13年3月30日付作成)には、甲第1号証の3頁右下欄2〜5行に記載の試料Cから試料Aを製造した方法に準じて製造して得られた共重合体は、重量平均分子量が3446で数平均分子量が1690であること、共重合体の末端二重結合数が共重合体1分子当たり0.26個であることが記載されている。
(h)甲第6号証(実験報告書、青山政裕 他1名、平成13年3月30日付作成)には、甲第2号証の6頁10欄26〜39行に記載の製造例2に従って製造して得られた共重合体は、重量平均分子量が867,124、数平均分子量が23,829であること、共重合体の末端二重結合数が共重合体1分子当たり0.69個であることが記載されている。
(i)甲第7号証の1(J.BRANDRUP 他1名編「POLYMER HANDBOOK」、John Wiley & Sons, Inc.1975年発行、II-57頁〜II-58頁、II-95頁)には、メタクリル系モノマーの1種であるメチルメタクリレートの重合時に3-メルカプトプロピオン酸を連鎖移動剤として用いることが記載されている。
(j)甲第7号証の2(特開昭56-152802号公報)の10頁左上欄5行以降に記載されている比較例A、10頁右上欄5行以降に記載されている比較例B、11頁左下欄9行以降に記載されている例1、12頁右上欄8行以降に記載されている例2、13頁右上欄14行以降に記載されている例5では、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸、イタコン酸から重合体を製造する際に、3-メルカプトプロピオン酸を連鎖移動剤として使用する例が記載され、同じく、11頁右上欄7行以降に記載されている比較例Eでは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸、イタコン酸から重合体を製造する際に、メルカプトプロピオン酸を連鎖移動剤として使用する例が記載されている。
(k)甲第7号証の3(帰山享二著「カルボキシル基を持つ連鎖移動剤の存在下におけるスチレンの重合と重合体のグラフト化反応」、日本化学雑誌、1967年発行、88巻、7号、783〜786頁)には、スチレンを重合する際に、α-およびβ-メルカプトプロピオン酸を連鎖移動剤として使用することが記載されている。

(4)本件発明1〜2と甲第1号証〜甲第7号証の3に記載された発明との対比・判断
(a)新規性についての判断
(i)本件発明1と甲第1号証に記載された発明との対比・判断
甲第1号証に記載された発明の(A)一般式

で示される不飽和単量体から製造されるモノマー単位は、本件発明1の(b)で示されるモノマー単位と重複し、甲第1号証に記載された発明の(B)カルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体から製造されるモノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸であることから、本件発明1の(a)で示されるモノマー単位と同一であり、これらのモノマー単位の共重合割合については、甲第1号証には、(A)単位が1〜90重量%、(B)単位が10〜99重量%と記載され、本件発明1の(b)で示されるモノマー単位が2〜50重量%、(a)単位が少なくとも50重量%と重複する。
そうすると、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とは、(a) 50〜99重量%の式

(式中、R2はHまたはCH3である)を有するモノマー単位、(b) 2〜50重量%の式

(式中、nは0であり、mは2〜30であり、R3はHまたはCH3であり、そしてR4はHである)を有するモノマー単位からなるコポリマーである点で一致するが、
甲第1号証に記載された発明では、本件発明1における、
(ア)共重合体の一端に、 式


〔式中、R1はH、炭素原子1〜8個のアルキル基、炭素原子1〜8個のヒドロキシアルキル基およびXn(CH2CH2O)m-R4(式中、X、n、mおよびR4は前記定義した通りである)よりなる群から選択される〕で示される末端基を結合するマクロモノマーであることが記載されていない点、
(イ)(A)で示されるモノマー単位と(B)で示されるモノマー単位の重合度の和が2〜1000と記載されていない点、
(ウ)共重合体がランダムであると記載されていない点、において本件発明1と相違する。
これらの相違点について検討する。
(ア)について
甲第3号証の1には、ラジカル重合の停止反応について記載され、停止反応には、再結合停止と不均化停止が起こること、α-メチル置換モノマーではメチル基から水素原子が移動する不均化停止が起きること(

