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審決分類 |
審判 全部申し立て 特39条先願 C21D |
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管理番号 | 1079706 |
異議申立番号 | 異議2002-71519 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-03-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-06-17 |
確定日 | 2003-06-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3238544号「非調質熱間鍛造部品の製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3238544号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件発明 本件特許の請求項1〜3に係る発明(以下、請求項1〜3に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」〜「本件発明3」という。)は、明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】重量比にして C :0.10〜0.35% Si:0.005〜1.50% Mn:0.40〜1.30% S :0.01〜0.10% Al:0.0005〜0.050% Ti:0.003〜0.050% N :0.0030〜0.0200% V :0.20〜0.70%を含有し 残部はFeならびに不純物元素からなる組成の鋼材に、800〜1000℃の温度において鍛造を施し、室温まで冷却して得られた部材が、金属組織におけるパーライト組織の組織率fが含有炭素量C(%)に対して 1.05C+0.3≧f≧1.05C-0.1であり、 引張強度70〜90kgf/mm2 、20℃での衝撃値4kgf-m/cm2 以上を有してなることを特徴とする非調質熱間鍛造部品の製造方法。 【請求項2】成分がさらに Cr:0.05〜1.00% Mo:0.05〜0.50%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の非調質熱間鍛造部品の製造方法。 【請求項3】成分がさらに Pb:0.05〜0.30% Ca:0.0005〜0.0050%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の非調質熱間鍛造部品の製造方法。」 2.先願発明及び引用刊行物記載の発明 当審が通知した取消理由で引用した、先願1に係る特願平5-211755号(特許第2950713号公報、甲第1号証)の請求項1〜4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1、2及び4に係る発明(以下、先願1に係る請求項1、2及び4に係る発明をそれぞれ「先願発明1」、「先願発明2」、「先願発明4」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 重量比にして C :0.10〜0.50% Si:0.005〜2.00% Mn:0.40〜2.00% S :0.01〜0.10% Al:0.0005〜0.050% Ti:0.003〜0.050% N :0.0080〜0.0200% V :0.20〜0.70%を含有し残部はFeならびに不純物元素からなる組成の鋼材に、熱間鍛造を施し室温まで冷却した後の金属組織においてパーライト組織の組織率fが含有炭素量C(%)に対して1.05C+0.3≧f≧1.05C-0.1であることを特徴とする熱間鍛造用非調質鋼。 【請求項2】 成分がさらに Cr:0.02〜1.50% Mo:0.02〜1.00%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の熱間鍛造用非調質鋼。 【請求項4】 成分がさらに Pb:0.05〜0.30% Ca:0.0005〜0.010%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、または請求項2、または請求項3記載の熱間鍛造用非調質鋼。」 また、当審が通知した取消理由で引用した刊行物2(日本鉄鋼協会編「第3版 鉄鋼便覧 第V巻 鋳造・鍛造・粉末冶金」(昭和57年10月1日)丸善p.377〜380、甲第2号証)には、 「鍛造温度は表12・3によるが、高すぎると過熱やバーニングを起し、過熱で粗大化した結晶粒は鍛造品には致命的な品質欠陥となる。最低の鍛造温度はその材質の再結晶温度より少し高い温度(中低炭素鋼で850〜900℃)で考えておけばよい。」(第380頁右欄第15〜19行)と記載され、また、第377頁表12・3には、0.2%C鋼の最高鍛造温度が1320℃であることが記載され、 同刊行物3(特開昭60-75517号公報、甲第3号証)には、 「(1)重量%で C 0.20〜0.60% Si 0.15〜1.0% Mn 0.60〜2.0% V 0.03〜0.30% S 0.12%以下 Al 0.015〜0.060% N 0.005〜0.020%、及び 残部が実質的に鉄及び不可避的不純物よりなる鋼を素材鋼として、750〜1100℃の温度で鍛造を開始し、750〜1050℃の温度で鍛造を終了した後、・・・冷却することを特徴とする非調質鍛鋼品の製造方法。 (2)重量%で C 0.20〜0.60% Si 0.15〜1.0% Mn 0.60〜2.0% V 0.03〜0.30% S 0.12%以下 Al 0.015〜0.060% N 0.005〜0.020%、 Cr 1.0%以下、及び 残部が実質的に鉄及び不可避的不純物よりなる鋼を素材鋼として、750〜1100℃の温度で鍛造を開始し、750〜1050℃の温度で鍛造を終了した後、・・・冷却することを特徴とする非調質鍛鋼品の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1、2)と記載され、 同刊行物4(特開昭61-264129号公報、甲第4号証)には、 「重量%で C 0.25〜0.60%、 Si 0.10〜1.00%、 Mn 1.00〜2.00%及び Cr 0.30〜1.00% を含有する鋼をAc3変態点以上であって、且つ、1050℃以下の温度に加熱して熱間鍛造を行なった後、冷却して、・・・フェライト・パーライト組織とすることを特徴とする高強度高靭性非調質熱間鍛造品の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1)と記載されている。 3.対比・判断 本件発明1と先願発明1を対比する。 先願発明1の明細書段落0052、第2表(その1)の「機械的性質」、「引張強度」の欄の記載からすると、先願発明1の引張強度(kgf/mm2)は、84.8、85.4、80、9、81.3、87.8であり、先願発明1は、本件発明1と鋼の引張強度が重複するから、 両者は、C 、Si、Mn、S 、Al、Ti、N 及びVの含有量が重複する組成の鋼材に、鍛造を施し、室温まで冷却して得られた部材が、金属組織におけるパーライト組織の組織率fが含有炭素量C(%)に対して 1.05C+0.3≧f≧1.05C-0.1であり、引張強度が重複する非調質熱間鍛造部品である点で一致し、本件発明1は、800〜1000℃の温度において鍛造を施し、非調質熱間鍛造部品の20℃での衝撃値が4kgf-m/cm2 以上であるのに対し、先願発明1は、鍛造温度及び熱間鍛造用非調質鋼の20℃での衝撃値が限定されていない点(以下、「相違点1」という。)及び本件発明1は、非調質熱間鍛造部品の製造方法であるのに対し、先願発明1は、熱間鍛造用非調質鋼それ自体であり、非調質熱間鍛造部品の製造方法でない点(以下、「相違点2」という。)で、相違する。 相違点1を検討する。 本件特許明細書段落0008の記載によると、本件発明1は、800〜1000℃の温度域での熱間鍛造により微細フェライト・パーライト組織を実現し、高耐久比と靭性の両立を可能としたものである。 これに対し、先願1の明細書段落0033の記載からすると、先願発明1は、1050〜1200の温度で熱間鍛造を行うものであり、本件発明1のように、微細フェライト・パーライト組織を実現し、高耐久比と靭性の両立を可能とするものでないから、先願発明1は、熱間鍛造温度が本件発明1と相違するものである。 刊行物2には、0.2%C鋼の最高鍛造温度が1320℃であり、最低の鍛造温度はその材質の再結晶温度より少し高い温度(中低炭素鋼で850〜900℃)であることが記載されており、刊行物2に記載のものは、本件発明1の鍛造温度を形式的に包含するものであるが、刊行物2に記載のものは、所定の鍛造温度での熱間鍛造により微細フェライト・パーライト組織を実現し、高耐久比と靭性の両立を可能としたものでない。 刊行物3、4には、非調質熱間鍛造品の製造において、本件発明1と重複する熱間鍛造温度で鋼を熱間鍛造することが記載されているが、刊行物3、4に記載のものは、鋼の組成が本件発明1と相違する特定の鋼組成の鋼を素材とするものであり、また、所定の鍛造温度での熱間鍛造により微細フェライト・パーライト組織を実現し、高耐久比と靭性の両立を可能としたものでない。 以上のことから、刊行物2〜4に記載のものを併せ考慮しても、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1が先願発明1と実質的に同一であるとすることができない。 次に、本件発明2、3は、それぞれ、本件発明1を引用し、鋼の組成を限定するものであり、本件発明2は、先願発明2と鋼の組成を重複し、また、本件発明3は、先願発明4と鋼の組成を重複するものであるが、本件発明1と同様の理由で、本件発明2は、先願発明2と実質的に同一であるとすることができず、更に、本件発明3は、先願発明4と実質的に同一であるとすることができない。 4.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2003-05-28 |
出願番号 | 特願平5-225533 |
審決分類 |
P
1
651・
4-
Y
(C21D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小川 武 |
特許庁審判長 |
三浦 悟 |
特許庁審判官 |
平塚 義三 綿谷 晶廣 |
登録日 | 2001-10-05 |
登録番号 | 特許第3238544号(P3238544) |
権利者 | 新日本製鐵株式会社 |
発明の名称 | 非調質熱間鍛造部品の製造方法 |
代理人 | 高野 弘晋 |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 今井 毅 |
代理人 | 水野 勝文 |
代理人 | 小花 弘路 |