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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04H
管理番号 1079171
審判番号 不服2002-8694  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-16 
確定日 2003-06-27 
事件の表示 平成 4年特許願第276941号「受信装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月13日出願公開、特開平 6-132916]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年10月15日の出願であって、その請求項1乃至請求項24に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項24に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して、平成15年1月14日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。

II.当審の拒絶理由
当審において平成15年1月14日付けで通知した拒絶の理由は以下のとおりである。
「本件出願の請求項1〜請求項24に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記:引用文献一覧
刊行物1:特開平1-282945号公報
刊行物2:特開昭60-24792号公報
刊行物3:特開平4-115736号公報
刊行物4:特開昭64-12783号公報
刊行物5:特開平4-150333号公報
刊行物6:特開平4-155658号公報

(備考)
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年10月15日の出願であって、請求項1〜請求項24に係る発明は、平成14年6月17日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項24に記載されたとおりの以下の事項により特定されるものである。
「【請求項1】番組をスクランブルデータを用いてスクランブルしてスクランブル番組とし、
前記スクランブル番組を番組供給手段により供給し、
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを通信回線により供給し、
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法。
【請求項2】番組をスクランブルデータを用いてスクランブルしてスクランブル番組とし、
前記スクランブル番組を番組供給手段により供給し、
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを半導体記憶手段により供給し、
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法。
【請求項3】番組をスクランブルデータを用いてスクランブルしてスクランブル番組とし、
前記スクランブル番組を番組供給手段により供給し、
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを磁気記憶手段により供給し、
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法。
【請求項4】前記番組供給手段が放送手段である、請求項1,請求項2又は請求項3の番組供給方法。
【請求項5】前記番組供給手段が通信手段である、請求項1,請求項2又は請求項3の番組供給方法。
【請求項6】前記番組供給手段が媒体である、請求項1,請求項2又は請求項3の番組供給方法。
【請求項7】視聴者からの視聴申し込みに対して通信装置を介して供給されたスクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部;
前記スクランブルデータを用いてスクランブルされた番組信号を受け取り、前記スクランブルされた番組信号を前記スクランブルデータを用いてスクランブル解除するデコーダ部:を有する受信装置。
【請求項8】視聴者からの視聴申し込みに対して半導体記憶装置を介して供給されたスクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部;
前記スクランブルデータを用いてスクランブルされた番組信号を受け取り、前記スクランブルされた番組信号を前記スクランブルデータを用いてスクランブル解除するデコーダ部:を有する受信装置。
【請求項9】視聴者からの視聴申し込みに対して磁気記憶装置を介して供給されたスクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部;
前記スクランブルデータを用いてスクランブルされた番組信号を受け取り、前記スクランブルされた番組信号を前記スクランブルデータを用いてスクランブル解除するデコーダ部:を有する受信装置。
【請求項10】前記スクランブルされた番組信号がチューナから供給される、請求項7,請求項8又は請求項9の受信装置。
【請求項11】前記スクランブルされた番組信号が通信回線から供給される、請求項7,請求項8又は請求項9の受信装置。
【請求項12】前記スクランブルされた番組信号が媒体から供給される、請求項7,請求項8又は請求項9の受信装置。
【請求項13】スクランブルデータを用いてスクランブルされた番組信号を記録する記録装置;
前記記録されたスクランブルされた番組信号を再生し、デコーダに供給する再生装置;
視聴者からの視聴申し込みに対して通信装置から供給された前記スクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部;
前記再生されたスクランブルされた番組信号を前記スクランブルデータを用いてスクランブル解除するデコーダ部:を有する受信装置。
【請求項14】スクランブルデータを用いてスクランブルされた番組信号を記録する記録装置;
前記記録されたスクランブルされた番組信号を再生し、デコーダに供給する再生装置;
視聴者からの視聴申し込みに対して半導体記憶装置により供給された前記スクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部;
前記再生されたスクランブルされた番組信号を前記スクランブルデータを用いてスクランブル解除するデコーダ部:を有する受信装置。
【請求項15】スクランブルデータを用いてスクランブルされた番組信号を記録する記録装置;
前記記録されたスクランブルされた番組信号を再生し、デコーダに供給する再生装置;
視聴者からの視聴申し込みに対して磁気記憶装置により供給された前記スクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部;
前記再生されたスクランブルされた番組信号を前記スクランブルデータを用いてスクランブル解除するデコーダ部:を有する受信装置。
【請求項16】前記スクランブルされた番組信号がチューナから供給される、請求項13,請求項14又は請求項15の受信装置。
【請求項17】前記スクランブルされた番組信号が通信回線から供給される、請求項13,請求項14又は請求項15の受信装置。
【請求項18】前記スクランブルされた番組信号が媒体から供給される、請求項13,請求項14又は請求項15の受信装置。
【請求項19】番組をスクランブルデータでスクランブルしてスクランブル番組として供給し;
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを通信回線により供給し;
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法。
【請求項20】番組をスクランブルデータでスクランブルしてスクランブル番組として供給し;
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを半導体記憶手段により供給し、
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法。
【請求項21】番組をスクランブルデータでスクランブルしてスクランブル番組として供給し、
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを磁気記憶手段により供給し、
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法。
【請求項22】前記番組供給手段が放送手段である、請求項19,請求項20又は請求項21の番組供給方法。
【請求項23】前記番組供給手段が通信手段である、請求項19,請求項20又は請求項21の番組供給方法。
【請求項24】前記番組供給手段が媒体である、請求項19,請求項20又は請求項21の番組供給方法。」

