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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) F21P
管理番号 1079800
判定請求番号 判定2003-60011  
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1998-02-13 
種別 判定 
判定請求日 2003-01-23 
確定日 2003-07-25 
事件の表示 上記当事者の特許第3012200号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びイ号説明書に示す「石製灯篭用扉」は、特許第3012200号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、判定請求人が製造販売を予定するところの「イ号図面及びイ号説明書」並びに「イ号製品の説明」に示す「石製灯篭用扉」(以下、「イ号物件」という。)が、同判定請求人が特許権者である特許第3012200号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。
なお、請求項4に係る発明(「石製灯籠」の発明)についての判定請求は、取り下げられた(期日平成15年5月22日の口頭審尋調書参照)。

2.本件発明
本件発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。
(A)石製灯籠の開口部を開閉するための石製灯籠用扉であって、
(B)前記石製灯籠に対して固定可能な固定部と、
(C)蝶番によって前記固定部に対して回動自在に取り付けられた金属製の扉本体と、
(D)前記扉本体に設けられた窓部に取り付けられたガラスとを備え、
(E)前記固定部が前記石製灯籠に固定されると、前記扉本体および前記ガラスが一体的に前記開口部に対して開閉自在となっている
(F)ことを特徴とする石製灯籠用扉。

3.イ号物件
請求人が提出した判定請求書の「6 請求の理由」における平成15年6月18日付け回答書により訂正された「(4)イ号製品の説明」(同回答書第2頁7行〜第3頁7行参照)および同請求書に添付され、同じく同回答書により訂正された「イ号図面並びに説明書」の各記載を参考にすると、イ号物件は、次の(a)〜(f)の構成からなるものとするのが相当と認める。
(a)石製灯篭2の円筒部22の正面側に設けられた開口部23に対して装着可能で、しかも円筒部22への装着状態で石製灯篭2の開口部23を開閉するための石製灯篭用扉1であって、
(b)開口部23に嵌め込み可能な形状に仕上げられたステンレス製部材で形成されており、
その左右側面部を石製灯篭2側に折り曲げてなる折曲部11b、11bを石製灯篭2の表面に当接させて背面側(図4の左手側)への移動を規制し、
また、その上方部11aに取り付けられた略L字状のクリップ部111を、設曲部11b、11bが石製灯篭2の表面に当接した状態のまま、石製灯篭2の一部(開口上方周縁部22a)に係合することで上方側での前後方向(図4の左右方向)の移動および上方移動を規制し、
さらに、その下方部11cに円筒部22の開口下方周縁部22bと係合可能な係合部112が取り付けられ、この係合部112を石製灯篭2の他方部(開口下方周縁部22b)と係合することで下方移動を規制するとともに折曲部11b、11bが石製灯篭2の表面に当接した状態のままネジ部113の先端を円筒部22の内周面に押し付けることによって石製灯篭2に固定される固定部11と、
(c)固定部11の前面側に取り付けられた蝶番121によって固定部11に対して水平方向に開閉自在に設けられたステンレス製の扉本体12と、
(d)扉本体12の略中央部に設けられた1つの窓部122を塞ぐように、扉本体12の上部に固着された板状固定板の係止爪部123によって扉本体12に固定されたガラス13とを備え、
(e)クリップ部111を開口部23を介して石製灯篭2の内部に挿入し、石製灯篭2の内周面を挟み込むのに続いて、開口部23を介して固定部12の係合部112を石製灯篭2の内部に挿入し、係合部112を石製灯篭2の側面壁部と係合させた後、ネジ部113の先端を石製灯篭2の内周面に押し付けて固定部11を石製灯篭2に強固に固定すると、扉本体12およびガラス13が一体的に開口部23に対して開閉自在となっている
(f)ことを特徴とする石製灯篭用扉1。
なお、上記回答書中には、「石製灯篭」と「石製灯籠」という表現が混在しているので、「石製灯篭」という用語に統一して認定した。

4.対比・判断
