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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04B
管理番号 1089786
異議申立番号 異議2003-70166  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-06-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-22 
確定日 2003-10-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3304900号「複合高周波部品及びそれを用いた移動体通信装置」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3304900号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許出願 平成10年11月25日
特許権設定登録 平成14年 5月10日
特許異議申立て(申立人小幡良二、全請求項)平成15年 1月22日
取消理由通知(全請求項) 平成15年 4月11日
訂正請求(請求項1乃至請求項7) 平成15年 6月23日

2.訂正の適否
(1) 訂正の内容
ア.特許請求の範囲の記載を以下のとおりに訂正する。
「【請求項1】第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、
前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、
前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、
前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする複合高周波部品。
【請求項2】第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、
前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、
前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、
前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記複数の高周波スイッチの第3のポート側に接続される共通の第2の制御電源とで全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする複合高周波部品。
【請求項3】前記複数のフィルタが、前記複数の高周波スイッチと前記送信部との間に配置されることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の複合高周波部品。
【請求項4】前記第1及び第2のスイッチング素子、前記第1乃至第3のインダクタンス素子、及び前記第1乃至第3のキャパシタンス素子が、セラミックスからなる複数のシート層を積層してなるセラミック多層基板に内蔵、もしくは搭載されるとともに、前記セラミック多層基板に形成される接続手段によって接続され、
前記受信部に接続される複数の外部端子が、グランドとなる外部端子を挟んで、前記セラミック多層基板の側面に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複合高周波部品。
【請求項5】前記高周波スイッチを構成する前記第1及び第2のスイッチング素子が、前記セラミック多層基板に搭載され、前記ダイプレクサを構成する第1のキャパシタンス素子が、前記ダイプレクサを構成する第1のインダクタンス素子を介して、前記セラミック多層基板の積層方向に配置され、前記フィルタを構成する第3のキャパシタンス素子が、前記フィルタを構成する第3のインダクタンス素子を介して、前記セラミック多層基板の積層方向に配置されることを特徴とする請求項4に記載の複合高周波部品。
【請求項6】前記複数の高周波スイッチを構成する第2のインダクタンス素子がチョークコイルからなり、該チョークコイルが前記セラミック多層基板に搭載されることを特徴とする請求項4あるいは請求項5のいずれかに記載の複合高周波部品。
【請求項7】請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の複合高周波部品を用いたことを特徴とする移動体通信装置。」

イ. 明細書中の【0009】欄を以下のとおり訂正する。
「【0009】
【課題を解決するための手段】
上述する問題点を解決するため本発明の複合高周波部品は、第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、
前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、
前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、
前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする。」

ウ.明細書中の【0010】欄を以下のとおり訂正する。
「【0010】
また、第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、
前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、
前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、
前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記複数の高周波スイッチの第3のポート側に接続される共通の第2の制御電源とで全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする。」

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正ア.は、
請求項1に係る発明を特定する事項である第1及び第2のスイッチング素子を「それぞれ第1及び第2のダイオード」と限定し、
複数の高周波スイッチを「それぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるもの」と限定し、
共通の第1の制御電源による制御を「全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御する」と限定するものであって、

また、請求項2に係る発明を特定する事項である第1及び第2のスイッチング素子を「それぞれ第1及び第2のダイオード」と限定し、
複数の高周波スイッチを「それぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるもの」と限定し、
共通の第1の制御電源と共通の第2の制御電源による制御を「全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御する」と限定するものであって、

特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

また、上記の訂正イ.は、特許請求の範囲の請求項1の訂正と整合性を持たせて明りょうにするためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

また、上記の訂正ウ.は、特許請求の範囲の請求項2の訂正と整合性を持たせて明りょうにするためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
(3)むすび
上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項おいて準用する同法第126条第2から4項の規定に適合するので、この訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1) 申立についての概要
申立人小幡良二は、下記の甲第1乃至甲第4号証より、請求項1乃至7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張している。

甲第1号証:特開平7-58659号公報(a)
甲第2号証:中井,積層セラミック応用高周波SMD部品,THE HOTLINE,1998年4月,Vol.27 p.5-10(b)
甲第3号証:実願昭58-62239号(実開昭59-169151号公報)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(c)
甲第4号証:特開平10-308602号公報(d)

(2) 請求項1乃至請求項7に係る発明
本件特許第第3304898号の請求項1乃至請求項7に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記、2.(1)訂正の内容参照。)

