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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1078774
審判番号 不服2001-13285  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-27 
確定日 2003-06-13 
事件の表示 平成 4年特許願第222683号「液晶表示器」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 3月11日出願公開、特開平 6- 67191]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成4年8月21日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成13年2月23日付け、平成13年8月24日付け及び平成15年3月18日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に各々記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は次のとおりのものである。
「一端に形成された端子部、他端に形成された表示電極、および、前記端子部および前記表示電極部間に前記端子部に対して斜め方向に設けられた配線電極をそれぞれ有する第1および第2の電極パターンと、これら第1および第2の電極パターンが互いに対向する面に形成された第1および第2の基板と、これら第1および第2の基板の間隙に挟持され前記表示電極間に表示画素が形成される液晶とを備えた液晶表示器において、
前記第1および前記第2の電極パターンのうち、少なくともいずれか一方の前記配線電極を線幅が異なる複数の配線電極部にて形成し、
これら各配線電極部の長さを異ならせて各表示画素における前記第1の電極パターンの端子部と前記第2の電極パターンの端子部との間の各配線抵抗値を部分的に一定値にした
ことを特徴とする液晶表示器。」

2.引用刊行物に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願平2-37967号(実開平3-129930号)のマイクロフフィルム(以下、引用例という)には、次のように記載されている。
「少なくとも、一方の透明基板上に形成された複数本の配線電極からなる第1の配線電極群と、液晶層を挟んで前記透明基板と対向配置されたもう一方の透明基板上に前記第1の配線電極群と交差する方向に形成された複数本の配線電極からなる第2の配線電極群とを備え、該第1及び第2の配線電極群の各交差部分を個々の画素領域とする単純マトリクス型の液晶表示素子において、
前記第1の配線電極群を構成する複数の配線電極の各電圧印加端から、前記各画素領域を介し、前記第2の配線電極群を構成する複数の配線電極の各電圧印加端までのインピーダンスを、全て等しくしたことを特徴とする液晶表示素子。」(実用新案登録請求の範囲)
「上述した構成の液晶表示素子において、第1の配線電極群の一端(走査電圧印加端)11a〜16aの中の1つから、画素領域3を介し、第2の配線電極群2の一端(信号電圧印加端)21a〜28aの中の1つまでは、第4図に示す等価回路によって表すことができる。図中、R1は配線抵抗、R2は液晶抵抗、C2は液晶容量である。
すると、この回路のインピーダンスZの大きさは、
Z=R1+[(1/R2)+iωC2]-1 ・・・・・(1)
と表すことができる。ここで、配線抵抗R1は、上記の回路を構成する2方向の配線電極の組み合わせに応じて異なる値を持ち、
R1=L+αa ・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
と表すことができる。ここで、aは隣合った2つの画素領域間の抵抗、αは配線電極の組み合わせに応じた定数、Lは配線電極のうち画素領域3を形成しない部分(すなわち表示画素領域4から外れた引き出し配線部分)の抵抗である。」(第3頁第16行〜第4頁第14行)
「本考案では、2方向の配線電極をどのように組み合わせても、その場合のインピーダンスZ・・・・は全て等しくなる。よって、個々の画素領域に加わるオン電圧又はオフ電圧は、全て均一に保たれる。従って、全ての画素領域で均一なコントラスト比が得られ、場所によるコントラストの差がなくなるので、非常に鮮明な表示が可能となる。・・・・
第1図は、本考案の第1の実施例に係る配線電極の構造を示す平面図である。
同図に示すように、本実施例では、一方の透明基板の内面には、一方向に延びる複数本(ここでは6本)の配線電極11〜16を一定間隔で配置してなる第1の配線電極群1が形成され、また、もう一方の透明基板の内面にも、上記の配線電極11〜16の方向とは直交する方向に延びる複数本(ここでは8本)の配線電極21〜28を一定間隔で配置してなる第2の配線電極群2が形成されている。
