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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない A63F
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない A63F
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない A63F
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない A63F
管理番号 1087610
審判番号 訂正2003-39059  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2003-03-26 
確定日 2003-11-25 
事件の表示 特許第3051091号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3051091号発明の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正すること、すなわち、下記(1)ないし(5)のとおりに訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a
特許第3051091号発明の明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲(本件特許公報1欄6〜12行)に記載された「各リールの周面へ照明を施すための照明系として、前記抽選処理により抽選が当たる前は点灯状態に設定される1個以上の照明装置を含んでおり、前記抽選処理により抽選が当たったとき、少なくとも1個の照明装置を消灯させて照明状態を変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するようにしたスロットマシンの抽選当り報知方法。」を、
「各リールの周面へ照明を施すための照明系として、前記抽選処理により抽選が当たる前は点灯状態に設定される第1,第2の照明装置を含んでおり、前記抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するようにしたスロットマシンの抽選当り報知方法。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0010】(本件特許公報4欄24〜33行)に記載された「請求項1の発明は、ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い、抽選が当たったとき、特定の入賞が発生しやすいようにリールの停止制御を行うようにしたスロットマシンにおいて、各リールの周面へ照明を施すための照明系として、前記抽選処理により抽選が当たる前は点灯状態に設定される1個以上の照明装置を含んでおり、前記抽選処理により抽選が当たったとき、少なくとも1個の照明装置を消灯させて照明状態を変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するようにしたものである。」を、
「この発明は、ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い、抽選が当たったとき、特定の入賞が発生しやすいようにリールの停止制御を行うようにしたスロットマシンにおいて、各リールの周面へ照明を施すための照明系として、前記抽選処理により抽選が当たる前は点灯状態に設定される第1,第2の照明装置を含んでおり、前記抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するようにしたものである。」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許明細書の段落【0012】(本件特許公報4欄44〜48行)に記載された「請求項1の発明では、ゲーム開始操作後の抽選処理により抽選が当たると、少なくとも1個の照明装置が消灯するので、遊戯者はリールの方向へ視線を向けたままで、リールの照明の明るさが変化したことをもって、抽選が当たったことを確認できる。」を、
