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審判番号(事件番号) データベース 権利
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無効200035214 審決 特許
無効200035215 審決 特許
不服200629058 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1087408
審判番号 不服2001-19641  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-01 
確定日 2003-11-05 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2000-700079「シクロスポリン含有医薬組成物」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,本件特許及び本件発明
特許第1996397号(以下、本件特許という。)は、平成1年9月14日(パリ条約による優先権主張1988年9月16日及び1989年2月9日 イギリス)に出願され、平成7年3月22日に出願公告され、平成7年12月8日に特許権の設定登録がなされたものであって、その特許発明の要旨は、出願公告された明細書(特公平7-25690号公報)の記載から見てその特許請求の範囲の請求項1〜57に記載のとおりのものである。

【請求項1】
有効成分としてシクロスポリンを含有する水中油(oil-in-water)型のミクロエマルジョン前濃縮物である、医薬組成物。
(請求項2以下は省略する。以下、これを本件特許発明という。)

2,本件出願
本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、本件出願という。)は、平成12年6月14日に出願され、平成13年8月7日に拒絶査定がなされ、平成13年11月1日に審判請求がされたものである。
本件出願は、平成12年8月2日付けで補正された本件出願の願書の記載及び処分を受けたことを証明する添付資料(承認書 承認番号21200AMY00065000)によると、特許発明の実施について特許法67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったその政令で定める処分として、以下の内容を特定している。

(1)延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
(2)処分を特定する番号
承認番号21200AMY00065000
(3)処分を受けた日
平成12年3月14日
(4)処分の対象となった物
ネオーラル(登録商標)内用液
(5)処分の対象となった物について特定された用途
1、腎移植における拒否反応の抑制
2、骨髄移植における拒否反応及び移植片対宿主病の抑制
3、ベーチェット病(眼症状のある場合)
4、肝移植における拒否反応の抑制
5、尋常性乾癬(皮疹が全身の30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性感染
6、再生不良性貧血(重症)、赤芽球癆
7、ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイドに抵抗性を示す場合)

なお、(4)の処分の対象となった物として、願書には上記の医薬品名(品目)が記載されているが、添付資料によれば当該医薬品の有効成分は「シクロスポリン」であるから、正しくは「シクロスポリン」である。

3,原審の拒絶の理由の概要

原審の拒絶の理由は、特許第1996397号に記載の医薬製剤の有効成分は、「シクロスポリン」と認められるが、当該成分については、願書の「処分の対象となった物について特定された用途」欄に記載の種々の用途に適用することが既に厚生大臣によって承認されていたものと認められるから、出願人が特許権の存続期間延長を求めている特許発明の有効成分、効能・効果を有する医薬品に関しては、特許発明を既に実施することができるようになっていたものである。したがって、当該承認は、上記特許発明の実施に必要な処分とはいえず、特許法第67条の3第1項第1号に該当するというものである。

4,当審の判断

特許法第68条の2は、「特許権の存続期間が延長された場合・・・の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と規定しており、この規定に照らすと、延長登録が認められるためには、政令で定める当該処分の範囲と延長登録出願の対象である特許発明の範囲とが重複していることが必要であり、かつ同じ物及び同じ用途に使用されるものに特許期間の延長効果を何回も付与することは法律の予定するところではないから、すでに別の同様な処分を受けたことによって特許発明の実施をすることができるようになっていないことが必要である。したがって、同じ物を同じ用途に使用する以上、その使用形態等の変更のため重ねて政令で定める処分が必要とされる場合であっても、そのことを理由に特許期間の登録延長は認められない。これを医薬特許についてみると、特許法第67条2項の規定する政令に基づく薬事法第14条1、4項の規定する医薬品の製造、輸入等の承認は、当該医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤形、用法、用量などを特定した品目単位で行われているが、その記載内容から見て当該医薬品の有効成分、効能・効果から当然特許発明の実施と認めるために必要なその物及び用途が特定されるから、最初に当該処分を受けた後、当該医薬品の有効成分、効能・効果以外の剤形、用法、用量などの変更の必要上、再度処分を受ける必要が生じたとしても、後の処分によって特許期間の登録延長を認めることはできない。(平成7年(行ケ)155号判決)

これを、本件についてみるに、参考資料1-1(サンディミュン(登録商標)(内用液)の中入れ書、第1頁右上)によれば、シクロスポリンを有効成分とする医薬品であるサンディミュン(登録商標)(内用液)について、1985年12月に薬価収載され1986年2月に販売開始、1996年1月効能追加の承認を受けたことが明らかであり、その効能・効果は本件において処分の対象となった物について記載された上記1〜7の用途と同じである。
そうすると、シクロスポリンを有効成分(物)とし、上記1〜7の効能・効果(用途)を有する医薬品については本件の処分の対象とされる医薬品、ネオーラル(登録商標)内用液の承認以前に厚生大臣の承認を受けていたのであるから、本件出願の処分は当該「物」及び「用途」に対する最初の処分とすることはできない。

