• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1083059
異議申立番号 異議2000-70281  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-04-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-26 
確定日 2003-06-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2925034号「勃起不能の治療のためのピラゾロピリミジノン類」の請求項1〜6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2925034号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2925034号に係る発明は、平成6年5月13日に国際特許特許出願(PCT/EP94/01580、優先権主張1993年6月9日、英国)され、平成11年5月7日に特許権の設定の登録がされた後、水野昭宣により特許異議の申立てがされ、当審による取消理由通知の意見書提出の指定期間内である平成15年4月18日に、明細書の訂正請求がされた。

2.訂正請求について
(1)訂正の内容
訂正事項a
登録時の特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】下式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩を薬学的に許容できる希釈剤又は製剤用担体と共に含む、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物:

(式中、・・・・省略・・・・。 ) 」
に、登録時の請求項5の
「【請求項5】式(I)の化合物が下記のものから選ばれる、請求項4記載の組成物;
5-(2-エトキシ-5-モルホリノアセチルフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-(5-モルホリノアセチルフェニル-2-n-プロポキシフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-アリルオキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-プロピル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]-2-n-プロポキシフェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルカルボニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;及び
5-[2-エトキシ-5-(1-メチル-2-イミダゾリル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン。」
の内容を挿入して、
「【請求項1】下式:
5-(2-エトキシ-5-モルホリノアセチルフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-(5-モルホリノアセチルフェニル-2-n-プロポキシフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-アリルオキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-プロピル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]-2-n-プロポキシフェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルカルボニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;及び
5-[2-エトキシ-5-(1-メチル-2-イミダゾリル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容できるその塩を薬学的に許容できる希釈剤又は製剤用担体と共に含む、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物。」
と訂正する。

訂正事項b
請求項2〜5を削除する。

訂正事項c
登録時の請求項6を請求項2として、
「【請求項2】経口投与組成物である、請求項1の組成物。」
に訂正する。

(2)訂正の適否
訂正事項a及び訂正事項cは、式(I)の化合物を登録時の請求項5に具体的に記載された特定の化合物に限定することを内容とする訂正であり、訂正事項bは請求項2〜5を削除する訂正であるので、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、上記訂正事項は、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の4第2項ただし書き並びに同法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものであるので、訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)異議申立の概要
異議申立人は、甲第1〜8号証を提出し、本件特許の請求項1〜6に係る発明は、以下のa及びbに該当するので、特許法第113条第1項第2号及び第4号の規定により取り消すべきものである旨を主張する。
a.請求項1〜6に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであるので、本件請求項1〜6に係る特許は特許法第29条の規定に違反してされたものである。
b.本件明細書には、請求項1〜6に係る発明について、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないし、当業者が容易に実施できる程度に記載されているともいえないので、本件請求項1〜6に係る特許は特許法第36条に規定する要件を満足しない出願についてされたものである。

(2)本件発明
上記2.に示したように本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】下式:
5-(2-エトキシ-5-モルホリノアセチルフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-(5-モルホリノアセチルフェニル-2-n-プロポキシフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-アリルオキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-プロピル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]-2-n-プロポキシフェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルカルボニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;及び
5-[2-エトキシ-5-(1-メチル-2-イミダゾリル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容できるその塩を薬学的に許容できる希釈剤又は製剤用担体と共に含む、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物。
【請求項2】経口投与組成物である、請求項1の組成物。

(3)甲第1〜6号証及びその記載
異議申立人が提出した甲第1〜6号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。

甲第1号証:Drug News and Perspectives, 6(3), p150-156(1993)
(PDE-V阻害剤であるZaprinastが人海綿体の条片を単独で弛緩させ,NOにより引き起こされる弛緩を増強すること、PDE-V阻害剤の可能な治療用途としてインポテンスが含まれ得ること、及びPDE-V阻害剤は高いグアニレートシクラーゼ活性を持つ組織で最大の効果をもつであろうことが記載されている。)

