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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1089577
審判番号 不服2000-14818  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-18 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 平成 4年特許願第100722号「パチンコ機の画像表示装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年10月19日出願公開、特開平 5-269243]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明

本願は、平成4年3月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成11年3月23日付けの手続補正書及び平成12年7月18日付けの手続補正書並びに平成12年10月5日付けの手続補正書により補正された明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「遊技盤面に設けられた始動入賞口への入賞に基いて所定の変動表示時間だけ複数種の識別情報を複数行の各々について変動表示させ、前記変動表示時間の変化に基いて識別情報のいずれかを停止表示する可変表示装置に、予め定められた特定識別情報が停止表示された場合に、遊技者に有利な権利を発生させるパチンコ機において、前記可変表示装置をドットマトリクス表示器で構成し、該ドットマトリクス表示器を複数行複数列の各分割表示面単位で表示制御すると共に、少なくとも1つの分割表示面が変動表示中であり、既に停止表示されている停止識別情報の組合せが、前記特定識別情報に包含される特定組合せの停止識別情報である場合にのみ、該停止識別情報を表示している分割表示面に特定組合せであることを示す線状のリーチ状態停止識別情報を付加表示し、該分割表示面と他の分割表示面とが互いに異なる態様で表示される表示制御回路を設けたことを特徴とするパチンコ機の画像表示装置。」

2.引用刊行物記載の発明

これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平2-309985号公報(以下、「引用刊行物」という)には、

「始動入賞口への入賞に基づいて可変表示ゲームを行なわせ、その可変表示ゲームの結果如何によって大当りを発生させるようにしたパチンコ遊技機に関する」(第1頁右下欄第9行〜第12行)発明について記載されており、

「パチンコ遊技機の遊技盤1の前面の構成例を示すもの」(第2頁左下欄第17行〜第18行)である第1図とともに、

「この遊技盤1の遊技領域2の中央には、特別遊技の権利を発生させるための可変表示ゲームを行なう位置固定式の4個の可変表示部235a〜235dおよび移動式の1個の可変表示部249aと入賞未処理個数記憶表示ランプ232とを備えた可変表示装置20が設置されている。」(第2頁右下欄第5行〜第10行)、
「この変動入賞装置70の上部には一対の可動部材74,74によって開閉される大入賞口(入賞部)71bが設けられ、左右には始動入賞部としての始動入賞口8,8が設けられている。
また、前記可変表示装置20と変動入賞装置70との間には始動入賞部としての始動入賞口6が設置され、遊技領域2の下部寄り左右位置にはチューリップ形式の一般入賞装置4,4が設置されている。」(第2頁右下欄第16行〜第3頁左上欄第5行)

と記載されている。
また、前記複数個の「可変表示部」(235a〜235d、249a)の各々は「例えば、0〜9の数字表示」(第3頁左下欄第18行〜第19行)を行うものであって、第1図の記載からみて、複数の行を構成するように配置されている。さらに、

「表示部全体を固定式表示部や移動式表示部を含む連続したドット表示部又は液晶表示部として、その移動式表示部を電気的に移動させるようにしてもよい。」(第15頁右上欄第16行〜第19行)

と記載されているように、前記「可変表示装置20」を「固定式表示部や移動式表示部を含む連続したドット表示部又は液晶表示部」で構成することも記載されており、当該「ドット表示部又は液晶表示部」を用いることによって、前記「0〜9の数字」が当該数字を表す“画像”として表示されることになる。

また、前記「パチンコ遊技機」における「マイクロコンピュータ800によって行われる遊技処理の概要」(第10頁左上欄第17行〜第18行)について、第12図及び第14図とともに、