2.刊行物記載の発明
(1) 刊行物1(特開平1-282945号公報)
ア.「送信側と受信側で同一コードデータを格納した光デイスクを備え、送信側で該光デイスクのコードデータによって情報を符号化し、受信側で該光デイスクのコードデータによつて該符号化された情報を復調することを特徴とする通信システム。」(第1頁左下欄第5行〜10行、特許請求の範囲の記載)

イ.「本発明は、無線放送や有線放送によつて情報の提供を行なう通信システムに関する。」(第1頁右下欄第12行〜13行)

ウ.「本発明は、送信側と受信側とで同一データを格納したCD-ROM(データ記憶媒体としてのコンパクトな光ディスク)を備え、送信側でCD-ROMのコードデータにより情報を符号化し、受信側でCD-ROMのコードデータにより情報を復調する。」(第2頁右下欄第2行〜7行)

エ.「この実施例では、受信側で送信側と同一のコードデータを格納したCD-ROMを備えつけることにより、送信側から提供される情報の利用が可能となる。送信側では、一方的に情報を不特定多数の受信側に提供している。この際、情報毎にCD-ROM2の異なるコードデータを用いて符号化する。」(第3頁右上欄第17行〜左下欄第3行)

オ.「受信側では、提供される情報を利用するためには、送信側のCD-ROM2と同一コードデータが格納されたCD-ROM6を購入などによつて手に入れなければならない。」(第3頁左下欄第3行〜6行)

カ.「CD-ROMの代りにFD(フロツピデイスク)を用いることが考えられるが、FDの記録容量はCD-ROMの1/600程と極めて小さいために実用的でない。」(第3頁左下欄第15行〜18行)

キ.「CD-ROMには膨大なコードデータを格納でき、このために、提供する情報毎に異なるコードデータを符号化のために用いることができる。」(第3頁左下欄第15行〜18行)

ク.「受信側の映像情報格納手段として、光デイスク12の代りに、磁気デイスクなどの他の記録媒体を用いてもよい。」(第4頁右下欄第1行〜4行)

ケ.「本発明によれば、不特定多数の受信が可能に情報を提供するものであるが、該情報を符号化して送信するものであるから、これを復調可能にした特定のユーザのみが該情報の利用が可能とすることができ…情報の不正利用を防止できて、しかも情報利用を希望するユーザには容易にCD-ROMを提供できて情報を利用できるようにすることができるようにすることができるという優れた効果が得られる。」(第5頁左上欄第4行〜16行)

上記ア.の事項を参照すると、刊行物1には、
送信側と受信側で同一コードデータを格納した光デイスクを備え、送信側で該光デイスクのコードデータによって情報を符号化し、受信側で該光デイスクのコードデータによつて該符号化された情報を復調することを特徴とする通信システムが記載されている。

また、上記イ.の事項を参照すると、本発明の通信システムは、無線放送や有線放送によつて情報の提供を行なう通信システムであり、

また、上記ケ.の事項を参照すると、本発明の通信システムは、不特定多数の受信が可能に情報を提供し、該情報を符号化して送信するものであるから、これを復調可能にした特定のユーザのみが該情報の利用が可能とすることができる通信システムであることが記載されている。

また、上記ウ.の事項を参照すると、CD-ROM(データ記憶媒体としての…)と記載され、CD-ROMはデータ記憶媒体として記載されている。

また、上記カ.の事項を参照すると、FDの記録容量はCD-ROMの1/600程と極めて小さいために実用的でないと記載され、また、上記キ.の事項を参照すると、CD-ROMには膨大なコードデータを格納でき、このために、提供する情報毎に異なるコードデータを符号化のために用いることができると記載されていて、提供する情報毎に異なるコードデータを用いるデータ記録媒体としては、FDは記録容量が小さくて実用的でなく、CD-ROMが適当であることも開示されている。

なお、上記ク.の事項を参照すると、光デイスクの代りに磁気デイスクなどの他の記録媒体を用いてもよいことが記載されている。

したがって、以上のウ.及びカ.の事項を勘案すると、
刊行物1に記載されたCD-ROMは、送信側と受信側とで同一データを格納したデータ記憶媒体として把握されるものであり、
刊行物1には、送信側でデータ記憶媒体のコードデータにより情報を符号化し、受信側で記憶媒体のコードデータにより情報を復調することが記載されている。

以上の上記エ.及びキ.の事項を参照すると、送信側では、情報毎にCD-ROMに格納された異なるコードデータを用いて符号化し、一方的に情報を不特定多数の受信側に提供することが記載されている。

以上の上記オ.の事項を参照すると、受信側では、提供される情報を利用するためには、送信側のCD-ROMと同一コードデータが格納されたCD-ROM6を購入などによつて手に入れることが記載されている。

以上を勘案すると、刊行物1には、
無線放送や有線放送によって提供する情報を情報毎に異なるコードデータで符号化して符号化された情報とし、
前記情報を送信側から不特定多数の受信側に通信システムにより供給し、
提供される情報を利用する受信側は、送信側のデータ記録媒体と同一コードデータが格納されたデータ記録媒体を購入などによって手に入れて、受信側に備えつけ、
前記情報毎に異なるコードデータを用いて、前記符号化された情報を復号化する、無線放送や有線放送によって情報の提供を行なう通信システムの発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。

(2) 刊行物2(特開昭60-24792号公報)
ア.「この発明は、ペイテレビ等に用いられる放送方式並びにこの放送方式のための送信装置及び受信装置に関する。」(第2頁左下欄第11行〜13行)

