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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02D
管理番号 1084222
審判番号 不服2002-12581  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-05 
確定日 2003-10-08 
事件の表示 平成11年特許願第290219号「杭基礎構造」拒絶査定に対する審判事件〔平成13年4月17日出願公開、特開2001-107377、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年10月12日に出願したものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年8月2日付けの手続補正書により全文補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「杭の頭部にゴムシートからなる弾性部材を内蔵した凸形又は凹形の支承部を形成する金属製の下沓が固定されていると共に、
上記杭と分離されたフーチングの下部には上記弾性部材を含む凸形又は凹形支承部の形状に対応する凹形又は凸形の結合部を形成する金属製の上沓が固定されており、
上記杭頭部の凸形又は凹形下沓とフーチング下部の凹形又は凸形上沓とを嵌合させることで杭頭結合部をピン支持構造に構成し、
上記下沓と上沓との嵌合部の外周位置には、上記弾性部材のはみ出し防止用のシールリング材を嵌着した封止構造が設けられていることを特徴とする杭基礎構造。」

2.引用文献及び周知例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本願の出願前に頒布された特開平10-227040号公報(以下、「引用文献1」という。)には、【特許請求の範囲】、段落【0011】〜【0013】、段落【0014】〜【0023】及び図1の記載によれば、
「杭12の頭部に凸面形又は凹面形の球状支承部13を形成し、その外面には金属製の杭金具14が被着されていると共に、上記杭12と分離されたフーチング17の下部には上記凸面形又は凹面形の球状支承部13の形状に対応する凹面形又は凸面形の球状結合部18を形成し、その内面には金属製のフーチング金具19が固定されており、これら杭金具14とフーチング金具19との間には滑り材21を介設して、上記杭頭部の凸面形又は凹面形の球状支承部13とフーチング17下部の凹面形又は凸面形の球状結合部18とを嵌合させることで杭頭結合部をピン支持構造に構成し、上記杭金具14とフーチング金具19とのすべり面の外周位置には、振動吸収及び外部からの水侵入防止するために、コーキング材22を封入して封止構造とした杭基礎構造。」の発明が記載されていると認められる。
同じく、特開平9-13401号公報(以下、「引用文献2」という。)には、段落【0007】〜【0012】及び図1〜4の記載によれば、
「基礎杭1の杭頭1aと柱3の下端基礎部3aとの間に、金属板6〜9とゴム板7,7aとを交互に複数枚積層接着してなる積層ゴムを介在させて、地震力により杭頭1aに掛かる上下方向の衝撃又は水平方向の衝撃をゴム板7,7aの上下方向復元力又は水平方向復元力により吸収して減少するようにした免震装置。」の発明が記載されていると認められる。
また、拒絶査定において本願の出願前、周知の技術事項であるとして引用した特開昭62-156429号公報(以下、「周知例」という。)には、1頁左下欄特許請求の範囲、1頁左下欄12〜19行、2頁左上欄11行〜左下欄11行及び第1図の記載によれば、
「杭1の頭部にゴムパット4からなる弾性体を設け、地震などによって地盤が相対移動しても弾性体の変形によって、杭1の頭部とフーチング5とが相対的に移動するピン結合とした杭1の杭頭接合構造。」が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と引用文献1記載の発明とを比較すると、引用文献1記載の発明の「凸面形」、「凹面形」、「球状支承部13」、「杭金具14」、「被着」、「球状結合部18」、「フーチング金具19」、及び、「封入」は、本願発明の「凸形」、「凹形」、「支承部」、「下沓」、「固定」、「結合部」、「上沓」、及び、「嵌着」に相当するから、両者は、以下の点で相違している他は一致している。
相違点1:ピン支持構造として、本願発明は、ゴムシートからなる弾性部材を用い、該弾性部材の厚さ変化(弾性変形)を利用したものであるのに対して、引用文献1記載の発明は、滑り材を介設して、すべり回転を利用したものである点
相違点2:下沓と上沓との嵌合部の外周位置に、本願発明は、弾性部材のはみ出し防止用のシールリング材を嵌着した封止構造を設けているのに対して、引用文献1記載の発明は、振動吸収及び外部からの水侵入の防止をするコーキング材を嵌着して封止構造を設けている点
上記相違点を検討する。
<相違点1について>
上記周知例には、杭の頭部にゴムパットからなる弾性体を設け、地震などによって地盤が相対移動しても弾性体の変形によって、杭の頭部とフーチングとが相対的に移動するピン結合とした接合構造が記載されており、本願の出願前、相違点1における本願発明の事項は、上記周知例により周知事項といえるから、引用文献1記載の発明に代えて本願発明のようにすることは、当業者であれば、容易に材料変更し得ることである。
<相違点2について>
本願発明と引用文献1記載の発明とは、共に、封止構造である点で共通するが、本願発明により奏される機能は、弾性部材のはみ出し防止であるのに対して、引用文献1記載の発明により奏される機能は、振動吸収および外部からの水浸入の防止であり、両者の機能が相違している。
さらに、引用文献2及び上記周知例には、封止構造自体が記載されていない。
そして、本願発明は、相違点2における事項を構成要件とすることにより、段落【0023】に記載の「下沓と上沓との嵌合部の外周位置に弾性部材のはみ出し防止用のシールリング材を嵌着した封止構造を採用することによって、上部構造体から作用する鉛直荷重により圧縮力が加わっている弾性部材のはみ出しによる亀裂等の損傷防止……を図り、ゴムシートからなる弾性部材の厚さ変化を利用したピン支持機能を長期間に亘って良好に維持し、優れた耐震性能、免震性能を長期に亘って安定よく維持することができる」という引用文献1記載の発明からは期待できない効果を奏するものと認められる。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1及び2記載の発明並びに上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、他に本願発明を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2003-09-16 
出願番号 特願平11-290219
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 三成  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 杉浦 淳
鈴木 憲子
発明の名称 杭基礎構造  
代理人 鈴江 孝一  
代理人 鈴江 正二  

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