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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1084623
審判番号 不服2000-17096  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-10-26 
確定日 2003-10-09 
事件の表示 平成 9年特許願第160557号「遊技機」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 2月24日出願公開、特開平10- 52533]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明の要旨
本願は、平成2年6月2日に出願した特願平2-144670号の一部を平成9年6月2日に分割した出願であって、その発明の要旨は、当審が平成13年12月18日付けで通知した拒絶理由に対して平成14年2月25日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「複数の識別情報が形成された回転部材の内側に遊技者が視認し得る識別情報を照射する発光部材を設け、複数の回転部材に可変表示される識別情報の停止時の組合せが、予め定められた特定の組合せで揃ったときに大当り状態を発生せしめる可変表示装置を備えた遊技機において、
可変表示中の前記複数の回転部材の表示態様と、最後の1つの回転部材が可変表示状態で且つ既に可変表示が停止状態となった回転部材の識別情報の組合せが前記特定の組合せであるリーチ状態中の可変表示が停止状態となった回転部材の表示態様と、すべての回転部材の可変表示が停止状態となってその識別情報の組合せが前記特定の組合せである大当り状態中の前記複数の回転部材の表示態様と、とが相互に異なるように前記発光部材が表示制御されると共に、可変表示中の回転部材の前記リーチ状態であるときの可変表示時間がリーチ状態でないときの可変表示時間よりも長くなるように可変表示制御されることを特徴とする遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例に記載の発明
当審が、平成13年12月18日付けで通知した拒絶理由は、本願の特許請求の範囲に記載の発明は、下記の第1引用例乃至第5引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
第1引用例.実願昭63-136952号(実開平2-58479号)
のマイクロフィルム
第2引用例.特開平2-98387号公報
第3引用例.実願昭58-128412号(実開昭60-37379号)
のマイクロフィルム
第4引用例.実願昭60-118188号(実開平2-27689号)
のマイクロフィルム
第5引用例.特開昭59-37966号公報

(1)第4引用例に記載の発明
i.第4引用例〔実願昭60-118188号(実開平2-27689号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「(1)複数のシンボル列の移動を停止させたときに、それぞれのシンボル列ごとに複数個ずつのシンボルが停止して表示されるともに、前記シンボルの表示位置に基づいて複数本の入賞ラインが設定されているスロットマシンにおいて、前記複数のシンボル列の移動が停止したとき、前記複数本の入賞ラインの内、入賞を構成する入賞ライン上で表示されているシンボルのそれぞれを他のシンボルよりも明るく、もしくは異なった色調で表示するようにしたことを特徴とするスロットマシンの入賞表示装置。
(2)入賞を構成する入賞ライン上に位置している前記シンボルのそれぞれを、点滅する照明を与えながら表示することを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載のスロットマシンの入賞表示装置。
(3)入賞を構成する人賞ライン上に位置している前記シンボルのそれぞれを、他のシンボルよりも高輝度で表示することを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載のスロットマシンの入賞表示装置。
(4)前記シンボル列は外周にシンボルが配列されたリールであり、該リールの内側に前記入賞ラインに対向して設けられた複数個の光源を点灯制御することによって該リール中の入賞を構成するシンボルを照明するようにしたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第2項もしくは第3項に記載のスロットマシンの入賞表示装置。」(第1頁第5行〜第2頁第12行)、
「上記の目的を達成する本考案は、シンボル列が停止して入賞の有無を判定した結果、いずれかの入賞ラインにおいて入賞が得られているときには、その入賞ライン上に位置しているシンボルを、他のシンボルとは異なった表示形態で表示するようにしたものである。リールタイプのスロットマシンで、シンボルを異なった表示形態で表示するためには、リールの周囲に併設されたランプ等の光源を、入賞判定部からの信号に応じて駆動制御し、入賞を構成するシンボルのそれぞれに連続的な照明や点滅する照明を与え、他のシンボルよりも明るくあるいは明滅させて表示すればよい。」(第4頁第20行〜第5頁第11行)、