そして、各配線電極は、その幅を一定に維持したまま、引き出し配線部分の長さを順次変化させることにより、一方の配線電極11〜16の各走査電圧印加端11a〜16aから、個々の画素領域(2方向の配線電極の各交差部分)3を介し、もう一方の配線電極21〜28の各信号電圧印加端21a〜28aまでの長さが、全て等しくなるようにしてある。例えば、従来は最も短かった配線電極11の走査電圧印加端11aから配線電極28の信号電圧印加端28aまでの長さも、従来は最も長かった配線電極16の走査電圧印加端16aから配線電極21の信号電圧印加端21aまでの長さも、全て等しい一定の長さとなっている。
すなわち、前述した式(2)で表される配線抵抗R1が、配線電極の組み合わせに応じて変化する抵抗aα・・・・とは無関係に、全て一定となる。これにより、前述した式(1)で表されるインピーダンスZの大きさも、配線電極の組み合わせとは無関係に、全て等しくなる。
従って、本実施例によれば、インピーダンスZが従来のような分布を持たず、均一になるため、個々の画素領域3に加わるオン電圧又はオフ電圧を、全て等しくすることができる。その結果、全ての画素領域3で均一なコントラスト比を得ることができ、場所によるコントラストの差をなくすことができるので、非常に鮮明な表示を得ることができる。
次に、第2図は、本考案の第2の実施例に係る配線電極の構造を示す平面図である。
・・・・本実施例は、表示画面領域4内での幅w1を前記実施例と同じにしたまま、引き出し配線部分の幅w2をw1の半分(w2=w1/2)にし、それに伴い、引き出し配線部分の長さも第1の実施例の半分にして、第1の実施例と同じ大きさのインピーダンスZを得るようにしたものである。・・・・本実施例によれば、第1の実施例と同様にインピーダンスZが均一になることにより、全ての画素領域3で均一なコントラスト比を得ることができる。しかも、引き出し配線部分の長さを半分にできることから、表示素子としての場所を小さくとることも可能となる。・・・・」(第7頁第8行〜第11頁第3行)
「また、以上に述べた各実施例では、各配線電極の引き出し配線部分の幅を一定に保ちながら、その長さを変化させることにより、インピーダンスZの均一化を図るようにしたが、これとは逆に、長さを一定に保ったまま、幅だけを変化させるようにしてもよく、或いは幅と長さの両方を変化させるようにしてもよい。・・・・更に、以上に述べた各実施例では、配線電極の材質をどの部分でも同じにすることを前提として述べたが、表示画面領域4の内部と外部とで異なる材質のものを用いてもよい。」(第11頁第13行〜第12頁第6行)
また、第1図及び第2図には、引き出し配線部分を含む配線電極群を配置した構造が示されている。
以上の記載からすれば、引用例には、「一方の透明基板の内面に一方向に延びる複数本の配線電極からなる第1の配線電極群が形成され、間に液晶層を挟んで、他方の透明基板に第1の配線電極群と直交する方向に延びる複数本の配線電極からなる第2の配線電極群が形成され、第1及び第2の配線電極群の各交差部分を個々の画素領域とする単純マトリクス型の液晶表示素子において、第1及び第2の配線電極群のそれぞれの配線電極は表示画面領域外の延長部分として端部が電圧印加端となった引き出し配線部分を有し、第1及び第2の配線電極群を構成する配線電極の引き出し配線部分の長さ、幅あるいは長さ及び幅を順次変化させることにより、第1の配線電極群を構成する複数の配線電極の各電圧印加端から、各画素領域を介し、第2の配線電極群を構成する複数の配線電極の各電圧印加端までのインピーダンスを全て等しくした液晶表示素子」が記載されているものと認める。

3.対比、判断
本願発明と、引用例に記載のものとを対比すると、引用例に記載のものにおける「第1の配線電極群」、「第2の配線電極群」、「引き出し配線部分」、「一方の透明基板」、「他方の透明基板」、「画素領域」、「液晶層」、「液晶表示素子」は、それぞれ本願発明における「第1の電極パターン」、「第2の電極パターン」、「配線電極」、「第1の基板」、「第2の基板」、「表示画素」、「液晶」、「液晶表示器」に相当するものであり、引用例に記載のものにおける第1及び第2の配線電極群の各配線電極のうち、引き出し配線部分以外の表示画面領域内の部分は、本願発明における「表示電極」及び「表示電極部」に相当し、また、液晶表示器として構成された状態で、引用例に記載のものにおける引き出し配線部分の電圧印加端が本願発明における端子部に相当するものそれぞれ接続されることは明らかであり、さらに、引用例に記載のものにおいて、一方の配線電極の各走査信号電圧印加端から、個々の画素領域を介し、もう一方の配線電極の各信号電圧印加端までのインピーダンスを等しくしているが、これは本願発明において、各表示画素における第1の電極パターンの端子部と第2の電極パターンの端子部との間の各配線抵抗値を一定値にすることと同等であるので、本願発明と引用例に記載のものとは、「表示電極、および、端子部および表示電極部間に配線電極をそれぞれ有する第1および第2の電極パターンと、これら第1および第2の電極パターンが互いに対向する面に形成された第1および第2の基板と、これら第1および第2の基板の間隙に挟持され表示電極間に表示画素が形成される液晶とを備えた液晶表示器において、各表示画素における第1の電極パターンの端子部と第2の電極パターンの端子部との間の各配線抵抗値を一定値にした液晶表示器」である点で一致するが、次の点において相違する。