「遊技中、始動入賞検出手段901により始動入賞口6,8,8への入賞が検出されると、その検出信号に基づいて可変表示ゲーム装置駆動手段902により可変表示ゲーム装置20の可変表示部235a〜235dおよび249aの表示の変化(流れるようなスクロール変化)が開始される。
そして、その後、所定時間が経過するか又はストップスイッチがオンされることを条件として可変表示ゲーム装置停止手段903により可変表示ゲーム装置20の可変表示部235a〜235dおよび249aの表示A〜Eの変化がA,B,C,D,Eの順に停止される。
それらのうち、4つの固定式可変表示器235a〜235dの表示A,B,C,Dの変化が停止されるまでの過程で、特別表示前兆成立判定手段904により横又は斜めの可変表示ゲームライン上に大当りを発生させ得る前兆表示態様(A=C,B=C,A=Dのうちいずれか)が生じたか否かが判定される。」(第10頁左上欄第20行〜右上欄第18行)、
「可変表示部235a〜235dの表示A〜DがA,B,C,Dの順に停止されるまでの間に大当り発生の前兆表示態様(同図においてはA=C=7)となったときには、可変表示部の上段の横の可変表示ゲームライン上に“大当り”を発生させ得る前兆表示が生じたことになるので、可変表示部235cの表示Cが「7」で停止された時点で、「7」の表示が赤色から緑色に変換され、それと同時に可変表示部235aの表示Aとしての「7」の数字が赤色から緑色に変換される。」(第11頁左上欄第15行〜右上欄第5行)、
「このように、固定式の可変表示部235a〜235dの表示の変化がすべて停止されるまでの間に、大当りを発生させ得る前兆表示態様が成立したときには、その態様が生じた部分の停止表示が緑色に変化される。」(第11頁左下欄第1行〜第5行)

と記載されており、それらの遊技処理によって、

「その結果、遊技者に大当り発生の前兆が視認し易く、かつ、大当り発生の期待感が増す。」(第11頁左下欄第10行〜第11行)、
「特別遊技発生の可能性があるときにはその可能性のある可変表示ゲームライン上の停止表示の色が他の色彩と異なった色彩となるので、特別遊技発生の可能性が明瞭となる。」(第15頁右上欄第10行〜第13行)

と記載されている。なお、前記「大当りを発生させ得る前兆表示態様が成立したとき」に、少なくとも前記移動式の可変表示部249aの表示の変化が停止されていないことは、前記「可変表示部235a〜235dおよび249aの表示A〜Eの変化がA,B,C,D,Eの順に停止される」という記載からみて明らかなことである。

そして、前記「大当り」及び「特別遊技」については、

「可変表示装置20の可変表示の停止表示態様がその移動した可変表示部219aの停止表示Eを含めて横又は斜めの可変表示ゲームラインの沿って特定の数字表示等の組合せ(この実施例では、ぞろ目(「3,3,3」,「7,7,7」など))となったときにはそのぞろ目の表示が全て緑色となって大当りと呼ばれる特別遊技の権利が発生する。
ここに、特別遊技の権利に基づいて行なわれる特別遊技態様とは、遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える遊技態様で、」(第4頁左上欄第7行〜第17行)

と記載されている。

以上の記載からみて、引用刊行物には、

「遊技盤面に設けられた始動入賞口への入賞に基づいて複数行を構成するように配置された複数個の可変表示部における0〜9の数字表示の変化を開始し、所定時間が経過すると前記複数個の可変表示部の表示の変化を順に停止させる可変表示装置に、特定の数字の組合せが停止表示された場合に、遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える特別遊技の権利を発生させるパチンコ遊技機において、前記可変表示装置を前記複数個の可変表示部を含む連続したドット表示部又は液晶表示部で構成すると共に、少なくとも1つの可変表示部の表示が変化している状態であり、既に停止表示されている数字の組合せが、前記特定の数字の組合せを発生させ得る前兆表示態様である場合にのみ、該前兆表示態様が生じた可変表示部の表示の色を他の可変表示部の表示の色とは異なる色に変化させ、該前兆表示態様が生じた可変表示部と他の可変表示部とを互いに異なる態様で表示させるマイクロコンピュータを設けたことを特徴とするパチンコ遊技機の画像表示装置」であって、「大当り発生の前兆が視認し易く」なる、すなわち、「特別遊技発生の可能性が明瞭となる」

という発明(以下、「引用刊行物記載の発明」という)が記載されている。


また、特開平2-98390号公報(以下、「周知例1」という)、特開平2-19182号公報(以下、「周知例2」という)、特開平4-90777号公報(以下、「周知例3」という)には、各々以下の技術事項が図面とともに記載されている。

