ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60J |
---|---|
管理番号 | 1080677 |
審判番号 | 不服2001-3915 |
総通号数 | 45 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-12-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-03-15 |
確定日 | 2003-07-18 |
事件の表示 | 平成4年特許願第4782号「車両用構造材」拒絶査定に対する審判事件[平成5年12月14日出願公開、特開平5-330341]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成4年1月14日の出願(国内優先による優先権主張:平成3年8月30日、日本)であって、本願の請求項1,2に係る発明は、平成13年4月16日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 【請求項1】 内部に空間を有する、車輌用のドア本体と、前記空間内に配置されるとともに、内径が10mm〜100mmでありかつ肉厚が4mm〜50mmの複数個の架橋型ポリオレフィン系樹脂発泡体製筒状体が集合してなる衝撃吸収材とを備え、前記衝撃吸収材は、各前記樹脂発泡体製筒状体の軸線方向が前記ドア本体の厚み方向と一致するよう前記筒状体同士が一体化されて前記空間内に配置されている、車輌用構造材。 (以下、本願発明という) 2.引用例 第1引用例:特開昭57-69129号公報 第2引用例:特公昭54-37188号公報 第3引用例:特公昭57-7173号公報 第4引用例:特開昭51-31426号公報 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である第1引用例には、以下の事項が記載されている。 (1)「本発明は自動車のバンパー等に利用されるエネルギー吸収要素に関し更に詳しくは、エネルギーの吸収効率に特に優れた吸収要素に関する。」 (第1頁左欄の17〜19行) (2)「弾性体より成り、力の方向と平行または平行に近い柱面およびその柱面に囲まれた1個または複数の空間を持ち、・・・セル構造体より成るエネルギー吸収要素。」及び「前記セル構造体が複数の薄肉の円柱または円錐台とそれを連結するリブより成る・・・エネルギー吸収要素。」 (第1頁左欄の特許請求の範囲) (3)「本発明で言う弾性体とは・・・プラスチック、熱可塑性エラストマーが利用できる。その中では特にポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂等のエチレン系ポリマーが好適である。」 (第2頁左上欄の14〜19行) (4)「エネルギー吸収要素に使用する構造体としては、衝突等の力の方向に平行もしくは平行に近い柱面とその柱面に囲まれた空間を持つことが重要である。柱面の形状は平面でも円筒でもその他任意の曲面あるいはそれらの組み合わせであってもよい。その中では複数の円筒を平面のリブで連絡した形状が座屈の安定性に特に優れている。」 (第2頁左上欄の19行〜同頁右上欄の6行) (5)「柱面の肉厚をt、柱面に囲まれた空間の直径をDとするとt/Dは0.05以上0.15以下が望まれる。」 (第2頁右上欄の10〜13行) (6)「この柱面体1は第2図に示すように厚みtはほぼ一定であるが抜き勾配を考えて一端部の内径D1が他端部の内径D2より大きく作られている。一例として内径D1は29mmであり、内径D2は26mmそして厚みtは3mmである。」 (第2頁右下欄の11〜16行) (7)「実施の態様1 高圧法ポリエチレンを用いて、第1図および第2図で示されるような6本の円筒をリブで結合したセル構造体を射出成形した。」 (第3頁左上欄の8〜12行) よって、第1,2図と共に前記記載事項(1)〜(7)をみると、第1引用例には、「内部に空間を有する、車輌用のバンパー等と、前記空間内に配置されるとともに、複数個のエチレン系ポリマー(ポリオレフィン系樹脂である)から成る柱面体が集合してなるエネルギー吸収要素とを備え、前記エネルギー吸収要素は、各前記柱面体の柱面が衝突等の力の方向に平行もしくは平行に近い柱面となるようにして前記柱面体同士が一体化されて前記空間内に配置されている、車輌用バンパー(車輌用構造材)」に関する発明が記載されているものと認められる。 また、同じく第2引用例には、以下の事項が記載されている。 (8)「本発明はポリオレフィン樹脂と金属粉末および/または無機物との新規ポリオレフィン樹脂組成物の発泡体の製造法に関するものである。・・・・発泡させることからなる架橋構造を有する発泡体の製造方法に関するものである。一般にポリオレフィン樹脂発泡体は軽量で安価な上、保温性、緩衝性などの長所をかねそなえているため、近年、緩衝材、・・・・など広く用途開発がすすめられている。」 (第1頁左欄の25〜36行) (9)「本発明者らは均一な発泡性をもち・・・架橋構造をもつポリオレフィン樹脂組成物をうる目的で・・・」 (第1頁右欄の25〜28行) (10)「架橋構造をもつ発泡体を製造することにある。」 (第1頁右欄の36〜37行) よって、前記記載事項(8)〜(10)をみると、第2引用例には、概ね、緩衝材として架橋構造を有するポリオレフィン樹脂発泡体を用いることができることが記載されているものと認められる。 また、同じく第3引用例には、概ね、ポリオレフィン発泡体に関するものであること、従来ポリオレフィン発泡体(例えばポリエチレン発泡体)としては、架橋型発泡体と、押出発泡体とがあること、用途としてはクッション材として有用であること、が記載されているものと認められる。 更に、同じく第4引用例には、概ね、自動車のバンパ内空間(Fig3)に適用される緩衝用蜂巣状分区体(Fig1,2)はポリエチレンのような可塑性材料から構成されること、蜂巣状分区体は衝撃側2に実質的に直角の方向からくる衝撃を吸収するように企図されていること、衝撃を受けると蜂巣状分区体は変形し、この変形は案内面3,4の凹面であるため常に蜂巣状分区体の中央部に向かって偏る(Fig4)こと、蜂巣状分区体はその隔壁12の延びている方向がバンパ本体の厚み方向と一致するようバンパ内空間に配置されている(Fig3)こと、が記載されているものと認められる。 