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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1084490 |
審判番号 | 不服2001-15037 |
総通号数 | 47 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-02-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-08-24 |
確定日 | 2003-10-03 |
事件の表示 | 平成5年特許願第207251号「スロット式ゲーム機」拒絶査定に対する審判事件[平成7年2月10日出願公開、特開平7-39618]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成5年7月28日の出願であって、平成13年7月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という)。 (本願発明) 「外周面に各種のシンボルが描かれた複数の回転ドラムを横方向に並設してなる小型の可変表示器と、該可変表示器の複数の回転ドラムと同じ画像が表示される大型の画像表示装置とを前面に備え、スタートレバーの操作により可変表示器の複数の回転ドラムを回転させると共に、画像表示装置の画像を移動させ、その停止時における可変表示器の各回転ドラムのシンボルと画像表示装置の画像とを常に一致させるようにしたことを特徴とするスロット式ゲーム機。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成4年6月30日に頒布された特開平4―183484号公報(以下、「引用刊行物」という)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (a) 「スロットマシンにおけるリールの上部の域全域に、そのスロットマシンの正面幅内に収まる程度の横幅に形成した表示画面をCRTや液晶等により形成する一方、該表示画面には、このスロットマシンによるゲーム内容に関する表示と、・・・適宜テレビ放送等による映像,画像,文字などの表示とを、切換えて表示させるようにした・・・表示画面付スロットマシン」(第1頁左下欄、特許請求の範囲第1項) (b) 「本発明はスロットマシンの正面パネル上に相当の広面積で形成された表示画面を有するスロットマシンに関する」(第2頁左上欄第1-3行) (c) 「正面パネル・・・に設けた比較的大型の表示画面」(第2頁左下欄第4-5行) (d) 「3〜5は・・・横並びに設けた3個のリールである。・・・リールの数は3個以上のものであってもよく」(第2頁左下欄第19行-右下欄第3行) (e) 「スロットマシンゲームの操作部で、少なくとも各リール3〜5の回転スタートボタン」(第2頁右下欄第7-8行) (f) 「12は・・・液晶表示部9・・・を駆動する第一駆動部、13は・・・各リール3〜5の絵柄が入賞しているかどうかを判別する入賞判別部で、この判別部13の入賞信号は、・・・切換制御部14に供給され、上記の第1駆動部12に入賞表示プログラム部15の信号が供給されるように作用する。」(第3頁左下欄第1-11行) (g) 「ゲーム時に入賞があると、・・・入賞表示プログラム15の内容が第一駆動部12を経由して液晶表示部9・・・に表示される。」(第3頁右下欄第3-7行) (h) 「スロットマシンの表示部を上記のように広い面積の液晶表示体などによる表示画面に形成することにより、・・・入賞表示・・・の表示を一括表示することができ、しかも、その表示態様は、きわめてヴィジュアルな感じで自由に形成することが出来るので、従来品では得られない視覚的効果を奏する。」(第4頁右上欄第4―13行) これら記載事項によると、引用刊行物には、 「各々に絵柄が描かれ且つ横並びに設けられた3以上のリールと、スロットマシンの正面パネルに設けた大型の表示画面を有する液晶表示部と、各リールの回転スタートボタンとを備え、リールの絵柄を判別して入賞の場合には入賞表示プログラムの内容を前記表示画面に表示するスロットマシン」 の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 3.対比 引用発明の「リール」及び「シンボル」は、本願発明の「回転ドラム」及び「絵柄」に相当し、引用発明の「各々に絵柄が描かれ且つ横並びに設けられた3以上のリール」は、本願発明の「外周面に各種のシンボルが描かれた複数の回転ドラムを横方向に並設してなる小型の可変表示器」に相当する。また、引用発明の「液晶表示部」は本願発明の「画像表示装置」に相当し、さらに、引用発明の「各リールの回転スタートボタン」は、本願発明の「操作により可変表示器の複数の回転ドラムを回転させる」スタートレバーに相当する。 したがって、引用発明と本願発明とは、 「外周面に各種のシンボルが描かれた複数の回転ドラムを横方向に並設してなる可変表示器と、大型の画像表示装置とを前面に備え、スタートレバーの操作により可変表示器の複数の回転ドラムを回転させるスロット式ゲーム機」 の点で一致し、次の点において相違する。 (相違点1) 画像表示装置で表示する内容が、本願発明では「可変表示器の複数の回転ドラムと同じ画像」であって「画像を移動させ、その停止時における可変表示器の各回転ドラムのシンボルと画像表示装置の画像とを常に一致させ」たものであるのに対し、引用発明では、リールの絵柄を判別した結果に応じて表示される入賞表示プログラムの内容である点。 (相違点2) 可変表示器が、本願発明では「小型」とされているが、引用発明ではその大きさに関する明示的な記載は見あたらない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) スロット式ゲーム機として、複数の回転ドラムを用いてシンボルを可変表示するスロット式ゲーム機も、CRTや液晶などの画像表示装置を用いてシンボルの画像を可変表示するスロット式ゲーム機も、ともに本願出願時に慣用されていて(特開平4-49988号公報、特開平4-97765号公報など参照)、複数の回転ドラムを併設した可変表示器(以下、「回転ドラム」という)と、画像表示装置とは、スロットゲームのシンボルを可変表示するための均等な手段として周知であった。 