甲第2号証:Int. J. Impotence Res., 4, Suppl. 2, p11
(ヒトの陰茎海綿体に三種の異なるPDEアイソザイムが存在すること、選択的PDE阻害剤(Quazinone,Rolipram及びZaprinast)があらかあじめ収縮させたヒトの陰茎海綿体組織細片を弛緩させたこと、及びPDV阻害剤が勃起機能不全の治療に有用な薬剤となる可能性があることが記載されている。)

甲第3号証:J. Urolgy, 149(4), 285A, (1993, April)
(ヒト由来の海綿体組織の分画中に3種類のPDEアイソザイム、すなわちPDE-III,PDE-IV,PDE-V(cGMP特異的)を見出したこと、及び著者等の知見は海綿体平滑筋の緊張の低下にサイクリックヌクレオチド代謝が関与することを示唆し、勃起機能不全の治療における選択的PDE阻害剤の可能性を開くものであることが記載されている。)

甲第4号証:J. Urol. 147 4 Suppl 454A 1992
(犬におけるインビボデータは先のウサギとヒトにおけるインビトロの結果を確かめるものであり、海綿体平滑筋の弛緩およびペニスの勃起はNOとcGMPにより媒介されるという仮説をサポートするものであること、及びこれらのデータはインポテンスと持続勃起症との両方に対する薬物療法の新しい形式を示唆するものであることが記載されている。)

甲第5号証:欧州特許出願公開第0463756号明細書
(式(I)の化合物、それらを含有する医薬組成物及び式(I)の化合物がcGMP PDEの強力な選択的阻害剤であることが記載されている。)

甲第6号証:欧州特許出願公開第0526004号明細書
(式(I)の化合物、それらを含有する医薬組成物及び式(I)の化合物がcGMP PDEの強力かつ高選択性の阻害剤であることが記載されている。)

(4)判断
(4-1)特許法第29条第2項について
a.請求項1に係る発明について
訂正された請求項1に係る発明は、9個の具体的な化合物を有効成分とするヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物に関するものである。これらの化合物は、本発明の特別に好ましい個々の化合物として、特許公報5頁右欄31行〜左欄17行に記載されたものであって、いずれも1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン誘導体であり、ピラゾロ[4,3-d]ピリミジンの5-位には、2-位及び5-位に類似した置換基を持つフェニル基を有している点でも共通した、極めて類似した化学構造を有する化合物である。
そして、これらの化合物については、ボランティアへの投与及び患者での検討が行われたことが記載されており、そのうち1種については勃起不能男性の陰茎勃起を誘発することが確認されたことも記載されている。
これに対して、甲第1〜4号証には、これらの化合物のいずれについても記載も示唆もなされていない。また、甲第5及び6号証は、これらの化合物を含む広範な化合物が記載されているが、これらの化合物がヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物として使用できることについては記載も示唆もされていない。そして、甲第1〜4号証の記載を参酌しても、甲第5及び6号証に記載された広範な化合物の中で、請求項1に記載された具体的化合物が、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物として特に有効であることを、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、異議申立人が提出した甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

b.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の医薬組成物の投与方法を経口投与に限定するものであり、上記と同様の理由により、当業者が容易に発明できたとすることができない。

(4-2)特許法第36条について
a.上記(4-1)a.で述べたように訂正された請求項1に係る発明は、極めて類似した化学構造を有する9個の具体的な化合物を有効成分とするヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物に関するものである。そして、これらの化合物については、ボランティアへの投与及び患者での検討が行われたことが記載されており、そのうち1種については勃起不能男性の陰茎勃起を誘発することが確認されたことも記載されており、本件発明の医薬用途の確認が単にcGMP PDE阻害剤であることのみを根拠とするのでも、in vitroでのcGMP PDE阻害剤活性試験結果のみを根拠とするものでもない。
したがって、ボランティアへの投与及び患者での検討がされ、その結果についても記載されている請求項1に記載された化合物については、明細書に本件発明に係る医薬用途に有効であることが当業者に理解できる程度に記載されている。
b.また、特別に好ましい個々の化合物とされる請求項1に記載された化合物については、上述したボランティアへの投与及び患者での検討とその結果の記載に加えて、ラット及びイヌについてそれぞれ10mg/kg及び20mg/kgの慢性p.o.投与で中毒作用を示さなかったこと、その1種はPDEV酵素に対してIC50で、PDEII酵素及びPDEIII酵素についてはそれぞれIC50が100μM以上及び34μMを示したことが記載されている。さらに、本件明細書には、典型的な男性についての好ましい投与処方として5〜75mgの化合物を毎日3回経口投与することも記載されている。
そして、上述したように、請求項1に記載された化合物は、相互に極めて構造が類似した化合物であることを考慮すると、本件明細書には、これらの化合物に係る本件医薬用途発明について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができる。

