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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05K 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) H05K |
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管理番号 | 1079585 |
異議申立番号 | 異議2002-70881 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-04-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-04-03 |
確定日 | 2003-04-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3219140号「電気・電子機器」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3219140号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
【一】手続の経緯 本件特許第3219140号は、平成9年10月14日に出願され、平成13年8月10日に設定登録された後、表記特許異議申立人より請求項1ないし2(全請求項)に係る発明について特許異議の申立てがなされ、平成14年6月27日付けで通知した取消理由で指定した期間内の平成14年9月6日付けで特許異議意見書及び訂正請求書が提出されたものである。 【二】訂正請求の要旨 上記訂正請求は、願書に添付した明細書を上記訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は、以下の訂正事項(a)ないし(e)のとおりのものと認める。 [訂正事項(a)] 請求項1の「異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間に形成されたダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。」を、 「異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器」と訂正する。 [訂正事項(b)] 段落【0011】に「 【課題を解決するための手段】 本発明は次の可撓性回路基板である。 (1) 異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間に形成されたダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。 (2) 接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された上記(1)記載の電気・電子機器。」とある記載を、 「 【課題を解決するための手段】 本発明は次の電気・電子機器である。 (1) 異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。 (2) 接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された上記(1)記載の電気・電子機器。」と訂正する。 [訂正事項(c)] 段落【0016】に「 接続端子の間隔が広く、例えば0.3mmを超える場合、前述のように接合の際異方導電性接着剤が流出して接着強度が低下するので本発明では間隔の広い接続端子パターン間にダミーパターンを形成する。ダミーパターンは接続端子パターンとほぼ同様の形状に形成されるが、導体回路パターンから独立して接続端子部またはその近辺にのみ形成されるもので、電気的接続には関与しない構成とされる。」とある記載を、 「 接続端子の間隔が広くて0.3mmを超える場合、前述のように接合の際異方導電性接着剤が流出して接着強度が低下するので、本発明では0.3mmを超えるような間隔の広い接続端子パターン間にダミーパターンを形成する。ダミーパターンは接続端子パターンとほぼ同様の形状に形成されるが、導体回路パターンから独立して接続端子部またはその近辺にのみ形成されるもので、電気的接続には関与しない構成とされる。」と訂正する。 [訂正事項(d)] 段落【0017】に「 ダミーパターンの形状、幅等は任意とすることができるが、接着強度を確保するためには接続端子とほぼ同等の形状、大きさとするのが好ましい。接続端子パターンとダミーパターン間、および接続端子間またはダミーパターン間の間隔は0.3mm以下とするのが好ましい。接続端子間にダミーパターンを形成することにより接続端子とダミーパターン間の間隔が狭くなりすぎる場合はダミーパターンの幅を狭くすることができるが、間隔が広い場合は複数のダミーパターンを形成するのが好ましい。ダミーパターンの幅は0.02〜0.8mm、好ましくは0.04〜0.5mmとするのが好ましい。」とある記載を、 「ダミーパターンの形状、幅等は任意とすることができるが、接着強度を確保するためには接続端子とほぼ同等の形状、大きさとするのが好ましい。接続端子パターンとダミーパターン間、および接続端子間またはダミーパターン間の間隔は0.3mm以下とする。接続端子間にダミーパターンを形成することにより接続端子とダミーパターン間の間隔が狭くなりすぎる場合はダミーパターンの幅を狭くすることができるが、間隔が広い場合は複数のダミーパターンを形成するのが好ましい。ダミーパターンの幅は0.04〜0.5mmとする。」と訂正する。 [訂正事項(e)] 段落【0028】に「 【発明の効果】 本発明によれば、可撓性回路基板の接続端子間にダミーパターンを形成し、接続端子パターン及びダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたので、接続端子パターンの間隔が広い場合でも、導電性と接着強度を大きくすることができ、回路の短絡も生じない、可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器が得られる。」