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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1079162
審判番号 不服2001-3843  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-14 
確定日 2003-07-22 
事件の表示 平成8年特許願第30894号「ゲート式シフトレバー装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成9年8月26日出願公開、特開平9-220941、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 I.本願発明
本願は、平成8年2月19日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明4」という。また、それらを総称して、「本願発明」という。)は、平成13年4月10日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
【請求項1】
シフトレバーを車両の前後方向および左右方向に揺動可能に支持するベースプレートと、前記ベースプレートの上部に取り付けられ、前記シフトレバーの移動経路を定めるディテント溝を有するベース上部と、前記シフトレバーを前記ディテント溝の側面の一側に向けて付勢する付勢手段と、前記ベース上部に設けられ、前記ディテント溝の前記シフトレバーが付勢される側面から付勢方向と反対方向に所定量突出する弾性体からなる第1の緩衝材と、前記ベース上部における前記第1の緩衝材の突出方向に対して反対側に設けられ、一側が前記ベースプレートに接触する弾性体からなる第2の緩衝材と、を備え、前記第1の緩衝材とベース上部と第2の緩衝材とベースプレートとは、前記ディテント溝から前記付勢手段による前記シフトレバーの付勢方向に向って、第1の緩衝材、ベース上部、第2の緩衝材、ベースプレートの順で密着・配置されており、前記第1の緩衝材の内側側面と前記シフトレバーとは面当たり可能であり、前記第2の緩衝材の外側側面と前記ベースプレートの内面とは密着している、ゲート式シフトレバー装置。
【請求項2】
第1の緩衝材と第2の緩衝材は、二色成形によってベース上部と一体化されている請求項1記載のゲート式シフトレバー装置。
【請求項3】
第1の緩衝材と第2の緩衝材は一体成形されている請求項1記載のゲート式シフトレバー装置。
【請求項4】
第1の緩衝材は潤滑性を有する弾性体から構成され、該第1の緩衝材の上面にはシフトレバーのシフト操作に追随して移動するスライドカバーが摺動可能に設けられた請求項1記載のゲート式シフトレバー装置。

II.原査定の拒絶理由に引用した刊行物に記載された発明及び技術的事項
(1)特開平5-246260号公報
(2)特開平6-344788号公報
(3)実願平4-73339号(実開平6-30554号)のCD-ROM
(4)実願平2-7950号(実開平3-98131号)のマイクロフィルム

(刊行物1)
刊行物1には、「車両用自動変速機の操作装置」に関して、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「本発明は、車両用自動変速機の操作装置に関し、特にシフト操作レバーの位置を表示するインジケータ部の照明具合を改善したものに関する。」(段落【0001】参照)
(b)「上側の壁部28cと軸受部29a間において第2軸部材15にはバネ部材30が外嵌され、レバー支持部材28はバネ部材30を介して図5に矢印で示す方向へ付勢され」(段落【0015】参照)
(c)「バネ部材30の付勢でもってレバー本体26の途中部が第1ガイドスリット22の左端縁に圧接されて所望の変速レンジに保持される。」(段落【0016】参照)
(d)「前記後部ケーシング21の後壁部21aの後端面には、レバー挿通空間35の内側において弾性力性を有する発砲ウレタン製や合成ゴム製の緩衝部材50が貼着され、緩衝部材50の中央部にはレバー本体26が挿通される第1ガイドスリット22と同じ形状のガイドスリット51が形成されている。前記緩衝部材50を設けることで、シフト操作時にバネ部材30のバネ力でもってレバー本体26が第1ガイドスリット22の左端縁に当接したときの打撃音を吸収出来、しかも正面衝突などにおける化粧パネル23に対する乗員の2次衝突時の衝撃を吸収出来る。」(段落【0018】参照)
また、シフト操作レバー13の緩衝作用を行うためには、緩衝部材50は、第1ガイドスリット22のシフト操作レバー13が付勢される側面から付勢方向と反対方向に所定量突出していなければならないことは、技術的に自明の事項であるから、上記摘記事項及び図面の記載からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
【引用発明】
シフト操作レバー13を車両の前後方向および左右方向に揺動可能に支持する前部ケーシング20と、前記前部ケーシング20の上部に取り付けられ、前記シフト操作レバー13の移動経路を定める第1ガイドスリット22を有する後部ケーシング21と、前記シフト操作レバー13を前記第1ガイドスリット22の側面の一側に向けて付勢するバネ部材30と、前記後部ケーシング21に設けられ、前記第1ガイドスリット22の前記シフト操作レバー13が付勢される側面から付勢方向と反対方向に所定量突出する弾性体からなる緩衝部材50を備え、前記緩衝部材50の内側側面と前記シフト操作レバー13とは面当たり可能である車両用自動変速機の操作装置。