請求人は、同じ有効成分、効能・効果の医薬品について、先にエマルジョンの形態のものとして承認を受けていても、ミクロエマルジョン前濃縮物のものについては最初の承認であり、その承認がない間は現実には実施できなかったのであるから、先の承認により本件発明の実施ができたとはいえないとし、原審は処分の対象となった物の実体が「シクロスポリンを含有する水中油型のミクロエマルジョン(前濃縮物)」であり、シクロスポリンとは構成、効果が著しく相違するにも拘わらず、「シクロスポリン」(またはその常套製剤)であると誤認していると主張する。

しかしながら、特許法第68条の2の規定は、特許権の存続期間延長登録の制度の趣旨、立法の経緯及び条文の文言に照らし、存続期間が延長された後の特許権の効力につき、一方では、処分と無関係な範囲には及ぼさないこととすると同時に、他方では、期間延長後の特許権者の権利主張の実効性を確保するため、処分単位で認めることとしないで、その処分において特定の用途が定められている場合には、処分の対象となった物につき、その処分において定められた特定の用途について実施する場合全般にまで拡大して及ぼしたものであることが明らかであり、これを前提とした場合、特許法第68条の2のみならず、特許法第67条及び第67条の3にいう「特許発明の実施」の文言についても、具体的な処分の対象そのもの(品目)を単位としてではなく、処分の対象となった「物」と、その処分において定められた特定の「用途」によって特定される範囲のものすべてを単位として解釈するのが自然かつ合理的である(平成10年(行ケ)362号判決)。すなわち、「特許発明の実施」は現実に特許発明が品目レベルで実施することができたかどうかではなく、物(有効成分)と用途(効能効果)を単位としてみたとき、それが既に処分を受けたことにより実施できる範囲にあるかどうかで判断されるのであるから、物、用途以外の要素が新しい特定の品目についての承認は、もはや「特許発明の実施」に必要な処分とはいえないものである。

また、上記したように医薬品の場合、「物」とは「有効成分」を意味するところ、「シクロスポリンを含有する水中油型のミクロエマルジョン(前濃縮物)」は、「シクロスポリン」の特定の製剤形態をいうにすぎず、「物」としては「シクロスポリン」(またはその常套製剤)となんら異なるものではない。添付資料(本件の処分の対象医薬品であるネオーラル(登録商標)内用液の承認申請書)の【備考2】によれば、申請区分は107(医療用医薬品(7)医薬品)とされ「本剤は、既承認のサンディミュン(登録商標)内用液及びカプセル25mg、50mgの剤型追加に係る医薬品である・・・」と記載されている(剤型追加に係る医薬品とは「既承認医薬品等と有効成分、投与経路、効能効果、用法用量が同一であるが、剤形、含量が異なる医薬品」についての承認の申請区分をいう。)ように、請求人自身も本件の処分の対象となる医薬品の有効成分や効能効果が既承認医薬のそれと同一であるとしていることは明らかであり、これに反する請求人の主張は採用できない。

なお、請求人は、本願願書の「処分の対象になった物に特定された用途」欄に記載された種々の用途のうち「ネフローゼ症候群(頻回再発性あるいはステロイドに抵抗性を示す場合)」の効能はシクロスポリンを含むいかなる薬剤についても厚生大臣の承認がなされていなかった旨上申しているが、本件出願の処分の対象物とされたネオーラル(登録商標)内用液の承認申請書【備考2】には「本剤は、・・サンディミュン(登録商標)の効能・効果のうち・・ネフローゼ症候群については、本剤の承認申請時点では再審査期間内であるため、この2効能については新効能医薬品の申請区分に準じる。」と記載され、既に承認済みのサンディミュン(登録商標)の効能・効果にもかかる用途の記載がなされている(参考資料1-1参照)ことからみて、本件出願で示された処分によってはじめて上記用途が承認されたものではないことは明白であるから、これに限定しても延長登録を受ける余地はない。

以上のとおり、本件出願に係る医薬品に対する処分は本件特許発明の実施に必要な処分であったとは認められないから、本件出願は、特許法第67条の3第1項第1号の規定に該当する。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-06-05 
結審通知日 2003-06-10 
審決日 2003-06-24 
出願番号 特願2000-700079(P2000-700079)
審決分類 P 1 8・ 71- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 聖子  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 深津 弘
竹林 則幸
発明の名称 シクロスボリン含有医薬組成物  
代理人 田村 恭生  
代理人 青山 葆  

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