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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B |
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管理番号 | 1087488 |
審判番号 | 不服2002-11285 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-09-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-20 |
確定日 | 2003-11-20 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 35074号「カメラシステム」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 9月 9日出願公開、特開平 6-250277]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願は、平成5年2月24日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成15年6月20日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものである。 請求項1 カメラと、該カメラで撮影された画像を処理して出力する画像出力装置とを有するカメラシステムにおいて、 前記カメラは、撮影時に使用した撮影レンズの種類情報、焦点距離情報及び、焦点位置情報を共に記録する記録手段を有し、 前記画像出力装置は、複数の撮影レンズに対応するように、撮影レンズの焦点距離と焦点位置とによって参照可能な画像歪曲補正用データを記憶している記憶手段と、前記記録手段で記録された情報と前記画像を読み出す読出手段と、前記読出手段で読み出された撮影時の焦点距離情報と焦点位置情報によって、前記記憶手段に記憶されている画像歪曲補正用データを参照し、該画像歪曲補正用データによって再現される歪曲収差近似曲線式を用いて歪曲補正演算を行うと共に、画像周辺部に対して補間処理して出力する出力手段と、 を具備することを特徴とするカメラシステム。 2.当審が拒絶の理由に引用した刊行物 特開昭59-196665号公報(以下、「引用例1」という。) 特開平4-61570号公報(以下、「引用例2」という。) 2.1 引用例1の記載内容 第4頁右下欄第2行〜同欄第18行には、「電子スチルカメラで撮影した画像を記録したメモリ5を再生機にセットすると、メモリ5には画像情報とともにそのカメラに用いられているレンズの歪み情報が記憶され…メモリ5内の画像情報を再生メモリ14に転送する。…カメラのレンズの種類に応じたいくつかの歪み処理データ…のうち、いま再生機にセットされているメモリ5から読み出されRAM13に書込まれた歪み情報に対応した歪み処理データを読み出して再生メモリ14に連送される画像情報を処理する。」と記載されている。 2.2 引用例2の記載内容 記載1. 第2頁右上欄第9行〜同欄第17行には、「この発明は、被写体(1)の光学像(2)がレンズ(11)を介して感光面(12s)に結像された固体撮像素子(12)からの映像信号を処理する映像信号処理装置であって、2次元補間演算回路(21)と画像メモリ(22)とを含む標本化格子変換手段(20)を備え、この標本化格子変換手段は、レンズの図形歪情報に基づいて、変換時の標本化格子の変位量を制御して、レンズによる図形歪を補正するようにした映像信号処理装置である。」と記載されている。 記載2. 第2頁左下欄第10行〜同頁右下欄第20行には、「第1図において、(11)はズームレンズ、(12)は例えばCCDのような固体撮像素子であって、ズームレンズ(11)を介して、被写体(1)の光学像が撮像素子(12)の感光面上に結ばれる。 (20)は標本化格子変換手段であって、補間演算用の2次元デジタルフィルタ(21)と画像データメモリ(22)とを含み、撮像素子(12)の出力は、A-D変換器(23)とバッファメモリ(24)とを経て、デジタルフィルタ(21)に供給され、デジタルフィルタ(21)の出力が画像データメモリ(22)に書き込まれる。(25)はアドレス信号発生回路であって、カウンタ(25c)を含み、この信号発生回路(25)からのアドレス信号により、画像データメモリ(22)の書き込みと読み出しが制御される。メモリ(22)から読み出された画像データが、D-A変換器(26)を経て、端子OUTに導出される。 (27)はシステム制御回路であって、補正量メモリ(28)と接続され、ズームレンズ(11)からのレンズ情報が供給される。メモリ(28)には、レンズの使用条件毎に、画面の各部について予め定まる補正量(ベクトル)が格納され、これに基づく制御信号が、制御回路(27)から2次元デジタルフィルタ(21),バッファメモリ(24)及びアドレス信号発生回路(25)にそれぞれ供給される。 一般に、補間演算では、y=(sinx)/xの形の補間関数の使用が理想的であるが、 y=ax3+bx2+cx+d の形の3次畳み込み関数を使用した場合、2次元デジタルフィルタは、4×4の規模で構成することができる。」と記載されている。 記載3. 第3頁右上欄第19行〜第3頁右下欄第18行には、「次に、第4図及び第5図を参照しながら、この発明の一実施例の基本動作について説明する。 撮像素子(12)の画素数は、例えば720×525のように膨大であるが、簡単のために、第4図では、縦・横とも5本の標本化格子で代表され、このうち、中央の縦線・横線がレンズの光軸と交差するようにされる。 レンズによる図形歪が正方向の場合、方形格子(被写体)(1)の光学像(2)は、第4図Aに実線で示すような糸巻き形になって、鎖線で示した撮像素子の感光面(12s)上に結ばれる。この場合、光学像(2)の各格子点Pijは、細線で示すような無歪像(3)(同図B参照)の対応する格子点Qijよりも外方向に位置する。また、各格子点Pijの歪はベクトルDijで表される。 この実施例においては、デジタル信号処理技法を用いて、歪がある光学像(2)の格子点Pijに代表される各画素を歪ベクトルDijと同大逆方向に等価的に変位させることにより、対応する格子点Qijに代表される本来の無歪像(3)を等価的に形成している。即ち、標本化格子の変換処理を行うことにより、レンズによる図形歪を補正している。 