出願人が主張するように、画像表示装置は「TV感覚」であるなど、回転ドラムと画像表示装置とは、表示手段としての興趣の面で異なる点があるとしても、スロット式ゲーム機の分野のようにゲーム機の興趣を高めることが常に設計的に行われている分野では、興趣が異なるものを複数種類組み合わせ、ひとつの目的のために重複して用いることは、当業者が格別な困難がなく採用し得る設計事項程度のことである。してみると、可変表示手段として技術的に均等な表示手段を2種類重複して設け、両者に同じスロットゲームを表示させ(一致した画像を表示させ)、当該スロット式ゲーム機の興趣を高めることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎないというべきである。そして、「回転ドラムを使用したスロットゲーム機と画像表示装置を使用したTV感覚のスロットゲーム機の両方を楽しむ」ことができるという相違点1に係る効果は、均等な表示手段を2種類重複して設けることにより当然に得られる効果であって、技術的にみて相乗効果ということはできない。 回転ドラムと画像表示装置とを1つのスロット式ゲーム機に設置した引用発明は、回転ドラムにスロットゲームを表示し、且つ、画像表示装置には、回転ドラムのシンボルと一致した画像ではないものの、該スロットゲームの結果を表す入賞表示を表示するものであるから、この点において引用発明は、回転ドラムと画像表示装置とを、ひとつのスロットゲームの結果を表示するための手段として重複して用いているものである。してみると、引用発明の当該画像表示装置の表示内容を替えて、回転ドラムと同じ画像によりスロットゲームの結果が表示されるように、画像表示装置に表示する内容を回転ドラムと同じ画像とし、その画像を移動させるとともに、停止時における回転ドラムのシンボルと画像を常に一致させることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ところで、スロット式ゲーム機に回転ドラムと画像表示装置を設け、画像表示装置に「可変表示器の複数の回転ドラムと同じ画像」を表示し、当該「画像を移動させ、その停止時における可変表示器の各回転ドラムのシンボルと画像表示装置の画像とを常に一致」させる機能を達成する具体的な構成について、本願発明では、本願発明の詳細な説明に徴しても単に「同期させる」と説明されているに過ぎず、格別の構成が新たに採用されて発明が完成したものとは認められない。一方、引用刊行物には、回転ドラムと画像表示装置による可変表示器の2つの表示装置に同じゲーム結果に関する内容を表示させるために、両者を連動させることが開示されていて(上記(f))、さらに、スロット式ゲーム機の本願出願時の技術水準(例えば、事前に決定したシンボルが表示されるように回転ドラムを停止させることが慣用の制御技術であったこと)を勘案すれば、シンボルを可変表示する2つの表示手段を連動させる構成とし、ゲーム結果である停止時の「可変表示装置のシンボル」と「画像表示装置の画像」とを常に一致させることは、当業者が適宜設計的に為し得たことである。 (相違点2について) 引用刊行物には、画像表示装置を相当の(スロットマシンの正面幅に収まる程度の)広面積に形成することが記載されており、当該大型の画像表示装置に入賞表示などの表示を行うことによる視覚的効果が説明されている(上記(h)参照)。このように、遊技者に対してゲーム結果が画像表示装置上で入賞表示により大きく見易く表示されれば、同じ正面パネル上に設けられスロットゲームが表示される回転ドラムについて、その大きさを小型とすることは適宜に為し得たことであるし、引用刊行物の図面を参照すれば、その回転ドラム(リール(3〜5))は、大型とされる画像表示装置に比較して相対的に小型である。 してみると、上記「相違点1について」で検討したように、引用発明の大型の画像表示装置に表示する内容を、ゲーム結果の表示である入賞表示から単に回転ドラムと同じ内容の表示に代えた場合、すなわち、回転ドラムと同じ画像を表示し、画像を移動させるとともに、その停止時における可変表示器の各回転ドラムのシンボルと画像表示装置の画像とを常に一致させるように構成した場合においても、やはり、ゲーム結果が大型の画像表示装置に表示されることにより視覚的効果が得られることは明らかであるから、これに伴い回転ドラムの大きさを小型とすることは、適宜に為し得たことにすぎない。 続いて、本願発明の効果として主張されている点について検討する。 「全体に薄型に形成することができ」るという効果、及び、「可変表示器の・・・表示窓の隙間から各回転ドラムの外周面のシンボルを覗き見ながら作為的に各回転ドラムを停止させるという好ましくない行為を完全に防止する」という効果は、薄型で表示窓の隙間を有しない画像表示装置を可変表示装置として用いた従来のスロット式ゲーム機が当然に有していた効果であり(特開平4-220274号公報の【要約】の欄など参照)、また、これに対応する「全体に薄型にすることが困難」、「隙間から奥が見える」という課題が、回転ドラムが有する課題であることからしても、前記効果は、画像表示装置と回転ドラムとを組合せ用いることより奏される新たな作用効果ではない。 そして、回転ドラムと画像表示装置とを重複して設けた場合に、何れを大型とし又は小型とするかにより、それに応じて、一方の可変表示装置が奏する効果が強調され、他方の問題点が縮小することは自明であるから、画像表示装置を大型にし回転ドラムを小型にすることで、それに応じて、画像表示装置が有する効果が強調され、回転ドラムが有する問題点が縮小されることは、寄せ集めによる自明の効果にすぎない。 してみると、本願発明の効果は、引用発明及び上記周知慣用の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、上記引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-07-18 |
結審通知日 | 2003-07-29 |
審決日 | 2003-08-12 |
出願番号 | 特願平5-207251 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 保光 |
特許庁審判長 |
村山 隆 |
特許庁審判官 |
榎本 吉孝 瀬津 太朗 |
発明の名称 | スロット式ゲーム機 |
代理人 | 村山 信義 |