2PCH2C(CH3)X → PCH2C(CH3)XH + PCH2CX=CH2)が記載され、甲第3号証の2及び甲第3号証の3には、同様にラジカル重合の停止反応について記載され、メタクリル酸メチルでは不均化が優勢に起こることが記載されている。
確かに、甲第3号証の1〜甲第3号証の3には、ラジカル重合が停止する場合は不均化停止反応が生じ、単量体がメタクリル酸メチルの場合には不均化停止反応が優勢に生じ、メチル基から水素原子が移動して、本件発明1における(II)式で示される末端を有する重合体が生じることが記載されているといえるが、これはあくまで甲第1号証に記載された発明の共重合体が、(II)式で示される末端を有する共重合体である場合があることを示すにとどまる。
一方、本件発明1は(II)式で示される末端基をランダムコポリマーの一端にのみ結合するマクロモノマーであり、マクロモノマーとは、本件特許明細書の段落【0002】には、「広範囲の工業的応用の必要を満たすためにグラフトコポリマーのような構造化されたコポリマーを合成するために有効に使用することができる。」と記載され、また、同じく段落【0003】にて記載されている、米国特許5,028,677号及び米国特許5,231,131号をみると、モノマーを重合して高分子化して、更に重合に使用できる物質の総称であるといえ、甲第1号証に記載された発明に、甲第3号証の1〜甲第3号証の3に記載された知見を適用すると、甲第1号証に記載された共重合体が、(II)式で示される末端基を有する共重合体が生じる場合があるということができるが、更に重合に使用できるマクロモノマーであるとまでいうことはできない。
また、実験報告書(甲第5号証)には、甲第1号証に記載された実施例の試料C(ポリエチレングリコールモノメタクリレート(EO付加モル数2)とメタクリル酸との共重合物、20:80重量比)を試作し、重量平均分子量は3446、数平均分子量は1690であること、末端二重結合数は共重合体1分子当たり0.26個であることが示されている。
しかしながら、本件発明1は、上述のとおり、(II)式で示される末端基をランダムコポリマーの一端にのみ結合するマクロモノマーであり、マクロモノマーとは、本件特許明細書の段落【0002】には、「広範囲の工業的応用の必要を満たすためにグラフトコポリマーのような構造化されたコポリマーを合成するために有効に使用することができる。」と記載され、また、同じく段落【0003】にて記載されている、米国特許5,028,677号及び米国特許5,231,131号をみると、モノマーを重合して高分子化して、更に重合に使用できる物質の総称であるといえ、甲第1号証に記載された試料Cについて、実験報告書にて追試して末端二重結合数が共重合体1分子当たり0.26個であると共重合体であるということが示されたにとどまり、甲第1号証に記載された試料Cが、更に重合に使用できるというマクロモノマーであるとまでいうことはできない。
よって、他の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
(ii)本件発明1と甲第2号証に記載された発明との対比・判断
甲第2号証に記載された発明の(1) 不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体は、
一般式(a)

〔式中、R1、R2:水素、メチル基
AO:炭素数2〜3のオキシアルキレン基
m1:0の整数
n1:3〜500 の整数
X1:水素、炭素数1〜3のアルキル基〕
であるから、本件発明1の(b)で示されるモノマー単位と重複し、
甲第2号証に記載された発明の(2) アクリル酸系単量体は、
一般式(b)

〔式中、R3:水素、R4、R5:水素、メチル基、M3:水素〕であるから、
本件発明1の(a)で示されるモノマー単位と同一であり、
これらのモノマー単位の共重合割合については、甲第2号証には、(1) :(2) =10〜99:90〜1の範囲と記載され、本件発明1の(b)で示されるモノマー単位が2〜50重量%、(a)単位が少なくとも50重量%と重複する。
そうすると、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは、(a) 50〜90重量%の式

