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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D01H
管理番号 1089559
審判番号 不服2001-279  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-11 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 平成10年特許願第106019号「単錘駆動型繊維機械」拒絶査定に対する審判事件[平成11年10月26日出願公開、特開平11-293529]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月16日の出願であって、平成12年12月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年1月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月7日付で手続補正がなされたものである。

2.平成13年2月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成13年2月7日付の手続補正を却下する。
[理由]
この補正には、特許請求の範囲の請求項1の記載を「回転数制御装置は、前記フィードバック制御における指令値の変化量に基づいて、各回転部材毎個別にトラブルを判定するトラブルを判定手段を有する」とする補正が含まれている。
しかしながら、当初明細書には、トラブル判定に関して「回転数制御装置は、検出した回転速度に基づいて、各回転部材毎個別にトラブルを判定するトラブル判定手段を有する」と記載されているのみで、トラブル判定を指令値の変化量に基づいて行うことは記載されていない。
したがって、この補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものではない。
[むすび]
以上のとおり、この補正は、特許法第17条の2第3項の規定を満たしておらず、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成13年2月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、平成12年9月13日付け手続き補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。
「糸条に撚りを付与するための回転部材毎に駆動モータを設けた単錘駆動型繊維機械において、前記駆動モータとして、DCブラシレスモータを使用し、各駆動モータの回転速度を検出し、その回転速度を目標速度に維持すべく各駆動モータについて個別にフィードバック制御を行う回転数制御装置を備え、前記回転数制御装置は、検出した回転速度に基づいて、各回転部材毎個別にトラブルを判定するトラブル判定手段を有することを特徴とする単錘駆動型繊維機械。」
(1)引例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成6年6月7日に頒布された特開平6-158459号公報(以下「引例」という。)には、次の事項が記載されている。
・記載1(5頁右欄5ないし7行目)
「この紡績部はスピンドル3を備えており、このスピンドルは個別モータ5によって駆動することができる。」
・記載2(5頁右欄9ないし14行目)
「スピンドル3の下端部では、スピンドルベースプレート11に磁石13が取り付けられている。磁石13の高さには、磁気受信器15が配置されており、この磁気受信器はパルス発生器17に接続されている。磁石13と磁気受信器15とパルス発生器17とは、信号値発生器19を形成しており、」
・記載3(5頁右欄28ないし31行目)
「標準運転時では、スイッチ7が閉じられている。個別モータ5は、モータ制御装置9を介して規定の回転数プログラムに従い給電されて、この回転数プログラムに基づきスピンドル3を駆動する。」
・記載4(5頁右欄35ないし42行目)
「磁石13が磁気受信器15の傍らを通過すると、この磁気受信器によって磁気放射線が受信され、パルス発生器17によって電気的なパルスが形成される。信号値発生器19によって、単位時間当たりのパルス数から求められたスピンドル回転数の実際値がコンパレータ21の入力側Iに供給されて、入力側IIに印加される、プログラム制御装置23によって供給された目下の目標値と比較される」
・記載5(5頁右欄46行目ないし6頁左欄10行目)
「目下の実際値が少なくとも閾値Soだけ目下の目標値を上回ると、閾値スイッチ25がアラーム装置27に信号を供給する。これによって、このアラーム装置はスイッチ7を開き、これによって個別モータ5とスピンドル3の駆動を中断する。それと同時に、表示アラーム29は、たとえば糸切れに基づくスピンドル回転速度の過大を表示する。測定されたスピンドル回転数の実際値が、プログラム制御装置23によって規定された目下の目標値を少なくとも閾値Suだけ下回ると、閾値スイッチ25がアラーム装置27に信号を送出し、これによってスイッチ7が開かれ、ひいては個別モータ5とスピンドル3との駆動が中断される。それと同時に、表示ランプ31が、たとえばスピンドル軸受けにおける機械的なトラブルに基づくスピンドル回転速度の過小を表示する。」