「この発明では、ゲーム開始操作後の抽選処理により抽選が当たると、第1の照明装置が消灯し第2の照明装置は点灯状態を維持するので、遊戯者はリールの方向へ視線を向けたままで、リールの照明の明るさが変化したことをもって、抽選が当たったことを確認できる。」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許明細書の段落【0022】(本件特許公報6欄36〜43行)に記載された「さらにまた、第1,第2の各照明装置11a,11bに加えて、第3、第4、さらにはそれ以上の照明装置を設け、抽選処理により抽選が当たったとき、1または複数の照明装置について後述する消灯動作を行わせてもよい。さらにまた、単一の照明装置(例えば1本の蛍光灯)をもって照明系を構成し、抽選処理により抽選が当たったとき、前記照明装置について後述する消灯動作を行わせることもできる。」を、
「さらにまた、第1,第2の各照明装置11a,11bに加えて、第3、第4、さらにはそれ以上の照明装置を設け、抽選処理により抽選が当たったとき、1または複数の照明装置について後述する消灯動作を行わせてもよい。」と訂正する。
(5)訂正事項e
特許明細書の段落【0048】(本件特許公報12欄5〜8行)に記載された「請求項1の発明では、抽選処理により抽選が当たったとき、少なくとも1個の照明装置が消灯して照明状態を変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するから、」を、
「この発明では、抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するから、」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、特許明細書の請求項1に記載されている「1個以上の照明装置」を「第1,第2の照明装置」と限定するとともに、「少なくとも1個の照明装置を消灯させて照明状態を変化させる」を「第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させる」と具体的に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、「第1,第2の照明装置」については、特許明細書に、「照明系11は、蛍光灯より成る第1の照明装置11aと、3個の豆ランプより成る第2の照明装置11bとで構成される。」(段落【0021】)と記載されており、また、「第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させる」ことについては、特許明細書に、「第1実施例では、・・・第2の照明装置11bは、電源がオンで点灯動作し、電源がオフになるまで、点灯状態を維持する(図3(1)参照)。・・・第1の照明装置11aは、電源がオンで点灯動作し、通常のゲームにおいて、抽選処理により抽選が当たったときに消灯動作する。」(段落【0027】)と記載されているから、上記訂正事項aは、特許明細書に記載した事項の範囲内で訂正するものであり、且つ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項bないしeについて
訂正事項bないしeは、発明の詳細な説明の記載を、訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、特許明細書に記載した事項の範囲内で訂正するものであり、且つ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.独立特許要件
3-1.訂正明細書の発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正明細書の発明」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの、
「ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い、抽選が当たったとき、特定の入賞が発生しやすいようにリールの停止制御を行うようにしたスロットマシンにおいて、
各リールの周面へ照明を施すための照明系として、前記抽選処理により抽選が当たる前は点灯状態に設定される第1,第2の照明装置を含んでおり、前記抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するようにしたスロットマシンの抽選当り報知方法。」により特定されるものである。

3-2.引用刊行物記載の発明
(1)訂正拒絶理由で引用した特開平8-117390号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、可変表示部を備えたスロットマシンに関し、