イ.「以上の技術的背景のもと、スクランブル(scra-mble)方式が提案されている。…
第1図に示されているように放送局(11)側のスクランブラー(13)(「スクランブラー(11)」は「スクランブラー(13)」の誤記と認める。)においてTV信号xををある変換アルゴリズムS(x)に従って、傍受不能とした上で電波に乗せ、視聴者側の受信装置(15)で受信する。この受信信号は、ディスクランブラー(17)において、スクランブラー(13) (「スクランブラー(11)」は「スクランブラー(13)」の誤記と認める。)での変換アルゴリズムS(x)の逆変換アルゴリズムD(y)によって元の信号に戻され、通常のTVに供給される。
ここで、スクランブラー(13)での変換アルゴリズムS、ディスクランブラー(17)での逆変換アルゴリズムDは鍵Ksによって特定されるようになっている。鍵Ksは、ある長さのビット列である。このような構成において、放送局側の鍵と、視聴者側の鍵とが同一でないと、画像をTV画面上で再生することができないので、盗視聴が防げる。もちろん、放送局と契約した視聴者には、あらかじめ鍵Ksを配送しておかなければならない。」(第3頁左上欄第4行〜右上欄第5行)

ウ.「この発明での放送方式ではスクランブラー,ディスクランブラーでの変換アルゴリズム、逆変換アルゴリズムを番組ごとに切り替えることを特徴とするものであり、これを実現するために、TV信号の属性として番組を表わす信号(属性信号と呼ぶ。)に暗号化を施したビット列によって、上記のアルゴリズムを指定するものとし、スクランブルされたTV信号のみならず、属性信号をも電波として流し、この属性信号により上述のアルゴリズムを指定するものである。」(第3頁左下欄第16行〜右下欄第5行)

エ.「この実施例は、衛星放送を用いたペイテレビシステムに関する。
このシステムは、放送局(21)からのTV信号は人工衛星を介して受信装置(23)に送られる。このとき、放送局(21)からの番組が変更する度に、鍵Ksを変更することが大きな特徴である。」(第4頁左上欄第11行〜17行)

オ.「この実施例での特徴は、暗号器(29),(31)によって、スクランブラー(25)、ディスクランブラー(37)での鍵Ksが決定され、しかも暗号化を施す信号が、局コード、番組コード、ティアコードから成るビット列である点である。したがって、局が変化すれば、鍵Ksが変化し番組が変化しても鍵Ksが変化する。ここで最も重要なのは、番組コードによって鍵Ksが変化する点である。よって、同一局の放送を送受信していても、番組が変わるたびに、鍵Ksが変化する。よって、ディスクランブラー(37)を契約者以外が入手し、多大な時間を費やして、鍵を解読したとしても、鍵Ksが番組の変更の度に変化するのでその鍵は、たちまち役に立たないものとなり、ディスクランブラー(37)を正しく動作させることはできない。」(第6頁右下欄第9行〜第7頁左上欄第3行)

カ.「次に、更に安全性を考慮したシステムについて説明する。…
暗号化が施された鍵Kiは、各契約者毎に発送される。その一態様として、第4図に示されるように、葉書又は葉書大の用紙の裏面(52)の一部に、磁気ストライプ(53)を設ける。この磁気ストライプ(53)には暗号化が施された鍵Kiが記憶されている。」(第7頁左上欄第20行〜右上欄第20行)

キ.「こうして得られた鍵Kiは、前述の実施例と同様に暗号器(31)での変換アルゴリズムを指定し、これに従って鍵Ksが得られる。この鍵の指定の下ディスクランブラー(37)において、逆変換が施され、再生に適したTV信号が得られる。」(第7頁右下欄第14行〜18行)

上記ア.及びイ.の事項を参照すると、刊行物2には、
ペイテレビ等に用いられる放送方式において、放送局(11)側のスクランブラー(13)においてTV信号xををある変換アルゴリズムS(x)に従って、傍受不能とした上で電波に乗せ、視聴者側の受信装置(15)で受信し、この受信信号は、ディスクランブラー(17)において、スクランブラー(13)での変換アルゴリズムS(x)の逆変換アルゴリズムD(y)によって元の信号に戻され、通常のTVに供給され、
スクランブラー(13)での変換アルゴリズムS、及び、ディスクランブラー(17)での逆変換アルゴリズムDは鍵Ksによって特定され、
放送局と契約した視聴者には、あらかじめ鍵Ksを配送しておく放送方式が記載されている。

上記ウ.〜オ.の事項を参照すると、刊行物2には、
衛星放送を用いたペイテレビシステムにおいて、放送局(21)からのTV信号は人工衛星を介して受信装置(23)に送られ、このとき、放送局(21)からの番組が変更する度に、鍵Ksが変化することを特徴とするペイテレビシステムが記載されている。

上記カ.及びキ.の事項を参照すると、刊行物2には、
更に安全性を考慮したシステムとして、葉書又は葉書大の用紙の裏面(52)の一部に、磁気ストライプ(53)が設けられ、磁気ストライプ(53)には暗号化が施された鍵Kiが記憶されたものが各契約者毎に発送され、
この鍵Kiが、暗号器(31)での変換アルゴリズムを指定し、これに従って鍵Ksが得られ、この鍵の指定の下ディスクランブラー(37)において、逆変換が施され、再生に適したTV信号が得られるペイテレビシステムが記載されている。

以上を勘案すると、刊行物2には、
ペイテレビ等に用いられる放送方式において、放送局側で、TV信号を鍵Ksにより特定される変換アルゴリズムS(x)に従ってスクランブルし、傍受不能とした上で人工衛星を介して受信装置に送られ、スクランブルされたTV信号を視聴者側の受信装置で受信し、この受信信号は、鍵Ksにより特定される逆変換アルゴリズムD(y)によってスクランブルが解除されて、元の信号に戻され、通常のTVに供給され、
放送局と契約した視聴者には、あらかじめ鍵Ksを配送しておくとともに、
放送局からの番組が変更する度に、鍵Ksが変化することを特徴とする放送方式の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。