したがって、本件特許明細書に記載不備があり、特許法第36条に規定する要件を満たしていないとの主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1及び2に係る発明についての特許を取り消すことができない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
勃起不能の治療ためのピラゾロピリミジノン類
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 下式:
5-(2-エトキシ-5-モルホリノアセチルフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-(5-モルホリノアセチル-2-n-プロポキシフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-アリルオキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-プロピル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]-2-n-プロポキシフェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルカルボニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;及び
5-[2-エトキシ-5-(1-メチル-2-イミダゾリル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
からなる群から選択される化合物又は薬学的に許容できるその塩を薬学的に許容できる希釈剤又は製剤用担体と共に含む、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物。
【請求項2】 経口投与組成物である、請求項1の組成物。
【発明の詳細な説明】
この発明は、勃起不能の治療のための一連のピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オンの使用に関する。
勃起不能とは、文字通り、雄性における性交能力の欠如と定義することができ、陰茎勃起又は射精又はその両方を達成できないことを包含する。より具体的には、勃起不能又は勃起機能不全を、性交に十分な勃起を得ること又は持続することができないことと定義することができる。その有病率は、50歳までの男性人口の2〜7%で、これは年齢と共に増加しており、55〜80歳では18〜75%であると報告されている。例えば、米国だけをとっても、-千万人の勃起不能男性がいると見積もられており、その大多数は心因性というよりはむしろ器質性の問題からのものである。
ヒトにおける十分に管理された臨床試験の報告は殆どなく、しかも経口投与薬品の効能は低い。多くの種類の薬品で陰茎勃起を誘発することが示されているが、それらは陰茎の中に直接に、例えば、尿道内又は海綿体内(i.c.)に注射した後に効果がでるに過ぎず、しかも勃起機能不全用には承認されていない。今日の医学的治療は、血管作用性物質のi.c.注射を基礎としており、フェノキシベンズアミン、フェントールアミン、パパベリン及びプロスタグランジンE1で単独で又はそれらの組み合わせのいずれかで良好な結果が報告されているが、これら薬品の幾つかをi.c.投与すると、陰茎の痛み、陰茎強直及び線維増多が伴う。カリウム通路開放物質(potassium channel opener)(KCO)及び血管作用性腸管ポリペプチド(VIP)もi.c.で活性であることが示されているが、コスト及び安定性の問題が後者の開発を制限している。i.c.ルートに代わるものは、陰茎に適用される三硝酸グリセリル(GTN)パッチ剤の使用である。これは、有効であることが示されているが患者及びパートナーの双方に副作用をもたらす。
薬学的介入に代わる一般的なものとして、勃起の達成を補助するために種々の陰茎人工装具が用いられている。短期間成功率は良好であるが、特に糖尿病男性において感染及び虚血の問題がこのタイプの処置を第一線の治療法というよりむしろ最後の選択にしている。
本発明の化合物は、それらの環状アデノシン3’,5’-モノリン酸ホスホジエステラーゼ(cAMP PDE)の阻害とは対照的に、環状グアノシン3’,5-モノリン酸ホスホジエステラーゼ(cGMP PDE)の強力な阻害物質である。この選択的な酵素阻害性が高いcGMPレベルをもたらし、それがEP-A-0463756及びEP-A-0526004において前記化合物について既に開示された用途、即ち、安定性、不安定性及び変種(プリンズメタル型)アンギーナ、高血圧、肺高血圧、鬱血性心不全、アテローム硬化症、血管開存性が減少した状態、例えば、経皮経管冠動脈形成後(PTCA後)状態、末梢血管病、卒中、気管支炎、アレルギー性喘息、慢性喘息、アレルギー性鼻炎、緑内障、及び消化管運動の障害により特徴付けられる疾患、例えば、過敏性腸症候群(IBS)の治療における用途の基礎を提供する。
意外にも、今回、これら開示した化合物が勃起機能不全の治療に有用であることが分かった。更に、これら化合物は経口投与でき、それによりi.c.投与に伴う欠点を取り除くことができる。かくして、本発明は、下式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩又はそれらいずれかを含有する医薬組成物の、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬品の製造のための使用に関する。