(1-a)「【0048】上記実施例の回路構成によれば、前述のようにスタートレバー11が操作されると、その操作を検出するスタートスイッチ11Sからの信号に応じて、CPU21はモータ駆動回路31に駆動信号を送り、ステッピングモータ2S,3S,4Sによるリール2,3,4の回転駆動を行わせる一方、適宜のタイミングで乱数発生器26から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、ROM22内の入賞確率テーブル22aでどの入賞グループに属するかを判定する。入賞と判定された場合には、CPU21は、遊技者がストップボタン12,13,14を操作した時にリール停止信号回路36から送られる操作信号に応じて、入賞の種類に対応したシンボル表示位置にリール2,3,4を停止制御する信号をモータ駆動回路31に送ると共に、入賞の種類に対応したメダル払出しデータを表示部駆動回路33に供給して表示部10にメダル払出し数を表示し、且つ、払い出し指令信号をホッパー駆動回路32に供給してホッパー30から所定個数のメダルの払出しを行う。」(7頁左欄4〜21行)、
(1-b)「【0079】(ii)ゲームスタート後、サンプリングされた乱数値が内部的当選役に該当した場合、その内部的当選を遊技者に知らせる報知手段を設けてもよい。
【0080】この報知手段としては、例えば各リール2,3,4の内側に取り付けられているバックライト(照明)を利用することができる。すなわち、遊技がスタートして乱数がサンプリングされ、入賞確率テーブルとの照合により内部的当選に該当する場合は、このバックライトを点滅又は点灯させることによって、遊技者に内部的当選を知らせる。これにより、遊技者は「当たり」への期待感を持つことができる。
【0081】具体的には、図10及び図11に示すように、3つのリール2,3,4の各々について可変表示部の窓に現れるシンボルの裏面側に、3個のランプ(LED、電球などの発光体)41を縦方向に配列した基板42を設置し、これら3列のランプ41を、図3のCPU21により、例えばストップボタン12が押された直後に、図12(A),(B),(C)に示すような種々のパターンで点滅又は点灯するように制御する。なお、図12において、(A)は全てのランプを点灯又は点滅するパターン、(B)は上下及び中心部のランプを点灯又は点滅するパターン、(C)はランプを所定の方向に順次点灯又は点滅する動作を繰り返すパターンを示す。勿論、パターンはこれらのみに限らない。」(10頁左欄3〜26行)、と記載されている。
上記記載によると、引用刊行物1には、
スタートレバー11が操作されると、ステッピングモータ2S,3S,4Sによるリール2,3,4の回転駆動を行わせる一方、適宜のタイミングで乱数発生器26から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、入賞確率テーブル22aでどの入賞グループに属するかを判定し、入賞と判定された場合には、CPU21は、遊技者がストップボタン12,13,14を操作した時にリール停止信号回路36から送られる操作信号に応じて、入賞の種類に対応したシンボル表示位置にリール2,3,4を停止制御する信号をモータ駆動回路31に送るスロットマシンにおいて、3つのリール2,3,4の内側にバックライトが取り付けられており、遊技がスタートして乱数がサンプリングされ、入賞確率テーブルとの照合により内部的当選に該当する場合は、このバックライトを点滅又は点灯させることによって、遊技者に内部的当選を知らせるスロットマシンの抽選当り報知方法(以下、「引用刊行物1の発明」という)が記載されていると認められる。
(2)訂正拒絶理由で引用した特開平7-51447号公報(以下、「引用刊行物2」という)には、図柄組合わせ遊技機における図柄表示装置に関し、
(2-a)「【請求項1】 図柄組合わせゲームを展開し得る遊技機の正面側に位置する透視窓(9)の夫々の入賞ライン(33)に、複数列の図柄ユニット(10)における図柄ドラム(20)の停止順に複数コマ分の図柄を組合わせ表示し得る図柄表示装置にあって、・・・ステッピングモータ(14)で回転制御され透明な外周に外れ用および当り用の各種図柄(23a,23b)を配置する・・・図柄ドラム(20)と、この図柄ドラム(20)の内側に直接照射状態で臨んだ図柄用の照明手段(35)とを装備し、
前記照明手段(35)では、各種図柄の共通照射用とした主ランプ(19,19)と、当り図柄の専用照射用とした副ランプ(16,17,18)とを、夫々の図柄表示位置に合わせて交互に配置して回路接続すると共に、各種の図柄(23a,23b)の表示内容条件に合わせて互いに所定の照射制御条件に区分設定したことを特徴とする図柄組合わせ遊技機における図柄表示装置。」(特許請求の範囲)、
(2-b)「【作用】透視窓に表示される各列の図柄ドラムの夫々の図柄が、照明手段の照射ランプで内側から直接照射されることにより、鮮明に照映されてその視認性や見栄えが良化される。また、主,副ランプの照射制御条件により外れ図柄と当り図柄を明確に区分照明し得るもとで、副ランプにより当り図柄同志の「大当り」の成立位置を事前に照明すると共に、「大当り」の成立の可能性を予告的に報知照明する。」(3頁左欄25〜32行)、