(刊行物2)
刊行物2には、「自動変速機用セレクトレバーのカバー構造」に関して、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(e)「本発明は、自動車等に搭載される自動変速機に用いられるセレクトレバーのカバー構造に関するものである。」(段落【0001】参照)
(f)「また硬質材料よりなる内側部材を軟質材料よりなる外側部材で包囲してもよく、このカバー構造では、硬質の内側部材でカバーに加わる外力を負担させて、カバーの強度、剛性を高い水準に保持させることができるとともに、軟質の外側部材によりさらに吸音性を一段と向上させることができる。」(段落【0007】参照)
(g)「自動車に搭載される図示されない自動変速機に用いられるセレクトレバー1は、その変速段を手動で操作しうるように、カバー2の溝3に遊嵌されている。
またカバー2は、アセタール樹脂、合成ゴム等の軟質合成樹脂性の内側部材4と、ポリアミド樹脂にガラス繊維を30%含有させた硬質複合材製の外側部材5とよりなり、内側部材4は外側部材5で完全に囲まれている。なお溝3は、セレクトレバー1の誤操作を防止するために、前後方向に亘り数箇所で巾方向に弯曲変形されている。
図1ないし図3に図示の実施例は前記したように構成されているので、溝3に沿ってセレクトレバー1を前後に設定することができる。
またセレクトレバー1に接触する溝3の表面は、ガラス繊維で強化されたポリアミド樹脂製の硬質外側部材5で構成されているため、溝3の表面はセレクトレバー1との摩擦や衝撃に充分耐えることでき、またカバー2の強度、剛性の向上が可能となる。
またセレクトレバー1が溝3の表面に衝突した時に発生する騒音を、カバー2内の軟質内側部材4で吸収させることができるため、セレクトレバー1の操作による騒音レベルを低下させることができる。
さらに外側部材5は全面に亘って均一の厚さになっているため、カバー2の成形後に収縮が起っても外側部材5の表面に不均一な収縮による歪の発生が阻止され、カバー2の外観が良好である。」(段落【0008】〜【0013】参照)
(h)「図1ないし図3に図示された実施例において、図4ないし図6に図示するように、硬質外側部材5の内面部の一端に、カバー取付用突部6を一体に突設するとともに、該外側部材5の内面部の他端寄りに係止爪7を一体に突設してもよく、このような実施例では、カバー枢支金具や係止爪を別個に設ける必要はなくなって、部品点数を削減して、コストダウンと軽量化を図ることができる。」(段落【0014】参照)
(i)「また前記実施例とは相違して、硬質材料よりなる内側部材の外周に軟質材料よりなる外側部材で包囲してもよく、この実施例では軟質の外側部材を硬質の内側部材で充分に補強、補剛することができるとともに、吸音性と緩衝性を高めることができる。」(段落【0015】参照)

