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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23B
管理番号 1089030
審判番号 不服2001-15347  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-30 
確定日 2003-12-11 
事件の表示 平成 8年特許願第114814号「孔開け工具」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 8月12日出願公開、特開平 9-207014]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年5月9日(優先権主張平成7年11月30日)の出願であって、その請求項1〜9に係る発明(以下それぞれを、「本願発明1」等という。)は、平成15年6月19日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は次のとおりのものである。
「工具装着部と、この工具装着部に装着され、先端に刃をもつ円筒状のボディと、少なくとも先端部にドリル部を有し、上記工具装着部において上記ボディの中心軸上の位置に先端側に引き抜き可能に係止され、かつ、上記ドリル部が上記ボディの先端刃よりも先端側に突出するように装着されるセンタードリルとを備え、このセンタードリルは、上記ドリル部と上記工具装着部に装着される装着部分との間の位置であって当該センタードリルのつけ根部分に上記ドリル部の穿孔径よりも径方向外側に突出する径方向突出部を有するとともに、その基端部に異形断面状の挿入部と周溝とを有しており、上記工具装着部は、上記センタードリルの挿入部が嵌合可能でかつこの嵌合により当該センタードリルの回り止めを行う異形断面状の挿入孔と、上記周溝に係合可能なボールと、このボールを径方向内側に付勢して上記周溝に係合させることにより上記センタードリルを上記工具装着部側に係止させる拡縮径部材とを有し、この工具装着部からその係止力に抗して上記センタードリルを先端側に引き抜くことにより上記ボディ内の切り屑が上記径方向突出部に引掛かってセンタードリルと一体に上記ボディ外へ取り出されるように構成されていることを特徴とする孔開け工具。」


2.当審の拒絶の理由
一方、当審において平成15年5月1日付けで通知した拒絶の理由は、本願発明1は、本願の優先権主張の日前に頒布された「実願平5-11941号(実開平6-63309号)のCD-ROM」(以下、「引用例1」という。)及び「実願昭55-77027号(実開昭57-3513号公報)のマイクロフィルム」(以下、「引用例2」という。)に記載された発明及び技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。


3.引用例記載の発明及び技術事項
(1)引用例1記載の発明
(ア)「大口径穴あけ工具の本体(3)の内部にたまった切りくず(4)は、センタードリル(1)の止めネジ(5)を弛め、センタードリル(1)の先端をペンチ等ではさみ、引き抜けば、つば状の部材(2)に押されて串刺しの状態で出てくる。」(段落【0005】)
(イ)「なお第3図に示すように、つば状の部材(2)を凹形の磁性体にして、センタードリル(1)を大口径穴あけ工具の本体(3)に装着した時、凹部の縁が、大口径穴あけ工具の本体(3)の底部に接触する位置で固定し、凹部にセンタードリル(1)が抜け落ちず、強く引っ張れば抜ける程度の強さで、凹部の深さより薄い永久磁石(7)をつければ、止めネジ(5)をセンタードリル(1)が空回りせず、容易に抜き差しできる位置まで締め、固定しておくだけで、いちいち止めネジ(5)を弛めたり締めたりする手間が省け、センタードリル(1)の脱着が容易になるので、次々に穴あけ作業をする場合、さらに能率が上がる。」(段落【0007】)
上記記載事項(ア)〜(イ)及び図1,3の記載から、引用例1には次の発明が記載されていると認める。
「工具装着部と、先端に刃をもつ大口径穴あけ工具の本体3と、少なくとも先端部にドリル部を有し、上記工具装着部において上記大口径穴あけ工具の本体3の中心軸上の位置に先端側に引き抜き可能に係止され、かつ、上記ドリル部が上記大口径穴あけ工具の本体3の先端刃よりも先端側に突出するように装着されるセンタードリル1とを備え、このセンタードリル1は、上記ドリル部と上記工具装着部に装着される装着部分との間の位置であって当該センタードリル1のつけ根部分に上記ドリル部の穿孔径よりも径方向外側に突出する凹型の磁性体であるつば状の部材2を有するとともに、その基端部に面取り部6を有しており、上記工具装着部は、上記センタードリル1の面取り部6が嵌合可能でかつこの嵌合により当該センタードリル1の回り止めを行う止めネジを5を有する挿入孔を有し、上記凹型の磁性体であるつば状の部材2の凹部の縁が上記大口径穴あけ工具の本体3の底部に係止される係止力に抗して上記センタードリル1を先端側に引き抜くことにより上記大口径穴あけ工具の本体3内の切りくず4が上記つば状の部材2に引掛かってセンタードリル1と一体に上記大口径穴あけ工具の本体3外へ取り出されるように構成されている大口径穴あけ工具。」