「本考案を用いたスロットマシンの外観を示す第5図において、スロットマシンの本体1の前面には観察窓2〜4が設けられており、本体1内に設置された3個のリール5〜7のシンボルがそれぞれ3個ずつ観察できるようになっている。リール5〜7が停止したときに観察窓2〜4から観察される合計9個のシンボルについて、図示のように、横3列と斜め2列の合計5本の入賞ラインが設定されている。そして、ゲームの開始に先立って投入口8から投入されるメダルの枚数に応じ、有効化される入賞ラインの本数が決定される。例えば、メダルが1枚の場合には中央の横1列のみが有効化され、2枚の場合には横3列、5枚の場合にはさらに斜め2列を加えた合計5本が有効化されるようになっている。」(第5頁第19行〜第6頁第13行)、
「各リール5〜7が回転し始めてから所定の時間が経過すると、乱数発生部35からランダムなタイミングでストップ信号が出力される。これによりモータ駆動回路20〜22には駆動パルスが供給されなくなるから、リール5〜7が順次に停止する.そして、全てのリール2〜4が停止されると、そのときのカウンタ27〜29における計数値に基づき、シンボル検出部36〜38が観察窓2〜4に現れているシンボルを検出する。こうして特定された各リール5〜7のシンボルは入賞判定部12に入力され、入賞有効ライン決定部11により有効化された5本の入賞ラインについて入賞の有無が判定される。この判定の結果、例えば中央の横一列の入賞ラインについて入賞が得られていれば、入賞判定部12からの信号によってランプ制細部40が駆動され、中央の横一列に位置しているシンボル、すなわち入賞を構成しているシンボルに照明を与えるようにランプユニット41〜43が作動するとともに、メダル排出制御部45を介してホッパー46が駆動され、得られた入賞の種類に応じた枚数のメダルが払い出される。上述のように、入賞を構成しているシンボルに照明を与えるために、ランプユニット41〜43は、第2図に示したように、それぞれリール5〜7の内側からシンボルを照明するようになっている。リール5〜7に配列されているシンボルは、光散乱性のシート5a〜7aに印刷されているので、リール5〜7の内側から照明を与えることによって、シンボルが明るく浮き上がって表示されるようになる。なお、リール5〜7の回転中には、ランプユニット41〜43は駆動されていないが、観察窓2〜4からの外光によって、シンボルの移動を観察することができる。前記ランプユニット41(ランプユニット42,43についても同様の構成となっている)の要部断面を示す第3図において、ランプユニット41は、3個所に開口45a〜45cが形成されたケース45と、その内部に設けられた3個のランプ47a 〜47cとからなる。それぞれのランプ47a 〜47cの相互間には隔壁が設けられている。したがって上述のように、中央の横一列の入賞ラインで入賞が得られ、ランプ47bが点灯されたときには、リール5のシンボルS2のみが照明され、観察窓2を通してこれを観察すると、シンボルS2が他のシンボルS1 ,S3から浮き上がって観察されるようになる。なお、他のリール6,7についても同様に、中央に位置しているシンボルが各ランプユニット42,43により照明されるから、入賞を構成しているシンボルとその並び方、すなわち入賞が得られた入賞ラインが同時に把握できることになる。また、ランプユニット41〜43には、それぞれ3個のランプが設けられているので、入賞判定部12での入賞判定の結果、他の入賞ラインで入賞が得られているときには、ランプ制御部40により点灯するランプの組み合わせは、そのときの入賞ラインに対応して選択されるようになる。また、ランプを点滅制御することによって、入賞を構成しているシンボルを明滅して表示させることも可能である。このように、ランプを点滅させる場合には、リール5〜 7の回転中にもそれぞれのランプを連続点灯させておいてもよい。」(第8頁第6行〜第11頁第8行)、
「上述のように、本考案のスロットマシンの入賞表示装置によれば、入賞が得られたときの入賞ラインの表示が、シンボルそのものの表示形態を変えることによって行われるようになる。したがって、入賞ラインの把握と同時に、入賞を構成するシンボルの種類およびその組み合わせが一瞥で理解できるので、遊技者にとって非常に見やすい入賞表示機能が得られるようになる。」(第15頁第14行〜第16頁第1行)。
ii.これらの記載及び図面第1乃至5図によれば、第4引用例には、入賞を構成するシンボルの種類およびその組み合わせが一瞥で把握できるように、少なくとも一部のリールが回転中はすべてのランプユニットを消灯し、すべてのリールが停止したときのシンボルの組合せが特定の組合せとなる入賞状態になると入賞を構成するシンボルを照明するように対応するランプユニットを点灯又は点滅するか、あるいは、少なくとも一部のリールが回転中はすべてのランプユニットを点灯し、すべてのリールが停止したときのシンボルの組合せが特定の組合せとなる入賞状態になると入賞を構成するシンボルを明滅するように対応するランプユニットを点滅するスロットマシンとして、以下の発明が記載されているものと認められる。