また、鍵の配送には、磁気ストライプに暗号化が施された鍵Kiが記憶された磁気記録媒体が用いられることが記載されている。

(3)刊行物3(特開平4-115736号公報)
ア.「複数の放送局が放送衛星を共用し、かつ共通のスクランブルを掛けた状態にてそれぞれ衛星放送を行うとともに、各受信者宅の受信機に対しては個別にデスクランブル情報を与えることを特徴とする衛星放送システム。」(第1頁左下欄第5行〜9行、特許請求の範囲の記載)

イ.「第1図は、本発明に係る衛星放送システムの一実施例を示すシステム構成図である。
同図に示されるように、宇宙空間に配置された放送衛星1は、衛星放送送信波6を介して複数の放送局2と接続されるとともに、衛星放送受信波7を介して各契約済み受信局3とも接続されている。また、受信局3はISDN網4を介してセンター5に接続されている。
各放送局2は常にスクランブルを掛けて放送を行っており、契約者である受信局3は好きな衛星放送受信波7をアンテナ35で受信することができる。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第5行)

ウ.「第2図は、各受信局3に備えられた衛星放送受信機30の内部構成を示すブロック図である。
同図において、アンテナ35で受信された映像・音声信号36はチューナ33に入力され、契約者がみたいチャネルの信号が選択される。選択された信号はデスクランブラ32でデスクランブルされたのち、モニタ31へと送られる。」(第2頁右下欄第6行〜12行)

エ.「一方、チューナ33で選択されたチャネル情報37は監視装置34へと送られて、第3図に示されるように、チャネル情報インタフェース344に入力され、マイクロプロセッサ341等の処理を受けて回線インタフェース343へと送られ、その後、ISDN網4を介してセンター5にパケットで送られる。」(第2頁右下欄第13行〜19行)

オ.「また、センター5はデスクランブルの方法に関する情報を回線56,ISDN網4を介して各受信局3へと定期的に送る。」(第3頁左上欄第8行〜10行)

カ.「なお、デスクランブラ32には、受信装置30の設置時に適宜なマニュアル操作により、あるいは上記と同様な回線を経由する遠隔操作により適当なデスクランブル情報が設定されている。」(第3頁左上欄第15行〜18行)

上記ア.〜ウ.の事項を参照すると、刊行物3には、
複数の放送局が放送衛星を共用し、かつ共通のスクランブルを掛けた状態にてそれぞれ衛星放送を行うとともに、各受信局の受信機に対しては個別にデスクランブル情報を与え、
アンテナで受信された映像・音声信号はチューナに入力され、契約者がみたいチャネルの信号が選択され、選択された信号はデスクランブラでデスクランブルされたのち、モニタへと送られ、
また、受信局はISDN網を介してセンターに接続されている衛星放送システムが記載されている。

上記エ.〜カ.の事項を参照すると、刊行物3には、
チューナで選択されたチャネル情報は監視装置へと送られ、チャネル情報インタフェース、回線インタフェースを介し、ISDN網を介してセンターに送られ、
センターはデスクランブルの方法に関する情報を回線,ISDN網を介して各受信局へと送る、あるいは、あるいは、回線を経由する遠隔操作により、デスクランブラに適当なデスクランブル情報を設定する衛星放送システムが記載されている。

以上を勘案すると、刊行物3には、
複数の放送局がスクランブルを掛けた状態で衛星放送を行うとともに、各受信局の受信機に対しては個別にデスクランブル情報を与え、
チューナで選択されたチャネル情報は、回線、ISDN網を介してセンターに送られ、センターは、回線、ISDN回線を介して、デスクランブル情報を受信局のデスクランブラに設定する衛星放送システムの発明(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されている。

(4)刊行物4(特開昭64-12783号公報)
ア.「各加入者端末が片方向の回線を介して放送センターと接続され、加入者の支払った受信料金が放送センターから各加入者端末の課金レジスタにセットされ、各加入者端末の課金レジスタの示す支払数の許す限り放送の受信が可能な片方向加入放送システムにおいて、
放送センターは、有料番組の中でも加入者に視聴要求を義務付けた特別番組はその要求のあった加入者を指定して当該特別番組の放送前に視聴許可を与えるデータを送出する手段を有し、
加入者端末は、上記データをストアーするメモリと、前記特別番組の放送時に前記メモリにストアーしたデータ,及び課金レジスタの内容を参照して特別番組を受信するか否かを判断する手段と、
を有することを特徴とする片方向加入放送システム。」(第1頁左下欄第5行〜20行、特許請求の範囲の記載)

イ.「第12図は、加入者が予め視聴したい番組を放送センターに予約する方式である。この予約の有無によって、放送センターは、その加入者端末に対し番組視聴を許可する。」(第2頁左上欄第1行〜4行)

ウ.「放送センターは、有料番組の中でも加入者に視聴要求を義務付けた特別番組は、放送前にそれらの加入者を指定して当該特別番組の視聴許可を与えるデータを送出する手段を有し、
加入者端末は、上記データをストアするメモリと、前記特別番組の放送時にストアーしたデータ,及び前記課金レジスタの内容を参照して特別番組を受信するか否かを判断する手段とを具備するものである。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第2行)

エ.「放送センターが特別番組として決定した番組は、電話,手紙,カード等を利用した視聴要求を加入者に義務付けるので放送前の視聴者数の算出が可能である。」(第2頁右下欄第8行〜11行)