とある記載を 「 【発明の効果】 本発明によれば、可撓性回路基板の接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に幅0.04〜0.5mmのダミーパターンを形成し、接続端子パターン及びダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたので、接続端子パターンの間隔が広い場合でも、導電性と接着強度を大きくすることができ、回路の短絡も生じない、可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器が得られる。」と訂正する。 【三】訂正の適否について 1.訂正の目的 (1)訂正事項(a)について 訂正事項(a)は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1における「ダミーパターン」を、「接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える」「接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターン」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項(b)〜(e)について 特許請求の範囲の訂正に伴って発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に整合するよう訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 2.新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 願書に添付した明細書の段落【0016】に「接続端子の間隔が広く、例えば0.3mmを超える場合、前述のように接合の際異方導電性接着剤が流出して接着強度が低下するので本発明では間隔の広い接続端子パターン間にダミーパターンを形成する。……」、段落【0017】に「……接続端子パターンとダミーパターン間、および接続端子間またはダミーパターン間の間隔は0.3mm以下とするのが好ましい。接続端子間にダミーパターンを形成することにより接続端子とダミーパターン間の間隔が狭くなりすぎる場合はダミーパターンの幅を狭くすることができるが、間隔が広い場合は複数のダミーパターンを形成するのが好ましい。ダミーパターンの幅は0.02〜0.8mm、好ましくは0.04〜0.5mmとするのが好ましい。」との記載があり、訂正事項(a)〜(e)は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 3.まとめ(訂正の適否について) 上記1,2に説示のとおり、本件訂正は、特許法第120条の4第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第3項の規定により準用する同法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、認められるべきものである。 【四】本件特許発明 上記「【三】訂正の適否について」に説示のとおり、上記訂正請求による明細書の訂正が認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。 【請求項2】接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された請求項1記載の電気・電子機器。」 【五】特許異議申立てについて 1.異議申立ての理由 異議申立ての理由の概要は、 本件特許の請求項1ないし2に係る発明は、次の甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである. というものである。 2.証拠方法 甲第1号証:特開平8-293656号公報 甲第2号証:特開平4-280036号公報 【六】当審の判断 1.甲各号証に記載された事項 特許異議申立人が提出した甲第1、2号証には、それぞれ以下の事項が記載されているものと認める。 (1)甲第1号証 上記甲第1号証には、 イ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は複数個の印刷配線が配列された可とう性絶縁フィルムを、導電線が配列された基板上に接続固定した配線接続構造の改良に関するものである。」 ロ)「【0007】……配線密度を高めながらも、導電線3aの線幅を35ミクロン程度にまで大きくする必要がある。」 ハ)「【0013】【発明の構成】本発明の配線接続構造は、複数個の導電線が配列された基板上に、複数個の印刷配線が配列された可とう性絶縁フィルムを異方性導電樹脂を介して固定するとともに、上記複数個の導電線と複数個の印刷配線とをそれぞれ対となるように接続して成る構造であって、前記各印刷配線の導電層が接続される接続固定部に分岐した複数個の接続子を設けるとともに、各印刷配線の接続子の間にいずれの印刷配線とも導電しない独立導体を配設したことを特徴とする。」 ニ)「【0016】信号側基板5上に設けた透明電極3のうち、その非表示領域にある透明電極3の上に金属層を形成し、これによって高導電率の導電線3a(線幅:35ミクロン)を設け、更にPETフィルムに導体をパターン印刷して成る印刷配線13が設けられた入力ケーブル14を異方性導電樹脂15を介して信号側基板5の上に接続固定している。」 ホ)「【0017】また、各印刷配線13の接続固定部には、それぞれ分岐した2個の接続子13a、13bと、いずれの印刷配線13とも導電しない独立導体13c、13dから構成している。