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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42C
管理番号 1089570
審判番号 不服2000-3779  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-17 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 平成 9年特許願第287996号「糊長さ定寸決め装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 4月20日出願公開、特開平11-105454]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年10月2日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年7月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「機械の回転軸に取付けたエンコーダーよりの原点信号による機械の1サイクル毎に定められた1点の基準点と、基準点より糊供給開始点までのカウント数及び糊供給カウント数を入力するための設定器と、該設定器よりの設定数及びエンコーダーよりのパルスなどを演算して出力を制御する制御部と、糊の供給を制御するバルブ、ソレノイドなどとからなり、エンコーダーよりの原点信号による機械の定められた1点を基準点として製本機の糊付ローラーに糊を供給するバルブソレノイドなど、または糊供給のスクレッパーを動作させるバルブソレノイドなどを構成して糊の供給、停止を行うことを特徴とする糊長さ定寸決め装置。」

2.引用例
これに対して、当審における平成15年5月19日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭60-78792号公報(以下「引用例」という。)には、以下の(イ)〜(ト)の記載がある。
(イ)「周期運動するクランプの挟持する折丁を検出できる折丁検出器と、クランプの1回周期運動に多数のパルス信号を発生させるパルス発信機と、機械の回転軸に設けられた電気信号の遅れ算定のための信号を発する発電機と、これらからの出力信号によって糊付ロールへの塗布長さを規制するソレノイドが制御されるようにした制御器とからなり、折丁に適合した位置で所定長の糊量を供給するようにしたことを特徴とする製本機の糊付ロール塗布長設定装置。」(特許請求の範囲)
(ロ)「1は長さlの折丁2を挟持して周期運動するクランプで、該クランプ1の1周期動で1回転する回転軸3には、外周1個所にスリット溝5を有するスリット板4及び外周に等間隔で多数のスリット溝7を有するスリット板6が夫々固止されている。そして上記スリット板4,6には、夫々のスリット溝5,7を検出するための近接スイッチ8,9が夫々適宜配設されていてパルス発信機A,Bを夫々構成している。」(公報第1頁右欄16行〜第2頁左上欄4行)
(ハ)「15は軸15aによって回転する下部が糊タンク内に浸漬している糊付ロールで折丁2の背に糊を塗布するためのものである。16は回動軸17に固止されたスクレーパで、その開閉作動によって糊塗布長さが設定されるようになっている。...スクレーパー16の開閉作動を司るソレノイド21が設けられ...24は前記光電折丁検出器14,パルス発信機A,B及び発電機13またはインバーターなどからの出力信号によって上記ソレノイド21を制御するように構成されている制御器である。...ソレノイド21でスクレーパー16を作動させる方式の代りにソレノイドバルブなどを操作せしめて糊付ロール15に糊を吹付ける方式も採れる。」(公報第2頁左上欄14行〜右上欄18行)
(ニ)「先ずクランプ1の1回周期運動に1回のパルス信号をパルス発信機Aによって、また同連続的に多数の等パルス信号をパルス発信機Bによって夫々発生させる。そこでクランプ1の1周期移動を上記のパルス数で割ると、1パルスのクランプ1(折丁2)の移動量xが決まる。そして折丁2の長さl(A本の場合l1 ,B本の場合l2)を移動量xで割ると折丁2の長さのパルス数Vが決まる。以上のことから、移動量xは常に一定であるために、折丁2の長さlが決定すればl/x=Vで、折丁2の長さl間に発生するパルス信号数V(V1はA本の場合,V2はB本の場合)は計算で出すことができる。そしてそのパルス数V間だけソレノイド21に通電することによって、第1図のようにスクレーパー16を作動させて糊付ロール15に塗布する糊の長さを調整することができるものである。」(公報第2頁左下欄1〜18行)
(ホ)「機械の回転速度と応答遅れとの関係、...折丁2(本)の長さlとパルスの関係を夫々制御器24に信号として入力すれば、制御器24内で演算を行い...また幾パルス分の長さの本であるかを計算することができる。」(公報第2頁右下欄8〜14行)
(ヘ)「制御器24は折丁2の入った信号と一周期パルスの始期Hにより、機械の回転速度と応答遅れのパルス数を計算し、同時に1周期パルスとリレノイド21作動までのパルス数aより、応答遅れパルス数Fを引いた残りパルスの始期Pでソレノイド21の作動信号を出し」(公報第3頁左上欄2〜7行)
(ト)「パルス発信機...からの出力信号により作用する制御器によって糊付ロールのスクレーパーの開閉作動を司るソレノイドが制御されるようにしたものであるから、如何なる折丁に対しても自動制御によって常に安定した正確な糊付ロール塗布長の設定が行える」(公報第3頁左上欄12〜19行)