(2)引用例2記載の技術事項
(ア)「以下、この考案を具体化した一実施例を第2図に従って説明すると、11は穿孔カッター全体を示し、有底円筒状に形成されたボデイ12の底部にはシヤンク13が螺着されている。」(第4頁第3行〜6行)
(イ)「この実施例ではドリル16の基端外周に係止溝18が形成され、またシヤンク13に貫設した孔28にはネジ25によりスプリング26及びロツキングボール27が収容され、そのロツキングボール27がスプリング26によりドリル16の軸心方向に向かって付勢されて前記係止溝18に係合されている。また、前記実施例と同様に係止面17にはボルト20が当接されている。これによって、この実施例の場合もドリル16がシヤンク13に回転不能に支持されるとともに容易に着脱可能となっている。」(第6頁第15行〜第7頁第7行)
(ウ)「以上述べたようにこの考案は、シヤンク13の先端に円筒状の穿孔用ボデイ12を設け、そのシヤンク13に形成したドリル挿入孔14にドリル16を挿入してそのドリル16を前記ボデイ12の軸心上を通るように配置した穿孔カッターのおいて、シヤンク13とドリル16との間にはシヤンク13に対するドリル16の相対回転のみを阻止する手段17,20と、ドリル16を軸方向の所定位置において弾性的に位置決めする手段15,18,19,26,27,31等を設けたことにより、六角レンチを使用することなく、シャンクにドリルを速やかに着脱できて、ボディ内の切屑をきわめて容易に除去できるという優れた効果を奏する。」
(第8頁第8行〜第9頁第3行)
上記記載事項(ア)〜(ウ)から、引用例2には次の技術事項が記載されていると認める。
「シヤンク13と、このシヤンク13に装着され、先端に刃をもつ有底円筒状に形成されたボデイと、少なくとも先端部にドリル部を有し、上記シヤンク13において上記ボデイの中心軸上の位置に先端側に引き抜き可能に係止され、かつ、上記ドリル部が上記ボデイの先端刃よりも先端側に突出するように装着されるドリル16とを備え、このドリル16は、その基端部に係止面17と係止溝18とを有しており、上記シヤンク13は、上記ドリル16の挿入部が嵌合可能でかつこの嵌合により当該ドリル16の回り止めを行うボルト20を有するドリル挿入孔14と、上記係止溝18に係合可能なロツキングボール27を付勢して上記係止溝18に係合させることにより上記ドリル16を上記シヤンク13側に係止させるスプリング26とを有し、このシヤンク13からその係止力に抗して上記ドリル16を先端側に引き抜けるように構成されている穿孔カッター。」