(2-c)「先ず、図柄組合わせゲームの開始前初期状態において、各列の表示面24〜26に3コマずつの図柄(多くの場合は外れ図柄23aで当り図柄23bを含むこともある)が停止表示されていることに対して、各列毎の照明手段35では、各段位置の副ランプ16〜18が消灯され、全ての主ランプ19,19が常時点灯されている。」(4頁右欄34〜40行)、
(2-d)「【0024】また、前記ステップ7での照明処理において、中列中段のLED(副ランプ17)の点滅に合わせて前記斜状ライン33上に最後に表示される絵札に対するLED、つまり図11中に例示する右列下段の副ランプ18も所定周期で点滅される。そして次のステップ8において、これら3位置のLED(副ランプ16〜18)の点滅周期が短かく制御されて、絵札同志による「大当り」の成立位置を事前に照明報知すると共に、「大当り」の成立の可能性が高い状態(一般に「リーチ状態」ともいう)を事前にまた予告的に照明報知する。」(5頁左欄30〜39行)、
(2-e)「なお、本実施例の対象とする図柄表示装置では、前述した実施例のタイプだけに制限されず、例えば各列の図柄ユニット10における照明手段35については、停止表示される図柄のコマ数に適した個数の照射ランプを配置した内側照明形態のものであればよく、そのサイズ,発光色,照射条件等は適宜選定すればよい。」(5頁右欄37〜42行)、と記載されている。
(3)訂正拒絶理由で引用した特開平6-105943号公報(以下、「引用刊行物3」という)には、スロットマシンやパチンコ機などの遊技機に用いられるリールに関し、
(3-a)「このスロットマシン2の機体の内側には、各リール1a,1b,1cの外周面に対向する位置にランプが配備される。図4の正面図および図5の側面図に示す例では、シンボル表示窓3の上下位置に、白色蛍光を発する2個の白色ランプ20,20が設けてある。
【0021】前記白色ランプ20,20は、電源がオンの状態では、常時点灯して各リール1a,1b,1cを照明する。このとき、各リール1a,1b,1cの蓄光インキによる着色部分は、この照射光を吸収し蓄積して、色鮮やかに発光する。なお、白色ランプ20,20は常時点灯させる以外に、入賞時に限って点灯動作させるようにしてもよい。」(3頁左欄42行〜同頁右欄3行)、
(3-b)「図7,8のように、蓄光インキおよび蛍光インキの2種類のインキが用いられる場合は、図9(1)(2)に示すごとく、白色ランプ20と紫外線ランプ21とをそれぞれ、リール表示窓3の上下位置に設置する。
【0028】これらランプのうち、白色ランプ20は電源がオンの状態で常時点灯させるが、紫外線ランプ21は、後述する制御部25からの指令に応じて、適時点灯・消灯動作させる。なお白色ランプ20も紫外線ランプ21と同様、適時点灯させるようにしてもよい。」(3頁右欄36〜45行)、
(3-c)「なお、上記の例では各リール1a,1b,1cの回転時および停止時に紫外線ランプ21を点灯動作させているが、これに限らず、各リールに入賞にかかるシンボルの組合せが成立したときに紫外線ランプ21を点灯して蛍光インキによる着色部分を発光させてもよい。」(4頁右欄6〜11行)、と記載されている。
(4)訂正拒絶理由で引用した実公平5-7008号公報(以下、「引用刊行物4」という)には、
(4-a)「リクエスト信号発生回路38からリクエスト信号が出力されると、各リール4〜6の駆動を制御するモータ制御回路40〜42のそれぞれは、リール4〜6がシンボル「7」を表示した位置で停止させるようにモータM1〜M3を制御する。」(3頁右欄18〜22行)、
(4-b)「一方、リクエスト信号発生回路38からリクエスト信号が発生されたときには、表示ランプ駆動回路55に駆動信号が出力される。この結果、配当パネル15内に設けられた表示ランプ16が点灯動作してリクエスト信号の発生、すなわちボーナスゲームとなるシンボルの組み合わせが得やすいように、リール4〜6が停止制御される状態になっていることを表示する。
しかし、ストップボタン11〜13の操作タイミングとリール4〜6の停止タイミングとがあまりかけ離れていると、不自然な感じがでてくるから、・・・シンボル「7」がでるようにリール4〜6の停止制御を行うことには限度がある。例えば、ストップボタン11〜13が操作された時点のシンボルから、3〜4個ずれたシンボルの範囲内に「7」があるときには、シンボル「7」を表示してリール4〜6を停止させ得るが、その範囲内にシンボル「7」が存在しないときにはシンボル「7」が出るようにリール4〜6を停止制御できなくなり、ボーナスゲームが得られない場合も生じる。」(4頁左欄2〜22行)と記載されている。