「複数のシンボルが形成されたリールの内側に遊技者が視認し得るシンボルを照射するランプユニットを設け、複数のリールに可変表示されるシンボルの停止時の組合せが、予め定められた特定の組合せで揃ったときに入賞状態を発生せしめる可変表示装置を備えたスロットマシンにおいて、
可変表示中の前記複数のリールの表示態様と、最後の1つのリールが可変表示状態で且つ既に可変表示が停止状態となったリールのシンボルの組合せが前記特定の組合せであるリーチ状態中の可変表示が停止状態となったリールの表示態様を同じくするのに対して、すべてのリールの可変表示が停止状態となってそのシンボルの組合せが前記特定の組合せである入賞状態中の前記複数のリールの表示態様が異なるように前記ランプユニットが表示制御されるスロットマシン。」(以下、「引用発明」という。)

(2)第2引用例に記載の発明
i.第2引用例〔特開平2-98387号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「可変表示装置4は、第4図〜第8図のように遊技盤1の表面に取り付けられる主基板33を備え、主基板33の前面側上部には、天入賞口7の流下棚34と、左右に鎧部35を設けた前飾り板36とが組み付けられる。37は天入賞口7の出口流路、38はそのカバーである。前飾り板36の中央にはネームプレート39が取り付けられ、ネームプレート39の後方には飾りランプ18e〜18gが配設される。主基板33の開口部40の左右にはのランプカバー41a,41bを介して飾りランプ42a,42bが装着される。主基板33の後面側には、開口部40上縁の上枠79と接続して開口部40を囲う枠部材43と、中央に可変表示部44の窓部45を形成し下部に記憶個数表示部46の収納枠47を取り付ける表示カバー48と、可変表示部44および記憶個数表示部46等を取り付ける表示基板49と、配線等を保護する後面カバー50とが組み付けられる。可変表示部44には、可変表示部44を保護しかつ表示部44の表示に拡がりを持たせるよう凸面状に形成した可視部材からなるクリアプレート51が装着される。可変表示部44には、例えば136個のLED(発光素子)を横方向に17列、縦方向に8列並べて所定の画面を形成したドットマトリクス型のもので、発光の組み合わせによって第9図(A)〜(C)のように種々の数字、文字、図柄等の表示および発光の位置を変えることによって横方向や縦方向等に移動表示等が可能である。記憶個数表示部46は、4つのLEDからなり、特定入賞口6a〜6cへ入賞した球数の未処理個数(後述する)をLEDの点灯個数にて表示する。また、表示基板49には可変表示部44の上方に3群の停止表示LED51a〜51c(それぞれ3つのLEDからなる)が、記憶個数表示部46の左右には各1群の飾りLED52a,52b(それぞれ3つのLEDからなる)が取り付けられる。停止表示LED51a〜51cは、可変表示部44を3つの画面44a,44b,44cに分けるように間をおいて配置されると共に、それぞれ発光色の異なる2種類の素子を備え、緑色あるいは赤色に発光可能である。」(第2頁右下欄第10行〜第3頁右上欄第12行)、
「そして、遊技部3に発射された打球がうまく特定入賞口6a〜6cに入賞すると、デジタル44の図柄が回転を始め(第20図(A)の3.003、第21図(B)の4.115〜4.117)、また乱数SUBGENより求めたα時間によりランプ、LED等の出力遅延時間がセットされ(第20図(A)の3.004)、出力遅延時間が経過すると、飾りランプ18a〜18g、42a〜42fが点滅し、デジタル回転音が出力され、停止表示LED51a〜51cが消灯する(第23図(B)、第20図(B)の3.101,3.102)。なお、LED-A,B等は前の状態を継続する。」(第11頁右上欄第5〜17行)、
「デジタル44a〜44cの図柄の回転を停止する際に、図柄を緩やかな速度でスクロール、つまりドットマトリクス型の表示装置により図柄が流れるように表示および更新されるため、図柄および図柄の切り換わりが大変見やすくなり、このため遊技者にとって各デジタル44a〜44cが目標(当たり)の図柄で停止するかどうかの高い期待感が得られる。また、デジタル44a〜44cの停止直前にランダムに停止図柄がオーバランするため、意外性も有り、特にオーバランする図柄やその次の図柄等が当たり目のときには、スクロール表示とによって当たりに対する期待感が一層高められる。また、この場合各デジタル44a〜44cが停止するのに伴い停止表示LED51a〜51cが、例えば左デジタル44aが停止すると対応する停止表示LED51aが緑に点灯し、次に中デジタル44bが左デジタル44aと同図柄で停止すると対応する停止表示LED51bが同じく緑に点灯し、さらに右デジタル44cがこのとき左、中デジタル44a、44bと異なる図柄で停止すると対応する停止表示LED51cが赤に点灯するが、左、中デジタル44a、44cと同図柄で停止すると停止表示LED51cがLED51a,51bと同じく緑に点灯する(第21図(B)の4.130〜4.136)。このため、当たりの可能性が有るときは、デジタル44a〜44bの停止に伴って停止表示LED51a〜51bが順々に緑に点灯するため、先のLED51a,51bが緑になれば、デジタル44a,44bの停止図柄と共に当たりの可能性が高いことを知ることができ、最後のデジタル44cがどの図柄で停止するかあるいは最後のLED5cが緑になるかどうかの当たりの可能性への高い期待感が得られる。」(第12頁左上欄第1行〜右上欄第15行)、