これによって、入力ケーブル14の剥離を防止して基板との密着性を高めたり、あるいは異方性導電樹脂の導電粒子が各印刷配線13間で均一に配分されて、バラツキが生じないようにしている。そして、この分岐した印刷配線13においては、2個の接続子13a、13bが異方性導電樹脂15を介して、対応する導電線3aと接続するようになっている。」 等の記載があり、これらの記載及び図面を参照すると、甲第1号証には、 “異方性導電樹脂をPETフィルム基板上に有する入力ケーブル14と、電気・電子機器の信号側基板5とが、入力ケーブル14及び信号側基板5間に異方性導電樹脂が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該入力ケーブル14が、PETフィルムからなる基材と、 電気・電子機器の信号側基板5に形成された導電線3aに対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された印刷配線13の接続子13a、13bと、 上記印刷配線13の接続子13a、13b間に形成された独立導体13c、13dとを有する電気・電子機器。(以下「甲第1号証に記載された発明」という。)”及び “導電線3aの線幅を35ミクロンとする点” が記載されているものと認められる。 (2)甲第2号証 甲第2号証には、 ヘ)「【0009】また、FPC60は、例えばポリイミドなどからなるベース板上に金属膜(膜厚は30μm程度)のパターンニングによって接続端子70を形成したものであり、異方性導電材となる熱硬化樹脂を接着剤として用いる熱圧着によって、ガラス基板11,12に固着されている。」 ト)「【0018】【課題を解決するための手段】本発明に係るPDPは、……複数の電極端子50,51が一方向に配列された基板11と、前記各電極端子50,51のそれぞれと対になる複数の接続端子70を有した可撓性配線板60とが、接着材90によって固着されたフラット形表示装置1において、前記可撓性配線板60の内面上の前記接続端子70からなる端子列の外側に、前記接着材90による接着面積を拡大するための突起部材71が設けられてなる。」 チ)「【0021】PDP1では、端縁に沿って電極端子50,51が設けられたガラス基板11と、電極端子50,51のそれぞれと対になる接続端子70を有したFPC60とが異方性導電材である接着材90を用いた熱圧着によって固着されている。」 リ)「【0023】電極端子50の幅は例えば0.3mm程度とされ、電極端子50間の間隔も0.3mm程度とされている。」 ヌ)「【0024】一方、接続端子70は、その幅が電極端子50に比べて若干小さく、従来と同様に、薄い膜状の接着材90を介して電極端子50,51と接合されている。そして、FPC60とガラス基板11との対向間隙は、接着材90によって埋められている。」 ル)「【0025】さて、本実施例のPDP1においては、電極端子51と対になる接続端子70、すなわち複数の接続端子70からなる端子列の両端の接続端子70の外側に、接続端子70と平行に2本の帯状の突起部材71が設けられている。この突起部材71は、FPC60における各接続端子70の形成と同時に形成される。」 等の記載があり、また、図1、図2を参照すると、 ヲ)電極端子51と対になる接続端子70とこれに平行に設けられた帯状の突起部材71との間隔、及び2本の突起部材71間の間隔が、前記電極端子50間の間隔、接続端子70間の間隔のいずれよりも小さくされた構成 が認められる。 2.対比・判断 2-1.本件請求項1に係る発明について (1)本件請求項1に係る発明と上記甲第1号証に記載された発明とを対比すると、上記甲第1号証に記載された発明の「異方性導電樹脂」、「入力ケーブル14」、「信号側基板5」、「PETフィルム」、「導電線3a」、「接続子13a,13b」、「独立導体13c,13d」が、それぞれ本件請求項1に係る発明の「異方導電性接着剤」、「可撓性回路基板」、「被接続基板」、「可撓性絶縁フィルム」、「接続端子」、「接続端子パターン」、「ダミーパターン」に相当し、両者は、 「異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間に形成されたダミーパターンとを有する電気・電子機器」 で一致し、次の相違点A、Bで相違するものと認める。 A.本件請求項1に係る発明は、可撓性回路基板と被接続基板とが、両基板間に異方導電性接着剤が保持されて接続される構造において、両基板間に「実質的にすき間を形成しないように」なっているのに対して、上記刊行物1に記載された発明は、実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されているか否かについて、言及されたものでない点 B.本件請求項1に係る発明は、「上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下とした」のに対して、上記甲第1号証に記載された発明では、被接続基板に形成された接続端子間の間隔、ダミーパターンの幅及び、接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔について言及されたものでない点 (2)上記各相違点について検討する。 (2-1)相違点Aについて 基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持される構成は、上記甲第2号証の上記摘示事項ヌ)の「FPC60とガラス基板11との対向間隙は、接着材90によって埋められている。」との記載が示すように、甲第2号証にも記載され、また設計上の常識事項と認められ、甲第1号証に記載された発明の、可撓性回路基板と被接続基板とが、両基板間に異方導電性接着剤が保持されて接続される構造においても、両基板間に「実質的にすき間を形成しないように」構成されているものと認められるので、相違点Aは実質上の相違点とは認められない。 (2-2)相違点Bについて 甲第1号証には、「配線密度を高めながらも、導電線3aの線幅を35ミクロン程度にまで大きくする」と記載され、図面の記載からみて、導電線3aの間隔も同程度と認められる。また、甲第2号証に記載されたものでは、電極端子50間の間隔が0.3mm程度とされているものの、ダミー端子51及び対応する突起部材71は端子列の両端に設けられている。 これらのことから、甲第1号証、甲第2号証に記載されたものは、印刷配線13間間隔又は接続端子70間間隔が広い場合に、異方導電性接着剤が流出することを認識したものとは認めることはできないし、また、間隔が0.3mmを超える接続端子パターン間に幅0.04〜0.5mmのダミーパターンを形成し、前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下とする構成を開示するものでもない。 したがって、甲第1、2号証に記載された事項を組み合わせても、上記相違点Bにおける本件請求項1に係る発明の構成は、予測することができず、、当業者が容易になし得た事項とすることはできない。 そして、本件請求項1に係る発明は、上記構成を備えることにより、「接続端子パターンの間隔が広い場合でも、導電性と接着強度を大きくすることができ、回路の短絡も生じない、可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器が得られる。」等の明細書に記載された作用効果を期待しうるものである。 よって、本件請求項1に係る発明を、上記甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とすることも、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 2-2.本件請求項2に係る発明について 本件請求項2に係る発明は、上記本件請求項1に係る発明の構成に加えて、「接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された」点を発明を特定する事項とするものである。 よって、本件請求項2に係る発明は、上記甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明とすることも、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 【七】むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1ないし2に係る特許を取り消すことはできず、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電気・電子機器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。 【請求項2】 接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された請求項1記載の電気・電子機器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は可撓性回路基板を被接続基板に接続したICチップ、液晶表示装置(LCD)、プリント配線基板等の電気・電子機器、特に異方導電性接着剤(異方導電性接着剤フィルムを含む)により可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 可撓性回路基板からなる駆動用回路基板をLCDのガラス基板に接続する場合のように、可撓性回路基板をプリント配線基板などの電気・電子機器に接続する場合、異方導電性接着剤が用いられている。異方導電性接着剤は接着性の樹脂中に導電性粒子を分散させた接着剤である。この異方導電性接着剤は電気・電子機器と可撓性回路基板の接続端子間に介在させて熱圧着することにより、端子の存在する部分では導電性粒子が圧着して導電性を確保し、端子の存在しない部分では導電性粒子が分散するため、非導通状態で樹脂の接着性により接着を確保するようになっている。 【0003】 図4(a)は従来の可撓性回路基板の接続端子部の平面図、(b)は被接続体であるLCDのガラス基板に接続した理想的な状態を示すA-A断面図、(c)はB-B断面図である。図4において、1は可撓性回路基板であって、可撓性絶縁フィルムからなる基材1aの表面に接続端子パターン2a、2b…が形成されている。3はLCDのガラス基板やプリント配線基板等の被接続基板であって、ガラス等の絶縁材からなる基材3aの表面に接続端子パターン4a、4b…が形成されている。5は異方導電性接着剤であって、接着性樹脂5a中に導電性粒子5bを分散させたものである。異方導電性接着剤5は接合領域6における可撓性回路基板1と被接続基板3間に介在し、両者を接着するとともに端子2a、4a間および2b、4b間を導通させるようになっている。 【0004】 図5(a)は接合前の状態を示す図4(a)のA-A断面図、(b)は接合中の状態を示すA-A断面図、(c)は実際の接合状態を示すA-A断面図であり、7はプレスヘッド、8はクッション用のラバーである。 【0005】 可撓性回路基板1および被接続基板3にはそれぞれ対向位置に接続端子パターン2a、2b…および4a、4b…が形成されているので、図4(a)に示すようにこれらを対向させた状態で、接合領域6における両者の中間に異方導電性接着剤5を介在させ、可撓性回路基板1側からラバー8を介してプレスヘッド7を矢印Y方向に前進させて加圧および加熱し、異方導電性接着剤5の接着性樹脂5aを硬化させて接合される。 【0006】 加圧、加熱により接続端子パターン2a、4a間と2b、4b間では接着性樹脂5aが流出して導電性粒子5bが接続端子パターン2aと4aまたは2bと4bに接触して導電性を確保する。接続端子パターン2a、2bおよび4a、4bが存在しない領域9、すなわち端子パターン2aまたは4aと2bまたは4b間では導電性粒子5bは接着性樹脂5a中に分散した状態で異方導電性接着剤5が硬化して基板1、3間に固着し、非導通状態で接着力を確保する。 