〔式中、
R1はH;C1〜C3アルキル;C1〜C3ペルフルオロアルキル;又はC3〜C5シクロアルキルであり;
R2はH;場合によりC3〜C6シクロアルキルで置換されたC1〜C6アルキル;C1〜C3ペルフルオロアルキル;又はC3〜C6シクロアルキルであり;
R3は場合によりC3〜C6シクロアルキルで置換されたC1〜C6アルキル;C1〜C6ペルフルオロアルキル;C3〜C5シクロアルキル;C3〜C6アルケニル;又はC3〜C6アルキニルであり;
R4は場合によりOH、NR5R6、CN、CONR5R6又はCO2R7で置換されたC1〜C4アルキル;場合によりCN、CONR5R6又はCO2R7で置換されたC2〜C4アルケニル;場合によりNR5R6で置換されたC2〜C4アルカノイル;場合によりNR5R6で置換された(ヒドロキシ)C2〜C4アルキル;場合によりOH又はNR5R6で置換された(C2〜C3アルコキシ)C1〜C2アルキル;CONR5R6;CO2R7;NR5R6;NHSO2NR5R6;NHSO2R8;SO2NR9R10;又はいずれも場合によりメチルで置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チエニル又はトリアゾリルであり;
R5及びR6はそれぞれ独立にH又はC1〜C4アルキルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒にピロリジニル、ピペリジノ、モルホリノ、4-N(R11)-ピペラジニル又はイミダゾリル基を形成し、この際この基は場合によりメチル又はOHで置換されており;
R7はH又はC1〜C4アルキルであり;
R8は場合によりNR5R6で置換されたC1〜C3アルキルであり;
R9及びR10はそれらが結合している窒素原子と一緒にピロリジニル、ピペリジノ、モルホリノ又は4-N(R12)-ピペラジニル基を形成し、この際この基は場合によりC1〜C4アルキル、C1〜C3アルコキシ、NR13R14又はCONR13R14で置換されており;
R11はH;場合によりフェニルで置換されたC1〜C3アルキル;(ヒドロキシ)C2〜C3アルキル;又はC1〜C4アルカノイルであり;
R12はH;C1〜C6アルキル;(C1〜C3アルコキシ)C2〜C6アルキル;(ヒドロキシ)C2〜C6アルキル;(R13R14N)C2〜C6アルキル;(R13R14NOC)C1〜C6アルキル;CONR13R14;CSNR13R14;又はC(NH)NR13R14であり;そして
R13及びR14はそれぞれ独立にH;C1〜C4アルキル;(C1〜C3アルコキシ)C2〜C4アルキル;又は(ヒドロキシ)C2〜C4アルキルである。〕
上の定義においては、特に断らない限り、3又は4以上の炭素原子を有するアルキル基、4又は5以上の炭素原子を有するアルケニル又はアルキニル基、3の炭素原子を有するアルコキシ基及び4の炭素原子を有するアルカノイル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
式(I)の化合物は1又は2以上の不斉中心を有するので、それらは鏡像体又はジアステレオマーとして存在することができる。更に、アルケニル基を含有する式(I)の一定の化合物は、シス異性体としてもトランス異性体としても存在できる。それぞれの場合において、本発明は混合物及び分離した個別の異性体のいずれをも包含する。
また、式(I)の化合物は互変異性体としても存在できるので、本発明は混合物及び分離した個別の互変異性体のいずれをも包含する。
塩基中心を含有する式(I)の化合物の薬学的に許容できる塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸の如き無機酸、有機カルボン酸、又は有機スルホン酸で形成された無毒の酸付加塩である。式(I)の化合物は、塩基と薬学的に許容できる金属塩、特に無毒のアルカリ金属塩も提供することができる。例には、ナトリウム及びカリウム塩が含まれる。