(3) 請求項1に係る発明について
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(甲第2号証:中井,積層セラミック応用高周波SMD部品,THE HOTLINE,1998年4月,Vol.27 p.5-10(b))には、以下の事項が記載されている。
ア.「最近、欧米ではデュアルバンドとかトリプルバンドといったマルチバンドの携帯電話の開発が急速に進められています。」(第9頁中欄第2行〜5行)

イ.「図13(P.10)にGSMとDCS1800の代表的ブロック図を示しています。」(第9頁右欄第9行〜10行)

ウ.「今後の方向としてダイプレクサは、やはりさらなる小型化をはかるとともに図13(P.10)のブロック図に示したようなダイプレクサを核とし、セラミック積層システムの長所を生かしてアンテナ回路部を集積したフロントエンドモジュールなどの開発も進めていく予定です。」(第9頁右欄第33行〜39行)

エ.デュアルバンド携帯電話の代表的ブロック図(図13)には、ダイプレクサ(Diplexer)、ローパスフィルタ(LPF)、DCS用のT/Rスイッチ、GSM用のT/Rスイッチを備えたフロントエンドモジュール(Front End Module)が記載されており、
図13を参照すると、フロントエンドモジュールは、3ポートのダイプレクサ、3ポートのDCS用のT/Rスイッチ、3ポートのGSM用のT/Rスイッチを備え、ダイプレクサとDCS用のT/Rスイッチとの間にローパスフィルタLPFを接続し、DCS用のT/RスイッチのRポートがDCS用のバンドパスフィルタBPFを介して受信部DCS/RXに接続され、DCS用のT/RスイッチのTポートがDCS用のローパスフィルタLPFを介して受信部DCS/TXに接続され、GSM用のT/RスイッチのRポートがGSM用のバンドパスフィルタBPFを介して受信部GSM/RXに接続され、GSM用のT/RスイッチのTポートがGSM用のローパスフィルタLPFを介して受信部DCS/TXに接続されることが記載されている。

上記ア.〜エ.の事項を参照すると、刊行物1には、
3ポートのダイプレクサ、3ポートのDCS用のT/Rスイッチ、3ポートのGSM用のT/Rスイッチを備え、ダイプレクサとDCS用のT/Rスイッチとの間にローパスフィルタLPFを接続し、DCS用のT/RスイッチのRポートがDCS用のバンドパスフィルタBPFを介して受信部DCS/RXに接続され、DCS用のT/RスイッチのTポートがDCS用のローパスフィルタLPFを介して受信部DCS/TXに接続され、GSM用のT/RスイッチのRポートがGSM用のバンドパスフィルタBPFを介して受信部GSM/RXに接続され、GSM用のT/RスイッチのTポートがGSM用のローパスフィルタLPFを介して受信部DCS/TXに接続される携帯電話用のフロントエンドモジュールの発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。

また、同じく刊行物2(特開平9-294042号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 絶縁層を積層一体化して構成される積層体であって、内部にパターン電極が形成されて、少なくとも2個のインダクタンス成分及び2個のコンデンサ成分が構成され、該インダクタンス成分とコンデンサ成分とが接続されたノッチ回路が内部に少なくとも2個構成された積層体から成り、該2個のノッチ回路の一端どおしが接続されてなる分波回路が内部に構成されていることを特徴とする積層型分波器。
【請求項2】 前記ノッチ回路が、インダクタンス成分とコンデンサ成分との並列回路であることを特徴とする請求項1記載の分波器。
【請求項3】 前記2個のノッチ回路の一端どうしを接続した端部をアンテナ側に接続し、前記2個のノッチ回路のそれぞれの他端を、二つの周波数帯の通信回路側のそれぞれに接続するように構成された請求項1記載の積層型分波器を用いたデュアルバンド携帯電話端末機。」

上記の事項を参照すると、刊行物2には、
絶縁層を積層一体化して構成される積層体であって、内部にパターン電極が形成されて、少なくとも2個のインダクタンス成分及び2個のコンデンサ成分が構成され、該インダクタンス成分とコンデンサ成分とが接続されたノッチ回路が内部に少なくとも2個構成された積層体から成り、該2個のノッチ回路の一端どおしが接続されてなる分波回路が内部に構成されている積層型分波器において、前記ノッチ回路が、インダクタンス成分とコンデンサ成分との並列回路であり、前記2個のノッチ回路の一端どうしを接続した端部をアンテナ側に接続し、前記2個のノッチ回路のそれぞれの他端を、二つの周波数帯の通信回路側のそれぞれに接続するように構成された積層型分波器を用いたデュアルバンド携帯電話端末機の発明(以下、「刊行物2記載の発明」という。)が記載されている。

