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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  A63F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1084848
異議申立番号 異議2002-71173  
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-09-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-05-02 
確定日 2003-08-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3226523号「パチンコ球排出装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3226523号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1・手続の経緯
特許第3226523号の請求項1、2に係る発明についての特許出願は、平成6年3月11日に出願された特願平6-40702号(以下、原出願という)の一部が、平成13年2月19日に、特許法第44条第1項の規定により、新たな特許出願として分割されたものであって、平成13年8月31日にその特許権の設定登録がなされ、その後、丸本功彦、町田彬よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、平成14年8月6日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年10月11日に訂正請求(後日取下げ)がなされ、町田彬より平成14年11月6日付けで上申書が提出され、再度平成15年4月23日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年6月25日に訂正請求がなされたものである。
2・訂正の適否についての判断
(2-1)訂正の内容
ア・訂正事項a
明細書の特許請求の範囲の請求項1を、
「ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され、円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材と、
前記ケース内に設けられ、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材にパチンコ球を供給する第1の球供給路および第2の球供給路と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に夫々に設けられ、前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記ケース内に設けられ、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材を位相のずれ状態で回動駆動することに基いて前記第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータと、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、
前記第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部は、外周面が前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に回転力を付与する形状に設定されていることを特徴とするパチンコ球排出装置。」
と訂正する。
イ・訂正事項b
明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ・訂正事項c
明細書の段落【0005】を、
「【課題を解決するための手段】
請求項1記載のパチンコ球排出装置は、ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材と、前記ケース内に設けられ前記第1の球受部材および前記第2の球受部材にパチンコ球を供給する第1の球供給路および第2の球供給路と、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に夫々に設けられ前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、前記ケース内に設けられ前記第1の球受部材および前記第2の球受部材を位相のずれ状態で回動駆動することに基いて前記第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータと、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、前記第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部は外周面が前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に回転力を付与する形状に設定されているところに特徴を有する。」
と訂正する。
エ・訂正事項d
明細書の段落【0006】の記載を削除する。
(2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a及びbは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項c及びdは、上記訂正事項a及びbと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、何れも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。
(2-3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3・特許異議の申立て及び平成14年8月6日付け取消理由についての判断
(3-1)特許異議の申立ての理由の概要
(3-1-1)申立人・丸本功彦は、
甲第1号証(特開平5-245257号公報)、甲第2号証(特開平5-345069号公報)及び甲第3号証(特願平5-344258号(特開平7-171256号)の明細書又は図面)
を引用し、
本件特許の請求項1及び2に係る各発明は、当業者が甲第1及び2号証に記載された各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、
又、本件特許の請求項1及び2に係る各発明は、甲第3号証の明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、
更に、本件特許は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、
取り消されるべきものである、旨主張している。
(3-1-2)申立人・町田彬は、
甲第1号証(特開平5-345069号公報)、甲第2号証(特開平3-55087号公報)、甲第3号証(実願平2-80022号(実開平4-37487号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開平2-11186号公報)、甲第5号証(特開平1-151476号公報)及び甲第6号証(特開昭64-37980号公報)を引用し、
本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、又は、当業者が甲第1乃至4号証に記載された各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号、又は、同条第2項の規定に違反してなされたものであり、
本件特許の請求項2に係る発明は、当業者が甲第1乃至6号証に記載された各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、
