• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:13  A63F
管理番号 1088914
審判番号 補正2002-50093  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-05 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2002-10-03 
確定日 2003-12-04 
事件の表示 平成11年特許願第 17850号「パチンコ機」において、平成14年7月8日付けでした手続補正(発明の名称を「弾球遊技機」と補正しようとする方)に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1・この出願は、平成3年1月10日に出願されたものであり、平成14年7月8日付けでその明細書全文を補正する二つの手続補正がなされた。そして、二つの手続補正のうちの一方、発明の名称を「弾球遊技機」と補正しようとする方の手続補正、は、平成14年8月1日付けで決定をもって却下された(なお、二つの手続補正のうちの他方は、発明の名称を「パチンコ機」と補正するものである)。
2・原決定の理由は、
「補正された請求項1に記載された発明は、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲以上の事項を含む。そして、その事項が同明細書又は図面の記載から見て自明の事項でもない。
上記発明にかかる弾球遊技機は、「表示部における確定図柄が特定図柄である場合に特別遊技状態を発生し得」るとともに「特別遊技状態の発生を必要条件として前記確定図柄が特定図柄となる確率を変更するように構成」されている。このような弾球遊技機としては、可変表示装置の停止図柄によって変動入賞口を開放させるいわゆる1種の弾球遊技機が含まれるのみならず、特別遊技状態の終了を待たずに確率を変更させるものも、含まれることは明らかである。
これに対して、上記明細書又は図面に記載されているのは、確率が変更されるのは「特別装置の作動終了時」のみであって、しかも「予め定めた所定回数目」のみである。すなわち、当初明細書又は図面においては、実施例としては、権利発生・消滅と作動回数カウンタ数とを必要条件として確率を変更してしているものしか記載されておらず、図柄表示器(上記発明の表示部に相当)の特定図柄表示確率と電動入賞装置開閉駆動の(同特別遊技状態に相当)との関係については、記載はおろか示唆もされていない。
なお、電動入賞装置が駆動されなければ、確率の変更もされないのであるから、上記発明は、当初明細書の記載の範囲内である旨の主張をするとすれば、それは、上記実施例の途中を(新たな発明に合致するように)都合良く省くものであって、その省略を合理的に示唆する記載が当初明細書又は図面には見られないことから、そのような主張には理由がないといわざるを得ない。
したがって、この補正は、明細書の要旨を変更するものと認められ、特許法第53条第1項の規定により、上記結論の通り決定する。」
というものである。
3・そこで、上記原決定の理由中の「補正された請求項1に記載された発明・・・にかかる弾球遊技機は、「表示部における確定図柄が特定図柄である場合に特別遊技状態を発生し得」る・・・1種の弾球遊技機を含む」という点(以下、原決定の理由の要点という)を中心に検討する。
(1)パチンコ機の種類としては、昭和60年2月12日国家公安委員会規則第4号(遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則)に基づき、第1種、第2種、第3種と呼ばれるものに分類され、このうち、第1種とは、セブン機といわれるもので、スタートチャッカーに玉が入ると中央の役物やデジタルが作動し、数字又は図柄がそろえば大当たりとなるものを指し、第3種とは、権利物といわれるもので、特定の出目がそろった後、Vゾーンに入賞があって初めて大当たりとなるものを指すことが認められる。
(2)願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、当初明細書という)をみると、その【従来の技術】には、「従来・・・特別入賞装置の特別装置作動領域を打球が通過したときに特別装置が作動して権利発生状態とし、その権利発生状態中に打球が始動入賞口に入賞することにより変動入賞装置を・・・開放するパチンコ機が多数市場に提供されていた。このようなパチンコ機にあっては、再度特別装置作動領域に打球が通過したこと・・・によって権利発生状態が終了するようになっている。したがって、権利発生状態の発生及び消滅は、一に特別装置作動領域が形成される特別入賞装置への打球の入賞率に依存していることになる」(段落【0002】)と記載されており、この従来のパチンコ機は、「権利発生状態中」に「始動入賞口」に入賞することにより「変動入賞装置を・・・開放する(大当たり状態になる)」ものであるから、まさに第3種のパチンコ機であると認められる。
さらに、当初明細書の【発明が解決しようとする課題】には、「このため、特別入賞装置の近傍に植立される障害釘の調整によって権利発生遊技状態が発生し易いかどうかが決定され、しかもその発生頻度がほぼ一定となるため、遊技に抑揚がなく変化に乏しいという問題点があった。本発明・・・の目的とするところは、権利発生状態の発生確率を変化させることにより遊技に抑揚を与え・・・ることにある」(段落【0003】)と記載されており、また、その【課題を解決するための手段】には、「・・・本発明においては・・・特別装置作動領域を含む複数の通過領域が形成された特別入賞装置と、該特別入賞装置に誘導された打球が前記特別装置作動領域を通過したときに作動開始すると共に再度特別装置作動領域を打球が通過したとき・・・に作動終了する特別装置と、該特別装置の作動中に前記始動入賞口に打球が入賞する毎に・・・開放駆動される変動入賞装置と、を備えたパチンコ機において・・・さらに複数の図柄を変動表示することが可能な図柄表示装置と、打球が通過することによって前記図柄表示装置の変動表示を制御するゲート入賞口と、前記特別入賞装置の上方に設けられ且つ前記図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄であるときに打球を受け入れ易い状態に変化する