(2)対比
記載1の「紡績部」は、本願発明の「糸条に撚りを付与する」箇所に相当し、同様に、「スピンドル」は「回転部材」に相当し、且つ、記載1が単錘駆動型繊維機械に関する記載であることが明らかであるので、
記載1には、本願発明の「糸条に撚りを付与するための回転部材毎に駆動モータを設けた単錘駆動型繊維機械」が開示されている。
記載2の「信号値発生器」が、記載4の「スピンドル回転数の実際値」を検出しており、「スピンドル回転数」は「駆動モータの回転速度」も意味するので、記載2、4には、本願発明の「各駆動モータの回転速度を検出し」ているとの構成が開示されている。
記載3には、モータ制御装置が個別のモータに接続され、回転数プログラムに基づいて、スピンドルの回転数を制御しており、本願発明の「各駆動モータの回転速度を維持すべく、各駆動モータについて制御を行う回転数制御装置」の構成が開示されている。
前述した如く、記載4の「スピンドル回転数の実際値」は、本願発明の「検出した回転速度」をも意味し、記載4の「目下の目標値と比較され」と、記載5の「アラーム装置27に信号を供給する」とは、本願発明の「トラブルを判定する」に相当するので、
記載4、5には、本願発明の「検出した回転速度に基づいて、各回転部材毎個別にトラブルを判定するトラブル判定手段」が開示されている。
以上のとおりであるから、引例には、本願発明の「糸条に撚りを付与するための回転部材毎に駆動モータを設けた単錘駆動型繊維機械において、各駆動モータの回転速度を維持すべく、各駆動モータについて制御を行う回転数制御装置を備え、各駆動モータの回転速度を検出し、検出した回転速度に基づいて、各回転部材毎個別にトラブルを判定するトラブル判定手段を有することを特徴とする単錘駆動型繊維機械。」が開示されている。
そこで、本願発明と引例に記載された事項から把握される発明(以下、「引例発明」という。)とを対比すると、両者は、前述した引例記載の単錘駆動型繊維機械である点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
駆動モータの型式に関して、本願発明の駆動モータが、「DCブラシレスモータ」であるのに対し、引例発明のモータが、「三相交流同期電動機」(3頁左欄46行目参照。)である点。
[相違点2]
モータの回転手段に関して、本願発明が、駆動モータの回転をフィードバック制御している、即ち、回転数制御装置が各駆動モータの「回転速度を目標速度に維持すべく各駆動モータについて、個別にフィードバック制御を行っている」のに対し、引例発明が規定の回転数プログラムに従い駆動されているだけで、この駆動がフィードバック制御されているか、否か明らかでない点。
[相違点3]
トラブル判定(アラーム装置に信号を供給する)手段の設置個所に関して、本願発明のトラブル判定手段が駆動モータ回転数制御装置に設置され、つまり、駆動モータ回転数制御装置が駆動モータ回転数制御と、トラブル判定とを兼用している、即ち、「回転数制御装置は、検出した回転速度に基づいて、トラブルを判定するトラブル判定手段を有する」のに対し、引例発明のトラブル判定手段が、駆動モータの回転数制御装置とは別個に設置されている点。
(3)判断
[相違点1]について
単錘駆動型繊維機械において、スピンドルを駆動するモータとして、DCブラシレスモータを用いることは、周知の技術手段である。
周知例が所望なら、国際公開WO97/05310パンフレット、米国特許5161361号明細書を参照されたい。
そして、この周知の技術手段を本願発明が採用した点に格別なものはない。
[相違点2]について
単錘駆動型繊維機械において、スピンドル駆動モータの回転をフィードバック制御することは、周知の技術手段である。周知例が所望なら、特開平5-25716号公報を参照されたい。そして、この周知の技術手段を本願発明が採用した点に格別なものはない。
また、この周知の技術手段を採用する際、各駆動モータを個別に制御するようにした点は、当業者が容易に想到しうる事項である。
[相違点3]について
一般に、回転数を検知してトラブルが発生しているかを判定することは広く行われているので、本願発明が、駆動モータ回転数制御装置にトラブル判定手段を設けたことに格別の困難があったとは認められない。
そして、本願発明の作用効果も、引例及び各周知の技術手段から当業者が予測できる範囲のものである。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引例に記載された発明及び、各周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-23 
結審通知日 2003-10-28 
審決日 2003-11-14 
出願番号 特願平10-106019
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 豊吉澤 秀明  
特許庁審判長 吉国 信雄
特許庁審判官 山崎 勝司
市野 要助
発明の名称 単錘駆動型繊維機械  
代理人 梶 良之  

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