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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F04C
管理番号 1083214
異議申立番号 異議2001-72134  
総通号数 46 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-31 
確定日 2003-08-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第3132632号「内接型オイルポンプロータ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3132632号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
(1)特許出願:平成6年11月2日(特願平6-270005号)
(2)特許権の設定登録:平成12年11月24日
(3)特許掲載公報の発行:平成13年2月5日
(4)特許異議の申立て:平成13年7月31日(特許異議申立人:住友電気工業株式会社)
(5)取消しの理由の通知:平成13年10月9日(発送日:平成13年10月19日)
(6)異議の決定(取消決定):平成14年1月23日(発送日:平成14年2月8日)
(7)訴えの提起:平成14年3月12日(平成14年(行ケ)第119号)
(8)判決言渡し:平成15年5月30日(「上記(6)の決定を取り消す。」、確定)

2.本件発明
本件発明は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。
「【請求項1】 z個の外歯を有するインナーロータと、(z+1)個の内歯を有するアウターロータとからなる内接型オイルポンプロータにおいて、前記インナーロータの歯数(z:個)と、インナーロータの歯形の創成円の半径(R:mm)と、インナーロータの歯形の歯先円の直径(d1:mm)と、インナーロータの歯形の歯底円の直径(d2:mm)とが下記式
0.20≦R・z/(π・(d1+d2)/2)≦0.30
を満たすトロコイド歯形をインナーロータの外歯に用いたことを特徴とする内接型オイルポンプロータ。」

3.検討する取消しの理由
(1)特許異議の申立てにおける取消しの理由の概要
特許異議の申立てにおける取消しの理由の要旨は、上記1.(4)の特許異議申立書及び平成13年12月11日付けの回答書の記載からみて、以下のア及びイにあるものと認める。
ア.新規性の欠如1
本件発明は、その出願前に特許庁において不特定者が閲覧可能な状態となっていた刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
イ.新規性の欠如2
本件発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特願昭56-169732号の審理の過程で、平成元年7月24日付けで提出された手続補正書(全文訂正明細書、第4図、第6図ないし第13図)
甲第2号証:特開昭58-70014号公報
(2)上記1.(5)の通知した取消しの理由の概要
ウ.新規性の欠如
上記「(1)イ.新規性の欠如2」に同じ。

4.当審の判断
(1)新規性の欠如1について
甲第1号証は、特願昭56-169732号に関する審理の過程で、平成元年7月24日付けで、願書に添付した明細書及び図面を補正するために、出願人が特許庁長官に対して提出した手続補正書(全文訂正明細書、第4図、第6図ないし第13図)の原本である。
そうすると、甲第1号証は、その提出の目的からみて、公衆に対して頒布により公開することを目的として複製された文書や図面とは、明らかに異なるものというべきである。
してみると、甲第1号証は、本件発明に係る出願前に頒布された刊行物であるということができない。
したがって、甲第1号証の記載内容を検討するまでもなく、甲第1号証によっては、「本件発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。」ということができない。
(2)新規性の欠如2について
ア.甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
a.「次に図によつて本発明のオイルポンプの実施態様を説明する。…インナーの歯数が8枚以上であるトロコイド曲線…をインナー歯形として使用する。
第3図はトロコイド曲線諸元の説明図であり、…φB:転円径、φC:軸跡円径、e:離心量である。
…この離心量eと転円径φBの比を0.35〜0.5とし、軌跡円径φCと転円径φBの比は0.5〜3.0とする。
…アウター歯数はインナー歯数より1枚多い」(2頁左上欄16行目〜右上欄9行目の記載を3頁右下欄11〜19行目の記載により補正したもの)
b.「第5図は本発明によるオイルポンプの実施例の正面図であり、この場合の諸元は次の通りである。
インナー歯数 8個
インナー大径 a φ56.296±0.03
インナー小径 b φ43.784±0.03