(式中、R2はHまたはCH3である)を有するモノマー単位、(b)10〜50重量%の式

(式中、nは0であり、mは3〜50であり、R3はHまたはCH3であり、そしてR4はHまたは炭素原子1〜3個のアルキル基である)を有するモノマー単位からなる共重合体である点で一致するが、
甲第2号証に記載された発明では、本件発明1における、
(ア)共重合体の一端に、 式

〔式中、R1はH、炭素原子1〜8個のアルキル基、炭素原子1〜8個のヒドロキシアルキル基およびXn(CH2CH2O)m-R4(式中、X、n、mおよびR4は前記定義した通りである)よりなる群から選択される〕で示される末端基を結合するマクロモノマーであることが記載されていない点、
(イ)(A)で示されるモノマー単位と(B)で示されるモノマー単位の重合度の和が2〜1000と記載されていない点、
(ウ)共重合体がランダムであると記載されていない点、において本件発明1と相違する。
これらの相違点について検討する。
(ア)について
甲第3号証の1には、ラジカル重合の停止反応について記載され、停止反応には、再結合停止と不均化停止が起こること、α-メチル置換モノマーではメチル基から水素原子が移動する不均化停止が起きることが記載され(

2PCH2C(CH3)X → PCH2C(CH3)XH + PCH2CX=CH2)、甲第3号証の2及び甲第3号証の3には、同様にラジカル重合の停止反応について記載され、メタクリル酸メチルでは不均化が優勢に起こることが記載されている。
確かに、甲第3号証の1〜甲第3号証の3には、ラジカル重合が停止する場合は不均化停止反応が生じ、単量体がメタクリル酸メチルの場合には不均化停止反応が優勢に生じ、メチル基から水素原子が移動して、本件発明1における(II)式で示される末端を有する重合体が生じることが記載されているといえるが、これはあくまで甲第2号証に記載された発明の共重合体が、(II)式で示される末端を有する共重合体である場合があることを示すにとどまる。
一方、本件発明1は、上述のとおり、(II)式で示される末端基をランダムコポリマーの一端にのみ結合するマクロモノマーであり、マクロモノマーとは、本件特許明細書の段落【0002】には、「広範囲の工業的応用の必要を満たすためにグラフトコポリマーのような構造化されたコポリマーを合成するために有効に使用することができる。」と記載され、また、同じく段落【0003】にて記載されている、米国特許5,028,677号及び米国特許5,231,131号をみると、モノマーを重合して高分子化して、更に重合に使用できる物質の総称であるといえ、甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証の1〜甲第3号証の3に記載された知見を適用すると、甲第2号証に記載された共重合体が、(II)式で示される末端基を有する共重合体が生じる場合があるということができるが、更に重合に使用できるというマクロモノマーであるとまでいうことはできない。
また、実験報告書(甲第6号証)には、甲第2号証に記載された製造例(1)の製造例2(ポリエチレングリコールモノメタクリレート(9E-MA)20部、メタクリル酸ナトリウム(MA-Na)80部)を試作し、重量平均分子量は867,124、数平均分子量は23,829であること、末端二重結合数は共重合体1分子当たり0.69個であることが示されている。
しかしながら、本件発明1は、上述のとおり、(II)式で示される末端基をランダムコポリマーの一端にのみ結合するマクロモノマーであり、マクロモノマーとは、本件特許明細書の段落【0002】には、「広範囲の工業的応用の必要を満たすためにグラフトコポリマーのような構造化されたコポリマーを合成するために有効に使用することができる。」と記載され、また、同じく段落【0003】にて記載されている、米国特許5,028,677号及び米国特許5,231,131号をみると、モノマーを重合して高分子化して、更に重合に使用できる物質の総称であるといえ、甲第2号証に記載された製造例(1)の製造例2が、実験報告書にて追試して末端二重結合数が共重合体1分子当たり0.69個であるとしても、この共重合体は本件発明1のモノマー単位(a)と異なり、甲第2号証に記載された発明のうち(2)の単量体として、アクリル酸又はメタクリル酸を用いた場合の共重合体が同様な値を有するということは直接いうことはできず、仮に(2)の単量体として、アクリル酸又はメタクリル酸を用いた場合に、共重合体1分子当たりの末端二重結合数が同様な値が得られたとしても、甲第2号証に記載された共重合体が末端二重結合数が共重合体1分子当たり0.69個の共重合体であるということが示されたにとどまり、更に重合に使用できるというマクロモノマーであるとまでいうことはできない。
よって、他の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。
(b)進歩性についての判断
(i)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とを対比すると、上記(4)(a)(i)又は(ii)で示したとおり、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明では、本件発明1における、
(ア)共重合体の一端に、 式