取り消されるべきものである、旨主張している。
(3-2)平成14年8月6日付け取消理由の概要
当該取消理由は、
新たな特許出願の特許請求の範囲の請求項2に係る発明が原出願に記載されていない事項であることを理由に、本件特許に係る特許出願の出願日を新たな特許出願をした日である平成13年2月19日に認定するとともに、
刊行物1(特開平7-246274号公報)、刊行物2(申立人・丸本の甲第2号証、申立人・町田の甲第1号証である特開平5-345069号公報)、刊行物3(特開平8-309005号公報)、刊行物4(申立人・町田の甲第5号証である特開平1-151476号公報)、刊行物5(申立人・町田の甲第6号証である特開昭64-37980号公報)及び刊行物6(申立人・丸本の甲第1号証である特開平5-245257号公報)を引用し、
本件特許の請求項1に係る発明は、刊行物1若しくは2に記載された発明であり、又は、当業者が刊行物2に記載された発明及び刊行物4乃至6に記載された各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号、又は、同条第2項の規定に違反してなされたものであり、
又、本件特許は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、
取り消されるべきものである、というものである。
(3-3)本件特許に係る特許出願の出願日並びに上記取消理由で引用された刊行物1及び3について
上記2・の訂正が認められた結果、上記2・の(2-1)のイ・及びエ・で示したように、明細書の特許請求の範囲の請求項2及び明細書の段落【0006】の記載が削除されたから、本件特許に係る特許出願の出願日は、原出願の出願日の平成6年3月11日である。
そうすると、平成7年9月26日に公開された刊行物1及び平成8年11月26日に公開された刊行物3は、本件特許出願前に頒布された刊行物ではないから、上記取消理由で引用された刊行物1及び3については、以後、言及しない。
(3-4)本件の発明
上記2・で示したように上記訂正が認められたので、本件特許第3226523号の請求項1に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記2・の(2-1)のア・参照)。
(3-5)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定違反について
(3-5-1)異議申立人が引用する証拠に記載された発明/取消理由で引用された刊行物に記載された発明
申立人・丸本が引用する甲第1号証(取消理由の刊行物6でもある特開平5-245257号公報)(以下、引用例1という)には、
「球送り整流部材19を構成するラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bと、
前記ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bに賞球を供給する2列の整流樋6A,6Bと、
前記ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bに夫々に設けられ、前記2列の整流樋6A,6Bから供給される賞球を受ける複数の球受部23と、
前記ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bに複数の球受部23間に位置して夫々に設けられた球送り歯22とを備え、
前記ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bの球送り歯22は、外周面が前記2列の整流樋6A,6Bから供給される賞球の荷重で前記ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bに回転力を付与する形状に設定されている賞球整流送出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
申立人・丸本が引用する甲第2号証(申立人・町田の甲第1号証及び取消理由の刊行物2でもある特開平5-345069号公報)(以下、引用例2という)には、
特に、
「図4(a)に示すように、3つの係合爪12b、12b、12bをY字状に停止させている状態では、上の2枚の係合爪12b、12bの間にパチンコ球B1が止まり」(第3頁第4欄第29〜32行)及び【図4】(a)(第5頁)の記載から、
回転体12の2枚の係合爪12b、12bの間に、入口通路9aから供給されるパチンコ球を受ける球受凹部が形成されているものと認められること、
からみて、
「回転体12,12と、
前記回転体12,12にパチンコ球を供給する入口通路9a、9aと、
前記回転体12,12に夫々に設けられ、前記入口通路9a、9aから供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記回転体12,12を位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記回転体12,12の球受凹部内からパチンコ球を交互に放出する駆動モータ13と、
前記回転体12,12に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた係合爪12bとを備え、
前記回転体12,12の係合爪12bは、外周面が前記入口通路9a、9aから供給されるパチンコ球の荷重で前記回転体12,12に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球放出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
申立人・町田が引用する甲第2号証(特開平3-55087号公報)(以下、引用例3という)には、
「回転体4,5と、
前記回転体4,5にパチンコ球を供給する第1及び第2の球通路2,3と、
前記回転体4,5に夫々に設けられ、前記第1及び第2の球通路2,3から供給されるパチンコ球を受ける複数の球体係合部10,12と、
前記回転体4,5を位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記回転体4,5の球体係合部10,12内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータ7と、
前記回転体4,5に複数の球体係合部10,12間に位置して夫々に設けられた突部11,13とを備え、
前記回転体4,5の突部11,13は、外周面が前記第1及び第2の球通路2,3から供給されるパチンコ球の荷重で前記回転体4,5に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球排出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
申立人・町田が引用する甲第3号証(実願平2-80022号(実開平4-37487号)のマイクロフィルム)(以下、引用例4という)には、
「スプロケット9と、
前記スプロケット9に賞品球を供給する誘導樋7と、
前記スプロケット9に設けられ、前記誘導樋7から供給される賞品球を受ける複数の球受凹部と、
前記スプロケット9を回動駆動することに基づいて前記スプロケット9の球受凹部内から賞品球を導出する駆動モータ17と、
前記スプロケット9に複数の球受凹部間に位置して設けられた突設された区画部20とを備え、
前記スプロケット9の突設された区画部20は、外周面が前記誘導樋7から供給される賞品球の荷重で前記スプロケット9に回転力を付与する形状に設定されている賞品球導出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
申立人・町田が引用する甲第4号証(特開平2-11186号公報)(以下、引用例5という)には、
特に、
第3図(a)(第4頁)の記載から、