引用例における前記摘示の記載を含む明細書及び第1、2図によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「クランプ1の回転軸3に固止されているスリット板4、6、スリット板4のスリット溝5からの信号を検出して発生するクランプ1の1周期パルスの始期Hと、機械の回転速度、折丁2(本)の長さとパルスの関係を入力して演算を行い、幾パルス分の長さの本であるかを計算する制御器24と、糊付ロールへの塗布長さを規制するソレノイド21とからなり、制御器24は、クランプ1の1回周期運動に1回のパルス信号及び光電折丁検出器14の出力信号、1周期パルスとソレノイド21作動までのパルス数aに基づき、製本機の糊付ローラー15に糊を吹き付けるソレノイドバルブまたはスクレーパ16を開閉作動させるソレノイド21を操作せしめ、折丁の長さでソレノイドの作動信号を切り糊付ロール15へ塗布する糊の長さを調整する糊付ロール塗布長設定装置。」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、
引用発明における「クランプ1の回転軸3」、「固止されている」、「スリット板4、6」、「スリット溝5を検出したパルス発信機Aからの信号」、「クランプ1の1周期パルスの始期H」、「パルス数a」、「制御器24」、「糊付ロール15のスクレーパーの開閉作動を司るソレノイド21」、「糊付ロール15」、「ソレノイドバルブ」、「糊付ロール塗布長設定装置」は、それぞれ、
本願発明における「機械の回転軸」、「取付けた」、「エンコーダー」、「エンコーダーよりの原点信号」、「機械の1サイクル毎に定められた1点の基準点」、「カウント数」、「制御部」、「糊の供給を制御するバルブ、ソレノイド」、「製本機の糊付ローラ」、「バルブソレノイド」、「糊長さ定寸決め装置」に相当し、
引用発明の前記摘示の記載(ホ)「機械の回転速度...折丁2(本)の長さlとパルスの関係を夫々制御器24に信号として入力すれば、制御器24内で演算を行い...また幾パルス分の長さの本であるかを計算することができる。」、同じく記載(ヘ)「制御器24は折丁2の入った信号と一周期パルスの始期Hにより、機械の回転速度と応答遅れのパルス数を計算し、同時に1周期パルスとソレノイド21作動までのパルス数aより、応答遅れパルス数Fを引いた残りパルスの始期Pでソレノイド21の作動信号を出し」より、引用発明1の制御器24は、本願発明における設定器の「基準点より糊供給開始点までのカウント数及び糊供給カウント数を入力するため」の機能を備えていると認められる。
また、前記摘示の記載(ハ)「16は回動軸17に固止されたスクレーパで、その開閉作動によって糊塗布長さが設定されるようになっている。...スクレーパー16の開閉作動を司るソレノイド21が設けられ...ソレノイド21でスクレーパー16を作動させる方式の代りにソレノイドバルブなどを操作せしめて糊付ロール15に糊を吹付ける方式も採れる。」より、引用発明1には、本願発明の糊供給のスクレッパーを動作させるバルブソレノイド並びに製本機の糊付ローラーに糊を供給するバルブソレノイドが記載されていると認められる。
そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点「機械の回転軸に取付けたエンコーダーよりの原点信号による機械の1サイクル毎に定められた一点の基準点と、基準点より糊供給開始点までのカウント数及び糊供給カウント数を入力するための設定器と、該設定器よりの設定数及びエンコーダーよりのパルスなどを演算して出力を制御する制御部と、糊の供給を制御するバルブ、ソレノイドなどとからなり、製本機の糊付ローラーに糊を供給するバルブソレノイドなど、または糊供給のスクレッパーを動作させるバルブソレノイドなどを構成して糊の供給、停止を行う糊長さ定寸決め装置。」の点。
相違点:エンコーダーよりの原点信号による機械の1サイクル毎に定められた一点の基準点を、本願発明は、糊の供給、停止を行う原点信号としているのに対し、引用発明1は、光電折丁検出器からの信号に対して機械の動作立ち後れのパルス数検出の基準点とし、糊の供給、停止を行う原点信号は光電折丁検出器からの信号としている点。

4.当審の判断
上記相違点について検討するに、機械の回転軸に取付けたエンコーダーよりの原点信号による機械の1サイクル毎に定められた1点を、装置の駆動、停止を行なう基準点とすることは、従来から周知である(必要ならば、特開平7-273950号公報【0017】【0021】【0033】、特開平5-129796号公報、特開平9-76471号公報)から、引用発明における、光電折丁検出器よりの信号に代えて、装置の駆動、停止を行なう基準点として上記従来から周知の機械の1サイクル毎に定められた1点を採用して、上記相違点にかかる本願発明の構成のようにすることは当業者が容易に想到できるものである。そして、上記相違点にかかる本願発明の構成による効果も当業者が事前に予測可能の範囲内のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前国内において頒布された刊行物に記載された引用発明及び前示の周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-10 
結審通知日 2003-11-11 
審決日 2003-11-26 
出願番号 特願平9-287996
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B42C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三輪 学  
特許庁審判長 佐田 洋一郎
特許庁審判官 藤井 靖子
鈴木 秀幹
発明の名称 糊長さ定寸決め装置  
代理人 大矢 須和夫  

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