オ.「第1図はこの発明に係る片方向加入者放送システムの一実施例を示すブロック図である。」(第2頁右下欄第15行〜16行)

カ.「キーボードコントローラ15は、キーボード17と接続され、加入者からの特別番組に対する視聴要求(手紙、電話等),或いは料金支払額をキー入力して、ディスクコントローラ18を開始、磁気ディスク19にその情報を個別通信用の固有アドレスと共にストアーすることができる。」(第3頁左上欄第17行〜右上欄第2行)

キ.「特別番組とは、放送センター1側で上記手紙,電話等による視聴要求を義務付けた有料番組のことを言い、通常の有料放送とは区別して番組表(パンフレット)に表示する。」(第3頁右上欄第4行〜8行)

ク.「加入者端末32においては、バス30からの放送信号は、チューナ321で受信し、端末制御のための下りデータは、受信器322で受信する。チューナ321からのIF信号はIF検波器328を介してデスクランブル回路329に導かれ、デスクランブル回路329からの信号はIFモジュレータ330,RFモジュレータ331を介してTV受像機33にて表示される。」(第3頁右上欄第9行〜16行)

ケ.「また、加入者端末32は、受信処理用のCPU332に、…RAM325…がバス接続され、…RAM325には、特別番組受信許可データの記憶領域が確保されており、放送デンター1に視聴要求がなされ、且つキー入力処理されることによって、その許可データが放送センターから送出され上記領域にセットされる。」(第3頁右上欄第17行〜左下欄第11行)

コ.「デスクランブル制御回路320は、このRAM325の許可データと、課金レジスタ337との内容によって、デスクランブルを行うか否かを制御する。」(第3頁左下欄第11行〜14行)

上記イ.の事項を参照すると、刊行物4には、
加入者が予め視聴したい番組を放送センターに予約し、この予約の有無によって、放送センターは、その加入者端末に対し番組視聴を許可する放送システムが従来例として記載されている。

上記ア.及びウ.〜キ.の事項を参照すると、刊行物4には、
有料番組の中でも放送センターが加入者に視聴要求を義務付けた特別番組は、
電話,手紙,カード等を利用した視聴要求を加入者に義務付け、
放送前にそれらの加入者を指定して当該特別番組の視聴許可を与えるデータを送出する手段を有し、
加入者端末は、上記データをストアするメモリと、前記特別番組の放送時にストアーしたデータ等を参照して特別番組を受信するか否かを判断する手段とを具備する放送システムが記載されている。

上記ク.及びコ.の事項を参照すると、刊行物4には、
加入者端末においては、放送信号は、チューナで受信し、チューナからのIF信号はIF検波器を介してデスクランブル回路に導かれ、デスクランブル回路からの信号はIFモジュレータ,RFモジュレータを介してTV受像機にて表示され、
加入者端末には、RAMがバス接続され、RAM3には、特別番組受信許可データの記憶領域が確保されており、放送センター1に視聴要求がなされ、その許可データが放送センターから送出され上記領域にセットされ、デスクランブル制御回路は、このRAMの許可データ等によって、デスクランブルを制御する放送システムが記載されている。

以上を勘案すると、刊行物4には、
加入者が予め視聴したい番組を放送センターに予約し、この予約の有無によって、放送センターは加入者端末に対し番組視聴を許可する放送システムにおいて、
有料番組の中でも放送センターが加入者に視聴要求を義務付けた特別番組は、
放送センターに電話,手紙,カード等を利用した視聴要求がなされ、その許可データが放送センターから送出され加入者端末のメモリ領域にセットされ、デスクランブル制御回路は、このメモリ領域のの許可データ等によって、デスクランブルを行う放送システムの発明(以下、「刊行物4記載の発明」という。)記載されている。

(5)刊行物5(特開平4-150333号公報)
ア.「有料放送方式においては、契約者のみが放送を視聴できるようにするために、放送信号をスクランブルして放送し、契約者にはこのスクランブルを元に戻す(デスクランブル)ための鍵を別途配布して復元を行う。信号をスクランブルする方法としては種々あり、本発明とは直接関係しないが、例えば、放送衛星によるテレビ放送や高精細テレビジョン(ハイビジョン)放送では、映像信号については画面を横方向に乱すラインローテーション方式(走査線内信号切替方式)や縦方向に乱すラインパーミュテーション方式(走査線転移方式),音声信号についてはディジタル化された信号に疑似ランダム信号(以下PN信号という)系列を加算する方式が用いられる。」(第2頁左下欄第3行〜16行)

イ.「このスクランブルの方法は長時間固定しておくと信号を詳細に観測することにより解読されることがあるので、比較的短時間(例えば1秒程度)に変化させることが必要である。この変化はスクランブル鍵(以下Ksと略記する)で制御され、この情報がデスクランブラへ伝えられる。送信側と受信側ではこのKsを基に同一のPN信号を発生させ、放送時のスクランブル及びデスクランブルを行う。」(第2頁左下欄第17行〜右下欄第6行)

ウ.「Ksを受信機へ伝える媒体としては放送信号と同じ伝送路(電波など)もしくはICカード,磁気カード等の物理媒体,電話線などの有線媒体が用いられる。」(第2頁右下欄第14行〜17行)