攪拌切り出し翼16に複数の球受凹部16a間に位置して突出部が設けられているものと認められること、
からみて、
「攪拌切り出し翼16と、
前記攪拌切り出し翼16に入賞球を供給する仕切り板14,15と、
前記攪拌切り出し翼16に設けられ、前記仕切り板14,15から供給される入賞球を受ける複数の球受凹部16aと、
前記攪拌切り出し翼16を回動駆動することに基づいて前記攪拌切り出し翼16の球受凹部16a内から入賞球を切り出す駆動モータ18と、
前記攪拌切り出し翼16に複数の球受凹部16a間に位置して設けられた突出部とを備え、
前記攪拌切り出し翼16の突出部は、外周面が前記仕切り板14,15から供給される入賞球の荷重で前記攪拌切り出し翼16に回転力を付与する形状に設定されている入賞球カウンタ」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
申立人・町田が引用する甲第5号証(取消理由の刊行物4でもある特開平1-151476号公報)(以下、引用例6という)には、
特に、
第2図(第8頁)、第3図(第8頁)、第6図(第8頁)、第8図(第9頁)及び第9図(第9頁)の記載から、
スプロケット状の流入規制部材9,9に夫々に、2条の誘導路6から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部が設けられているものと認められること、
からみて、
「スプロケット状の流入規制部材9,9と、
前記スプロケット状の流入規制部材9,9にパチンコ球を供給する2条の誘導路6と、
前記スプロケット状の流入規制部材9,9に夫々に設けられ、前記2条の誘導路6から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記スプロケット状の流入規制部材9,9に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた凸部とを備え、
前記スプロケット状の流入規制部材9,9の凸部は、外周面が前記2条の誘導路6から供給されるパチンコ球の荷重で前記スプロケット状の流入規制部材9,9に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球払出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
申立人・町田が引用する甲第6号証(取消理由の刊行物5でもある特開昭64-37980号公報)(以下、引用例7という)には、
「整流手段8を構成する歯車8A,8Bと、
前記歯車8A,8Bに賞球を供給する並流通路41A,41Bと、
前記歯車8A,8Bに夫々に設けられ、前記並流通路41A,41Bから供給される賞球を受ける複数の歯溝Sと、
前記歯車8A,8Bに複数の歯溝S間に位置して夫々に設けられた歯先8x、8yとを備え、
前記歯車8A,8Bの歯先8x、8yは、外周面が前記並流通路41A,41Bから供給される賞球の荷重で前記歯車8A,8Bに回転力を付与する形状に設定されている賞球流下通路機構」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
(3-5-2)平成14年11月6日付け上申書で引用された資料に記載された発明
資料1(特開平3-162883号公報)には、
「爪車10を挟んで設けられ且つ当該爪車10と共に払出装置5を構成する玉切円板8a,8bと、
前記玉切円板8a,8bにパチンコ球を供給する玉通路7a,7bと、
前記玉切円板8a,8bに夫々に設けられ、前記玉通路7a,7bから供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部81a,81bと、
前記玉切円板8a,8bを位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記玉切円板8a,8bの球受凹部81a,81b内からパチンコ球を交互に払出す電磁石14と、
前記玉切円板8a,8bに複数の球受凹部81a,81b間に位置して夫々に設けられた玉支持部82a,82bとを備え、
前記玉切円板8a,8bの玉支持部82a,82bは、外周面が前記玉通路7a,7bから供給されるパチンコ球の荷重で前記玉切円板8a,8bに回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球払出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
資料2(特開平3-55085号公報)には、
「ケーシング1内に室2を設け該室2に回転可能に収納され、回転部材4を構成するローター6と、
前記ケーシング1内に設けられ、前記ローター6に球状物体を供給する通路3と、
前記ローター6に夫々に設けられ、前記通路3から供給される球状物体を受ける複数の穴5と、
前記ローター6の軸方向に2列形成されている前記穴5を位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記ローター6の穴5内から球状物体を交互に排出する駆動モータ10と、
前記ローター6に複数の穴5間に位置して夫々に設けられたローター6の円周面6aとを備え、
前記ローター6の円周面6aは、外周面が前記通路3から供給される球状物体の荷重で前記ローター6に回転力を付与する形状に設定されている球状物体供給装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
資料3(特開平3-49786号公報)には、「ベース部材70内に回転可能に収納される球切円盤16a,16bと、
前記ベース部材70に設けられ、前記球切円盤16a,16bに賞球を供給する賞球通路74a,74bと、
前記球切円盤16a,16bに夫々に設けられ、前記賞球通路74a,74bから供給される賞球を受ける複数の球受凹部161と、
前記球切円盤16a,16bを位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記球切円盤16a,16bの球受凹部161内から賞球を交互に放出する駆動モータ10と、
前記球切円盤16a,16bに複数の球受凹部161間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、
前記球切円盤16a,16bの突出部は、外周面が前記賞球通路74a,74bから供給される賞球の荷重で前記球切円盤16a,16bに回転力を付与する形状に設定されている賞球放出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
(3-5-3)対比・判断
本件特許の請求項1に係る発明(前者)と、引用例1乃至7に記載された各発明とを対比すると、
引用例1に記載された発明の
「球送り整流部材19」、「ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21B」、「賞球」、「2列の整流樋6A,6B」、「球受部23」、「球送り歯22」、「ラチエットホイール形状をなす整流盤21A,21Bの球送り歯22」及び「整流送出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「回動部材」、「第1の球受部材および第2の球受部材」、「パチンコ球」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「球受凹部」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められ、
又、
引用例2に記載された発明の
「回転体12,12」、「入口通路9a、9a」、「回転体12,12の球受凹部内」、「放出」、「係合爪12b」、「回転体12,12の係合爪12b」及び「放出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「第1の球受部材および第2の球受部材」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内」、「排出」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められ、