[周知例1]
・「可変表示装置を設けた弾球遊技機やスロットマシンなどの遊技機に関し、詳しくは、複数種類の識別情報を可変表示させ、その停止時の表示結果が予め定められた特定の識別情報の組合わせになることによって所定の遊技価値を付与する遊技機に関する。」(第1頁右下欄第4行〜第9行)
・「遊技機の一例の弾球遊技機の具体例として、パチンコ遊技機(以下パチンコ機)の場合について説明する。」(第2頁右下欄第7行〜第9行)
・「前記組合わせ有効列が複数本あるため、前記識別情報の特定の組合わせが或る組合わせ有効列上において成立したとしても遊技者がそれに気付きにくく、特に遊技に熱中している場合にはせっかく特定の組合わせが成立しているのにもかかわらず遊技者がそれを見落してしまうという新たな不都合が生ずる。」(第2頁左上欄第17行〜右上欄第4行)
・「該組合わせ判定手段の判定出力に基づいて、前記特定の識別情報の組合わせに関連する組合わせが成立した組合わせ有効列を表示する組合わせ有効列表示手段とを含む」(第2頁左下欄第4行〜第7行)
・「組合わせ有効列を表示するに際して、組合わせ有効列を示すラインを設け、その組合わせ有効ライン自体を発光表示してもよい。」(第3頁右下欄第17行〜第20行)
・「前記組合わせ有効列表示手段は、前記特定の識別情報の組合わせ(777)が成立する前段階の組合わせ(たとえば2つの可変表示部が停止した段階での表示結果が77)となったときにその前段階の組合わせが成立した組合わせ有効列を表示してもよい」(第4頁左上欄第12行〜第17行)
・「その各識別情報の特定の組合わせが成立した組合わせ有効列が遊技者に表示されるため、その特定の組合わせが成立したことを遊技者が見落してしまう事態を極力減少し得る遊技機を提供し得るに至った。」(第10頁左下欄第10行〜第14行)

[周知例2]
・「賭け数に応じて組合せ指定表示ラインが指定されてから可変表示部が作動され、その作動の結果時における組合せ指定表示ライン上の表示の組合せが所定の表示態様となったときに賞排出が行なわれる遊技装置に関する。」(第1頁左下欄第15行〜第19行)
・「前記前ケース2Bの前面側上部にはLCD(リキッドクリスタルディスプレイ)パネルからなるゲーム表示部10がやや奥まった状態で設けられている。」(第2頁右上欄第7行〜第10行)
・「各賭け数表示部12(12a〜12g)に映像表示される賭け数に対応する組合せ指定表示ラインa〜gが映像表示されるようになっており、各種賞態様が成立したときに、それと対応した表示ラインa〜gの色彩が変化されることによって賞態様成立表示が明瞭にされるようになっている。」(第2頁右上欄第20行〜左下欄第6行)

[周知例3]
・「パチンコ機の遊技面の中央に設けられて図柄を表示する表示装置に関するものである。」(第1頁左下欄第18行〜第19行)
・「本実施例のパチンコ機においては、第7図に示すように、表示窓9に描かれた5本の判定ライン33のいずれかに沿って同一絵札23aが揃った場合に大当たりとなるように遊技規則が定められている。」(第3頁左下欄第11行〜第15行)

3.対比・判断

本願発明と引用刊行物記載の発明を対比すると、
引用刊行物記載の発明における「0〜9の数字」、「所定時間」、「特定の数字の組合せ」、「パチンコ遊技機」、「ドット表示部又は液晶表示部」、「既に停止表示されている数字」、「マイクロコンピュータ」は、本願発明における「複数種の識別情報」、「所定の変動表示時間」、「予め定められた特定識別情報」、「パチンコ機」、「ドットマトリクス表示器」、「停止識別情報」、「表示制御回路」に各々相当し、引用刊行物記載の発明における「特定の数字の組合せを発生させ得る前兆表示態様である」ことは、本願発明における「特定識別情報に包含される特定組合せ」であることに相当するものと認められる。
また、引用刊行物記載の発明における「遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える特別遊技の権利」が、本願発明における「遊技者に有利な権利」の一種であることはパチンコ遊技機の技術分野における常識である。
また、引用刊行物記載の発明における「ドット表示部又は液晶表示部」は「複数の可変表示部」を含むものであるから、当該「ドット表示部又は液晶表示部」の表示面を分割した分割表示面が各々の「可変表示部」の表示面になるものと認められる。
さらに、引用刊行物記載の発明においても、「前兆表示態様が生じた可変表示部の表示の色を他の可変表示部の表示の色とは異なる色に変化させ」ることによって、本願発明と同様に「既に停止表示されている停止識別情報の組合せが、前記特定識別情報に包含される特定組合せ」、すなわち「リーチ状態」であることを示す情報を付加して表示していると認められる。