4.対比
本願発明1と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「大口径穴あけ工具の本体(3)」が本願発明1の「円筒状のボディ」に相当し、以下同様に「センタードリル(1)」が「センタードリル」に、「つば状の部材(2)」が「径方向突出部」に、「切りくず(4)」が「切り屑」に相当することが明らかである。
そして、本願発明1の「その基端部に異形断面状の挿入部を有しており、上記工具装着部は、上記センタードリルの挿入部が嵌合可能でかつこの嵌合により当該センタードリルの回り止めを行う異形断面状の挿入孔を有し」と引用例1記載の発明の「その基端部に面取り部6を有しており、上記工具装着部は、上記センタードリル1の面取り部6が嵌合可能でかつこの嵌合により当該センタードリル1の回り止めを行う止めネジを5を有する挿入孔を有し」とは「センタードリルの基端部と上記工具装着部との嵌合により当該センタードリルの回り止めを行うセンタードリル回転阻止手段を有し」の限りで、また、本願発明1の「その基端部に周溝を有しており、上記工具装着部は、上記周溝に係合可能なボールと、このボールを径方向内側に付勢して上記周溝に係合させることにより上記センタードリルを上記工具装着部側に係止させる拡縮径部材とを有し」と引用例1記載の発明の「上記凹型の磁性体であるつば状の部材2の凹部の縁が上記大口径穴あけ工具の本体3の底部に係止される」とは「センタードリルを軸方向の所定位置において係止するセンタードリル軸方向係止手段を有し」の限りで一致する。
したがって、本願発明1と引用例1記載の発明とは、以下の点で一致している。
<一致点>
「工具装着部と、先端に刃をもつ円筒状のボディと、少なくとも先端部にドリル部を有し、上記工具装着部において上記ボディの中心軸上の位置に先端側に引き抜き可能に係止され、かつ、上記ドリル部が上記ボディの先端刃よりも先端側に突出するように装着されるセンタードリルとを備え、このセンタードリルは、上記ドリル部と上記工具装着部に装着される装着部分との間の位置であって当該センタードリルのつけ根部分に上記ドリル部の穿孔径よりも径方向外側に突出する径方向突出部を有するとともに、センタードリルの基端部と上記工具装着部との嵌合により当該センタードリルの回り止めを行うセンタードリル回転阻止手段と、センタードリルを軸方向の所定位置において係止するセンタードリル軸方向係止手段とを有し、この工具装着部からその係止力に抗して上記センタードリル1を先端側に引き抜けるように構成されている孔開け工具。」
そして、本願発明1と引用例1記載の発明とは、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願発明1の工具装着部がボディに装着されているのに対して、引用例1記載の発明の工具装着部とボディの関係が明らかでない点。
<相違点2>
本願発明1のセンタードリル回転阻止手段が、センタードリルの基端部に異形断面状の挿入部と、工具装着部に設けられた、センタードリルの挿入部が嵌合可能でかつこの嵌合により当該センタードリルの回り止めを行う異形断面状の挿入孔とから構成されたものであるのに対して、引用例1記載の発明の回転阻止手段は、そうでない点。
<相違点3>
本願発明1のセンタードリル軸方向係止手段が、センタードリルの基端部に設けられた周溝と、工具装着部に設けられた、周溝に係合可能なボールと、このボールを径方向内側に付勢して周溝に係合させることによりセンタードリルを工具装着部側に係止させる拡縮径部材とから構成されたものであるのに対して、引用例1記載の発明のセンタードリル軸方向係止手段は、そうでない点。


5.当審の判断
上記相違点1〜3について検討する。
相違点1について
引用例2に、工具装着部がボディに螺着により装着された点が記載されており、また、引用例1記載の発明及び引用例2記載の技術事項は、孔開け工具という同一の技術分野に属するものなので、引用例2記載の技術事項を引用例1記載の発明に適用し、相違点1に係る本願発明1の構成とする程度のことは、当業者が容易になし得たことと認められる。
相違点2について
異形断面状の挿入部と、該挿入部が嵌合可能でかつこの嵌合により回り止めを行う異形断面状の挿入孔とから構成された回転阻止手段は、従来周知である(例えば、特開平7-241840号公報の段落【0016】〜【0017】、図1等を参照。)ので、引用例1記載の発明のセンタードリル回転阻止手段として、上記周知技術を採用し、相違点2に係る本願発明1の構成とする程度のことは、当業者が容易になし得たことと認められる。
相違点3について
引用例2に、センタードリル軸方向係止手段が、センタードリルの基端部に設けられた周溝と、工具装着部に設けられた、周溝に係合可能なボールと、このボールを付勢して周溝に係合させることによりセンタードリルを工具装着部側に係止させるスプリングとから構成された点が記載され、さらに、ボールを径方向内側に付勢するリングバネ(拡縮径部材)は従来周知である(例えば、特開平6-171359号公報の段落【0006】、図1等を参照。)ので、引用例2記載の技術事項及び上記周知技術を引用例1記載の発明に適用し、相違点3に係る本願発明1の構成とする程度のことは、当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、本願発明1の作用効果は、上記引用例1記載の発明、引用例2記載の技術事項及び周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本願発明1は、上記引用例1記載の発明、引用例2記載の技術事項及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明2〜9について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-30 
結審通知日 2003-10-07 
審決日 2003-10-22 
出願番号 特願平8-114814
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野村 亨  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 三原 彰英
林 茂樹
発明の名称 孔開け工具  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  

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