又、
引用例3に記載された発明の
「回転体4,5」、「第1及び第2の球通路2,3」、「球体係合部10,12」、「回転体4,5の球体係合部10,12内」、「突部11,13」及び「回転体4,5の突部11,13」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「第1の球受部材および第2の球受部材」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「球受凹部」、「第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内」、「突出部」及び「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」
に相当するものと認められ、
又、
引用例4に記載された発明の
「スプロケット9」、「賞品球」、「誘導樋7」、「導出」、「突設された区画部20」及び「導出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「球受部材」、「パチンコ球」、「球供給路」、「排出」、「突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められ、
又、
引用例5に記載された発明の
「攪拌切り出し翼16」、「入賞球」、「仕切り板14,15」及び「切り出す」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「球受部材」、「パチンコ球」、「球供給路」及び「排出する」
に相当するものと認められ、
又、
引用例6に記載された発明の
「スプロケット状の流入規制部材9,9」、「2条の誘導路6」、「凸部」、「スプロケット状の流入規制部材9,9の突出部」及び「払出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「第1の球受部材および第2の球受部材」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められ、
又、
引用例7に記載された発明の
「整流手段8」、「歯車8A,8B」、「賞球」、「並流通路41A,41B」、「歯溝S」、「歯先8x、8y」、「歯車8A,8Bの歯先8x、8y」及び「流下通路機構」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「回動部材」、「第1の球受部材および第2の球受部材」、「パチンコ球」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「球受凹部」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められるから、
前者と引用例1乃至7に記載された各発明とは、
「第1の球受部材および第2の球受部材と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材にパチンコ球を供給する第1の球供給路および第2の球供給路と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に夫々に設けられ、前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材を位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータと、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、
前記第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部は、外周面が前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球排出装置」
乃至
「球受部材と、
球受部材にパチンコ球を供給する球供給路と、
前記球受部材に設けられ、前記球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記球受部材を回動駆動することに基づいて前記球受部材の球受凹部内からパチンコ球を排出する駆動モータと、
前記球受部材に複数の球受凹部間に位置して設けられた突出部とを備え、
前記球受部材の突出部は、外周面が前記球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記球受部材に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球排出装置」である、
点において一致し、
前者においては、回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材が、「ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され、円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に」回動部材を構成し、第1の球供給路および第2の球供給路並びに駆動モータが、「前記ケース内に設けられ」ている、
のに対し、
引用例1乃至7に記載された各発明においては、かかる構成が備わっていない、
点において相違するものと認められる。
そこで、この相違点の前者の構成が資料1乃至3に記載された各発明に備わっているかについて検討する。
先ず、資料1に記載された発明についてみるに、
資料1に記載された発明の
「払出装置5」、「玉切円板8a,8b」、「玉通路7a,7b」、「玉切円板8a,8bの球受凹部81a,81b内」、「払出す」、「電磁石14」、「玉支持部82a,82b」、「玉切円板8a,8bの玉支持部82a,82b」及び「払出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「回動部材」、「第1の球受部材および第2の球受部材」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内」、「排出する」、「駆動モータ」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められものの、
資料1に記載された発明の「爪車10」が前者の「円板状の隔壁部」に相当するとは到底認められないから、
資料1に記載された発明には、相違点の前者の構成は、備わっていないものと認められる。
次に、資料2に記載された発明についてみるに、
資料2に記載された発明の
「ケーシング1」、「室2」、「回転部材4」、「ローター6」、「球状物体」、「通路3」、「穴5」、「ローター6の穴5」、「ローター6の円周面6a」、「ローター6の円周面6a」及び「供給装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ、
前者の
「ケース」、「筒状の部分」、「回動部材」、「第1の球受部材および第2の球受部材」、「パチンコ球」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「球受凹部」、「第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められるから、
資料2に記載された発明には、
回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材が、「ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され」、第1の球供給路および第2の球供給路が、「前記ケース内に設けられ」る、点は備わっているものの、
回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材が、「円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に」回動部材を構成し、駆動モータが、「前記ケース内に設けられ」る、点は備わっていないものと認められる。