同じく、刊行物3(特開平8-97743号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】複数の誘電体層を積層してなる多層基板の外面に高周波デバイスを搭載し、少なくとも前記多層基板の外面または前記誘電体層上に、グランド電極および前記高周波デバイスに接続した信号ラインとを形成し、前記信号ラインと同一平面上には、前記信号ラインと前記グランド電極間に接続した第1の伝送線路を形成し、該第1の伝送線路を介して前記高周波デバイスにバイアス電圧をかけてなる高周波部品と、少なくとも前記多層基板の外面または前記誘電体層上に第2の伝送線路を形成してなり、前記高周波部品に対し、前記第2の伝送線路を前記信号ラインにより接続するフィルタ部品とを備えたことを特徴とする、複合高周波部品。
【請求項2】前記高周波デバイスとしてダイオードを用い、また前記伝送線路としてストリップラインを用い、さらに前記高周波部品を高周波スイッチ部品としたことを特徴とする、請求項1に記載の複合高周波部品。
【請求項3】前記フィルタ部品としてローパスフィルタ部品を用いたことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合高周波部品。」

イ.「【0003】高周波部品の一例として、高周波スイッチ部品1の回路図を図11に示す。…送信回路TXには、コンデンサC1を介して、高周波デバイスであるダイオードD1のアノードが接続される。…ストリップラインL1とコンデンサC4との中間点には、コントロール端子Vc1が接続される。コントロール端子Vc1には、高周波スイッチ部品1の切り換えを行うためのコントロール回路が接続される。」

ウ.「【0004】アンテナANTに接続されたコンデンサC2には、…受信回路RXが接続される。…また、ストリップラインL2とコンデンサC3との中間点には、高周波デバイスであるダイオードD2のアノードが接続される。そして、ダイオードD2のカソードは、コンデンサC5を介し、グランドに接地される。さらに、ダイオードD2とコンデンサC5との中間点には、コントロール端子Vc2が接続される。コントロール端子Vc2には、コントロール端子Vc1と同様に、高周波スイッチ部品1の切り換えを行うためのコントロール回路が接続され、高周波スイッチ部品1の回路を構成している。」

上記ア.〜ウ.の事項を参照すると、刊行物3には、
フィルタと高周波スイッチ部品を多層基板に積層一体化した複合高周波部品において、
前記高周波スイッチ部品は、ダイオードD1,D2、ストリップラインL、コンデンサで構成され、
送信回路TXには、ダイオードD1が接続されてコントロール端子Vc1が接続され、
受信回路TXの経路とグランドとの間にダイオードD2が接続されてコントロール端子Vc2が接続され、
コントロール端子Vc1、Vc2にコントロール回路が接続された複合高周波部品の発明(以下、「刊行物3記載の発明」という。)が記載されている。

同じく、刊行物4(甲第1号証:特開平7-58659号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0017】高周波スイッチ回路2は、図2に示すようにダイオードD1およびD2をスイッチング素子とするダイオードスイッチ回路にて構成し、…高電位信号を制御信号として端子Aに印加してダイオードD2をオン状態に制御し、バンドパスフィルタ1からの出力を高周波増幅器3に導き、…高電位信号を制御信号として端子Bに印加してダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器6からの出力をバンドパスフィルタ1に導く。」

イ.「【0018】高周波スイッチ回路12も図2と同様に、ダイオードD1およびD2をスイッチング素子とするダイオードスイッチ回路にて構成し、…高電位信号を制御信号としてとして端子(A)に印加してダイオードD1をオン状態に制御し、電力増幅器16からの出力をバンドパスフィルタ11に導き、…高電位信号を制御信号として端子(B)に印加してダイオードD2をオン状態に制御してバンドパスフィルタ11からの出力を高周波増幅器13に導く。」

ウ.「【0021】スイッチ制御回路18は、図4に示すように無線送受信機を制御するマイクロコンピュータ19から、…トランジスタQ1をオン状態に制御し、…高周波スイッチ回路2、10、12および中間周波スイッチング回路6の端子A(A)に印加して、バンドパスフィルタ1の出力を高周波増幅器3に導き、電力増幅器16からの出力をバンドパスフィルタ11に導…くように制御する。」

