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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N |
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管理番号 | 1087746 |
審判番号 | 不服2001-21831 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-09-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-06 |
確定日 | 2003-11-27 |
事件の表示 | 平成7年特許願第40857号「排ガス浄化方法及び排ガス浄化装置」拒絶査定に対する審判事件[平成8年9月10日出願公開、特開平8-232643]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)特許出願:平成7年2月28日 (2)拒絶の理由の通知:平成13年6月5日(発送日:平成13年6月1 2日) (3)意見書・手続補正書(明細書)の提出:平成13年8月8日 (4)拒絶の査定:平成13年10月31日(発送日:平成13年11月6 日) (5)審判の請求:平成13年12月6日(方式補正:平成13年12月2 0日) 2.拒絶の査定の理由の概要 拒絶の査定の理由の概要は、上記1.(2)の拒絶理由通知書及び同(4)の拒絶査定書の記載からみて、次のようなものである。 「この出願の請求項1〜20に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である下記1〜4の引用文献に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、この出願は、拒絶をすべきものである。 <引用文献> 1.特開平3-202611号公報 2.特開平5-240025号公報 3.特開昭60-128920号公報 4.特開平4-347316号公報 3.本願発明 この出願の請求項1〜20に係る発明は、上記1.(3)の手続補正書により補正された願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜20に記載されるとおりのものであると認められるところ、該請求項1の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 排ガスを通過させて排ガス中のパーティキュレート等を除去するフィルタを加熱して、前記フィルタに付着したパーティキュレート等を燃焼させる排ガス浄化方法であって、フィルタを加熱する場合、前記フィルタ内の平均温度が400℃以上となる領域においては、前記フィルタ内平均温度上昇率を10℃/分以下として、火炎伝搬による燃焼再生ではなく、前記フィルタに付着したパーティキュレート等を燃焼させることを特徴とする排ガス浄化方法。」 (以下、「本願発明」という。) 4.引用文献1に記載された発明 特開平3-202611号公報(以下、「引用例」という。)には、次のような事項が図面とともに記載されている。 (a)「第2図において、1はディーゼル機関本体、2は吸気通路、3は排気通路を示す。排気通路3には排気中のパティキュレートを捕集するため排気トラップ4が設けられる。・・・・・ さらに排気トラップ4の直前には電気ヒータ11が設置され、これへの通電によりトラップ前面温度を上昇させることができる。」 (第3頁左上欄17行〜同左下欄3行) (b)「これに対して完爆したものと判断したときは、S3で燃料噴射量Q、排気トラップ4の入口と出口温度TIN 、TOUT、同じく上流と下流の圧力差ΔPを読み込む。そして、S4で排気トラップ4の出口温度TOUTが所定値(たとえば300℃)より高いかどうか判断する。もし高いときは、S5の温度上昇率演算ルーチンに移行する。この具体的な内容は第4図に示すが、このルーチンでは所定の単位時間毎に温度を読み取りながら上昇率を演算するようになっていて、まず温度の読みとりが終了しているかどうかをみて、終了していれば読み取り時間間隔のカウントを開始し、していなければTEMP←TOUTとして、読み取り判定フラグをオン、読み取りタイマをリセットする(S21〜S23)。・・・・・・・ そうでなければ、ΔTEMP←TOUT-TEMPとして所定時間間隔での温度差を求め、この温度差ΔTEMPを所定値ΔTmaxと比較し、これよりも大きいときは温度上昇率が大きいと判定して、温度上昇フラグをオンにする(S27〜S29)。」(第4頁左上欄11行〜同右上欄17行) (c)「ところで、前記したS6で異常に温度上昇率が高いと判断されたときは、そのままでは排気トラップ4が焼損に至る危険があるため、S13の異常高温回避操作ルーチンに移行する。 これは第8図にも示すように、吸気絞り弁5と排気絞り弁7を全開し、かつ排気バイパス弁13を閉じ、かつ電気ヒータ11をオフにする。」 (第6頁右上欄12行〜同18行)) (d)「前述したようにとくに減速時に排気をバイパスさせているときは、排気トラップ4に適度な酸素が残存し、高温雰囲気のもとでパーティキュレートに着火すると、排気トラップ4の熱負荷が急激に高まり、いっきに焼損温度にまで上昇する危険がある。・・・・・ ところが、第11図にも示すが上記のようにトラップ温度の出口が所定値(たとえば300℃)よりも高くかつ、温度上昇率が高いときには、直ちに異常温度回避動作を取れば、実際の温度が危険上限値に達する前に温度が下がり、排気トラップ4の焼損が確実に防止できる。」 これらの記載によれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。 「排気中のパティキュレートを捕集する排気トラップ4を加熱して、前記排気トラップ4に捕集したパティキュレートを燃焼させる排気処理方法であって、排気トラップ4の出口温度が所定温度(例えば300℃)より高いとき、排気トラップ4の出口温度の温度上昇率を演算し、該温度上昇率が所定値よりも高い場合、電気ヒータ11をオフにすることを含む異常高温回避操作を実施し、高温雰囲気のもとで排気トラップ4に捕集されたパティキュレートが着火し、急激に燃焼するのを防止する排気処理方法 。」(以下、「引用発明」という。) 5.