III.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明を対比すると、それぞれの奏する機能に照らして、引用発明の「シフト操作レバー13」は本願発明1の「シフトレバー」に相当し、以下同様に、「前部ケーシング20」は「べースプレート」に、「第1ガイドスリット22」は「ディテント溝」に、「後部ケーシング21」は「ベース上部」に、「バネ部材30」は「付勢手段」に、「緩衝部材50」は「第1の緩衝材」に、「車両用自動変速機の操作装置」は「ゲート式シフトレバー装置」に、それぞれ相当するので、両者は下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
シフトレバーを車両の前後方向および左右方向に揺動可能に支持するべースプレートと、前記ベースプレートの上部に取り付けられ、前記シフトレバーの移動経路を定めるディテント溝を有するベース上部と、前記シフトレバーを前記ディテント溝の側面の一側に向けて付勢する付勢手段と、前記ベース上部に設けられ、前記ディテント溝の前記シフトレバーが付勢される側面から付勢方向と反対方向に所定量突出する弾性体からなる第1の緩衝材を備え、前記第1の緩衝材の内側側面と前記シフトレバーとは面当たり可能であるゲート式シフトレバー装置。
<相違点>
本願発明1は、「ベース上部における前記第1の緩衝材の突出方向に対して反対側に設けられ、一側が前記ベースプレートに接触する弾性体からなる第2の緩衝材」を備え「第1の緩衝材とベース上部と第2の緩衝材とベースプレートとは、前記ディテント溝から前記付勢手段による前記シフトレバーの付勢方向に向って、第1の緩衝材、ベース上部、第2の緩衝材、ベースプレートの順で密着・配置されて」いるとともに「第2の緩衝材の外側側面と前記ベースプレートの内面とは密着している」のに対し、引用発明はそのような構成を具備していない点。
そこで、上記相違点について検討する。
刊行物2には、セレクトレバー1を案内する溝3を有するカバー2を、硬質材料よりなる内側部材4を軟質材料よりなる外側部材5で包囲したカバー構造としたものが記載されている。(上記摘記事項(f)及び(i)参照)
また、刊行物2には、「硬質外側部材5の内面部の一端に、カバー取付用突部6を設け一体に突接するとともに、該外側部材5の内面部の他端寄りに係止爪7を一体に突接してもよく」と記載されている。(上記摘記事項(h)参照)
しかしながら、刊行物2の「このような実施例では、カバー枢支金具や係止爪を別個に設ける必要はなくなって、部品点数を削減して、コストダウンと軽量化を図ることができる。」(上記摘記事項(h)参照)との記載、及び図4の記載からみて、カバー取付用突部6は、図示されない部材に枢着するための構造であり、また、係止爪7は、図示されない部材に係止するための構造であることは、刊行物2に記載又は示唆されているものの、カバー2とベースプレートとの取付け関係は必ずしも明らかではない。
してみれば、刊行物2に記載されたものが、「ベース上部における前記第1の緩衝材の突出方向に対して反対側に設けられ、一側が前記ベースプレートに接触する弾性体からなる第2の緩衝材」を備えていること、「第1の緩衝材とベース上部と第2の緩衝材とベースプレートとは、前記ディテント溝から前記付勢手段による前記シフトレバーの付勢方向に向って、第1の緩衝材、ベース上部、第2の緩衝材、ベースプレートの順で密着・配置されて」いること、及び「第2の緩衝材の外側側面と前記ベースプレートの内面とは密着している」こと、が必ずしも明らかであるとはいえない以上、刊行物2に、上記相違点に係る本願発明1の構成が、必ずしも明確に記載又は示唆されているとはいえない。
また、刊行物3及び4にも、上記相違点に係る本願発明1の構成が記載又は示唆されているとはいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る構成を具備することにより、明細書記載の格別顕著な作用効果を奏するものであると認められる。
よって、本願発明1は、上記刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本願発明2〜4について
本願の請求項2〜4は独立請求項である請求項1の従属請求項であり、本願発明2〜4は、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当するものである。
そして、本願発明1は、上記「(1)本願発明1について」に示した理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、本願発明2〜4も、同様の理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

IV.むすび
結局、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-07-09 
出願番号 特願平8-30894
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 仁木 浩長屋 陽二郎田々井 正吾川口 真一  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 常盤 務
秋月 均
発明の名称 ゲート式シフトレバー装置  
代理人 田渕 経雄  

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