エ.「【0022】また、スイッチ制御回路18は、…トランジスタQ2をオン状態に制御し、…高周波スイッチ回路2、10、12および中間周波スイッチング回路6の端子B(B)に印加して、バンドパスフィルタ11の出力を高周波増幅器13に導き、電力増幅器6からの出力をバンドパスフィルタ1に導き、…制御する。」

上記ア.〜エ.の事項を参照すると、刊行物4には、
スイッチ制御回路18は、トランジスタQ2をオン状態に制御して高周波スイッチ2の端子Bに印加し、高周波スイッチ回路2のダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器6からの出力をバンドパスフィルタ1に導くとともに、トランジスタQ1をオン状態に制御して高周波スイッチ12の端子(A)に印加し、高周波スイッチ回路12のダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器16からの出力をバンドパスフィルタ11に導き、
また、スイッチ制御回路18は、トランジスタQ1をオン状態に制御して高周波スイッチ2の端子Aに印加し、バンドパスフィルタ1の出力を高周波増幅器3に導くとともに、トランジスタQ2をオン状態に制御して高周波スイッチ回路12の端子(B)に印加して、バンドパスフィルタ11の出力を高周波増幅器13に導く無線送受信機の発明(以下、「刊行物4記載の発明」という。)が記載されている。

同じく、刊行物5(甲第4号証:特開平10-308602号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0014】図1の(b)は、上記2分岐スイッチ(SPDT)103の一回路例を示している。…
【0015】…インダクタ122及び119は高周波信号ラインから直流ラインを分離するためのチョークコイルである。
【0016】…インダクタ113及び115は高周波信号ラインから直流ラインを分離するためのチョークコイルである。」

上記事項を参照すると、刊行物5には、2分岐スイッチのインダクタンス素子としてチョークコイルを採用することが記載されている。

そこで、請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、

(1)対比
ア.刊行物1記載の発明の「3ポートのダイプレクサ」は、請求項1に係る発明の「第1から第3のポートを有するダイプレクサ」に対応する。

イ.刊行物1記載の発明の「3ポートのDCS用のT/Rスイッチ」、「3ポートのGSM用のT/Rスイッチ」は、請求項1に係る発明の「第1から第3のポートを有する複数の高周波スイッチ」に対応する。

ウ.刊行物1記載の発明の「DCS用のローパスフィルタLPF、バンドパスフィルタBPF」は、請求項1に係る発明の「第1のフィルタ、第2のフィルタ」に対応する。

エ.刊行物1記載の発明の「ダイプレクサ」と「複数のT/Rスイッチ」と「複数のフィルタ」の接続と切り換えの関係は、請求項1に係る発明の「ダイプレクサ」と「複数の高周波スイッチ」と「複数のフィルタ」の接続と切り換えの関係と同等である。

オ.刊行物1記載の発明の「フロントエンドモジュール」は、携帯電話用の高周波信号を扱う複合部品であるから、請求項1に係る発明の「複合高周波部品」に対応する。

したがって、両者は、以下の点で一致し、以下の各点で相違する。

<一致点>
第1から第3のポートを有するダイプレクサと、第1から第3のポートを有する複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有する複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されている複合高周波部品。

<相違点>
(ア) ダイプレクサ、高周波スイッチ、フィルタが、
請求項1に係る発明では、
ダイプレクサが、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成され、
高周波スイッチが、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、前記第1のスイッチング素子が前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に配置され、前記第2のスイッチング素子が前記複数の高周波スイッチの第3のポート側に配置されて、該第1のポートが該第2、第3のポートのいずれかに切り換えられる構成を備え、
フィルタが、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成されているのに対し、
刊行物1記載の発明では、ダイプレクサ、高周波スイッチ、フィルタの具体的な構成について特定されていない点。

(イ)第1及び第2のスイッチング素子が、
請求項1に係る発明では、それぞれ第1及び第2のダイオードであるのに対し、
刊行物1記載の発明では、上記の特定はない点。

(ウ)複数の高周波スイッチが、
請求項1に係る発明では、それぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであるのに対し、
刊行物1記載の発明では、上記の特定はない点。

(エ)複数の高周波スイッチのオン・オフが、
請求項1に係る発明では、
前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されるのに対し、
刊行物1記載の発明では、複数の高周波スイッチの制御について特定されていない点。

