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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25B
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B25B
管理番号 1087280
審判番号 不服2002-1565  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-01 
確定日 2003-11-13 
事件の表示 平成9年特許願第20291号「筒状部品の引き抜き用治具」拒絶査定に対する審判事件[平成10年8月18日出願公開、特開平10-217145]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月3日の出願であって、平成13年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年2月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月4日付けで明細書を補正対象書類とする手続補正がなされたものである。

2.平成14年3月4日付けの、明細書を補正対象書類とする手続補正の適否
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月4日付けの、明細書を補正対象書類とする手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に記載される、
「内周面端部に係合受け部を有する筒状部品をこの筒状部品が嵌合された嵌合孔から若干押し出された状態で引き抜くのに用いられる筒状部品の引き抜き用治具において、弾性を有する材料により一体に形成された治具本体を備え、この治具本体に、前記筒状部品の内周両側に挿入され、本体側に凹部を形成し径方向に円滑に弾性変形する薄肉円弧状の互いに接近および離反する方向へ弾性変形可能な複数の保持片を突出形成し、これら保持片の先端部に、前記筒状部品の内周面端部の係合受け部に係合する係合部を形成したことを特徴とする筒状部品の引き抜き用治具。」を、
「内周面端部に係合受け部を有する成形用金型の内周スタンパー押さえをこの内周スタンパー押さえが嵌合された嵌合孔から 引き抜くのに用いられる成形用金型の内周スタンパー押さえの引き抜き用治具において、弾性を有する材料により一体に形成された治具本体を備え、この治具本体に、前記内周スタンパー押さえの内周両側に挿入されて前記治具本体の中心軸を挟んで反対側に位置し、径方向に円滑に弾性変形し薄肉円弧状で互いに接近および離反する方向へ弾性変形可能な複数の保持片を突出形成し、これら保持片の先端部に、前記前記内周スタンパー押さえの内周面端部の係合受け部に係合する係合部を形成し、かつ前記治具本体に、前記複数の保持片の内側に挿脱自在に嵌合するとともに、内径が前記治具本体の内径とほぼ等しい剛体からなる変形防止体を該治具本体に対してその軸方向に摺動自在に組み込んだことを特徴とする成形用金型の内周スタンパー押さえの引き抜き用治具。」と補正する補正事項を含むものである。
なお、下線は、補正箇所を明確にするため、当審で付したものである。

(2)当審の判断
上記の補正事項は、補正前の「若干押し出された状態で」という、引き抜く状態を限定する事項を削除し、また、補正前の「本体側に凹部を形成し」という保持片の形状を限定する事項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものである。
したがって、上記の手続補正は、特許法第17条の2第4項、及び、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成14年3月4日付けの、明細書を補正対象書類とする手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明(以下それぞれを、「本願発明1」等という。)は、平成13年10月26日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
「内周面端部に係合受け部を有する筒状部品をこの筒状部品が嵌合された嵌合孔から若干押し出された状態で引き抜くのに用いられる筒状部品の引き抜き用治具において、弾性を有する材料により一体に形成された治具本体を備え、この治具本体に、前記筒状部品の内周両側に挿入され、本体側に凹部を形成し径方向に円滑に弾性変形する薄肉円弧状の互いに接近および離反する方向へ弾性変形可能な複数の保持片を突出形成し、これら保持片の先端部に、前記筒状部品の内周面端部の係合受け部に係合する係合部を形成したことを特徴とする筒状部品の引き抜き用治具。」

4.周知発明及び刊行物記載の事項
本願の出願前に、以下の発明が周知であると認められる(必要なら、請求人自ら本願明細書中で先行技術としてあげている特開平7-32420号公報の段落【0002】〜【0007】、【図4】〜【図6】等を参照)。
「内周スタンパー押さえをこの内周スタンパー押さえが嵌合された嵌合孔から若干押し出し、この押出された部分を手掛かりにして、内周スタンパー押さえを嵌合孔から引き抜くこと」(以下、「周知発明」という。)

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である実願昭57-160470号(実開昭59-66578号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物」という。)には、
(イ)「c.考案の目的 本考案の目的は、・・・金型から直接ダイスを確実迅速かつ簡単容易に取外し得るコスト低廉にして取扱操作簡便至極な孔あけ用ダイス取外し工具を創作して提供することである。」(明細書第3頁11行〜18行)、
(ロ)「f.実施例 ・・・筒形本体11はダイス4の孔6の径内に挿入可能な外径をもち、その本体の先端に設けた挿入部12は先端に向けて内外径共徐々に小径となっていると同時に、先端面から長手方向に3乃至4等分間隔の割り溝13、13・・・で分割されており、・・・挿入部の先端周面には広径鉤15、15・・・が段差16、16・・・をつけて突設されている。第2図は挿入部12をダイス4の孔6内に挿入した状態を示し、この挿入時には広径鉤15、15・・・の外端面が孔6内に挿入し得るように内方に位置している。第3図は第2図の状態下において雌ねじ14に雄ねじ棒17をねじ込み進入させた状態を示し、ねじ棒17の進入に伴なって割り溝13、13・・・が徐々に開かれて挿入部12の外径が拡大し、広径鉤15、15・・・の段差16、16・・・がダイス4の径違い段差部に引掛かる。そこで、雄ねじ棒17を強く引けば、ダイス4が金型8から取り外される。筒形本体11と挿入部12の材質は金属または弾性復元力を有する合成樹脂で作成され、前者すなわち金属による場合には使用後第2図の状態に自動的に復元し得ない・・・。」(明細書第4頁19行〜第6頁8行)、
(ハ)「g.考案の効果 本考案は上記の構成と作用を有するので、・・・本案工具の挿入拡開によりきわめて簡単かつ容易に、そして確実かつ迅速にダイス4を取り外すことができるようになったから、ダイスの取外し交換に手間と時間がかからず、作業の中断もまた少なくて済み、能率がよく、更に、工具の構造が簡単で誰れでも間違いなく操作することができコストが低廉であるなど実用上の効果顕著である。」(明細書第6頁9行〜第7頁1行)と記載されている。
上記摘記事項(ロ)及び第2、3図の記載からみて、刊行物には、
「内周面に径違い段差部を有するダイス4をこのダイス4が嵌合された金型8の嵌合孔から引き抜くのに用いられるダイス4の取外し工具において、弾性復元力を有する合成樹脂により挿入部12と一体に形成された筒形本体11を備え、この筒形本体11に、前記ダイス4の内周両側に挿入され、径方向に変形し互いに接近および離反する方向へ変形可能な、3乃至4等分間隔の割り溝13によって分割された挿入部12を突出形成し、挿入部12の先端部に、前記ダイス4の内周面の径違い段差部に係合する広径鉤15の段差16を形成したダイス4の取外し工具」との事項が記載されているものと認められる。