「そして、当たりとなれば、所定のウェイトタイム経過後に変動入賞装置5のアタッカー(可動部材56a,56b)が開かれるのであるが、このウェイトタイム期間中ファンファーレ音が出力され、LED-A,Bに“0”が表示されると共に(第20図(F)の3.509、3.511、第20図(H)の3.705)、デジタル44の大当たり時のディスプレイ表示が行われる(第21図(D)4.161〜4.169)。また、当たりにより停止表示LED51a〜51cは9つのLEDが赤と緑に交互に切り換え点灯され、飾りランプ18a〜18g、42a〜42f、当たり表示ランプ19a,19b,20a,20b、72a〜72cが点滅される(第23図(A)の4.181〜4.186、第23図(B))。デジタル44は当たり図柄の点滅表示後、第29図のように小文字、中文字、大文字の“デ”が順に横方向に送り表示され、次に“デター”が下方から浮きだすように表示される。次に、第30図(A)、(B)のように人形図柄がバンザイを行いながら横方向に移動表示され、その後、第31図(A),(B)のように当たり図柄が伸び縮み表示される。」(第12頁左下欄第13行〜右下欄第15行)、
「また、デジタル44の図柄の停止に伴い、当たりの可能性の有無に応じて順に停止表示LED51a〜51cが緑あるいは赤に点灯されると共に、大当たりの発生時には停止表示LED51a〜51cおよび各ランプ18a〜18g、42a〜42f、19a,19b,20a,20b、72a〜72cが一斉に点滅を開始するので、高い装飾効果が得られ、大当たり発生に対する楽しみおよび大当たり発生時の喜びが増大する。」(第14頁右上欄第3〜11行)。
ii.これらの記載及び図面第1、4乃至8、20乃至23図によれば、第2引用例には、複数の画面に可変表示される図柄情報が順々に停止するに伴って、複数の画面に対応して可変表示中は消灯状態にあった複数の停止表示LEDが、停止した図柄情報の組合せに大当りの可能性があるときに順々に緑に点灯するとともに、大当りになると前記複数の画面に対応するすべての停止表示LEDが緑色に点灯し、続いて大当り状態中には前記複数の画面に停止表示されるすべての図柄情報が点滅するとともにすべての停止表示LEDが赤と緑に交互に切り換え点灯するパチンコ機として、以下の発明が記載されているものと認められる。
「複数の図柄情報が複数の画面に可変表示されるようにした可変表示部と、前記画面に対応して配置される停止表示LEDとを有し、複数の画面に可変表示される図柄情報の停止時の組合せが、予め定められた特定の組合せで揃ったときに大当り状態を発生せしめる可変表示装置を備えたパチンコ機において、
図柄情報が可変表示中の前記複数の画面に対応する停止表示LEDの表示態様と、最後の1つの画面が可変表示状態で且つ既に可変表示が停止状態となった画面の図柄情報の組合せが前記特定の組合せであるリーチ状態中の可変表示が停止状態となった画面に対応する停止表示LEDの表示態様と、すべての画面の可変表示が停止状態となってその図柄情報の組合せが前記特定の組合せである大当り状態中の前記複数の画面に対応する停止表示LEDの表示態様が相互に異なるように表示制御されるとともに、大当り状態中の前記複数の画面に停止表示される図柄情報の表示態様が可変表示中及びリーチ状態中とは異なるように表示制御されるパチンコ機。」

3.本願発明と引用発明との対比検討
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における、「シンボル」、「リール」、「ランプユニット」、「入賞状態」、「スロットマシン」は、それぞれ、本願発明における、「識別情報」、「回転部材」、「発光部材」、「大当り状態」、「遊技機」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違する。
一致点.「複数の識別情報が形成された回転部材の内側に遊技者が視認し得る識別情報を照射する発光部材を設け、複数の回転部材に可変表示される識別情報の停止時の組合せが、予め定められた特定の組合せで揃ったときに大当り状態を発生せしめる可変表示装置を備えた遊技機において、
可変表示中の前記複数の回転部材の表示態様と、最後の1つの回転部材が可変表示状態で且つ既に可変表示が停止状態となった回転部材の識別情報の組合せが前記特定の組合せであるリーチ状態中の可変表示が停止状態となった回転部材の表示態様の両者に対する、すべての回転部材の可変表示が停止状態となってその識別情報の組合せが前記特定の組合せである大当り状態中の前記複数の回転部材の表示態様が相互に異なるように前記発光部材が表示制御される遊技機。」