(2)判断
上記の相違点(ア)については、
刊行物2又は刊行物3記載の発明を参照すると、
第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成された3ポートのダイプレクサ、
第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、前記第1のスイッチング素子が前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に配置され、前記第2のスイッチング素子が前記複数の高周波スイッチの第3のポート側に配置されて、該第1のポートが該第2、第3のポートのいずれかに切り換えられる3ポートの高周波スイッチ、
及び、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成される2ポートのフィルタ、
は何れも、この出願の時点では、公知技術であって、
刊行物1記載の発明のダイプレクサ、高周波スイッチ、フィルタとして、上記の各公知技術を採用することは当業者が容易に想到することができたものである。

また、上記(イ)の相違点については、
刊行物3には、高周波スイッチ部品にダイオードD1,D2を設けることか記載され、また、刊行物4には、ダイオードD1およびD2高周波スイッチ回路のスイッチング素子として用いることが記載されているから、

刊行物3又は刊行物4の記載を参照すれば、
高周波スイッチの第1及び第2のスイッチング素子を、それぞれ第1のダイオード及び第2のダイオードとすることは当業者が容易に想到することができたことである。

また、上記(ウ)の相違点については、
刊行物3には、
フィルタと高周波スイッチ部品を多層基板に積層一体化した複合高周波部品が記載され、
高周波スイッチ部品は、ダイオードD1,D2、ストリップラインL、コンデンサで構成され、
送信回路TXには、ダイオードD1が接続されてコントロール端子Vc1が接続され、受信回路TXの経路とグランドとの間にダイオードD2が接続されてコントロール端子Vc2が接続され、コントロール端子Vc1、Vc2にコントロール回路が接続されたフィルタと高周波スイッチ部品を多層基板に積層一体化した複合高周波部品が記載されているから、

刊行物3記載の発明を参照すれば、
刊行物1記載の発明の、GSM用のT/Rスイッチ及びDCS用のT/Rスイッチのそれぞれに、刊行物3に記載された高周波スイッチ部品を採用することにより
複数の高周波スイッチの、それぞれが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるようにすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

しかしながら、上記の相違点(エ)については、刊行物1乃至刊行物5、あるいは、他の甲各号証には記載も示唆もされておらず、また、各刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえないものである。

例えば、
刊行物3には、上記のように、第1のポートと第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続される高周波スイッチが開示されているものの、

刊行物3記載の高周波スイッチは、1つの周波数の信号の送受信を行うためのものに過ぎず、
複数の高周波スイッチを備えておらず、複合高周波部品の複数の高周波スイッチをどのように制御するかについては具体的構成を備えていないものである。

また、高周波スイッチのダイオードD1とダイオードD2とは、それぞれに対応した異なるコントロール端子Vc1とVc2により制御されており、
第1及び第2のダイオードを同時にオン・オフする場合にこれを共通の第1の制御電極で制御する構成とは異なるものである。

即ち、刊行物3には、複数の高周波スイッチのオン・オフを高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で制御することは開示されていない。

一方、
刊行物4には、
スイッチ制御回路18は、トランジスタQ2をオン状態に制御して高周波スイッチ2の端子Bに印加し、ダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器6からの出力をバンドパスフィルタ1に導くとともに、トランジスタQ1をオン状態に制御して高周波スイッチ12の端子(A)に印加し、ダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器16からの出力をバンドパスフィルタ11に導く無線送受信機が記載されているが、

刊行物4記載の発明の高周波スイッチは、
上記の相違点(ウ)の、それぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続される構成を備えていないものである。

また、刊行物4記載の発明の一部の構成のみを抽出すれば、
スイッチ制御回路18は、複数の高周波スイッチの送信部に接続される第2のポート側に配置されたスイッチング素子であるダイオードD1を制御する共通の第1の制御電源に対応した構成があるものの、

例えば、fbの送信中に、
高周波スイッチ回路2のダイオードD1がオンになっているときに、同じ高周波スイッチ回路2内のダイオードD2はオフとなっていて、第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように構成されておらず、
また、fbの送信中に、高周波スイッチ回路2のダイオードD1がオンになっているときに、他の高周波スイッチ回路12ではダイオードD1がオフになるようになっており、
複数の高周波スイッチである高周波スイッチ回路2と高周波スイッチ回路12の送信部に接続されたダイオードが同時にオンになるように構成されていない。