a.本願発明において、第1および第2の電極パターンは一端に形成された端子部、他端部に形成された表示電極、および、端子部及び表示電極部間に端子部に対して斜め方向に設けられた配線電極をそれぞれ有するのに対し、引用例に記載のものにおいては、第1および第2の配線電極群の配線電極は、一端に端子部が形成されておらず、引き出し配線部分以外の表示画面領域内の部分および端側を電圧印加端とする引き出し配線部分をそれぞれ有する点。
b.本願発明において、第1および第2の電極パターンのうち、少なくともいずれか一方の配線電極を線幅が異なる複数の配線電極部にて形成し、これら各配線電極部の長さを異ならせて各表示画素における第1の電極パターンの端子部と第2の電極パターン部の端子部との間の各配線抵抗値を部分的に一定値にしているのに対し、引用例に記載のものにおいては、第1および第2の配線電極群の引き出し配線部分の長さ、幅あるいは長さ及び幅を順次変化させることにより、第1の配線電極群を構成する配線電極の各電圧印加端から、各画素領域を介し、第2の配線電極群を構成する配線電極の各信号電圧印加端までのインピーダンスを全て等しくしており、第1および第2の配線電極群のうち、少なくともいずれか一方の引き出し配線部分を線幅が異なる複数の部分で形成していない点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点aについて:
引用例に記載されるような配線電極群を含む回路を実際に基板として構成し、外部の配線と接続場合に、基板端側に外部の配線との接続部分となる端子部を備えることは、回路の実装技術として周知の事項であり、引用例に記載のものにおいて引き出し配線部分の端側に端子部を備えることは、当業者が容易になし得るところである。また、引き出し配線部分を端子部に対して斜め方向に設けることは、該引き出し配線部分と接続される相手方の端子部の配置、間隔等に応じて適宜考慮し得る設計的事項を示したにすぎない。
相違点bについて:
引用例に、「・・・・各配線電極の引き出し配線部分の幅を一定に保ちながら、その長さを変化させることにより、インピーダンスZの均一化を図るようにしたが、これとは逆に、長さを一定に保ったまま、幅だけを変化させるようにしてもよく、或いは幅と長さの両方を変化させるようにしてもよい。」と記載されているように、引用例に記載のもにおいて、インピーダンスの均一化を図るため、すなわち配線電極の抵抗値を均一化するために、各配線電極の引き出し配線部分の幅を一定にして長さを変化させるほかに、長さを一定にして幅を変化させることも考慮されている。また、複数の配線の抵抗値を変えるために、各配線が線幅の異なる複数の配線部分からなるようにすることは、例えば実願昭59-115598号(実開昭61-31745号)のマイクロフィルム、特開昭62-232622号公報に示されるように、周知の手段であり、このような手段を引用例に記載の液晶表示器の配線に同様に適用し得ることは明らかである。そうすると、引用例に記載の引き出し配線部分に上記周知の手段を適用し、それぞれ線幅が異なる複数の配線部分にて形成することは、当業者が容易になし得るところである。なお、本願発明では抵抗値を部分的に一定値とするとしているが、明細書の記載をみても、この点に何ら格別な意義は認められず、実質的な相違とは言えない。
また、相違点a及びbを総合しても、何ら格別技術的特徴は与えられず、その奏する効果も予測の域をでるものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-09 
結審通知日 2003-04-16 
審決日 2003-04-30 
出願番号 特願平4-222683
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橿本 英吾  
特許庁審判長 青山 待子
特許庁審判官 町田 光信
稲積 義登
発明の名称 液晶表示器  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 島宗 正見  

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