以上の事項を勘案すると、本願発明と引用刊行物記載の発明は、

「遊技盤面に設けられた始動入賞口への入賞に基いて所定の変動表示時間だけ複数種の識別情報を複数行の各々について変動表示させ、前記変動表示時間の変化に基いて識別情報のいずれかを停止表示する可変表示装置に、予め定められた特定識別情報が停止表示された場合に、遊技者に有利な権利を発生させるパチンコ機において、前記可変表示装置をドットマトリクス表示器で構成すると共に、少なくとも1つの分割表示面が変動表示中であり、既に停止表示されている停止識別情報の組合せが、前記特定識別情報に包含される特定組合せの停止識別情報である場合にのみ、該停止識別情報を表示している分割表示面に特定組合せすなわちリーチ状態であることを示す情報を付加して表示し、該分割表示面と他の分割表示面とが互いに異なる態様で表示される表示制御回路を設けたことを特徴とするパチンコ機の画像表示装置。」

である点で一致し、次の2つの点において相違しているものと認められる。

[相違点1]
ドットマトリクス表示器の表示制御に関して、本願発明においては、「複数行複数列の各分割表示面単位で表示制御する」のに対し、引用刊行物記載の発明においては、表示制御の具体的手法が特定されていない点。

[相違点2]
既に停止表示されている停止識別情報の組合せが特定組合せすなわちリーチ状態であることを示す情報を付加して表示するための具体的手法として、本願発明においては、「線状の」識別情報を付加して表示する手法を採用しているのに対し、引用刊行物記載の発明においては、表示の色を他の表示の色とは異なる色に変化させて表示する手法を採用している点。

前記相違点1及び相違点2について検討する。

(相違点1について)
引用刊行物記載の発明においては、複数の可変表示部(235a〜235d、249a)の各々に識別情報が表示されるように各可変表示部単位で表示制御が行われているから、可変表示装置を各可変表示部を含む連続したドット表示部又は液晶表示部で構成した場合においても、各可変表示部に対応する分割表示面単位で表示制御を行うようにすることは、当業者にとって格別困難なこととは認められない。
また、パチンコ機やスロットマシンといった遊技機に用いられている可変表示装置において、識別情報を例えば3行3列のような複数行複数列に配置して表示することは、周知例1乃至周知例3の図面にも記載されているように広く行われていることであるから、前記ドット表示部又は液晶表示部において、1つの識別情報を表示するための分割表示面を複数行複数列設定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認められる。

(相違点2について)
可変表示装置に表示された複数個の識別情報の組合せによって種々の遊技処理を行うパチンコ機やスロットマシンといった遊技機の技術分野において、可変表示装置に表示された複数個の識別情報の内、それらの配置あるいはそれらの内容が特定の関係にある識別情報の組合せを識別情報の他の組合せよりも視認し易くするために、当該特定の関係にある識別情報に対して線状の識別情報を付加して表示することは、上記周知例1乃至周知例3にも記載されているように周知技術である(周知例1の「組合わせ有効列を示すライン」、周知例2の「組合せ指定表示ライン」、周知例3の「判定ライン」が、特定の関係にある識別情報の組合せを識別情報の他の組合せよりも視認し易くするために、当該特定の関係にある識別情報に対して付加表示される線状の識別情報である)。したがって、既に停止表示されている停止識別情報の組合せが特定組合せであることを示す情報を付加して表示するための具体的手法として、引用刊行物記載の発明のように表示の色を他の表示の色とは異なる色に変化させて表示する手法に代えて、当該周知技術のように線状の識別情報を付加して表示する手法を採用することは、当業者が適宜なし得る設計的事項であると認められる。

そして、本願発明の効果も、引用刊行物記載の発明及び前記周知技術から当業者が予測できる範囲のものと認められる。

4.むすび

したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-16 
結審通知日 2003-10-22 
審決日 2003-11-18 
出願番号 特願平4-100722
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 國分 直樹
渡部 葉子
発明の名称 パチンコ機の画像表示装置  
代理人 中村 壽夫  
代理人 小野塚 薫  
代理人 萼 経夫  
代理人 宮崎 嘉夫  

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