【0007】 ところが図4(b)に図示された状態は理想的な状態であり、接続端子パターン2aまたは4aと2bまたは4bとの間隔が小さいときはこれに近い状態となり、導電性と接着性は確保されるが、上記間隔が大きいときは接着剤の流出により接着性を確保することが困難になりやすい。 【0008】 図5(b)はこのような場合の接合中の状態を示しており、パターンが存在しない領域9ではラバー8の弾性と被接続基板3の可撓性により被接続基板3が変形して異方導電性接着剤5が図4(a)に示す端部10a、10bから流出しやすい。このため接合後は図5(c)に示すように、パターンが存在しない領域9における接着剤の量が少なくなって、接着強度が小さくなる場合があるという問題点がある。 【0009】 また異方導電性接着剤5が端部10a、10bから流出する際、端部10a、10b付近で導電性粒子5bが架橋状態となって集合し、接着性樹脂5aのみが流出することがあり、導電性粒子5bが集合すると、接続端子パターン2a(4a)と2b(4b)間が短絡する場合があり、信頼性が低下することがあるという問題点がある。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、接続端子パターンの間隔が広い場合でも、導電性と接着強度を大きくすることができ、回路の短絡も生じない、可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器を得ることである。 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明は次の電気・電子機器である。 (1)異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。 (2)接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された上記(1)記載の電気・電子機器。 【0012】 被接続体となる電気・電子機器の被接続基板は間隔をおいて接続端子が形成されたものであればよく、例えばLCDのガラス基板やプリント配線基板などのプリント基板が一般的であるが、ICチップのような素子あるいはこれを保持するためのホルダなどでもよい。このような電気・電子機器に形成される接続端子としては、プリント基板の場合は接続端子パターンであるが素子、ホルダ等の場合はリードがそのまま接続端子となる。 【0013】 このような電気・電子機器の被接続基板に接続される可撓性回路基板としては、LCDの駆動回路のような電気・電子機器の付属回路を導体回路パターンとして形成した可撓性回路基板があげられ、電気・電子機器に接続して用いられるものである。このような可撓性回路基板は可撓性絶縁フィルムからなる基材の表面に電気・電子機器の接続端子に対応して、間隔をおいて接続端子パターンが形成される。 【0014】 基材となる可撓性絶縁フィルムは可撓性と絶縁性を有するフィルムであり、ポリイミド、ポリエステル、アラミド、ポリカーボネート等のフィルムが好ましいが、他のプラスチックその他の材質からなるフィルムでもよい。基材は10〜100μm、好ましくは15〜75μmの厚さのものが好ましい。 【0015】 このような基材の少なくとも一方の表面に導体回路パターンが形成されるが、この回路パターンの接続端子パターンを被接続体である電気・電子機器の接続端子に対応した位置に形成する。電気・電子機器の接続端子はその機器の形状、構造あるいは回路基板の設計上の点から端子間の間隔は一定ではなく、広い間隔の端子も形成される。従って可撓性回路基板に形成する接続端子もこれに対応して広い間隔を有するものを形成する。接続端子の幅は0.02〜1mm、好ましくは0.04〜0.7mmとされ、この幅が0.3mmを超える場合は後述のように接着剤収容凹部を形成するのが好ましい。 【0016】 接続端子の間隔が広くて0.3mmを超える場合、前述のように接合の際異方導電性接着剤が流出して接着強度が低下するので、本発明では0.3mmを超えるような間隔の広い接続端子パターン間にダミーパターンを形成する。ダミーパターンは接続端子パターンとほぼ同様の形状に形成されるが、導体回路パターンから独立して接続端子部またはその近辺にのみ形成されるもので、電気的接続には関与しない構成とされる。 【0017】 ダミーパターンの形状、幅等は任意とすることができるが、接着強度を確保するためには接続端子とほぼ同等の形状、大きさとするのが好ましい。接続端子パターンとダミーパターン間、および接続端子間またはダミーパターン間の間隔は0.3mm以下とする。接続端子間にダミーパターンを形成することにより接続端子とダミーパターン間の間隔が狭くなりすぎる場合はダミーパターンの幅を狭くすることができるが、間隔が広い場合は複数のダミーパターンを形成するのが好ましい。ダミーパターンの幅は0.04〜0.5mmとする。 【0018】 ダミーパターンは回路パターンおよび接続端子と同じ材料により、これらと同時に形成される。すなわち基材に形成される導体回路パターンは、端部に接続端子パターンを有するように、基材の少なくとも片面に複数の細条形に形成されるが、このとき接続端子間にダミーパターンを形成する。これらの導体パターンはメタライジングおよびメッキにより形成された導体層のエッチングにより形成されているのが好ましい。 【0019】 導体層を形成するためのメタライジングは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど、基材の表面に厚さ0.1〜0.5μmの金属薄膜を形成する方法である。これにより形成された薄膜上に電解メッキにより金属を1〜10μmの厚さで電着することにより導体層が形成される。導体としては銅が一般的であるが、銅合金、銀、アルミニウムなどの他の導体でもよい。 