観点を変えれば、この図形歪補正は、第4図Cに細線で示すように、撮像素子の感光面(12s)上で水平方向に整列配置さた各画素を、例えば、歪補正ベクトルCijだけ変位させて、等価的に、樽形感光面を形成することになる。 固体撮像素子(12)の画素は第4図Aに鎖線で示した感光面(12s)上に整列配置されており、水平走査により、各画素からの映像データが順次出力される。 一方、画像データメモリ(22)には、本来あるべき姿、即ち、無歪像(3)の画素位置に対応するアドレスが付与されて、上述のような水平走査映像データが第4図Cの歪補正ベクトルCij分だけずれたアドレスに書き込まれる。これにより、データメモリ(22)上では、図形歪を補正された画像が得られる。そして、メモリ(22)のアドレスの昇順に、この画像データを読み出して、本来の無歪の画像を得ることができる。」と記載されている。 記載4. 第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第17行には、「上述のように、単にアドレスをずらして画像メモリに書き込むだけでは、重複ないし欠落により、画素に粗密が生じて、再生画像のミクロの直線性が劣化するため、この実施例では、撮像素子(12)の整数画素分の変位は、画像メモリ(22)のアドレス処理によって制御すると共に、1画素分より小さい変位については、メモリ(28)に格納された補正量に基づき、デジタルフィルタ(21)の補間演算処理によって制御するようにしている。 光学像(2)を縮小する場合は標本化周波数を上昇させることになり、逆に、光学像(2)を拡大する場合は標本化周波数を下降させることになる。 標本化周波数を上昇させる変換の場合、第5図に実線で示した変換前の広間隔の標本化格子X,Yの一群の標本点Pの画素データを用い、適宜の重み付け、即ち、補間演算によって、同図に破線で示した変換後の狭間隔の標本化格子U,Vの中央部の1個の標本点Qの画素データを求めることになる。」と記載されている。 3.本件発明と、引用例2記載の発明の対比 引用例2の記載1の「この発明は、被写体(1)の光学像(2)がレンズ(11)を介して感光面(12s)に結像された固体撮像素子(12)」及び2の「(11)はズームレンズ、(12)は例えばCCDのような固体撮像素子であって、ズームレンズ(11)を介して、被写体(1)の光学像が撮像素子(12)の感光面上に結ばれる。」を参照すると、引用例2記載のレンズ11及び固体撮像素子12は、本件発明のカメラに実質的に相当する。 また、引用例2の記載2を参照すると、引用例2記載の発明は、本件発明の画像出力装置を実質的に有しており、引用例2記載の発明は、本件発明のカメラシステムに相当する構成を有する。 さらに、引用例2の記載2における「(27)はシステム制御回路であって、…ズームレンズ(11)からのレンズ情報が供給される。」を参照すると、引用例2における、制御回路(27)は、本件発明の、焦点距離情報を記録する記録手段に実質的に相当する。 また、「メモリ(28)には、レンズの使用条件毎に、画面の各部について予め定まる補正量(ベクトル)が格納され、これに基づく制御信号が、制御回路(27)から2次元デジタルフィルタ(21),バッファメモリ(24)及びアドレス信号発生回路(25)にそれぞれ供給される。」を参照すると、メモリ(28)は、本件発明の、撮影レンズの焦点距離によって参照可能な画像歪曲補正用データを記憶している記憶手段に実質的に相当する。 引用例2の記載3の「固体撮像素子(12)の画素は第4図Aに鎖線で示した感光面(12s)上に整列配置されており、水平走査により、各画素からの映像データが順次出力される。」を参照すると、引用例2記載の発明は、本件発明の、画像を読み出す読出手段を実質的に有している。 引用例2の記載1〜4を参照すると、引用例2記載の発明は、本件発明の、撮影時の焦点距離情報によって、前記記憶手段に記憶されている画像歪曲補正用データを参照し、該画像歪曲補正用データによって再現される歪曲収差近似曲線式を用いて歪曲補正演算を行うと共に、画像周辺部に対して補間処理して出力する出力手段を実質的に有している。 そうすると、本件発明と引用例2記載の発明は、「カメラと、該カメラで撮影された画像を処理して出力する画像出力装置とを有するカメラシステムにおいて、 前記カメラは、撮影時に使用した焦点距離情報を記録する記録手段を有し、 前記画像出力装置は、撮影レンズの焦点距離によって参照可能な画像歪曲補正用データを記憶している記憶手段と、前記記録手段で記録された情報と前記画像を読み出す読出手段と、前記読出手段で読み出された撮影時の焦点距離情報によって、前記記憶手段に記憶されている画像歪曲補正用データを参照し、該画像歪曲補正用データによって再現される歪曲収差近似曲線式を用いて歪曲補正演算を行うと共に、画像周辺部に対して補間処理して出力する出力手段と、 を具備するカメラシステム。」において一致する。 しかるに本件発明は、撮影レンズの焦点距離情報に基づき画像歪曲補正することに加え、撮影レンズの種類情報及び焦点位置情報によっても画像歪曲補正するものであるのに対し、引用例2記載の発明は、撮影レンズの焦点距離情報に基づき画像歪曲補正するものである点において両者は相違(以下、「相違点」という。)する。 上記相違点について検討する。 撮影レンズの種類によって画像歪曲補正をすることは、引用例1に記載されているように周知手段であって、撮影レンズの焦点位置によって画像歪曲補正をすることも、周知手段(要すれば、特開平4-342241号公報参照)であり、かつ、補正の根拠となる情報を増やすことは、その精度を高めるために当然に取りうる手段であるから、当該周知手段を引用例2に記載された発明に付加することは、当業者が容易に想到できたことである。 4.以上のとおりであるから、本件発明は、引用例2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-19 |
結審通知日 | 2003-09-24 |
審決日 | 2003-10-07 |
出願番号 | 特願平5-35074 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横林 秀治郎、越河 勉 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
谷山 稔男 辻 徹二 |
発明の名称 | カメラシステム |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 村松 貞男 |