上記ア.〜ウ.の事項を参照すると、刊行物5には、
有料放送方式においては、契約者のみが放送を視聴できるようにするために、放送信号をスクランブルして放送し、契約者にはこのスクランブルを元に戻す(デスクランブル)ための鍵を別途配布して復元を行い、
スクランブルの方法を比較的短時間(例えば1秒程度)に変化させるために、スクランブル鍵Ksで制御し、送信側と受信側ではこのKsを基に同一のPN信号を発生させ、放送時のスクランブル及びデスクランブルを行い、
Ksを受信機へ伝える媒体として、ICカード,磁気カード等の物理媒体,電話線などの有線媒体が用いる有線放送方式の発明(以下、「刊行物5記載の発明」という。)が記載されている。

(6)刊行物6(特開平4-155658号公報)
ア.「外部から入力される情報を記録媒体に記録するとともに、記録済みの記録媒体の読み出し・再生を行う記録再生装置において、
記録時において所定の規則に従って前記外部から入力される記録情報を暗号化する暗号化手段と、
読み出し時において前記記録済みの記録媒体から読み出し・再生された読み出し情報が前記所定の規則に従って暗号化されているかどうかを検出する暗号化検出手段と、前記記録済みの記録媒体から読み出し・再生された読み出し情報を前記所定の規則に従って復号化する復号化手段とを具備することを特徴とする記録再生装置。」(第1頁左下欄第5行〜16行、特許請求の範囲の記載)

イ.「本発明の磁気媒体記録再生装置は、…
記録時においてビデオ信号入力端子(101)から入力されるビデオ信号に、…スクランブルをかけたり、再生時において…デスクランブルをかけたりするスクランブル・デスクランブル制御回路(13)と、
…構成され、…とから構成されている。」(第2頁右下欄第1行〜第3頁右上欄第7行)

上記ア.及びイ.の事項を参照すると、刊行物6には、
ビデオ信号にスクランブルをかけて記録し、再生時にデスクランブルをかけるスクランブル・デスクランブル制御回路を備えた磁気媒体記録再生装置の発明(以下、「刊行物6記載の発明」という。)が記載されている。

3.対比・判断
[請求項1]に係る発明について

(対比)
請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
ア. 刊行物1記載の発明の「無線放送や有線放送によって提供する情報」については、この無線放送や有線放送は、通常は、放送番組等を提供するものであって、この放送番組等において情報が提供されるのであり、
一方、請求項1に係る発明の「番組」についても、この番組の情報を無線放送や有線放送により提供するものであるから、
刊行物1記載の発明の「無線放送や有線放送によって提供する情報」と、請求項1に係る発明の「番組」とは、放送される情報である点では一致している。

イ.刊行物1記載の発明の「コードデータ」は、放送される情報を符号化し
て送信するものであり、この符号化された情報を不特定多数の受信者に対して提供し、これを復調可能な特定のユーザのみが該情報を利用することが可能となるように、放送される情報を符号化するものであり、
また、請求項1に係る発明の「スクランブルデータ」も、放送される情報を特定のユーザのみがスクランブルを解除できるように符号化して送信するものであるから、両者は、放送される情報をスクランブルする「スクランブルデータ」である点では一致する。
なお、刊行物1には、「コードデータ」について、「スクランブルデータ」と記載されていない点が形式上は相違する。

ウ. 刊行物1記載の発明の「情報毎に異なるコードデータで符号化して符号化された情報」は、放送される情報を情報毎に異なるコードデータで符号化した情報であり、一方、請求項1に係る発明の「番組をスクランブルデータでスクランブルしたスクランブル番組」も、放送される番組の情報をスクランブルデータでスクランブルした番組のスクランブル情報であるから、
刊行物1記載の発明の「情報毎に異なるコードデータで符号化して符号化された情報」と請求項1に係る発明の「番組をスクランブルデータでスクランブルしたスクランブル番組」とは、放送される情報をスクランブルデータでスクランブルしたスクランブル情報である点では一致する。
なお、刊行物1には、「コードデータ」について、「スクランブルデータ」と記載されていない点が形式上は相違する。

エ.刊行物1記載の発明の「前記情報を送信側から不特定多数の受信側に通
信システムにより供給」する手段は、符合化された放送情報を放送手段により供給するものであり、一方、請求項1に係る発明の「前記スクランブル番組を番組供給手段により供給」する番組供給手段も、いずれも、放送される情報を無線放送や有線放送により提供するものであるから、両者は、放送される情報を無線放送や有線放送により供給する点では一致している。

オ.刊行物1記載の発明の「提供される情報を利用する受信側は、送信側のデータ記録媒体と同一コードデータが格納されたデータ記録媒体を購入などによって手に入れる」構成は、放送情報の利用を希望する視聴者が、送信側データ記録媒体の購入を送信側に何らかの手段で申込んで購入するものであり、購入されたデータ記録媒体は、例えば、郵送等により利用者に送られ、
一方、請求項1に係る発明では、スクランブルデータは通信回線により供給するものであって、相違しているが、刊行物1記載の発明と請求項1に係る発明とは、いずれも、視聴者からの視聴申し込みに対してスクランブルデータを供給する点では一致している。
なお、刊行物1には、記録媒体の購入について、視聴者からの視聴申し込みと記載されていない点が形式的には相違する。

カ.刊行物1記載の発明の「情報毎に異なるコードデータを用いて、前記符号化された情報を復号化する」点は、放送される情報毎に異なるスクランブルデータを用いて前記スクランブル情報のスクランブルを解除するものであり、刊行物1記載の発明と請求項1に係る発明とは、スクランブルデータを用いてスクランブル情報を解除する点では一致する。

キ.刊行物1記載の発明は「無線放送や有線放送によって情報の提供を行なう通信システム」のシステムの発明であるが、この通信システムにより、放送される情報が供給されるものであり、放送される情報の供給方法である点では、刊行物1記載の発明の、放送される情報の供給方法は、請求項1に係る発明の「番組供給方法」と一致している。