そこで、本件発明とイ号物件とを対比し、その充足関係につき検討する。
(1)イ号物件は本件発明の構成要件(A)を充足するか否かについて
イ号物件の構成(a)における「石製灯篭2」の正面側に設けられた「開口部23」を開閉するための石製灯篭用扉は、本件発明の構成要件(A)における「石製灯籠の開口部を開閉するための石製灯籠用扉」に相当することは明らかである。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件(A)を充足する。
(2)イ号物件は本件発明の構成要件(B)を充足するか否かについて
本件発明の構成要件(B)は、「石製灯籠に対して固定可能な固定部」と単に規定されているに止まることから、イ号物件の構成(b)における「開口部23に嵌め込み可能な形状に仕上げられたステンレス製部材」で形成されるとともに、「折曲部11b、11b」、「係合部112」および「ネジ部113」を用いて「石製灯篭2に固定される固定部11」は、形式的にみて、本件発明の構成要件(B)を充足しているといえる。
しかしながら、イ号物件の構成(b)である固定部11の具体的構造は、本件発明の実施例に示された固定部の具体的構造とは明らかに異なるものといえるから、イ号物件の固定部11の構造は、本件発明の明細書及び図面に開示された範囲内のものであるということはできない。
そこで、本件発明における構成要件(B)(「石製灯籠に対して固定可能な固定部」)の技術的意義につき検討することにより、当該技術的意義からみても、イ号物件の構成(b)が、本件発明の構成要件(B)を実質的に充足するといえるか否かにつき検討する。
本件発明の明細書を参酌すると、次の事項が記載されている。
(イ)【発明が解決しようとする課題】の欄(段落【0003】参照)
「従来の石製灯籠は、開閉扉が合成樹脂製であるために、長期使用すると、透明な合成樹脂の色が白色に変化してしまうという問題があった。また、開閉扉が合成樹脂製であるために灯籠内部に設置されたロウソクの火によって溶けてしまうことがあるという問題があった。しかも、開閉扉が合成樹脂製であり扉自体が軽量であるために、風によって灯籠から外れて飛散して紛失してしまうことが多いという問題があった。本発明の課題は、上記従来の問題を解消することにあり、扉の色が長期使用しても変化することがなく、更に、扉が灯籠内部のロウソクの火によって溶けることがなく、しかも、扉が風によって飛散して紛失することを防ぐことができる石製灯籠と石製灯籠用扉を提供することにある。」
(ロ)【発明の効果】の欄(段落【0016】参照)
「請求項1にかかる石製灯籠用扉によれば、扉本体が金属で形成されるとともに、扉本体の窓部にガラスを取り付けているので、長期使用しても扉の色が変化することがなく、更に、ロウソクの火によって扉が溶けることがなく、しかも、このように構成された扉は、従来の合成樹脂製扉に比べて十分な重量を有していることから風によって飛散して紛失するといった問題は生じない。更に、扉本体を蝶番によって水平あるいは垂直方向に回動自在としたので、石製灯籠の開口部に対する扉本体の開閉構造を簡素化することができ、扉本体を開閉し易くなっている。」
上記記載事項(イ)及び(ロ)によれば、本件発明が、「金属製の扉本体」を採用したのは「扉が灯籠内部のロウソクの火によって溶けることがなく、しかも、扉が風によって飛散して紛失することを防ぐことができる」とするためであり、また、このような「従来の合成樹脂製扉に比べて十分な重量を有している」「扉本体を蝶番によって水平あるいは垂直方向に回動自在」としたのは「石製灯籠の開口部に対する扉本体の開閉構造を簡素化することができ、扉本体を開閉し易く」するためであると解される。
ところで、判定請求人が提出した甲第5号証(特開昭53-89282号公報)を参酌すると、長板やボルトを用いて花立石に固定するものであって、その中にローソク立てが設けられた燈明台に開閉自在に枢着した金属枠式透明板を採用すること、すなわち、燈明台に開閉自在に枢着した金属式扉を用いることは、本件発明の出願日前に当業者において知られていたことと解される。
そして、上記甲第5号証に開示された燈明台は、「金属枠式透明板」を採用していることから本件発明が奏するところの上記「扉が灯籠内部のロウソクの火によって溶けることがなく、しかも、扉が風によって飛散して紛失することを防ぐことができる」という効果を奏し、また、「燈明台に開閉自在に枢着した金属式扉」を採用していることから、本件発明が奏するところの上記「扉本体を開閉し易く」するという効果をも奏するものといえる。