(5)訂正拒絶理由で引用した「パチスロ必勝ガイド9(第2巻第5号)」(白夜書房 平成3年9月1日発行)92〜95頁(以下、「引用刊行物5」という)には、
(5-a)「リーチ目もスベリもどうでもいい、レバーを引き、盤面の一部が光るか、消えるかすれば、フラグは立っていることになる。文字通りの"お知らせ機能付"である。」(93頁左下段)、
(5-b)「次はフラグ判別の際(アペックスはリールの上のランプが消えてフラグが立ったことを知らせる)に、良く見えるよう、スダレ状に垂らした例である(リール部分も全て隠し、光だけで打つ強者数名)。」(95頁の"幸せの黄色いオシボリ"が生み出す必殺技「アペックス沖縄打ち」三態完全マスター法の説明)と記載されている。
(6)訂正拒絶理由で引用した「パチスロ攻略マガジンNO.3(第3巻第9号)」(双葉社 平成3年6月29日発行)18〜19頁、124〜129頁(以下、「引用刊行物6」という)には、
(6-a)「沖縄のパチスロでビッグ、レギュラーのフラグが成立すると、一部の例外はあるようだが、何らかの形でプレーヤーにそれを知らせてくれる。これが「A-お知らせランプ」というもの。たとえば、リールを照らしている「ランプ」が消えたり、点滅したり、というケースが多いようだ。」(19頁下段)、
(6-b)「●シグナル 店によって違うが、リールを照らしているランプが消える、点滅する、」(125頁下段フェニックス(高砂電器産業)の説明)、
(6-c)「●シグナル リールを照らしている「蛍光灯」が一瞬消える。」(125頁下段トロピカーナ777(メーシー販売)の説明)、
(6-d)「●シグナル リールを照らしているランプが消えるか、リール窓枠右上の「BIG-CHANCE」と書いてあるランプが点滅する。」(126頁下段アペックス701Z(サミー工業)の説明)、
(6-e)「●シグナル フラグ成立のプレーで、リール上のランプが消えるのですぐわかる。」(129頁上段のシーホーク(高砂電器産業)の説明)と記載されている。

3-3.対比・判断
訂正明細書の発明と引用刊行物1の発明とを対比すると、引用刊行物1の発明における「スタートレバー11が操作されると、・・・適宜のタイミングで乱数発生器26から1個の乱数をサンプリングし、この乱数について、入賞確率テーブル22aでどの入賞グループに属するかを判定し、入賞と判定された場合には、」は、訂正明細書の発明における「ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い、抽選が当たったとき、」に対応する。
また、本件訂正明細書には、「なお照明系11は、各リール9a,9b,9cの内部に設けてリール周面を内側から照明するようにしてもよい。」(訂正明細書6頁4〜6行)と記載されており、訂正明細書の発明の「照明系」は各リール9a,9b,9cの内部に設けられているものも含むものであるから、引用刊行物1の発明の「バックライト」は訂正明細書の発明の「照明系」に対応し、訂正明細書の発明における「第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させる」ことと、引用刊行物1の発明における「このバックライトを点滅又は点灯させること」は、共に、リールの照明系の点灯状態を変化させることといえる。
そうすると、訂正明細書の発明と引用刊行物1の発明とは、
ゲーム開始操作後に機械内部で抽選処理を行い、リールの停止制御を行うようにしたスロットマシンにおいて、リールの照明系の点灯状態を変化させることにより、抽選が当たったことを遊戯者へ報知するようにしたスロットマシンの抽選当り報知方法で一致し、
相違点(A)
抽選が当たったとき、訂正明細書の発明では、特定の入賞が発生しやすいようにリールの停止制御を行うのに対し、引用刊行物1の発明では、その点が不明である点、
相違点(B)
抽選が当たったことの遊戯者への報知を、訂正明細書の発明では、各リールの周面へ照明を施すための照明系として、抽選処理により抽選が当たる前は点灯状態に設定される第1,第2の照明装置を含んでおり、前記抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させて照明状態を明るい照明状態から暗い照明状態に変化させることにより行っているのに対し、引用刊行物1の発明では、各リール2,3,4の内側に取り付けられているバックライトを点滅又は点灯させることにより行っている点、
で両者は構成が相違する。
上記相違点について検討する。
相違点(A)について
スロットマシンにおいて、内部入賞した場合、特定の入賞が発生しやすいようにリールの停止制御を行うことは周知である(上記引用刊行物4参照)から、引用刊行物1の発明においても、内部入賞した場合、特定の入賞が発生しやすいようにリールの停止制御を行うようにすることは、当業者なら容易に想到できることである。