相違点a.可変表示中の前記複数の回転部材の表示態様と、最後の1つの回転部材が可変表示状態で且つ既に可変表示が停止状態となった回転部材の識別情報の組合せが前記特定の組合せであるリーチ状態中の可変表示が停止状態となった回転部材の表示態様とについて、本願発明は、相互に異なる表示態様となるように表示制御される構成であるのに対し、引用発明は、同一の表示態様になるように表示制御される構成である点。
相違点b.本願発明は、可変表示中の回転部材の前記リーチ状態であるときの可変表示時間がリーチ状態でないときの可変表示時間よりも長くなるように可変表示制御される構成であるのに対し、引用発明は、該構成を備えていない点。

(2)相違点a.の検討
i.第2引用例に記載の発明は、前記2.(2)ii.の認定によれば、図柄情報が可変表示される可変表示部の画面と、それに対応して配置された停止表示LEDの両者をもって、図柄情報にかかる可変表示手段を形成するものといえるから、可変表示中の図柄情報にかかる可変表示手段の表示態様と、リーチ状態中の可変表示が停止状態となった図柄情報にかかる可変表示手段の表示態様と、大当り状態中の可変表示が停止状態となった図柄情報にかかる可変表示手段の表示態様を、相互に異ならせるパチンコ機であるというべきものであって、本願発明と対比すると、第2引用例に記載の発明における、「図柄情報」、「可変表示部の画面」、「停止表示LED」、「パチンコ機」は、それぞれ、本願発明における、「識別情報」、「回転部材」、「発光部材」、「遊技機」に相当する。
ii.しかして、引用発明は、複数の識別情報が形成された回転部材と、発光部材の両者をもって、識別情報にかかる可変表示手段を形成するものであるから、引用発明及び第2引用例に記載の発明は、いずれも、可変表示中の可変表示手段の表示態様と、大当り状態中の可変表示手段の表示態様とを異ならせることで、大当り状態をアピールするという共通の作用目的を達成するものであるところ、可変表示状態から大当り状態へと移行する過程にあるリーチ状態中の可変表示手段の表示態様について、引用発明には大当り状態中の可変表示手段の表示態様と区別して表示することが示されるとともに、第2引用例に記載の発明には、可変表示中の可変表示手段の表示態様と、リーチ状態中の可変表示手段の表示態様と、大当り状態中の可変表示手段の表示態様とを、相互に異なるように表示することが示されている。
iii.そうすると、引用発明に示される、可変表示中の前記複数の回転部材の表示態様と、最後の1つの回転部材が可変表示状態で且つ既に可変表示が停止状態となった回転部材の識別情報の組合せが前記特定の組合せであるリーチ状態中の可変表示が停止状態となった回転部材の表示態様とが、同一の表示態様になるように表示制御される構成に代えて、前記第2引用例に記載の発明に示される、可変表示中の可変表示手段の表示態様とリーチ状態中の可変表示手段の表示態様とが相互に異なるように表示制御される構成を採用して、相違点a.にかかる本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものと認められる。

(3)相違点b.の検討
i.遊技機において、識別情報が可変表示されるリーチ状態であるときの可変表示時間がリーチ状態でないときの可変表示時間よりも長くなるように可変表示制御される構成を備える技術は周知(例えば、特開平2-98382号公報)である。
ii.そうすると、引用発明に示される、リーチ状態であるときの可変表示中の回転部材の可変表示時間について、前記周知技術に示されるリーチ状態でないときよりも長くなるように可変表示制御される構成を採用して、相違点b.にかかる本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものと認められる。

(4)作用効果について
本願発明における、回転部材の裏面に発光部材を設けたので、識別情報に光が照射されて識別情報の色調に変化を与えることができ、可変表示中とリーチ状態中と大当り状態中とで、発光部材の表示態様が互いに異なるので、リーチ状態及び大当り状態をそれぞれ強烈にアピールすることができるという作用効果は、引用発明に前記第2引用例に記載の発明を適用したものにおいて、当業者が当然予測できると認められる。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1の発明は、第4引用例に記載の発明(引用発明)及び第2引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-04-03 
結審通知日 2002-04-09 
審決日 2002-04-23 
出願番号 特願平9-160557
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 村山 隆
松川 直樹
発明の名称 遊技機  
代理人 今崎 一司  

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