最後に、資料3に記載された発明についてみるに、
資料3に記載された発明の
「ベース部材70」、「球切円盤16a,16b」、「賞球」、「賞球通路74a,74b」、「球切円盤16a,16bの球受凹部161内」、「放出」、「球切円盤16a,16bの突出部」及び「放出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「ケース」、「第1の球受部材および第2の球受部材」、「パチンコ球」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内」、「排出」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められるから、
資料3に記載された発明には、
回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材が、「ケース内に回転可能に収納され」、第1の球供給路および第2の球供給路が、「前記ケース内に設けられ」る、点は備わっているものの、
回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材が、「ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され、円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に」回動部材を構成し、駆動モータが、「前記ケース内に設けられ」る、点は備わっていないものと認められる。
要するに、資料1乃至3に記載された各発明の何れにも、
上記相違点の前者の構成の内の、
回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材が、「円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に」回動部材を構成し、駆動モータが、「前記ケース内に設けられ」る、
という点は、備わっていないものと認められる。
したがって、
前者は、引用例2に記載された発明であるとも、又、当業者が引用例1乃至7に記載された各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとも、いうことができない。
(3-6)特許法第29条の2の規定違反について
(3-6-1)異議申立人が引用する証拠に記載された発明
申立人・丸本が引用する甲第3号証(特願平5-344258号(特開平7-171256号)の明細書又は図面)(以下、先願明細書という)には、
特に、
「爪車R1が図3のように係合爪12b、12bの背と腹の間でパチンコ球B1を受け」(第3頁第3欄第23,24行)及び【図3】(第5頁)の記載から、
爪車R1,R2の係合爪12b、12bの背と腹の間に、入口通路9aから供給されるパチンコ球を受ける球受凹部が形成されているものと認められること、
からみて、
「球制御用回転体12を構成する二組の爪車R1,R2と、
前記二組の爪車R1,R2にパチンコ球を供給する入口通路9a、9aと、
前記二組の爪車R1,R2に夫々に設けられ、前記入口通路9a、9aから供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記二組の爪車R1,R2を位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記二組の爪車R1,R2の球受凹部内からパチンコ球を交互に放出する駆動モータ13と、
前記二組の爪車R1,R2に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた係合爪12bとを備え、
前記二組の爪車R1,R2の係合爪12bは、外周面が前記入口通路9a、9aから供給されるパチンコ球の荷重で前記二組の爪車R1,R2に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球放出装置」を構成とする発明が記載されているものと認められる。
(3-6-2)対比・判断
本件特許の請求項1に係る発明(前者)と、先願明細書に記載された発明(後者)とを対比すると、
後者の
「球制御用回転体12」、「二組の爪車R1,R2」、「入口通路9a、9a」、「二組の爪車R1,R2の球受凹部内」、「放出」、「係合爪12b」、「二組の爪車R1,R2の係合爪12b」及び「放出装置」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「回動部材」、「第1の球受部材および第2の球受部材」、「第1の球供給路および第2の球供給路」、「第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内」、「排出」、「突出部」、「第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部」及び「排出装置」
に相当するものと認められるから、
両者は、
「回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材にパチンコ球を供給する第1の球供給路および第2の球供給路と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に夫々に設けられ、前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材を位相のずれ状態で回動駆動することに基づいて前記第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータと、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、
前記第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部は、外周面が前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に回転力を付与する形状に設定されているパチンコ球排出装置」である、
点において一致し、
両者間には、上記(3-5-3)の所に記したとおりの相違点があるものと認められる。
したがって、
前者が後者と同一であるということはできない。
(3-7)特許法第36条の規定違反について
特許異議申立て(申立人・丸本)の理由及び取消理由でいう特許法第36条の規定違反とは、本件特許の特許請求の範囲の第2項が本件特許の発明の詳細な説明に記載されていないというものであるところ、上記2・の訂正が認められた結果、上記2・の(2-1)のイ・及びエ・で示したように、明細書の特許請求の範囲の請求項2及び明細書の段落【0006】の記載が削除されたので、特許法第36条の規定違反は、解消したものと認められる。
(3-8)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠並びに取消理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
又、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、請求人から、更に平成15年7月22日付で提出されている上申書を検討しても、上記結論に影響を与えない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パチンコ球排出装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され、円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材と、