してみると、本件発明の技術的意義は、合成樹脂製扉に比べて十分な重量を有している金属製の扉本体を採用し、該扉本体を蝶番により開閉自在としたに止まらず、その扉本体の石製灯籠への固定手段として、十分な重量を有している金属製の扉本体を強固に固定可能、すなわち、固定自在とする固定部を採用することにより、「石製灯籠の開口部に対する扉本体の開閉構造を簡素化することができ」たことにあるといえるから、本件発明における構成要件(B)(「石製灯籠に対して固定可能な固定部」)の技術的意義は、石製灯籠に対して、十分な重量を有している金属製の扉本体を強固に固定可能な構成、すなわち、固定自在とする構成を備えていることといえる。
そして、イ号物件の構成(b)における「開口部23に嵌め込み可能な形状に仕上げられたステンレス製部材」で形成されるとともに、「折曲部11b、11b」、「係合部112」および「ネジ部113」を用いて「石製灯篭2に固定される固定部11」は、石製灯籠に対して、十分な重量を有しているステンレス製の扉本体12を強固に固定可能、すなわち、固定自在とできる固定構造であるといえるから、その技術的意義からみても、本件発明の構成要件(B)における「石製灯籠に対して固定可能な固定部」に相当するものということができる。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件(B)を充足する。
(3)イ号物件は本件発明の構成要件(C)を充足するか否かについて
イ号物件の構成(c)における「ステンレス製の扉本体12」及び「開閉自在」が、本件発明の構成要件(C)における「金属製の扉本体」及び「回動自在」に、それぞれ相当することは明らかである。
(ちなみに、本件発明の明細書の段落【0005】及び【0012】には、本件発明における扉本体を「ステンレス等の金属」で形成することが実施例として開示されている。)
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件(C)を充足する。
(4)イ号物件は本件発明の構成要件(D)を充足するか否かについて
イ号物件の構成(d)における「扉本体12の略中央部に設けられた1つの窓部122」及び窓部122を塞ぐように「扉本体12に固定されたガラス13」が、本件発明の構成要件(D)における「扉本体に設けられた窓部」及び該「窓部に取り付けられたガラス」に、それぞれ相当することは明らかである。
(ちなみに、本件発明の明細書の段落【0015】には、本件発明における窓部を「1つ」設けることが例示されている。)
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件(D)を充足する。
(5)イ号物件は本件発明の構成要件(E)を充足するか否かについて
上記(3)で説示したとおり、イ号物件の構成(e)におけるステンレス製の「扉本体12」が、本件発明の構成要件(E)における「金属製の扉本体」に相当することは明らかであり、さらに、イ号物件が「固定部11を石製灯篭2に強固に固定すると、扉本体12およびガラス13が一体的に開口部23に対して」蝶番121により開閉自在、すなわち、蝶番121により回動自在となっている構成を備えていることも明らかである。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件(E)を充足する。
(6)イ号物件は本件発明の構成要件(F)を充足するか否かについて
イ号物件の構成(f)における「石製灯篭用扉1」が、本件発明の構成要件(F)における「石製灯籠用扉」と同じ物品であることは明らかである。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件(F)を充足する。
(7)まとめ
以上検討したことから、均等の要件につき検討するまでもなく、イ号物件は、本件発明の構成要件(A)ないし(F)の全ての構成要件を充足するといえる。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2003-07-14 
出願番号 特願平8-213223
審決分類 P 1 2・ 1- YA (F21P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 和泉 等
藤原 直欣
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3012200号(P3012200)
発明の名称 石製灯籠及び石製灯籠用扉  
代理人 振角 正一  
代理人 振角 正一  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 梁瀬 右司  

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