【0020】 導体層に導体回路パターン、接続端子パターンおよびダミーパターン等の導体パターンを形成するためのエッチングは、まず導体パターンに対応する形状のエッチングレジストを導体層に形成してエッチング液により余分な導体層を溶解する。エッチングレジストの形成は印刷法、写真法など任意の方法によることができる。エッチングはエッチングレジストを形成した基板をエッチング液に浸漬することにより余分な導体層を除去し、エッチングレジストに対応する形状の導体回路パターンを形成する。その後溶剤または強アルカリ液等と接触させて、エッチングレジストを除去すると、導体パターンが露出する。 【0021】 導体回路パターンおよび接続端子パターンは、その表面に電解半田メッキ、電解スズメッキ、またはニッケルメッキを施した上にさらに金メッキなどを施して、金属皮膜を形成することができ、これによりパターンの耐久性がより向上する。ダミーパターンにはこのような処理をする必要はないが、形成してもよい。こうして導体回路パターンを形成した基材に対し、接続端子部以外の部分の導体回路パターンを覆うように保護層を形成するのが好ましい。 【0022】 異方導電性接着剤は接着性樹脂好ましくは熱硬化性樹脂中に導電性粒子が分散した接着剤であり、一般的にはフィルム状に形成した異方導電性接着剤フィルムの形で使用される。このような異方導電性接着剤としては熱圧着前は導電性はないが、熱圧着により接続端子間では導電性粒子が圧着し、その他の部分では導電性粒子が分散した状態で熱硬化性樹脂が硬化して導電性と接着性を付与するものが使用される。 【0023】 接着性樹脂としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂が好ましいが、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合は、常温における製造、保存ならびに比較的低温(40〜100℃)による乾燥時には硬化反応が起きず、硬化温度における加熱加圧(熱圧着)により硬化反応が起きる熱活性潜在性硬化剤により硬化させるものが好ましい。 【0024】 導電性粒子としては、黒鉛粉末、銅、銀、ニッケル、錫、パラジウム、ハンダ等の金属粉末、ニッケル、金等によりメッキした樹脂、金属その他の粉末など導電性を有する任意の粉末が使用できる。この導電性粒子は粒径1〜50μm、好ましくは3〜20μmのものが使用できる。この異方導電性接着剤はフィルム状に成形して、異方導電性接着剤フィルムの形で使用される場合が多い。 これらの接着性樹脂および導電性粒子は適当な溶剤に分散または溶解させて異方導電性接着剤が形成される。この異方導電性接着剤はフィルム状に成形して、異方導電性接着剤フィルムの形で使用される場合が多い。 【0025】 本発明では可撓性回路基板の接続端子パターンを被接続体である電気・電子機器の被接続基板の接続端子に対向させるように、両者の接合領域を重ね、熱圧着することにより接続を行う。このとき両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続される。そして被接続体の接続端子と、可撓性回路基板の接続端子パターン間では樹脂が流出して導電性粒子が圧着して接続性が確保され、パターンのない領域では導電性粒子を分散した状態で樹脂が硬化して接着性を保つ。 【0026】 この場合接続端子パターンの間隔が広い部分にはダミーパターンが形成されているため、ラバーを介してプレスヘッドで加圧すると、ダミーパターンが基材の変形を抑制し、接続端子パターンとの間に接着剤保持空間を保ち、接着強度を高くすることができる。被接続体の接続端子がない分だけ被接続体と可撓性回路基板の間隔が狭くなるが、接着剤保持空間は形成でき、接着強度は高くなる。 【0027】 上記可撓性回路基板において、接続端子パターンの幅が広くなると接着強度が低下しやすいが、接続端子パターンに接着剤収容凹部を形成すると、接着剤を保持して接着強度を高くすることができる。接着剤収容凹部としては溝状、円形、角形など、任意の形状とすることができる。 【0028】 【発明の効果】 本発明によれば、可撓性回路基板の接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に幅0.04〜0.5mmのダミーパターンを形成し、接続端子パターン及びダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたので、接続端子パターンの間隔が広い場合でも、導電性と接着強度を大きくすることができ、回路の短絡も生じない、可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器が得られる。 【0029】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。 図1(a)は実施形態の電気・電子機器の可撓性回路基板の接続端子部の平面図、(b)は被接続体であるLCDのガラス基板に接続した状態を示すC-C断面図、(c)はD-D断面図であり、図4および図5と同一符号は同一または相当部分を示す。 【0030】 図1において、可撓性回路基板1は可撓性絶縁フィルムからなる基材1aの表面に導体回路パターン(図示せず)およびこれに接続する接続端子パターン2a、2bが形成されている。そしてこの接続端子パターン2a、2b間に、ダミーパターン11a、11b、11c…が形成されている。ダミーパターン11a、11b、11c…は導体回路パターンおよび接続端子パターン2a、2bと同じ材質により、エッチングにより同時に形成されるが、これらと電気的に接続しないように、独立した状態で形成される。 【0031】 被接続体である被接続基板3は図1と同様にガラス基板等の絶縁基材からなる基材3aの表面に接続端子パターン4a、4bが形成されている。 異方導電性接着剤5は接着性樹脂5a中に導電性粒子5bを分散させたものである。