5.対比
そこで、本願発明1と周知発明とを対比すると、後者の「内周スタンパー押さえ」は、その形状からみて、前者の「筒状部品」に相当し、また、内周スタンパー押さえは若干押出された部分を手掛かりにして引き抜かれるから、後者の内周スタンパー押さえ端部の引き抜きの手掛かりとなる「押出された部分」は、その機能からみて、前者の筒状部品の「端部の係合受け部」というべきものである。
してみると、本願発明1と周知発明とは、
「端部に係合受け部を有する筒状部品をこの筒状部品が嵌合された嵌合孔から若干押し出された状態で引き抜く」で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉前者は筒状部品の係合受け部が内周面に存在するのに対して、後者は筒状部品の係合受け部が内周面に存在するか否かが明らかではない点。
〈相違点2〉前者は、筒状部品の引き抜きを、弾性を有する材料により一体に形成された治具本体を備え、この治具本体に、前記筒状部品の内周両側に挿入され、本体側に凹部を形成し径方向に円滑に弾性変形する薄肉円弧状の互いに接近および離反する方向へ弾性変形可能な複数の保持片を突出形成し、これら保持片の先端部に、前記筒状部品の内周面端部の係合受け部に係合する係合部を形成した引き抜き用治具で行うのに対して、後者は、筒状部品の引き抜きをどのようにして行うのか明らかではない点。

また、本願発明1と上記刊行物記載の事項とを対比すると、後者の「径違い段差部」は、その技術的意義からみて、前者の「係合受け部」に相当し、同様にして、後者の「ダイス4」は前者の「筒状部品」に、「ダイス4の取外し工具」は前者の「筒状部品の引き抜き用治具」に、後者の「弾性復元力を有する合成樹脂」は前者の「弾性を有する材料」に、後者の「筒形本体11」は前者の「治具本体」に、後者の「3乃至4等分間隔の割り溝13によって分割された挿入部12」は前者の「複数の保持片」に、後者の「広径鉤15の段差16」は前者の「係合部」に、それぞれ相当するから、刊行物には、
「内周面に係合受け部を有する筒状部品をこの筒状部品が嵌合された嵌合孔から引き抜くのに、弾性を有する材料により保持片と一体に形成された治具本体を備え、この治具本体に、前記筒状部品の内周両側に挿入され、径方向に変形し互いに接近および離反する方向へ変形可能な複数の保持片を突出形成し、これら保持片の先端部に、前記筒状部品の内周面の係合受け部に係合する係合部を形成した引き抜き用治具を用いる」との発明が示されているということができる。

6.当審の判断
そこで、上記相違点2について検討するに、上記周知発明と上記刊行物記載の発明とは、「筒状部品をこの筒状部品が嵌合された嵌合孔から引き抜く」という課題において共通するものであるから、周知発明における筒状部品の引き抜きを刊行物記載の発明の引き抜き用治具を用いて行うことは当業者が容易になし得ることである。そして、刊行物記載の発明で用いる引き抜き治具の保持片は、弾性を有する材料により形成されるものであるから、周知発明に刊行物記載の発明を適用するに際して、保持片の変形を弾性により行うこと、また、保持片の弾性変形を容易とする観点にたって、保持片の形状構造を、治具本体側に凹部を形成するとともに、薄肉円弧状とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。してみると、周知発明の相違点2に係る構成を、刊行物記載の発明を適用することにより、本願発明1のものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
次いで、相違点1について検討するに、刊行物記載の発明の筒状部品は係合受け部をその内周面に有しているから、周知発明に刊行物記載の発明を適用すれば、周知発明の相違点1に係る構成は、自ずと本願発明1の相違点1に係る構成に到達する。
そして、本願発明1の作用効果は、周知発明及び刊行物記載の発明から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本願発明1は、周知発明及び刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明2〜4について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-09 
結審通知日 2003-09-16 
審決日 2003-09-29 
出願番号 特願平9-20291
審決分類 P 1 8・ 56- Z (B25B)
P 1 8・ 121- Z (B25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大橋 康史  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 三原 彰英
林 茂樹
発明の名称 筒状部品の引き抜き用治具  
代理人 牛木 護  

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