即ち、
高周波スイッチ内の第1及び第2のダイオードを同時にオンまたはオフするように制御することも開示されておらず、
また、複数の高周波スイッチの第1及び第2のダイオードを同時にオンまたはオフするように制御することも開示されていないものである。

したがって、刊行物3記載の発明及び刊行物4記載の発明を組みあわせても、上記の相違点(エ)の、複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御される構成とはならず、
刊行物1記載の発明に刊行物3又は刊行物4記載の発明を組みあわせて、請求項1に係る発明を当業者が容易に発明することができたとすることはできない。

なお、上記の相違点(エ)は、
「〜同時にオンまたはオフするように制御される」という単なる使用方法或いは制御方法を述べたものではなく、
複数の高周波スイッチのオン・オフの制御を、「複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電極により制御する」という点で制御電極を特定し、また、「全ての第1及び第2のダイオードが制御される」という点で、複数の高周波スイッチのそれぞれの送信部に接続された第1のダイオードと受信部に接続された第2のダイオードという制御の対象を特定したものであって、

請求項1に係る発明の複合高周波部品の具体的な構成及び制御に関して、複数の高周波スイッチのオン・オフと、制御電極と各ダイオードのオン・オフとの関係を特定した複合高周波部品の構成であると認められる。

そして、請求項1に係る発明は、上記の(エ)の構成を採ることにより、「送信時に、高周波スイッチを同時にオンすることができ、したがって、送信時における高周波スイッチの高調波歪みを小さくすることができ、複合高周波部品の特性を向上させることができる。」という明細書記載の作用効果を奏するものである。

してみると、請求項1に係る発明は、刊行物1乃至刊行物5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、異議申立人が提出した他の証拠を参照しても、請求項1に係る発明は、各刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

(4) 請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明と請求項1に係る発明とを比較すると、
複数の高周波スイッチのオン・オフが、
請求項1に係る発明では、前記複数の高周波スイッチの第2ポート側に接続される共通の第1の制御電源で…制御されるのに対し、
請求項2に係る発明では、前記複数の高周波スイッチの第2ポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記前記複数の高周波スイッチの第3ポート側に接続される共通の第2の制御電源とで…制御されるの点が相違する。

そして、上記の相違により、
刊行物2記載の発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、
請求項1に係る発明と同様の相違点(ア)〜(ウ)と、以下の相違点(エ’)で相違している。

(エ’)複数の高周波スイッチのオン・オフが、
請求項2に係る発明では、
前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記前記複数の高周波スイッチの第3ポート側に接続される共通の第2の制御電源とで全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されるのに対し、
刊行物1記載の発明では、複数の高周波スイッチの制御について特定されていない点。

相違点(ア)〜(ウ)については、請求項1に係る発明の場合と同様に、当業者が容易に想到することができたものである。

しかしながら、上記の相違点(エ’)については、刊行物1乃至刊行物5、あるいは、他の甲各号証には記載も示唆もされておらず、また、各刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたものとはいえないものである。

例えば、
刊行物3には、上記のように、第1のポートと第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続される高周波スイッチが開示されているものの、

刊行物3には、複数の高周波スイッチのオン・オフを高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で制御することは開示されていない。

一方、
刊行物4には、
スイッチ制御回路18は、トランジスタQ2をオン状態に制御して高周波スイッチ2の端子Bに印加し、ダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器6からの出力をバンドパスフィルタ1に導くとともに、トランジスタQ1をオン状態に制御して高周波スイッチ12の端子(A)に印加し、ダイオードD1をオン状態に制御して電力増幅器16からの出力をバンドパスフィルタ11に導く無線送受信機が記載されているが、
高周波スイッチ内の第1及び第2のダイオードを同時にオンまたはオフするように制御することも開示されておらず、
また、複数の高周波スイッチの第1及び第2のダイオードを同時にオンまたはオフするように制御することも開示されていないものである。

したがって、刊行物3記載の発明及び刊行物4記載の発明を組みあわせても、上記の相違点(エ’)の、複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記前記複数の高周波スイッチの第3ポート側に接続される共通の第2の制御電源とで全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御される構成とはならず、
また、刊行物1記載の発明に刊行物3又は刊行物4記載の発明を組みあわせて、請求項1に係る発明を当業者が容易に発明することができたとすることはできない。

そして、請求項2に係る発明は、上記の(エ’)の構成を採ることにより、「送信時に、高周波スイッチを確実に同時にオンすることができ、したがって、送信時における高周波スイッチの高調波歪みを小さくすることができ、複合高周波部品の特性を向上させることができる。」という明細書記載の作用効果を奏するものと認められる。