離 心 量 e 3.128」(2頁右上欄20行目〜左下欄7行目の記載を4頁左上欄9〜13行目の記載により補正したもの)
これらの記載事項及び図面の記載からみて、甲第2号証には、次のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「z個の外歯を有するインナーと、(z+1)個の内歯を有するアウターとからなる内接型オイルポンプロータにおいて、前記インナーの歯数が8個、軌跡円径φCと転円径φBの比が0.5〜3.0、離心量eと転円径φBの比が0.35〜0.5、インナー大径がφ56.296±0.03、インナー小径がφ43.784±0.03、離心量eが3.128であって、トロコイド歯形をインナーの外歯に用いた内接型オイルポンプロータ。」
イ.対比、検討及び判断
本件発明と引用発明とを対比すると、その技術的意義からみて、引用発明の「インナー」は本件発明の「インナーロータ」に、引用発明の「アウター」は本件発明の「アウターロータ」に、それぞれ、相当するものと認められる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりであると認められる。
<一致点>
z個の外歯を有するインナーロータと、(z+1)個の内歯を有するアウターロータとからなる内接型オイルポンプロータにおいて、トロコイド歯形をインナーロータの外歯に用いた内接型オイルポンプロータ。
<相違点>
インナーロータのトロコイド歯形について、本件発明では、「前記インナーロータの歯数(z:個)と、インナーロータの歯形の創成円の半径(R:mm)と、インナーロータの歯形の歯先円の直径(d1:mm)と、インナーロータの歯形の歯底円の直径(d2:mm)とが下記式 0.20≦R・z/(π・(d1+d2)/2)≦0.30 を満たす」となっているのに対し、引用発明では、「前記インナーの歯数が8個、軌跡円径φCと転円径φBの比が0.5〜3.0、離心量eと転円径φBの比が0.35〜0.5、インナー大径がφ56.296±0.03、インナー小径がφ43.784±0.03、離心量eが3.128である」となっている点。
<相違点の検討>
引用発明の構成要件である、「前記インナーの歯数が8個、軌跡円径φCと転円径φBの比が0.5〜3.0、離心量eと転円径φBの比が0.35〜0.5、インナー大径がφ56.296±0.03、インナー小径がφ43.784±0.03、離心量eが3.128である」という数値を、本件発明の構成要件のうちの条件式 R・z/(π・(d1+d2)/2)に代入したすると、概略、
0.080≦R・z/(π・(d1+d2)/2)≦0.682
となる。
これをもって、甲第2号証に記載された引用発明の構成要件が実質的に「0.080≦R・z/(π・(d1+d2)/2)≦0.682」(以下、「構成A」という。)を意味すると認めることができるか否かは、別として、仮に肯定しても、該構成Aは、本件発明の構成要件の「0.20≦R・z/(π・(d1+d2)/2)≦0.30」自体でないばかりか、それより範囲の広いものであることが明らかである。
そして、本件発明は、その構成要件の「0.20≦R・z/(π・(d1+d2)/2)≦0.30」により、本件発明に係る願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)に記載された効果を奏するのに対し、引用発明の構成Aは、その範囲に本件特許明細書に記載された比較例(上記効果を奏することができないとされている例)が含まれることからみて、このような本願発明が奏する効果を奏することができないものを含むことが明らかである。
そうすると、相違点に係る本件発明及び引用発明の各構成要件は、実質的に同じものであるということができない。
また、甲第2号証に記載された諸元の「軌跡円径φCと転円径φBの比が0.5〜3.0、離心量eと転円径φBの比が0.35〜0.5」の限りでは、該諸元の範囲内の特定の値の実施例が記載されていたということができない。
してみると、上記相違点は、実質的な相違点であるというほかない。
ウ.新規性の欠如2についてのむすび
したがって、「本件発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。」ということができない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び当審が通知した取消しの理由によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、仮に、甲第1号証に記載された発明が本件発明の出願前に公然に知られた発明であったとしても、甲第1号証に記載された発明は、引用発明の域をでるものでないから、本件発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、本件発明と甲第2号証に記載された発明(引用発明)における相違点と実質的に同じ相違点があって、しかも、該相違点が実質的な相違点であることは前示のとおりであるので、甲第1号証を根拠として、「本件発明は、その出願前に公然に知られた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができない。」ということができない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-01-23 
出願番号 特願平6-270005
審決分類 P 1 651・ 113- Y (F04C)
最終処分 維持  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 飯塚 直樹
鈴木 充
登録日 2000-11-24 
登録番号 特許第3132632号(P3132632)
権利者 三菱マテリアル株式会社
発明の名称 内接型オイルポンプロータ  
代理人 牛木 護  
代理人 中野 稔  

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