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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1089480
審判番号 不服2001-20446  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-12-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-11-15 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 平成 4年特許願第135271号「弾性表面波素子のフェースダウン実装用パッケージ」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月10日出願公開、特開平 5-327394]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成4年5月27日に特許出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成13年6月25日付け及び平成13年12月17日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりものと認められるところ、当該請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の電極パッドが形成された矩形状の弾性表面波素子がフェースダウン実装されるパッケージにおいて、
前記パッケージは、前記電極パッドに対応する位置に電極パッドを有する矩形状の底板と、該底板の周縁部に沿って配設される側壁の内壁とにより形成される空間部と、前記弾性表面波素子を前記空間部にフェースダウンで挿入した際に、前記弾性表面波素子の角部を前記内壁の角部から離間させ、かつ、前記弾性表面波素子の外側面と前記内壁との間隙を小さくするために、互いに交差する前記内壁の角部に形成され前記側壁の内方に開口する凹状部と
を備えることを特徴とする弾性表面波素子のフェースダウン実装用パッケージ。」

【2】引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-194231号(実開昭61-109227号)のマイクロフイルム(以下「引用例1」という。)には、その実施例と図面第1〜2図及びこれに係わる記載を参酌すると、以下のような技術的事項が記載されている。
「本考案の一実施例を第1図及び第2図を参照して以下に説明する。第1図において、(2)(5)は第3図と同じく素子とその帯状取り出し電極、(8)は素子(2)の収納ケース、(9)は収納ケース(8)の底に取り付けられた導出端子で、素子(2)の取り出し電極(5)に見合うように帯状の形状を有し、かつ素子(2)を収納ケース(8)に収納したとき、取り出し電極(5)に直接、接触するように配設される。
即ち、本考案に係る弾性表面波装置は、第1図及び第2図に示すように、素子(2)を裏返して収納ケース(8)に収納し、導電性の接着剤(10)で取り出し電極(5)を導出電極(9)に貼り付けた後、絶縁性のカバー部材(11)を被せ、素子(2)を収納するようにしたものである。」(出願公開明細書第3頁第10行〜第4頁第6行、第1、第2図参照)
(2)同じく引用された実願平2-81296号(実開平4-39730号)のマイクロフイルム(以下「引用例2」という。)は、圧電素子を用いて構成される「発振子」に関するもので、「大型の圧電素子については、ガイド20を用いず、ケース3の内壁に設けた凸条7により位置決めを行う。」(出願公開明細書第9頁第12〜14行)との記載が認められ、また、その実施例及び図面の記載を参酌すると、方形状の底板(端子板5)と、該底板の周縁部に沿って配置される側壁(ケース3)の内壁とにより形成され、方形状の電子部品の素子(圧電セラミック板2)が挿入される空間部を備える電子部品(発振子)が開示されており、このような電子部品(発振子)において、「前記素子を前記空間部に挿入した際に、前記素子の角部を前記内壁の角部から離間させ、かつ、前記素子の外側面と前記内壁との間隙を小さくするような凸状部分(凸条7)を前記内壁の中央部に前記側壁の外方に突出するように形成する」こと、即ち、凸状部分(凸条7)に対して凹状部を形成することとなる部分を、前記内壁の角部に前記側壁の内方に開口するように形成することが記載されている。

【3】対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1における「取り出し電極(5)」「収納ケース(8)とカバー部材(11)」及び「導出端子(9)」は、それぞれ本願発明における「弾性表面波素子の電極パッド」「パッケージ」及び「パッケージの底板の電極パッド」に相当するので、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「複数の電極パッドが形成された矩形状の弾性表面波素子がフェースダウン実装されるパッケージにおいて、
前記パッケージは、前記電極パッドに対応する位置に電極パッドを有する矩形状の底板と、該底板の周縁部に沿って配設される側壁の内壁とにより形成される空間部と、を備え、前記弾性表面波素子を前記空間部にフェースダウンで挿入した弾性表面波素子のフェースダウン実装用パッケージ。」
(相違点)
本願発明にあっては、弾性表面波素子を空間部に挿入した際に、前記弾性表面波素子の角部を内壁の角部から離間させ、かつ、前記弾性表面波素子の外側面と前記内壁との間隙を小さくするために、互いに交差する前記内壁の角部に形成された前記側壁の内方に開口する凹状部を備えているのに対して、引用例1にあっては、このような凹状部を備えていない点、
(検討)
前記相違点について検討すると、本願発明において、「前記弾性表面波素子の角部を内壁の角部から離間させ、かつ、前記弾性表面波素子の外側面と前記内壁との間隙を小さくするために、互いに交差する前記内壁の角部に形成された前記側壁の内方に開口する凹状部」を備えることの技術的意義は、本願明細書の記載からみて、「前記側壁3を打ち抜き加工によって製作する場合、内壁の角部3a〜3dにマイクロクラックが発生するのを抑止するために丸みを持たせている。従って、弾性表面波素子Sを挿入するためには、この丸みの分だけ側壁3の内側面と弾性表面波素子Sの外側面との間隙Lを大きく設定しなければならず、その分、弾性表面波素子Sの位置決めが不正確となる不都合が生じる」(段落【0006】)とし、「本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであって、パッケージに挿入される弾性表面波素子の電極とパッケージの底面部に配設された電極用パッドとの位置合わせ精度を向上させることが可能な弾性表面波素子のフェースダウン実装用パッケージを提供する」(段落【0007】)という点にあるものと認められる。
しかしながら、通常、弾性表面波素子のパッケージへの実装時、その位置決めを良好になすことは当業者の技術常識であり、この位置決めを良好になすことに関し、上記引用例2には、方形状の底板と、該底板の周縁部に沿って配設される側壁の内壁とにより形成され、方形状の電子部品の素子が挿入される空間部を備える電子部品において、「前記素子を前記空間部に挿入した際に、前記素子の角部を前記内壁の角部から離間させ、かつ、前記素子の外側面と前記内壁との間隙を小さくするような凸状部分を前記内壁の中央部に前記側壁の外方に突出するように形成する」こと、即ち、凸状部分(凸条7)に対して凹状部を形成することとなる部分を、前記内壁の角部に前記側壁の内方に開口するように形成することで、位置決めを行う技術的事項が記載されており、従来より周知の技術的事項(他に位置決め凸条と凹状部を形成することは、例えば、実願平2-92320号(実開平4-50920号)のマイクロフイルム[凸条8]、特開平4-97610号公報[突起16]参照)であり、さらに、角部に凹状部を設ける具体的構造も当業者の技術常識(例えば、方形状の底板(ベースメタル1)と、該底板の周縁部に沿って配設される側壁(ボトムセラミック6)の内壁とにより形成され、方形状の電子部品の素子(半導体素子)が挿入される空間部を備える電子部品のパッケージ(半導体装置用容器)において、前記内壁の角部に前記側壁の内方に開口する凹状部(丸穴8)を形成する特開昭63-299146号公報の第3図従来技術、参照)であるから、上記引用例1においても、上記引用例2に記載された技術的事項及び周知の技術的事項を参酌して本願発明のように構成することは当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本願発明により奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。

【4】むすび
以上のとおりであって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1乃至2に記載された発明及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-17 
結審通知日 2003-10-28 
審決日 2003-11-12 
出願番号 特願平4-135271
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 植松 伸二
千葉 輝久
発明の名称 弾性表面波素子のフェースダウン実装用パッケージ  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 佐藤 辰彦  

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