異方導電性接着剤5は接合領域6における可撓性回路基板1と被接続基板3間に介在し、両者を接着するとともに端子2a、4a間および2b、4b間を導通させるようになっている。 【0032】 上記の可撓性回路基板1は図5(a)、(b)の場合と同様に、被接続基板3の上に接合領域6を重ね、クッション用のラバー8を介してプレスヘッド7により加圧、加熱して熱圧着し、接続する。この場合可撓性回路基板1および被接続基板3にはそれぞれ対向位置に接続端子パターン2a、2b…および4a、4bが形成されているので、これらを対向させた状態で、接合領域6における両者の中間に異方導電性接続剤5を介在させ、可撓性回路基板1側からラバー8を介してプレスヘッド7を矢印Y方向に前進させて加圧および加熱し、異方導電性接着剤5の接着性樹脂5aを硬化させて接合させる。 【0033】 加圧、加熱により接続端子パターン2a、4a間と2b、4b間では接着性樹脂5aが流出して導電性粒子5bが接続端子パターン2aと4aまたは2bと4bに接触して導電性を確保する。接続端子パターン2a、2bおよび4a、4bが存在しない領域9、すなわち接続端子パターン2aまたは4aと2bまたは4b間では導電性粒子5bは接着性樹脂5a中に分散した状態で異方導電性接着剤5が硬化して基板1、3間に固着し、非導通状態で接着力を確保する。 【0034】 この場合接続端子パターン2a、2b間にダミーパターン11a、11b、11cが形成されているため、ダミーパターン11a、11b、11cが基材1aの変形を抑制し、パターンが存在しない領域9に接着剤保持空間12を確保し、これにより接着性樹脂5aの流出を抑制して接着強度を大きくすることができる。ダミーパターン11a、11b、11cの対向する被接続基板3の部分には接続端子パターン4a、4bが存在しないため、その分だけ基材1aが変形するが、必要な接着剤保持空間には維持することが可能である。 【0035】 ダミーパターン11a、11b、11c上に保存被膜等の被膜を形成しておくと、ダミーパターンの厚さが厚くなり、接着剤保持空間12を大きくして接着強度を高くすることができる。 【0036】 また接着剤保持空間12の形成により、接着剤の流出が少なくなるため、図4(a)に示すような端部10a、10bにおける導電性粒子5bの集合がなくなり、回路の短絡は防止される。 【0037】 図2(a)は他の実施形態による電気・電子機器の可撓性回路基板の平面図、(b)は接合状態を示すE-E断面図である。この実施形態では、接合領域6における可撓性回路基板1の接続端子パターン2a、2bに接着剤収容凹部13a、13bが形成されている。この接着剤収容凹部13a、13bは接続端子パターン2a、2bを接合領域6において分割した形状になっているが、円形または角形その他の形状の凹部であってもよい。 【0038】 上記の可撓性回路基板1も図1のものと同様に被接続基板3に接合されるが、接着剤収容凹部13a、13bが形成されているため、この部分に異方導電性接着剤5が保持され、接続端子パターン4a、4bの幅が広い場合でも接着強度を大きくすることができる。 【0039】 【実施例】 以下、本発明の実施例および比較例について説明する。 実施例1 図1に示す可撓性回路基板1として、厚さ25μmのポリイミドからなる基材1aの上下両側の表面に厚さ8μmの銅パターンを形成し、その上にニッケル-金メッキを行い、導体回路パターン、接続端子パターンおよびダミーパターンを形成した。被接続基板3としてLCD用のガラス基板3aに接続端子パターン4a、4bとしてITOパターンを形成した基板を使用し、上記の可撓性回路基板1を接続した。異方導電性接着剤としてはエポキシ樹脂に導電性粒子としてニッケル・金メッキ被覆樹脂粒子(直径5μm)が分散した熱硬化タイプの接着剤を用いた。 【0040】 上記の可撓性回路基板1および被接続基板3の接続端子パターン2a、2b、4a、4bの幅は0.45mm、これらの端子パターン間の間隔は0.45mm(すなわちパターンピッチ0.9mm)で、可撓性回路基板1の上記間隔の中央に幅0.15mmのダミーパターン11a、11b、11cを形成し、ラバー8としてシリコンラバーを使用し、180℃-30kgf/cm2-10秒の圧着条件で圧着した。 【0041】 圧着直後の接続強度と60℃-90%RH-500時間でエージング後の接着強度およびショートの発生回数を測定した結果を表1に示す。接着強度は接続部を引張り速度が50mm/分にて90°方向に引剥した時の強度を1cm幅当りに換算して求めた。ショートの発生はパターン100本における隣接パターン間のショートした部分の個数を分数で表した。 【0042】 実施例2 実施例1において図2に示すように可撓性回路基板1の接続端子パターン2a、2bの中央部に幅0.15mmの接着剤収容凹部13a、13bを形成し、同様に測定した結果を表1に示す。 【0043】 比較例1 実施例1において、ダミーパターンを形成しない場合につき同様に測定した結果を表1に示す。 【0044】 比較例2 実施例2において、ダミーパターンを形成しない場合につき同様に測定した結果を表1に示す。 【0045】 【表1】 ![]() 【0046】 実施例3 実施例1において、被接続基板3として厚さ1mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂基板の両面に厚さ35μmの銅パターンを形成し、ニッケル-金メッキを施した基板を用いて同様に試験した。可撓性回路基板1および被接続基板3の接続端子パターンの幅が0.6mm、間隔が0.6mm(すなわちパターンピッチ1.2mm)であり、間隔の中央部に幅0.2mmのダミーパターンを形成し、同様に測定した結果を表2に示す。 【0047】 実施例4 実施例3において、可撓性回路基板1の接続端子パターンの中央部に幅0.2mmの接着剤収容凹部を形成し、同様に測定した結果を表2に示す。 【0048】 比較例3 実施例3において、ダミーパターンを形成しない場合につき、同様に測定した結果を表2に示す。 