したがって、両者は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。

<一致点>
放送される情報をスクランブルデータでスクランブルしてスクランブル情報とし;
前記スクランブル情報を放送される情報の供給手段により供給し;
視聴者からの視聴申し込みに対して前記放送される情報のスクランブルデータを供給し;
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル情報のスクランブルを解除する:放送される情報の供給方法。

<相違点>
(ア)放送される情報が、
請求項1に係る発明では、番組であるのに対して、
刊行物1記載の発明では、番組と特定されていない点。

(イ)番組をスクランブルするスクランブルデータが、
刊行物1では、コードデータと記載され、スクランブルデータと記載されていない点が形式的に相違する。

(ウ)情報毎にスクランブルされ、スクランブルが解除される情報が、
請求項1に係る発明では、スクランブル番組であるのに対して、
刊行物1記載の発明では、スクランブル番組と特定されていない点。

(エ)視聴申し込みに対して供給されるスクランブルデータが、
請求項1に係る発明では、通信回線により供給されるのに対し、
刊行物1記載の発明では、供給手段が通信回線でない点。

(オ)視聴者の視聴申し込みが、
刊行物1では、記録媒体の購入であって、視聴者からの視聴申し込みと記載されていない点が形式的には相違する。

(判断)
上記の相違点(ア)〜(ウ)については、
刊行物2には、
ペイテレビ等に用いられる放送方式において、放送局側で、TV信号を鍵Ksにより特定される変換アルゴリズムS(x)に従ってスクランブルし、傍受不能とした上で人工衛星を介して受信装置に送られ、スクランブルされたTV信号を視聴者側の受信装置で受信し、この受信信号は、鍵Ksにより特定される逆変換アルゴリズムD(y)によってスクランブルが解除されて、元の信号に戻され、通常のTVに供給され、
放送局と契約した視聴者には、あらかじめ鍵Ksを配送しておくとともに、
放送局からの番組が変更する度に、鍵Ksが変化することを特徴とする放送方式の発明が記載されており、
放送局からの番組が変更する度に、スクランブル鍵Ksを変化させて、放送局側のスクランブルと、受信側のデスクランブルを行うことが公知技術であるから、

刊行物2記載の発明を参照すると、刊行物1記載の方式に代えて、
番組をスクランブルデータを用いてスクランブルしてスクランブル番組とし、前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除するようにすることは当業者が容易に想到することができたものである。

また、上記(エ)及び(オ)の点については、
刊行物3には、
複数の放送局がスクランブルを掛けた状態で衛星放送を行うとともに、各受信局の受信機に対しては個別にデスクランブル情報を与え、
チューナで選択されたチャネル情報は、回線、ISDN網を介してセンターに送られ、センターは、回線、ISDN回線を介して、デスクランブル情報を受信局のデスクランブラに設定する衛星放送システムの発明が記載されており、
デスクランブル情報を回線、ISDN網の通信回線を介して送ることが公知技術であり、

また、刊行物4には、
加入者が予め視聴したい番組を放送センターに予約し、この予約の有無によって、放送センターは加入者端末に対し番組視聴を許可する放送システムにおいて、
有料番組の中でも放送センターが加入者に視聴要求を義務付けた特別番組は、
放送センターに電話,手紙,カード等を利用した視聴要求がなされ、その許可データが放送センターから送出され加入者端末のメモリ領域にセットされ、デスクランブル制御回路は、このメモリ領域のの許可データ等によって、デスクランブルを行う放送システムの発明記載されており、
視聴者の視聴要求に応じてデスクランブルを行う許可データをセンターから加入者端末に送出することが公知技術であるから、

上記刊行物3及び刊行物4記載の発明を参照すれば、刊行物1記載の発明において、スクランブルデータを視聴者からの視聴申し込みに対して供給するように変更すること、及び、スクランブルデータをデータ記録媒体でなく、通信回線により供給するように変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

以上、要するに、
刊行物1には、
番組をスクランブルデータを用いてスクランブルしてスクランブル番組とし、
前記スクランブル番組を番組供給手段により供給し、
視聴者からの視聴申し込みに対して前記スクランブルデータを供給し、
前記スクランブルデータを用いて前記スクランブル番組のスクランブルを解除する、番組供給方法の基本的な構成が開示されており、

請求項1に係る発明は、スクランブルデータの供給手段や表現上の形式的な相違があるものの、
これらの相違点については、刊行物2〜刊行物4に記載されているように、何れも公知技術であり、刊行物2〜刊行物4記載の発明を参照すれば、刊行物1記載の発明を当業者が容易に変更することができたものである。

したがって、請求項1に係る発明は刊行物1〜4記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求項2]に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の通信回路を半導体記憶手段に代えたものに相当しているが、

刊行物5には、
有料放送方式においては、契約者のみが放送を視聴できるようにするために、放送信号をスクランブルして放送し、契約者にはこのスクランブルを元に戻す(デスクランブル)ための鍵を別途配布して復元を行い、
スクランブルの方法を比較的短時間(例えば1秒程度)に変化させるために、スクランブル鍵Ksで制御し、送信側と受信側ではこのKsを基に同一のPN信号を発生させ、放送時のスクランブル及びデスクランブルを行い、
Ksを受信機へ伝える媒体として、ICカード,磁気カード等の物理媒体,電話線などの有線媒体が用いる有線放送方式の発明が記載されており、
放送をスクランブルし、デスクランブルするスクランブル鍵Ksを、ICカード,磁気カード,電話線などにより受信機へ伝えることが公知技術であるから、