式(I)の化合物の好ましいグル-プは、R1がH、メチル又はエチルであり;R2がC1〜C3アルキルであり;R3がC2〜C3アルキル又はアリルであり;R4が場合によりOH、NR5R6、CN、CONR5R6又はCO2R7で置換されたC1〜C2アルキル;場合によりNR5R6で置換されたアセチル;場合によりNR5R6で置換されたヒドロキシエチル;場合によりOH又はNR5R6で置換されたエトキシメチル;CH=CHCN;CH=CHCONR5R6;CH=CHCO2R7;CONR5R6;CO2H;NR5R6;NHSO2NR5R6;NHSO2R8;SO2NR9R10;又はいずれも場合によりメチルで置換されたピリジル又はイミダゾリルであり;R5及びR6がそれぞれ独立にH、メチル又はエチルであるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒にピペリジノ、モルホリノ、4-N(R11)-ピペラジニル又はイミダゾリル基を形成し、この際この基は場合によりメチル又はOHで置換されており;R7がH又はt-ブチルであり;R8がメチル又はCH2CH2CH2NR5R6であり;R9及びR10がそれらが結合している窒素原子と一緒にピペリジノ又は4-N(R12)-ピペラジニル基を形成し、この際この基は場合によりNR13R14又はCONR13R14で置換されており;R11がH、メチル、ベンジル、2-ヒドロキシエチル又はアセチルであり;R12がH、C1〜C3アルキル;(ヒドロキシ)C2〜C3アルキル;CSNR13R14又はC(NH)NR13R14であり;そしてR13及びR14がそれぞれ独立にH又はメチルであるグループである。
式(I)の化合物のより好ましいグル-プは、R1がメチル又はエチルであり;R2がC1〜C3アルキルであり;R3がエチル、n-プロピル又はアリルであり;R4がCH2NR5R6、COCH2NR5R6、CH(OH)CH2NR5R6、CH2OCH2CH3、CH2OCH2CH2OH、CH2OCH2CH2NR5R6、CH=CHCON(CH3)2、CH=CHCO2R7、CONR5R6、CO2H、NHSO2NR5R6、NHSO2CH2CH2CH2NR5R6、SO2NR9R10、2-ピリジル、1-イミダゾリル又は1-メチル-2-イミダゾリルであり;R5及びR6がそれらが結合している窒素原子と一緒にピペリジノ、4-ヒドロキシピペリジノ、モルホリノ、4-N(R11)-ピペラジニル又は2-メチル-1-イミダゾリル基を形成し;R7がH又はt-ブチルであり;R9及びR10がそれらが結合している窒素原子と一緒に4-カルバモイルピペリジノ又は4-N(R12)-ピペラジニル基を形成し;R11がH、メチル、ベンジル、2-ヒドロキシエチル又はアセチルであり;そしてR12がH、C1〜C3アルキル、2-ヒドロキシエチル又はCSNH2であるグループである。
式(I)の化合物の特に好ましいグループは、R1がメチル又はエチルであり;R2がn-プロピルであり;R3がエチル、n-プロピル又はアリルであり;R4がCOCH2NR5R6、CONR5R6、SO2NR9R10又は1-メチル-2-イミダゾリルであり;R5及びR6がそれらが結合している窒素原子と一緒にモルホリノ又は4-N(R11)-ピペラジニル基を形成し;R9及びR10がそれらが結合している窒素原子と一緒に4-N(R12)-ピペラジニル基を形成し;R11がメチル又はアセチルであり;そしてR12がH、メチル、2-プロピル又は2-ヒドロキシエチルであるグループである。
本発明の特別に好ましい個々の化合物には、次のものが含まれる:
5-(2-エトキシ-5-モルホリノアセチルフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-(5-モルホリノアセチル-2-n-プロポキシフェニル)-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-アリルオキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルスルホニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-プロピル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{2-エトキシ-5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]フェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-{5-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニルスルホニル]-2-n-プロポキシフェニル}-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;
5-[2-エトキシ-5-(4-メチル-1-ピペラジニルカルボニル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン;及び