【0049】 比較例4 実施例4において、ダミーパターンを形成しない場合につき、同様に測定した結果を表2に示す。 【0050】 【表2】 ![]() 【0051】 表1および表2の結果より、ダミーパターンを形成することにより、初期およびエージング後の接着強度が大きくなり、接着剤保持空間を形成することにより、その傾向が大きくなり、いずれの場合もショートの発生がなくなることがわかる。 【0052】 参考例1 比較例1において、パターン間の間隔を変えた場合の接着強度(ピール強度)の変化を図3に示す。図3より接着強度800gf/cmを得るためには、パターン間の間隔が0.3mm以下であればよいことがわかる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 (a)は実施形態の電気・電子機器の可撓性回路基板の平面図、(b)は接続状態を示すC-C断面図、(c)はD-D断面図である。 【図2】 (a)は他の実施形態の板の平面図、(b)は接続状態を示すE-E断面図である。 【図3】 参考例1の試験結果を示すグラフである。 【図4】 (a)は従来の可撓性回路基板の平面図、(b)は理想的な接続状態を示すA-A断面図、(c)はC-C断面図である。 【図5】 (a)は接合前の状態を示す図4(a)のA-A断面図、(b)は接合中の状態を示すA-A断面図、(c)は実際の接合状態を示すA-A断面図である。 【符号の説明】 1 可撓性回路基板 1a 基材 2a、2b、4a、4b 接続端子パターン 3 被接続基板 3a 基材 5 異方導電性接着剤 5a 接着性樹脂 5b 導電性粒子 6 接合領域 7 プレスヘッド 8 ラバー 9 パターンが存在しない領域 10a、10b 端部 11a、11b、11c ダミーパターン 12 接着剤保持空間 13a、13b 接着剤収容凹部 |
訂正の要旨 |
(3.1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1に係る記載を、 『 【請求項1】 異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気・電子機器であって、該可撓性回路基板が 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。』 と訂正する。 (3.2)訂正事項b 明細書の【0011】を 『 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明は次の電気・電子機器である。 (1)異方導電性接着剤を基板上に有する可撓性回路基板と、電気・電子機器の被接続基板とが、両基板間に実質的にすき間を形成しないように異方導電性接着剤が保持されて接続されてなる電気電子機器であって、該可撓性回路基板が、 可撓性絶縁フィルムからなる基材と、 電気・電子機器の被接続基板に形成された接続端子に対応して、基材の表面に間隔をおいて形成された接続端子パターンと、 上記接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に形成された幅0.04〜0.5mmのダミーパターンとを有し、 前記接続端子パターンおよびダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたことを特徴とする電気・電子機器。 (2)接続端子パターンに接着剤収容凹部が形成された上記(1)記載の電気・電子機器。』 と訂正する。 (3.3)訂正事項c 明細書の【0016】を 『 【0016】 接続端子の間隔が広くて0.3mmを超える場合、前述のように接合の際異方導電性接着剤が流出して接着強度が低下するので、本発明では0.3mmを超えるような間隔の広い接続端子パターン間にダミーパターンを形成する。ダミーパターンは接続端子パターンとほぼ同様の形状に形成されるが、導体回路パターンから独立して接続端子部またはその近辺にのみ形成されるもので、電気的接続には関与しない構成とされる。』 と訂正する。 (3.4)訂正事項d 明細書の【0017】を 『 【0017】 ダミーパターンの形状、幅等は任意とすることができるが、接着強度を確保するためには接続端子とほぼ同等の形状、大きさとするのが好ましい。接続端子パターンとダミーパターン間、および接続端子間またはダミーパターン間の間隔は0.3mm以下とする。接続端子間にダミーパターンを形成することにより接続端子とダミーパターン間の間隔が狭くなりすぎる場合はダミーパターンの幅を狭くすることができるが、間隔が広い場合は複数のダミーパターンを形成するのが好ましい。ダミーパターンの幅は0.04〜0.5mmとする。』 と訂正する。 (3.5)訂正事項e 明細書の【0028】を 『 【0028】 【発明の効果】 本発明によれば、可撓性回路基板の接続端子パターン間の間隔が0.3mmを超える場合に、その接続端子パターン間に幅0.04〜0.5mmのダミーパターンを形成し、接続端子パターン及びダミーパターン間に形成される間隔を0.3mm以下としたので、接続端子パターンの間隔が広い場合でも、導電性と接着強度を大きくすることができ、回路の短絡も生じない、可撓性回路基板を被接続基板に接続した電気・電子機器が得られる。』 と訂正する。 |
異議決定日 | 2003-03-27 |
出願番号 | 特願平9-280781 |
審決分類 |
P
1
651・
832-
YA
(H05K)
P 1 651・ 121- YA (H05K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 林 茂樹 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 久雄 尾崎 和寛 |
登録日 | 2001-08-10 |
登録番号 | 特許第3219140号(P3219140) |
権利者 | ソニーケミカル株式会社 |
発明の名称 | 電気・電子機器 |
代理人 | 柳原 成 |
代理人 | 柳原 成 |