刊行物5記載の発明を参照すれば、スクランブルデータを半導体記憶手段により供給するように変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

[請求項3]に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の通信回路を磁気記憶手段に代えたものに相当しているが、

刊行物2には、鍵の配送には、磁気ストライプに暗号化が施された鍵Kiが記憶された磁気記録媒体が用いられることが記載され、
また、刊行物5には、スクランブル鍵Ksを受信機へ伝える媒体として、ICカード,磁気カード等の物理媒体,電話線などの有線媒体が用いる有線放送方式の発明が記載されており、

放送をスクランブルし、デスクランブルするスクランブルデータを、磁気カードにより受信機へ伝えることが公知技術であるから、

刊行物2又は刊行物5記載の発明を参照すれば、スクランブルデータを磁気記憶手段により供給するように変更することは、当業者が容易に想到することができたものである。

[請求項4又は請求項5]に係る発明について
請求項4又は請求項5に係る発明は、番組供給手段を放送手段又は通信手段と特定したものであるが、

番組供給手段を放送手段としたものは刊行物2〜5に、通信手段としたものは刊行物1に記載されており、当業者が容易に特定することができたものである。

[請求項6]に係る発明について
請求項6に係る発明は、番組供給手段を媒体としたものであるが、例えば、刊行物1のク.の事項を参照すると、受信側の映像情報格納手段として、光デイスク12の代りに、磁気デイスクなどの他の記録媒体を用いてもよいことが記載されており、また、記録媒体で番組を供給することは、VTRやCD-ROMやDVDなど周知技術であるので、

刊行物1記載の発明において、番組供給手段を媒体により行うように変更することは当業者が容易に想到することができたものである。

[請求項7〜請求項9]に係る発明について
請求項7〜請求項9に係る発明では、スクランブルデータをデコーダに供給するデコーダ制御部と、スクランブルを解除するデコーダ部を有することを特徴とするものであるが、

刊行物2記載の発明ではディスクランブラー、刊行物3記載の発明ではデスクランブラ、刊行物4記載の発明ではデスクランブル制御回路、刊行物5記載の発明ではデスクランブラについて記載されており、このデスクランブラがデコーダ部に相当し、また、デコーダ制御部を設けることも刊行物4に記載されるように、通常の構成であると認められ、また、

刊行物4には、加入者からの電話,手紙,カード等を利用した視聴要求に応じて、その許可データが放送センターから送出され加入者端末のメモリ領域にセットされ、デスクランブル制御回路により、デスクランブルを行う放送システムが記載されており、更に、刊行物5にはデスクランブルの鍵を回線やICカードや磁気カードを介して供給することが記載されているから、

請求項7〜請求項9に係る発明は、刊行物1〜5記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求項10]に係る発明について
請求項10に係る発明は、スクランブルされた番組信号がチューナから供給されるものであるが、例えば、刊行物3のイ.及びウ.の事項を参照すると、スクランブルされた放送信号がアンテナ35で受信され、チューナに入力されることが記載されており、
スクランブルされた番組信号がチューナから供給されるようにすることは当業者が容易に想到することができたものである。

[請求項11]に係る発明について
番組信号を衛星放送でなく、通信回線により供給することは、CATVシステム等において周知技術であると認められ、当業者が容易に変更することができたものである。

[請求項12]に係る発明について
番組信号を衛星放送でなく、媒体により供給することは、VTRやCD-ROMやDVDなどを用いることにより周知技術であると認められる。

[請求項13]に係る発明について
請求項13に係る発明は、請求項7に係る発明に、スクランブルされた番組信号を記録する記録装置、前記記録された番組信号を再生し、デコーダに供給する再生装置を付加したものに相当するが、

刊行物6には、
ビデオ信号にスクランブルをかけて記録し、再生時にデスクランブルをかけるスクランブル・デスクランブル制御回路を備えた磁気媒体記録再生装置が記載されており、
スクランブルされた番組信号を記録する記録装置、前記記録された番組信号を再生し、デコーダに供給する再生装置を備えた記録再生装置は公知技術であると認められ、刊行物6記載の発明をも参照すれば、

請求項13に係る発明は、刊行物1〜6記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求項14又は請求項15]に係る発明について
スクランブル鍵をICカード又は磁気カードにより供給することは、刊行物5に記載されており、請求項14又は15に係る発明は、刊行物1〜6記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求項16〜18]に係る発明について
スクランブル信号をチューナ、通信回線、媒体から供給する点は、請求項10〜11に係る発明と同様である。

[請求項19]に係る発明について
請求項19に係る発明は、請求項1に係る発明のうち、「前記スクランブル番組を番組供給手段により供給し、」という構成を削除したものに相当し、請求項1に係る発明と同様、刊行物1〜4記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求項20又は21]に係る発明について
スクランブル鍵をICカード又は磁気カードにより供給することは、刊行物5に記載されており、請求項20又は21に係る発明は、刊行物1〜6記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求項22〜24]に係る発明について
番組供給手段が、放送手段、通信手段、媒体である点は請求項4〜6に係る発明と同様である。

4.むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜請求項24に係る発明は、刊行物1〜刊行物6記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

III.むすび
上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-04-15 
結審通知日 2003-04-22 
審決日 2003-05-07 
出願番号 特願平4-276941
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 貴裕望月 章俊板橋 通孝  
特許庁審判長 西川 正俊
特許庁審判官 橋本 正弘
吉見 信明
発明の名称 受信装置  
代理人 松倉 秀実  
代理人 永田 豊  
代理人 川口 嘉之  
代理人 遠山 勉  

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