5-[2-エトキシ-5-(1-メチル-2-イミダゾリル)フェニル]-1-メチル-3-n-プロピル-1,6-ジヒドロ-7H-ピラゾロ[4,3-d]ピリミジン-7-オン。
式(I)の化合物及び薬学的に許容できるそれらの塩、それらの製造方法、それらのcGMP PDE及びcAMP PDE阻害活性を測定するin vitro試験方法、それらの医薬組成物及びヒトに使用するための投与ルートは、EP-A-0463756及びEP-A-0526004に記載されている。
ヒト海綿体の弛緩が陰茎の勃起をもたらすのであるが、それの環状ヌクレオチドPDEを単離しそして特徴付ける目的で予備検討を行った。基質特異性、活性化物質への応答、及び阻害物質感受性の検討を行って、ヒト海綿体が明確に異なる3種のPDE酵素を含有することが証明された。
方法
新鮮な凍結ヒト陰茎をIIAM(ペンシルバニア州)から入手した。組織を室温で解凍し、その陰茎から海綿体を切り分けて約2〜4gの組織を得て以下の単離手順を行った。250mMショ糖、1mM EDTA、0.5mM PMSF及び20mM HEPESを含有する氷冷した等張性緩衝液,pH7.2(35ml)中で組織を粗く切り刻み、その混合液をSilverson混合/乳化機で短時間(1分間)処理した。ホモジナイザ-管を用いてテフロン製乳棒で均質物を調製して、100,000×g、4℃での60分間の遠心分離により可溶性画分を調製した。10mlの高速度上澄み液を、1mM EDTA、0.5mM PMSF及び20mM HEPESを含有する緩衝液,pH7.2(クロマトグラフィー緩衝液)で平衡にしたPharmacia Mono Qアニオン交換カラム(1ml床容量)に適用した。次いで、このカラムを5床容量のクロマトグラフィー緩衝液で洗浄した後、0〜500mMの連続勾配のNaCl(総容量35ml)を用いてPDEを溶出させ、1mlの画分を集めた。
500nM cGMP又は500nM cAMPを基質として用い、カラム画分をPDE活性についてアッセイした。cAMP PDE活性も1μM未標識cGMPの存在下で測定し、選択した画分のPDE活性を10mM CaCl2及び10ユニット/mlウシ脳カルモジュリンの存在下で測定した。適切な画分をプールしてこの検討の間4℃で保存した。
全体を通して500nMの基質濃度を用いて阻害検討を行った。全阻害物質をDMSOに溶かし、濃度-応答曲線を3×10-10〜1×10-4Mの範囲で半対数増加率(half log increments)で描いた。バイオスタット(biostat)のアルゴリズムに適合するS字曲線を用いてIC50を計算した。
結果
ヒト海綿体可溶性PDEを3つの明確に異なる活性画分に分けた。第1画分、つまり画分I(溶出順に名付けた)は存在する主要なPDEに該当し、基質としてのcGMPに非常に選択性である。この画分は、カルシウム/カルモジュリンによる刺激に非感受性であることが分かり、PDEVとして分類した。画分IIはcGMP及びcAMPを加水分解するが、この後者の活性はcGMPの存在下で刺激され、PDEIIとして分類される。一方、画分IIIはcAMP選択性でありそしてこの活性はcGMPの存在下で阻害され、PDEIII活性と一致する。
この組織中に存在するPDEイソ酵素を更に特徴付けるために、種々の阻害物質を用いて検討を行った。画分I及びIIでの阻害検討をcGMPを基質として用いて行った一方、画分IIIでの検討ではcAMPを用いた。これら検討で、画分IがPDEVに該当することが確認され、画分IIIがPDEIIIとして明確に同定された。画分II(PDEII)は試験した全ての阻害物質に比較的非感受性であった。
要するに、上の検討でヒト海綿体組織中の3種のPDEイソ酵素が同定されたのである。主要なPDEがcGMP特異性PDEVである一方で、cGMPで刺激されるcAMP PDEII及びcGMPで阻害されるcAMP PDEIIIも存在する。
本発明の化合物をin vitroで試験してそれがcGMP特異性PDEVの強力で選択的な阻害物質であることが分かった。例えば、本発明の特別に好ましい化合物のうちの1種はPDEV酵素に対してIC50=6.8nMを有するが、PDEII及びPDEIII酵素に対してはそれぞれIC50=>100μMと34μMの弱い阻害活性を示すに過ぎない。かくして、海綿体組織の弛緩及びその結果としての陰茎の勃起は、おそらく前記組織内でのcGMPレベルの増加により、つまり本発明の化合物のPDE阻害プロフィールによって媒介されるのであろう。