〔式中、R1はH、炭素原子1〜8個のアルキル基、炭素原子1〜8個のヒドロキシアルキル基およびXn(CH2CH2O)m-R4(式中、X、n、mおよびR4は前記定義した通りである)よりなる群から選択される〕で示される末端基を結合するマクロモノマーであることが記載されていない点、
(イ)(A)で示されるモノマー単位と(B)で示されるモノマー単位の重合度の和が2〜1000と記載されていない点、
(ウ)共重合体がランダムであると記載されていない点、において本件発明1と相違する。
これらの相違点について検討する。
(ア)の点について
本件発明1は、上述のとおり、(II)式で示される末端基をランダムコポリマーの一端にのみ結合するマクロモノマーであり、マクロモノマーとは、本件特許明細書の段落【0002】には、「広範囲の工業的応用の必要を満たすためにグラフトコポリマーのような構造化されたコポリマーを合成するために有効に使用することができる。」と記載され、また、同じく段落【0003】にて記載されている、米国特許5,028,677号及び米国特許5,231,131号をみると、モノマーを重合して高分子化して、更に重合に使用できる物質の総称であるといえる。
一方、甲第1号証に記載された発明は、(A)及び(B)成分の共重合体からなるスケール防止剤の発明であり、また、甲第2号証に記載された発明は、(1)及び(2)成分の共重合体を含有するセメント混和剤の発明であり、本件発明1と甲第1号証または甲第2号証に記載された発明とは、発明の属する技術分野が相違するから、たとえ、甲第3号証の1に、ラジカル重合の停止反応について記載され、停止反応には、再結合停止と不均化停止が起こること、α-メチル置換モノマーではメチル基から水素原子が移動する不均化停止が起きることが記載され、また、甲第3号証の2及び甲第3号証の3に、同様にラジカル重合の停止反応について記載され、メタクリル酸メチルでは不均化が優勢に起こることが記載されていたとしても、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証の1〜甲第3号証の3に記載された知見を適用して本件発明1を構成することが当業者が適宜になし得たものとすることはできない。
よって、他の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲第1号証〜甲第3号証の3に記載された発明から容易になし得たものとはいえない。
(ii)本件発明2について
甲第1号証に記載された発明の(A)一般式

で示される不飽和単量体から製造されるモノマー単位は、本件発明2の式CH2=C(R3)(C(O)OXn(CH2CH2O)m-R4)(式中、nは0であり、mは2〜30であり、R3はHまたはCH3であり、そしてR4はHである)を有する少なくとも1種のモノマーと重複し、甲第1号証に記載された発明の(B)カルボキシル基を有するエチレン系不飽和単量体から製造されるモノマー単位は、アクリル酸、メタクリル酸であることから、本件発明2のCH2=C(R2)(C(O)OH)(式中、R2はHまたはCH3である)を有する少なくとも1種の酸モノマーと同一であり、これらのモノマー単位の共重合割合については、甲第1号証には、(A)単位が1〜90重量%、(B)単位が10〜99重量%と記載され、本件発明2では、それぞれ2〜50重量%、少なくとも50重量%と記載され、共重合割合についても重複する。
また、甲第2号証には、(1) 不飽和結合を有するポリアルキレングリコールモノエステル系単量体は、一般式(a)