前記ケース内に設けられ、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材にパチンコ球を供給する第1の球供給路および第2の球供給路と、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に夫々に設けられ、前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、
前記ケース内に設けられ、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材を位相のずれ状態で回動駆動することに基いて前記第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータと、
前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、
前記第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部は、外周面が前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に回転力を付与する形状に設定されていることを特徴とするパチンコ球排出装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば球貸機や賞球排出装置に好適するパチンコ球排出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のパチンコ球排出装置の一例として、特開平3-111071号公報に記載された構成がある。この構成では、球タンクからのパチンコ球を供給する球供給路を上下方向に延びるように設けると共に、この球供給路の途中に歯部を突出させたスプロケット(球受部材)を回動可能に設け、更に、このスプロケットの回動を許容及び阻止するソレノイドを設けている。この構成では、スプロケットの回動が許容されたときに、パチンコ球が球供給路内を上から下へ自然落下して排出され、一方、ソレノイドによりスプロケットの回動が阻止されたときに、パチンコ球の落下がスプロケットの歯部によって止められて、パチンコ球の排出が停止されるように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来構成では、スプロケットの回動軸に多数のパチンコ球の荷重即ち大きな力が作用する構成であるので、パチンコ球の排出時にステッピングモータが大きな回動トルクを出力しなければならないという不具合がある。このため、ステッピングモータを大形化する、或いは、減速装置を設ける等の対策が必要となり、構成全体の製造コストが高くなるという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、モータ等の駆動装置の構成を小形化でき、構成全体の製造コストを安くし得るパチンコ球排出装置を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のパチンコ球排出装置は、ケース内に筒状の部分を設け該筒状の部分に回転可能に収納され円板状の隔壁部を挟んで設けられ且つ当該隔壁部と共に回動部材を構成する第1の球受部材および第2の球受部材と、前記ケース内に設けられ前記第1の球受部材および前記第2の球受部材にパチンコ球を供給する第1の球供給路および第2の球供給路と、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に夫々に設けられ前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球を受ける複数の球受凹部と、前記ケース内に設けられ前記第1の球受部材および前記第2の球受部材を位相のずれ状態で回動駆動することに基いて前記第1の球受部材の球受凹部内および前記第2の球受部材の球受凹部内からパチンコ球を交互に排出する駆動モータと、前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に複数の球受凹部間に位置して夫々に設けられた突出部とを備え、前記第1の球受部材の突出部および前記第2の球受部材の突出部は外周面が前記第1の球供給路および前記第2の球供給路から供給されるパチンコ球の荷重で前記第1の球受部材および前記第2の球受部材に回転力を付与する形状に設定されているところに特徴を有する。
【0006】
【0007】
【作用】
上記手段によれば、突出部の外周面の形状を、パチンコ球の荷重が球受部材を回転させる回転力として作用させるように形成しているので、モータの回動トルクを小さくすることができ、小形のモータを使用できる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明を賞球排出装置に適用した一実施例につき図面を参照しながら説明する。まず、パチンコ機全体の背面側を示す図2において、機本体1の背面側上部には、多数のパチンコ球(賞球)2を貯留する球供給源である例えば球タンク3が配設されている。この球タンク3内へは、図示しないパチンコ球供給機構からパチンコ球2が供給されるように構成されている。
【0009】
上記球タンク3の下部には球流下通路4が配設されており、球タンク3の底部から流出したパチンコ球2が上記球流下通路4内を流下する。この球流下通路4の内部は、リブにより前後に二つの通路に別れる構成となっている。そして、球流下通路4の右端部下方には、下端側が右・左に別れる二つの分岐流下通路5、6が配設されており、上記球流下通路4内の一方の通路が分岐流下通路5に連通し、他方の通路が分岐流下通路6に連通している。これら分岐流下通路5、6の下部に、賞球排出装置7が配設されている。この賞球排出装置7から排出されたパチンコ球2は、球排出口側である例えば球流下通路8内を流下した後、機本体1の前面側の下部に設けられた球受皿(図示しない)内へ貯留されるように構成されている。
【0010】
さて、上記賞球排出装置7について、図1及び図3ないし図8を参照して説明する。まず、図3は賞球排出装置7の上面図であり、図4は賞球排出装置7の下面図であり、図1は賞球排出装置7の図3中I-I線に沿う縦断面図であり、図5は賞球排出装置7の図3中V-V線に沿う縦断面図であり、図6は賞球排出装置7の図1中VI-VI線に沿う横断面図である。このうちの図1に示すように、賞球排出装置7のケース9内における右部及び左部には、第1の球供給路10及び第2の球供給路11が上下方向に延びるように設けられている。これら第1の球供給路10及び第2の球供給路11の各上端開口部10a及び11aは、図3にも示すように、ケース9の上面部に開口している。この場合、第1の球供給路10の上端開口部10aが上記一方の分岐流下通路5の下端部に連通し、第2の球供給路11の上端開口部11aが上記他方の分岐流下通路6の下端部に連通している。
【0011】
そして、第1の球供給路10の下端部はケース9のほぼ中央部分で内側に向けて(図1中左向きに)円弧状に曲がっており、これにより、第1の球供給路10の下端開口部10bが横向き(図1中左向き)に開口している。また、第2の球供給路11の下端部は、上記第1の球供給路10の下端部よりも一段下の位置で、内側に向けて(図1中右向きに)円弧状に曲がっており、これにより、第2の球供給路11の下端開口部11bが横向き(図1中右向き)に開口している。この場合、第1の球供給路10の下端開口部10bと、第2の球供給路11の下端開口部11bとは、一段ずれた状態でほぼ対向配置されている。
【0012】
また、第1の球供給路10の下端開口部10bと、第2の球供給路11の下端開口部11bとの間には、回動部材12が水平方向に、即ち、回動軸13を回動中心として回動可能に設けられている。この回動部材12は、例えばプラスチックで一体成形されており、図7にも示すように、上部スプロケット14と、この上部スプロケット14の下部に設けられた円板状の隔壁部15と、この隔壁部15の下部に設けられた下部スプロケット16と、上部スプロケット14の上面中心部及び下部スプロケット16の下面中心部に上下方向に延びるように突設された回動軸13とを有する構成となっている。この場合、上部スプロケット14が第1の球受部材を構成し、下部スプロケット16が第2の球受部材を構成している。