更に、ラット及びイヌで試験した本発明のどの化合物も、3mg/kgまでの静脈内(i.v.)投与及び経口(p.o.)投与の両方で、有害な急性毒性の如何なる明白な兆候も示さなかった。マウスでは、100mg/kgまでのi.v.投与後でも一匹も死ななかった。特別に好ましい一定の化合物は、ラットへの10mg/kgまでの及びイヌへの20mg/kgまでの慢性p.o.投与で中毒作用を示さなかった。
ヒトでは、特別に好ましい一定の化合物をボランティアに一回又は複数回経口投与して試験した。更に、患者で検討を行ったが、これまでのところでは特別に好ましい化合物のうちの1種が勃起不能男性の陰茎勃起を誘発することが確認された。
本発明の化合物を主に勃起機能不全又は雄性性的機能不全の治療について説明してきたが、それらは陰核障害に関連するオルガスムス不全を含む雌性性的機能不全の治療にも有用である。
一般に、ヒトでは、本発明の化合物の経口投与が、最も便利でしかもi.c.投与に伴う欠点を回避できるので好ましいルートである。典型的な男性についての好ましい投与処方は、5〜75mgの化合物を毎日3回投与する処方である。受容者が経口投与後に嚥下障害又は薬品吸収の機能障害を起こす場合は、その薬品を非経口投与、例えば、舌下又は口内投与してもよい。
獣医学的用途には、式(I)の化合物又はその無毒な塩が通常の獣医学的常套手段に従って好適に許容できる製剤として投与され、獣医師が特定の雄性動物に最も適切である投与処方及び投与ルートを決定することになる。
かくして、本発明は、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物であって、式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩を薬学的に許容できる希釈剤又は製剤上の担体と共に含む組成物を包含する。
更に、ヒトを含む雄性動物における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬組成物であって、式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩を薬学的に許容できる希釈剤又は製剤上の担体と共に含む組成物を製造する方法が提供される。
本発明は、勃起機能不全を治療又は予防するためにヒトを含む雄性動物を処置する方法であって、前記雄性動物を有効量の式(I)の化合物又は薬学的に許容できるその塩又はそれらいずれかを含有する医薬組成物で処置することを含む方法も提供する。
更なる側面においては、本発明は、cGMP PDE阻害物質又は薬学的
に許容できるその塩又はそれらいずれかを含有する医薬組成物の、男性の勃起機能不全の経口治療のための使用を包含する。
本発明は、勃起機能不全を治療又は予防するために男性を経口処置する方法であって、経口有効量のcGMP PDE阻害物質又は薬学的に許容できるその塩又はそれらいずれかを含有する医薬組成物で処置することを含む方法も提供する。
更には、本発明は、cGMP PDE阻害物質又は薬学的に許容できるその塩又はそれらいずれかを含有する医薬組成物の、男性における勃起機能不全の治療的又は予防的処置のための医薬品の製造のための使用を包含する。
 
訂正の要旨 登録時の請求項1に請求項5の内容を挿入する訂正を行う。
登録時の請求項2〜5を削除する。
登録時の請求項6を請求項2に訂正する。
異議決定日 2003-06-03 
出願番号 特願平7-501234
審決分類 P 1 651・ 531- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 534- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 紹英冨士 美香  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 深津 弘
松浦 新司
登録日 1999-05-07 
登録番号 特許第2925034号(P2925034)
権利者 ファイザー・インコーポレーテッド
発明の名称 勃起不能の治療のためのピラゾロピリミジノン類  
代理人 社本 一夫  
代理人 社本 一夫  
代理人 今井 庄亮  
代理人 小林 泰  
代理人 今井 庄亮  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 小林 泰  
代理人 村上 清  
代理人 増井 忠弐  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 村上 清  
代理人 増井 忠弐  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