3.対比、当審の判断 本願発明と第1引用例に記載された発明(以下、第1引用発明という)とを対比すると、本願発明の「衝撃吸収材」及び「筒状体」が、それぞれ、第1引用発明の「エネルギー吸収要素」及び「柱面体」に相当するから、両者は、『 内部に空間を有する、車輌用の構造材と、前記空間内に配置されるとともに、複数個のポリオレフィン系樹脂製筒状体が集合してなる衝撃吸収材とを備え、前記衝撃吸収材は、前記筒状体同士が一体化されて前記空間内に配置されている車輌用構造材 』 である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 (相違点1) 車輌用の構造材が、本願発明ではドアであるのに対して、第1引用発明ではバンパである点 (相違点2) 衝撃吸収材を構成する筒状体が、本願発明では架橋型ポリオレフィン系樹脂発泡体製筒状体であるのに対して、第1引用発明ではポリオレフィン系樹脂製筒状体である点 (相違点3) 筒状体が、本願発明では内径が10mm〜100mmでありかつ肉厚が4mm〜50mmであるのに対して、第1引用発明では一例として内径が26mm,29mmであり肉厚が3mmである点 (相違点4) 衝撃吸収材の配置に関して、本願発明では、各筒状体の軸線方向が構造材の厚み方向と一致するよう構造材の空間内に配置されているのに対して、第1引用発明では各筒状体の柱面が衝突等の力の方向に平行もしくは平行に近い柱面となるようにして構造材の空間内に配置されている点で一応相違する 前記相違点につき検討する。 (相違点2)について 第2引用例または第3引用例には、緩衝材として架橋構造を有するポリオレフィン樹脂発泡体を用いたもの、クッション材としてポリオレフィン発泡体(例えばポリエチレン発泡体)の架橋型発泡体を用いたものが記載されているので、これらはいずれも本願発明でいう架橋型ポリオレフィン系樹脂発泡体のことであるので、緩衝材(クッション材)として有用な架橋型ポリオレフィン系樹脂発泡体を第1引用発明における車輌用構造材における衝撃吸収材を構成している筒状体の材料であるポリオレフィン系樹脂に代えて採用することで本願発明における前記相違点2の構成とすることは容易に想到し得たものというべきである。 (相違点3)について 第1引用発明では、筒状体の内径を29mm、26mmとしたものが例示されており、これは本願発明における10mm〜100mmの範囲に含まれるものである。また、第1引用発明では、肉厚については3mmであるが、t/Dは0.05以上0.15以下が望まれるとあるように両者の比は一定の範囲内であれば許容されるものであると解せるから、肉厚について3mmを4mm以上とすることは当業者が必要に応じて適宜採用し得た設計事項にすぎない。それゆえ、前記相違点3でいう内径が10mm〜100mmでありかつ肉厚が4mm〜50mmとなるように筒状体の形状を選択することは容易に想到できたものである。 (相違点4)について 衝撃吸収材の車輌用構造材の内部空間内での配置について、第1引用発明では、「柱面体の柱面が衝突等の力の方向に平行もしくは平行に近い柱面となるようにして」いる。 そして、この「柱面体の柱面が衝突等の力の方向に平行もしくは平行に近い柱面となるようにして」の解釈であるが、衝撃吸収材は、各筒状体の軸線方向が車輌用構造材の厚み方向と一致するよう配置されていると解釈するのが相当である。このことは、第1引用例の中で公知例として例示されている第4引用例(Fig3)を参照すると、蜂巣状分区体はその隔壁12の延びている方向がバンパ本体(車輌用構造材)の厚み方向と一致するようバンパ内空間に配置されていることからも明らかである。 それゆえ、前記相違点4で掲げた相違点は、単なる表現の相違であって、実質的には同じことを意味しているのであるから、相違点とはなりえないものである。 (相違点1)について 一般に車輌用のドアにおいて、側面衝突時の衝撃緩和となるようにドアの内部空間に衝撃吸収材を配置することは従来から周知の技術手段(例えば、特開平3-45421号公報参照)であるから、第1引用発明における車輌用構造材としてのバンパの内部空間に適用した衝撃吸収材をドア本体の内部空間に採用して本願発明における前記相違点1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。 4.作用・効果と発明の容易性について 以上のように、前記相違点1〜3のいずれも格別なものではなく、しかも前記相違点1〜3で指摘した構成を併せ備える本願発明の奏する作用・効果について検討しても、第1引用発明、第2引用例〜第4引用例に記載の技術事項及び当該技術分野における周知の技術手段から予測し難いといえるようなものではなく、本願発明は第1引用発明、第2引用例〜第4引用例に記載の技術事項及び周知の技術手段から当業者が容易に想到できたものである。 5.むすび したがって、本願発明は、第1引用発明、第2引用例〜第4引用例に記載の技術事項及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、このような進歩性を有しない発明を包含する本願は、本願の請求項2に係る発明についてその進歩性を検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-05-07 |
結審通知日 | 2003-05-13 |
審決日 | 2003-05-28 |
出願番号 | 特願平4-4782 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山内 康明、川村 健一 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
鈴木 久雄 鈴木 法明 |
発明の名称 | 車両用構造材 |
代理人 | 小野 由己男 |
代理人 | 宮川 良夫 |