【0013】
そして、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各外周部には、それぞれ2個の球受凹部14a及び16aが均等に設けられている。更に、上部スプロケット14と下部スプロケット16とは、回転位相が90度ずれた状態で回動するように一体化されている。尚、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各外周部におけるほぼ扇形をなす突出部14b、16bの外周面部の形状は、図6において、矢印Aで示す回転方向の先端側半部の外周面部14cの曲率半径R1が回転方向の基端側半部の外周面部14dの曲率半径R2よりも大きくなるように設定されている。具体的には、R1が12mmに設定され、R2が10mmに設定されている。このような形状に構成することにより、図6に示すように、第1及び第2の球供給路10、11から供給されたパチンコ球2が各スプロケット14、16の突出部14b、16bの外周面部に当接した状態では、パチンコ球2の荷重が回動部材12を矢印A方向(正回転方向)へ回転させる回転力として作用するようになっている。
【0014】
また、図1に示すように、上記回動部材12の上方には、例えばステッピングモータ17が配設されており、このステッピングモータ17の回転軸17aが回動部材12の回動軸13の上端部に連結されている。上記ステッピングモータ17は、回動部材12(上部スプロケット14及び下部スプロケット16)を90度ずつ回動駆動することが可能なモータである。ここで、回動部材12の回動軸13の上端部には円板18が取付け固定されており、この円板18の外周縁部には4個のスリット18a(図8参照)が等間隔に(90度ずつの間隔で)形成されている。そして、図5に示すように、上記円板18の右端部には、その外周縁部を挟むように光センサ19が配設されている。この光センサ19は、例えばフォトインタラプタから構成されており、円板18のスリット18aを検出したとき、その検出信号を出力するように構成されている。上記光センサ19から検出信号が出力される時点で、ステッピングモータ17を回動停止させて回動部材12を停止させるようにして回動させれば、回動部材12を90度ずつ回動させることが可能である。この場合、光センサ19が回転センサを構成している。
【0015】
一方、図5に示すように、ケース9内における下半部側の左部及び右部には、第1の球排出路20及び第2の球排出路21が上下方向に延びるように設けられている。このうちの第1の球排出路20の上端開口部20aは、図6にも示すように、回転部材12の上部スプロケット14の外周部に対向するように横向き(図5及び図6中右向き)に開口しており、上部スプロケット14の球受凹部14aから排出されたパチンコ球2を受けるように構成されている。そして、第2の球排出路21の上端開口部21aは、回転部材12の下部スプロケット16の外周部に対向するように横向き(図5中左向き)に開口しており、下部スプロケット16の球受凹部16aから排出されたパチンコ球2を受けるように構成されている。また、第1の球排出路20及び第2の球排出路21の各下端部20b及び21bは、図4に示すように、ケース9の下面部に開口している。
【0016】
尚、上記第1の球排出路20及び第2の球排出路21の各下端部20b及び21bから排出されたパチンコ球2は、前記球流下通路8内へ排出されるように構成されている。また、図6に示すように、回動部材12即ち上部スプロケット14及び下部スプロケット16の外周は、上記球供給路10、11の各下端開口部10b、11b及び上記球排出路20、21の各上端開口部20a、21a部分を除いて、円筒部材22により囲繞されるように構成されている。更に、図5に示すように、上部スプロケット14の上側は上カバー部材23により覆われると共に、下部スプロケット16の下側は下カバー部材24により覆われる構成となっている。
【0017】
ここで、上カバー部材23の下面部には、例えば突条をなすガイド凸部25が図5及び図6に示すように下方に向けて突設されている。この場合、上部スプロケット14が回動しながら、その球受凹部14aからパチンコ球2が排出されるときに、該パチンコ球2が上記ガイド凸部25に当たることにより、外側即ち排出側へ確実に案内されるようになり、該パチンコ球2がスムーズに排出されるようになっている。同様にして、下カバー部材24の上面部にも、例えば突条をなすガイド凸部26が図5及び図6に示すように上方に向けて突設されている。この場合も、下部スプロケット16が回動しながら、その球受凹部16aからパチンコ球2が排出されるときに、該パチンコ球2が上記ガイド凸部26に当たることにより、外側即ち排出側へ確実に案内されるようになり、該パチンコ球2がスムーズに排出されるようになっている。
【0018】
一方、電気的構成を示す図9において、制御回路27は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、パチンコ機の運転全般及び賞球排出装置7の運転を制御する制御プログラムを有している。この制御回路27は、パチンコ球2が図示しない入賞口に入賞したことを検知する入賞検知回路28からの入賞検知信号、前記光センサ19からの検知信号、遊技者が操作する発射ハンドルによりオンオフ作動する発射スイッチ29からのスイッチ信号を受けるように構成されている。また、制御回路27は、前記ステッピングモータ17を駆動回路30を介して駆動制御すると共に、パチンコ球2を図示しない遊技盤の遊技部へ向けて発射する(打ち出す)ための発射モータ31を駆動回路32を介して駆動制御するように構成されている。
【0019】
次に、上記構成の作用を説明する。賞球排出装置7がパチンコ球2の排出を行なっていない場合、回動部材12は例えば図6に示す位置で停止している。この場合、上部スプロケット14は、一方の球受凹部14a内にパチンコ球2が入っており、他方の球受凹部14a内にはパチンコ球2が入っていない。そして、第1の球供給路10からのパチンコ球2が上部スプロケット14の突出部14bの外周面に当接している。また、下部スプロケット16は、第2の球供給路11からのパチンコ球2が一方の球受凹部16a内に入って供給された状態であると共に、他方の球受凹部16a内からパチンコ球2が排出された状態、即ち、他方の球受凹部16a内にはパチンコ球2が入っていない。このとき、第1の球供給路10内及び第2の球供給路11内には、パチンコ球2が隙間なく上下方向に並んで貯留されている。
【0020】
上記状態で、遊技部内へ打ち出されたパチンコ球2が入賞すると、賞球排出装置7により賞球として例えば15個のパチンコ球2を排出するように制御される。具体的には、ステッピングモータ17を通電駆動して、回動部材12を図6中矢印A方向へ90度回転させる。これにより、上部スプロケット14が90度回動してパチンコ球2が入っている球受凹部14aが第1の球排出路20の上部開口部20aに対応する位置まで回動するようになり、もって、球受凹部14aからパチンコ球2が第1の球排出路20内へ排出される。このとき、上カバー部材23のガイド凸部25によりパチンコ球2が案内されて確実に排出されるようになっている。そして、同時に、上部スプロケット14のうちのパチンコ球2が入っていない球受凹部14aが第1の球供給路10の下部開口部10bに対応するようになり、もって、第1の球供給路10からパチンコ球2が上記球受凹部14a内に供給されて貯留されるようになっている。
【0021】
また、このとき、下部スプロケット16も90度回動するが、パチンコ球2が入っている球受凹部16aは第2の球排出路21の上部開口部21aに対応する位置まで回動しないので、球受凹部16a内にパチンコ球2が貯留(保留)されたままである。そして、このとき、第2の球供給路11からのパチンコ球2は下部スプロケット16の突出部16bの外周面に当接するようになる。従って、図6に示す状態から、回動部材12を90度回転させると、1個のパチンコ球2が排出されるのである。