〔式中、R1、R2:水素、メチル基
AO:炭素数2〜3のオキシアルキレン基
m1:0の整数
n1:3〜500 の整数
X1:水素、炭素数1〜3のアルキル基〕
であるから、本件発明2の式CH2=C(R3)(C(O)OXn(CH2CH2O)m-R4)(式中、nは0であり、mは3〜50であり、R3はHまたはCH3であり、そしてR4はHまたは炭素原子1〜3個のアルキル基である)を有する少なくとも1種のモノマーと重複し、
甲第2号証に記載された発明の(2) アクリル酸系単量体は、
一般式(b)

〔式中、R3:水素、R4、R5:水素、メチル基、M3:水素〕であるから、
本件発明2のCH2=C(R2)(C(O)OH)(式中、R2はHまたはCH3である)を有する少なくとも1種の酸モノマーと同一であり、これらのモノマー単位の共重合割合については、甲第2号証には、(1) :(2) =10〜99:90〜1の範囲と記載され、本件発明2では、それぞれ2〜50重量%、少なくとも50重量%と記載され、共重合割合についても重複する。
そこで、本件発明2と甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とを対比すると、本件発明2は、本件発明1のマクロモノマーの製造方法の発明であるから、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明では、上記(4)(a)(i)又は(ii)で示した(ア)〜(ウ)の相違点に加えて、本件発明2において、(エ)連鎖移動剤として、コバルト(II)およびコバルト(III)の錯体よりなる群から選択されるまたは付加分裂機構によって連鎖移動を行うことのできる有機連鎖移動剤の存在下、有機溶媒中においてフリーラジカル重合させることについて記載されていない点で本件発明2と相違する。
そこでこれらの点について検討する。
(ア)の点について
本件発明2は本件発明1のマクロモノマー、すなわち(II)式で示される末端基をランダムコポリマーの一端にのみ結合するマクロモノマーの製造方法の発明である。マクロモノマーとは、上述のとおり、本件特許明細書の段落【0002】には、「広範囲の工業的応用の必要を満たすためにグラフトコポリマーのような構造化されたコポリマーを合成するために有効に使用することができる。」と記載され、また、同じく段落【0003】にて記載されている、米国特許5,028,677号及び米国特許5,231,131号をみると、モノマーを重合して高分子化して、更に重合に使用できる物質の総称であるといえる。
一方、甲第1号証に記載された発明は、(A)及び(B)成分の共重合体からなるスケール防止剤の発明であり、また、甲第2号証に記載された発明は、(1)及び(2)成分の共重合体を含有するセメント混和剤の発明であり、本件発明2と甲第1号証または甲第2号証に記載された発明とは、発明の属する技術分野が相違するから、たとえ、甲第3号証の1に、ラジカル重合の停止反応について記載され、停止反応には、再結合停止と不均化停止が起こること、α-メチル置換モノマーではメチル基から水素原子が移動する不均化停止が起きることが記載され、また、甲第3号証の2及び甲第3号証の3に、同様にラジカル重合の停止反応について記載され、メタクリル酸メチルでは不均化が優勢に起こることが記載されていおり、更に、甲第4号証に、単量体としてアルキルメタアクリレート、メタクリル酸からなるマクロモノマーを製造する際の連鎖移動剤として、コバルト(II)錯体が記載されていたとしても、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に、甲第3号証の1〜甲第4号証の知見を適用して本件発明2を構成することが当業者が適宜になし得たものとすることはできない。
よって、他の点について検討するまでもなく、本件発明2は甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明から容易になし得たものとはいえない。

[3]むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由によっては本件発明1〜2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-05-06 
出願番号 特願平8-333177
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08F)
P 1 651・ 113- Y (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小野寺 務  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐藤 健史
佐野 整博
登録日 2000-08-04 
登録番号 特許第3096645号(P3096645)
権利者 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
発明の名称 酸の含有率が高いマクロモノマーおよびその製造方法  
代理人 西村 公佑  
代理人 高木 千嘉  
代理人 辻 良子  
代理人 佐藤 辰男  

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