相違点(B)について
上記引用刊行物2には、各リールの周面へ照明を施すための照明系(照明手段35)を、第1の照明装置(副ランプ16〜18)と第2の照明装置(主ランプ19)とで構成し、図柄23aが第2の照明装置(主ランプ19)で照明されているもとで、当り図柄23bを第1の照明装置(副ランプ16〜18)で点滅照射し、図柄同志の「大当り」の成立位置を事前に照明すると共に、「大当り」の成立の可能性を予告的に報知すること(上記(2-a)(2-b)参照)、及び、「なお、本実施例の対象とする図柄表示装置では、前述した実施例のタイプだけに制限されず、例えば各列の図柄ユニット10における照明手段35については、・・・そのサイズ,発光色,照射条件等は適宜選定すればよい。」(上記(2-e)参照)と記載されている。
すなわち、引用刊行物2記載の発明は、スロットマシンにおいて、リールの照明系を第1の照明装置と第2の照明装置とで構成し、第2の照明装置を点灯した状態で第1の照明装置を点滅させることにより遊技者に情報を報知する(この報知は、訂正明細書の発明のものとは、第1の照明装置を、点灯状態から消灯させるか、消灯状態から点滅させるかの相違である)ものであり、また、その照明系の照射条件は適宜選定できるものである。
しかも、スロットマシンにおいて、リールを照らしている照明系(ランプ)を消すことにより抽選が当たったことを遊技者に報知することは、上記引用刊行物5及び6に示されるように周知である(上記(5-b)、(6-a)〜(6-c)参照)。
そうすると、引用刊行物1の発明において、各リールの周面へ照明を施すための照明系(バックライト)を、第1の照明装置と第2の照明装置とで構成し、抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させるようにし、上記(B)の相違点に係る訂正明細書の発明のように構成することは当業者が容易に想到できることである。
なお、訂正明細書の発明において、照明系が、実施例のように、リールの外周面へ照明を施すものであるとしても、上記引用刊行物3には、リール1a,1b,1cの外周面を照射する白色ランプ20又は紫外線ランプ21を「点灯・消灯」あるいは「点灯」することによりゲームの状態を示すことが開示されている(上記(3-a)〜(3-c)参照)。
また、上記引用刊行物2には、スロットマシンにおいて、リールの照明系を第1の照明装置と第2の照明装置とで構成し、第2の照明装置を点灯した状態で第1の照明装置を点滅させることにより遊技者に情報を報知すること(この報知は、訂正明細書の発明のものとは、第1の照明装置を、点灯状態から消灯させるか、消灯状態から点滅させるかの相違である)が記載されており、しかも、スロットマシンにおいて、リールを照らしている照明系(ランプ)を消すことにより抽選が当たったことを遊技者に報知することは、上記引用刊行物5及び6に示されるように周知である(上記(5-b)、(6-a)〜(6-c)参照)。
そうすると、引用刊行物1の発明において、各リールの周面へ照明を施すための照明系(バックライト)を、第1の照明装置と第2の照明装置とで構成し、抽選処理により抽選が当たったとき、第1の照明装置を消灯させ第2の照明装置は点灯状態を維持させるようにし、上記(B)の相違点に係る訂正明細書の発明のように構成することは当業者が容易に想到できることである。
そして、訂正明細書の発明が奏する効果は、上記引用刊行物1ないし3に記載された発明及び周知技術から予測できる程度のことであって格別顕著なものではない。
したがって、訂正明細書の発明は、上記引用刊行物1ないし3に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-12 
結審通知日 2003-09-18 
審決日 2003-10-14 
出願番号 特願平9-296149
審決分類 P 1 41・ 851- Z (A63F)
P 1 41・ 856- Z (A63F)
P 1 41・ 853- Z (A63F)
P 1 41・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 清伸  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 瀬津 太朗
渡部 葉子
白樫 泰子
藤井 俊二
登録日 2000-03-31 
登録番号 特許第3051091号(P3051091)
発明の名称 スロットマシンの抽選当り報知方法  
代理人 鈴木 由充  

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