【0022】
続いて、上記状態(上記1個のパチンコ球2が排出された状態)で、ステッピングモータ17を通電駆動して、回動部材12を更に90度回転させると、下部スプロケット16が90度回動してパチンコ球2が入っている球受凹部16aが第2の球排出路21の上部開口部21aに対応するようになり、もって、球受凹部16aからパチンコ球2が第2の球排出路21内へ排出される。このとき、下カバー部材24のガイド凸部26により上記パチンコ球2が案内されて確実に排出されるようになっている。そして、同時に、下部スプロケット16のうちのパチンコ球2が入っていない球受凹部16aが第2の球供給路11の下部開口部11bに対応するようになり、もって、第2の球供給路11からパチンコ球2が上記球受凹部16a内に供給されて貯留される。
【0023】
そして、このとき、上部スプロケット14も90度回動するが、パチンコ球2が入っている球受凹部14aは第1の球排出路20の上部開口部20aに対応しないので、球受凹部14a内にパチンコ球2が貯留(保留)されたままである。そして、このとき、第1の球供給路10からのパチンコ球2は上部スプロケット14の突出部14bの外周面に当接するようになる。従って、上記状態から、回動部材12を90度回転させると、1個のパチンコ球2が排出されるのである。以下、回動部材12を90度回動させる毎に、上述した排出動作が繰り返し行われ、上部スプロケット14及び下部スプロケット16から交互にパチンコ球2が1個ずつ排出される。従って、回動部材12を90度ずつ15回回動させると、15個のパチンコ球2が排出されるのである。尚、回動部材12を90度ずつ回動させる制御を行なうに当たっては、円板18のスリット18aを光センサ19により検出したときに、その検出信号に基づいてステッピングモータ17の回動を停止させるように構成されている。
【0024】
このような構成の本実施例によれば、上部スプロケット14及び下部スプロケット16(回動部材12)を、回転位相が90度ずれた状態で一体に水平方向に回動するように設け、第1及び第2の球供給路10、11によりパチンコ球2を上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各球受凹部14a、16aへそれぞれ外周側から供給するように構成し、そして、ステッピングモータ17により上部スプロケット14及び下部スプロケット16(回動部材12)を90度ずつ回動駆動することにより、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各球受凹部14a、16aから交互にパチンコ球2を1個ずつ外周側へ排出する構成とした。これにより、上記実施例では、第1及び第2の球供給路10、11からのパチンコ球2が、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各球受凹部14a、16aへ外周側から供給されると共に、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各突出部14b、16bの外周面に外周側から当たる構成となるので、上部スプロケット14及び下部スプロケット16(回動部材12)の回動軸13に作用する力を大幅に小さくすることができる。このため、ステッピングモータ17の回動トルクを小さくし得ると共に、減速装置を使用しなくても小形のステッピングモータを使用することができ、製造コストを安くし得、また、全体の構成を小形化することができる。
【0025】
また、上記実施例では、上部スプロケット14及び下部スプロケット16には、従来構成とは異なり、自然落下したパチンコ球が当たる歯部を形成する必要がないので、上部スプロケット14及び下部スプロケット16(回動部材12)の耐久性及び強度をそれほど高くする必要もなくなり、製造コストを安くすることができる。
【0026】
更に、上記実施例の場合、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各外周面部の形状を、第1及び第2の球供給路10、11からのパチンコ球2が当接したときに、パチンコ球2の荷重が上部スプロケット14及び下部スプロケット16を正回転方向へ回転させる回転力として作用させるように構成した。具体的には、上部スプロケット14及び下部スプロケット16の各突出部14b、16bの外周面部の形状を、図6に示すように、矢印Aで示す回転方向の先端側半部の外周面部14cの曲率半径R1が回転方向の基端側半部の外周面部14dの曲率半径R2よりも大きくなるように構成したので、ステッピングモータ17の回動トルクを更に小さくすることができ、より一層小形のモータを使用することができる。
【0027】
一方、上記実施例では、上部スプロケット14の上側を覆う上カバー部材23に、上部スプロケット14の球受凹部14aからパチンコ球2がスムーズに排出されるように案内する第1のガイド凸部25を設けると共に、下部スプロケット16の下側を覆う下カバー部材24に、下部スプロケット16の球受凹部16aからパチンコ球2がスムーズに排出されるように案内する第2のガイド凸部26を設ける構成としたので、上部スプロケット14及び下部スプロケット16からパチンコ球2を確実に排出することができ、動作の信頼を極めて高くすることができる。
【0028】
尚、上記実施例では、ガイド凸部25、26を上カバー部材23及び下カバー部材24にそれぞれ設ける構成としたが、これに限られるものではなく、例えば上部スプロケット14及び下部スプロケット16(回動部材12)を囲む円筒部材22の側壁に設ける構成としても良い。また、上記実施例では、回動部材12を一体成形物で構成したが、これに代えて、各スプロケット等をばらばらの部品として形成し、これらの部品を連結して一体化するように構成しても良い。
【0029】
【発明の効果】
本発明は以上の説明から明らかなように、減速装置を使用しなくても、回動トルクの小さい小形のモータを使用することができ、低コスト化及び構成の小形化を計ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示すもので、図3中I-I線に沿う縦断面図
【図2】
パチンコ機の背面図
【図3】
賞球排出装置の上面図
【図4】
賞球排出装置の下面図
【図5】
図3中V-V線に沿う縦断面図
【図6】
図1中VI-VI線に沿う縦断面図
【図7】
回動部材の斜視図
【図8】
円板の上面図
【図9】
ブロック図
【符号の説明】
1は機本体、2はパチンコ球、3は球タンク(球供給源)、4は球流下通路、7は賞球排出装置、8は球流下通路(排出口側)、10は第1の球供給路、11は第2の球供給路、12は回動部材、13は回動軸、14は上部スプロケット(第1の球受部材)、16は下部スプロケット(第2の球受部材)、17はステッピングモータ、18は円板、19は光センサ(回転センサ)、20は第1の球排出路、21は第2の球排出路、23は上カバー部材、24は下カバー部材、25、26はガイド凸部、27は制御回路、28は入賞検知回路を示す。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-07-31 
出願番号 特願2001-41723(P2001-41723)
審決分類 P 1 651・ 161- YA (A63F)
P 1 651・ 113- YA (A63F)
P 1 651・ 121- YA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡部 葉子
榎本 吉孝
登録日 2001-08-31 
登録番号 特許第3226523号(P3226523)
権利者 奥村遊機株式會社
発明の名称 パチンコ球排出装置  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  

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