本願発明と引用発明の対比、検討及び判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「排気トラップ4」は、その機能に照らして、本願発明の「フィルタ」に相当し、引用発明における「排気トラップ4の出口温度」は、パティキュレートの燃焼に関与する排気トラップ4内の温度、すなわちフィルタ内の温度に関連する温度である限りにおいて、本願発明の「フィルタ内の平均温度」と一致する。 したがって、引用発明において、「排気トラップ4の出口温度が所定温度(例えば300℃)より高いとき、排気トラップ4の出口温度の温度上昇率を演算し、該温度上昇率が所定値よりも高い場合、電気ヒータ11をオフにすることを含む異常高温回避操作を実施」することは、「フィルタを加熱する場合、フィルタ内の温度に関連する温度が所定温度以上となる領域においては、前記フィルタ内の温度に関連する温度の上昇率を所定値以下にして」いるということができる。 してみると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「排ガスを通過させて排ガス中のパーティキュレートを除去するフィルタを加熱して、前記フィルタに付着したパーティキュレートを燃焼させる排ガス浄化方法であって、フィルタを加熱する場合、前記フィルタ内の温度に関連する温度が所定温度以上となる領域においては、前記フィルタ内の温度に関連する温度の上昇率を所定値以下とした排ガス浄化方法。」 <相違点1> 本願発明においては、「フィルタを加熱する場合、前記フィルタ内の平均温度が400℃以上となる領域においては、前記フィルタ内平均温度上昇率を10℃/分以下と」しているのに対し、引用発明においては、「排気トラップ4の出口温度が所定温度(例えば300℃)より高いとき、排気トラップ4の出口温度の温度上昇率を演算し、該温度上昇率が所定値よりも高い場合、電気ヒータ11をオフにすることを含む異常高温回避操作を実施し」ている点。 <相違点2> 本願発明においては、「火炎伝搬による燃焼再生ではなく、前記フィルタに付着したパーティキュレート等を燃焼させ」ているのに対し、引用発明では、「高温雰囲気のもとで排気トラップ4に捕集されたパティキュレートが着火し、急激に燃焼するのを防止」しているものの、火炎伝搬による燃焼再生が発生しないようにしているのか否か不明である点。 (2)相違点についての検討 相違点1、相違点2について併せて検討する。 本願発明の上記相違点1、2に係る構成の技術的意義は、本願明細書段落【0020】の作用の記載、段落【0054】の発明の効果の記載によれば、パティキュレートの燃焼反応による単位時間当たりの発熱量を抑制し、単位時間当たりの放熱量より小さくすることにより、いわゆる着火と呼ばれる急激な温度上昇の発生がなく、フィルタ内の温度勾配を小さくし、異常高温も防止できる。このため、フィルタのクラック及び溶損の発生を完全に防止することと解することができる。 これに対して、引用発明においては、高温雰囲気のもとで排気トラップ4に捕集されたパティキュレートが着火し、急激に燃焼し、排気トラップ4が焼損するのを防止するため、「排気トラップの出口温度が所定温度(例えば300℃)より高いとき、排気トラップ4の出口温度の温度上昇率を演算し、該温度上昇率が所定値よりも高い場合、電気ヒータ11をオフにすることを含む異常高温回避操作を実施」している。 そして、引用発明に接した当業者にとって、パティキュレートの着火に伴う急激な燃焼と排気トラップ(フィルタ)内の温度とが直接関連していること、及び排気トラップ(フィルタ)の出口温度が排気トラップ(フィルタ)内の全体温度と関連付けられることは、自明ともいうべき事項であり、かつ排気トラップ(フィルタ)内の全体温度を示すものとして、排気トラップ(フィルタ)内の平均温度を用いることは、それにより格別の技術的意義が生じるものとも解されないので、適宜選定し得る程度の事項に過ぎないものである。 したがって、引用発明において、「排気トラップ(フィルタ)を加熱する場合、前記排気トラップ(フィルタ)内の平均温度が所定温度以上となる領域においては、前記排気トラップ(フィルタ)内平均温度上昇率を所定値以下」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 次に、引用発明において、火炎伝搬による燃焼再生が発生しないようにしているのか否か不明であるが、上述のように、パティキュレートの着火に伴う急激な燃焼を防止することが示されている以上、「排気トラップ(フィルタ)を加熱する場合、前記排気トラップ(フィルタ)内の平均温度が所定温度以上となる領域においては、前記排気トラップ(フィルタ)内平均温度上昇率を所定値以下」とする際に、排気トラップ(フィルタ)内の平均温度と比較される所定温度、及びその温度上昇率と比較される所定値を適宜選定することにより、パティキュレートの着火に伴う急激な燃焼につながる火炎伝搬による燃焼再生が発生しないようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 してみると、引用発明において、「フィルタを加熱する場合、前記フィルタ内の平均温度が400℃以上となる領域においては、前記フィルタ内平均温度上昇率を10℃/分以下と」することにより「火炎伝搬による燃焼再生ではなく、前記フィルタに付着したパーティキュレート等を燃焼させる」ことは、排気トラップ(フィルタ)の材質あるいは構造等の仕様に伴う、フィルタ(トラップ)の許容温度、温度勾配に対する耐性に応じ、また実験等によって当業者が容易に到達し得ることというべきである。 したがって、本願発明の上記相違点1、2に係る本願発明の構成は、引用発明に基づき、当業者が容易に想到することができたものと認められる。 (3)作用効果について 本願発明が奏する作用効果は、引用発明に基づいて当業者が予測することができる範囲を超えるものではない。 (4)対比、検討及び判断のむすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、この出願は、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-09-22 |
結審通知日 | 2003-09-24 |
審決日 | 2003-10-14 |
出願番号 | 特願平7-40857 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 亀田 貴志 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 鈴木 充 |
発明の名称 | 排ガス浄化方法及び排ガス浄化装置 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 内藤 浩樹 |