電動入賞装置と、を備え、前記図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を・・・変更する確率変更手段を設けた・・・」(段落【0004】)と記載されていることからみて、上記従来の第3種パチンコ機の抑揚のなさを解決するべく、当初明細書の請求項1に係る発明は、「特別入賞装置に誘導された打球が特別装置作動領域を通過したときに作動開始すると共に再度特別装置作動領域を打球が通過したとき・・・に作動終了する特別装置と、該特別装置の作動中に始動入賞口に打球が入賞する毎に・・・開放駆動される変動入賞装置」にさらに「図柄表示装置と・・・図柄表示装置の変動表示を制御するゲート入賞口と、特別入賞装置の上方に設けられ且つ図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄であるときに打球を受け入れ易い状態に変化する電動入賞装置と・・・図柄表示装置に表示される図柄が当り図柄である確率を・・・変更する確率変更手段を設けた」ものと認められる。
そうすると、当初明細書の請求項1に係る発明のパチンコ機は、「図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄である」ことと、「特別装置の作動中(権利発生状態中)に始動入賞口に打球が入賞する」ことの2つの条件が成立することで、「変動入賞装置が開放駆動される(大当たり状態になる)」パチンコ機であると認められるので、その種類は第3種であるものと認められる。
また、当初明細書の請求項1には、上記2つの条件のうち一方だけが満たされることで「変動入賞装置が開放駆動される(大当たり状態になる)」とは記載されていないことは明らかである。
この点に関し、当初明細書の【発明の詳細な説明】の欄をみると、その段落【0012】に「・・・電動入賞装置16が閉じているときでも打球が入賞するようにしてもよい」と記載されていることから、当初明細書に記載されたパチンコ機は、希に、「特別装置の作動中(権利発生状態中)に始動入賞口に打球が入賞する」ことが満たされるだけで「変動入賞装置が開放駆動される(大当たり状態になる)」ことはあるものと認められる。しかし、当初明細書の【発明の詳細な説明】の欄を子細に検討しても、「図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄である」ことが満たされるだけで「変動入賞装置が開放駆動される(大当たり状態になる)」もの、すなわち、第1種のもの、は記載も示唆もされておらず、また、第1種のものが当初明細書の記載からみて自明な事項であるとも認められない。
(3)平成14年7月8日付けの手続補正のうちの一方によって補正された明細書(以下、補正後の明細書という)の請求項1に係る発明は、「入賞に応じた遊技球の払出を行う払出手段と、複数の図柄を変動表示する表示部を備え、その表示部における確定図柄が特定図柄である場合に特別遊技状態を発生し得る弾球遊技機において、特別遊技状態の発生を必要条件として前記確定図柄が特定図柄となる確率を変更するように構成するとともに、前記確定図柄が特定図柄となるか否かをカウンタから取得される乱数値に基づいて判定するように構成し、前記カウンタ中の特別遊技状態発生のための乱数の数とそれ以外の乱数の数との比率を変更することにより前記確率を変更するように構成した弾球遊技機」であり、該「弾球遊技機」は、「特別装置の作動中(権利発生状態中)に始動入賞口に打球が入賞する」ことを「特別遊技状態の発生」条件としておらず、しかも、「表示部における確定図柄が特定図柄である」こと、すなわち、「図柄表示装置の停止時に表示される図柄が当り図柄である」こと、を満たせば「特別遊技状態を発生し得る」ものであることは明らかであるから、該「弾球遊技機」には、第1種のものが含まれることは明らかである。
(4)そうすると、上記(3)に記したように、補正後の明細書の請求項1に係る発明の弾球遊技機には、第1種のものが含まれるのに、上記(2)に記したように、当初明細書には、第1種のものは記載も示唆もされておらず、また、第1種のものが当初明細書の記載からみて自明な事項であるとも認められないのであるから、補正後の明細書の請求項1に係る発明の弾球遊技機は、当初明細書には記載されていないものであるといわざるを得ない。
(5)審判請求人は、請求の理由において、原決定の理由の要点に関し、概ね、「当初明細書には、第3種パチンコ機に必須の構成要件ではない「複数の図柄を変動表示することが可能な図柄表示装置」を備えることが記載されており、また、そこに記載されている発明の目的及び効果も第3種パチンコ機に限定されるべきものではなく、そこに記載されている発明の中心的要素は、「特別遊技状態(当たり)」となり得る「特定図柄」の表示確率を変更するようにしたことにあり、したがって、この中心的要素を第1種パチンコ機等にも適用できることは自明な事項というべきである」と反論している。
しかし、当初明細書の発明の目的及び効果が第3種パチンコ機に限定されるべきものではないのかどうか、また、中心的要素を第1種パチンコ機等に適用できることが自明な事項であるのかどうかは措くとしても、上記(4)に記したように、補正後の明細書の請求項1に係る発明の弾球遊技機には、第1種のものが含まれるのに、当初明細書には、第1種のものがそもそも記載も示唆もされていないのであるから、審判請求人の反論を採用することは到底できない。
4・以上のとおりであるから、原決定のその余の理由については論じるまでもなく、上記手続補正は、明細書の要旨を変更するものであり、原決定が上記手続補正を却下すべきものとした判断は妥当であるといわざるを得ない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-17 
結審通知日 2003-09-30 
審決日 2003-10-14 
出願番号 特願平11-17850
審決分類 P 1 7・ 13- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 白樫 泰子
塩崎 進
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 山田 強  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