してみると、請求項2に係る発明は、刊行物1乃至刊行物5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
また、異議申立人が提出した他の証拠を参照しても、請求項2に係る発明は、各刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

(5) 請求項3乃至請求項7に係る発明について
請求項3乃至請求項7に係る発明は、請求項1に係る発明又は請求項2に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当するから、上記(3)又は(4)で説示したと同様の理由により、各刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

(6) むすび
以上のとおりであるから、請求項1乃至請求項7に係る発明は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1乃至請求項7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
複合高周波部品及びそれを用いた移動体通信装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、
前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、
前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、
前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする複合高周波部品。
【請求項2】 第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、
前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、
前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、
前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、
前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、
前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記複数の高周波スイッチの第3のポート側に接続される共通の第2の制御電源とで全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする複合高周波部品。
【請求項3】 前記複数のフィルタが、前記複数の高周波スイッチと前記送信部との間に配置されることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の複合高周波部品。
【請求項4】 前記第1及び第2のスイッチング素子、前記第1乃至第3のインダクタンス素子、及び前記第1乃至第3のキャパシタンス素子が、セラミックスからなる複数のシート層を積層してなるセラミック多層基板に内蔵、もしくは搭載されるとともに、前記セラミック多層基板に形成される接続手段によって接続され、
前記受信部に接続される複数の外部端子が、グランドとなる外部端子を挟んで、前記セラミック多層基板の側面に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複合高周波部品。
【請求項5】 前記高周波スイッチを構成する前記第1及び第2のスイッチング素子が、前記セラミック多層基板に搭載され、前記ダイプレクサを構成する第1のキャパシタンス素子が、前記ダイプレクサを構成する第1のインダクタンス素子を介して、前記セラミック多層基板の積層方向に配置され、前記フィルタを構成する第3のキャパシタンス素子が、前記フィルタを構成する第3のインダクタンス素子を介して、前記セラミック多層基板の積層方向に配置されることを特徴とする請求項4に記載の複合高周波部品。
【請求項6】 前記複数の高周波スイッチを構成する第2のインダクタンス素子がチョークコイルからなり、該チョークコイルが前記セラミック多層基板に搭載されることを特徴とする請求項4あるいは請求項5のいずれかに記載の複合高周波部品。
【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の複合高周波部品を用いたことを特徴とする移動体通信装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合高周波部品及びそれを用いた移動体通信装置に関し、特に、複数の異なる移動体通信システムに利用可能な複合高周波部品及びそれを用いた移動体通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、ヨーロッパでは、移動体通信装置として、複数の周波数帯域、例えば1.8GHz帯を使用したDCS(Digital Cellular System)と900MHz帯を使用したGSM(Global System for Mobile communications)とで動作が可能なデュアルバンド携帯電話器が提案されている。
【0003】
図9は、従来の移動体通信装置であるデュアルバンド携帯電話器の構成の一部を示すブロック図であり、1.8GHz帯のDCSと900MHz帯のGSMとを組み合わせた一例を示したものである。デュアルバンド携帯電話器は、アンテナ1、ダイプレクサ2、及び2つの信号経路DCS系3、GSM系4を備える。
【0004】ダイプレクサ2は、送信の際にはDCS系3あるいはGSM系4の送信信号を結合し、受信の際にはDCS系3あるいはGSM系4に受信信号を分配する役目を担う。DCS系3は、送信部Txdと受信部Rxdとに分離する高周波スイッチ3a、DCSの2次高調波及び3次高調波を減衰させる低域通過フィルタ3bからなり、GSM系4は、送信部Txgと受信部Rxgとに分離する高周波スイッチ4a、GSMの3次高調波を減衰させる低域通過フィルタ4bからなる。
【0005】
なお、高周波スイッチ3a,4aには、これらのオン・オフを制御する制御電源Vc61,Vc62がそれぞれ別々に設けられている。
【0006】
ここで、デュアルバンド携帯電話器の動作についてDCS系3を用いる場合を例に挙げて説明する。送信の際には、高周波スイッチ3aにて送信部Txdをオンにして送信部Txdからの送信信号を低域通過フィルタ3bに送り、低域通過フィルタ3bを通過した送信信号をダイプレクサ2で合波し、アンテナ1から送信する。一方、受信の際には、アンテナ1から受信した受信信号をダイプレクサ2で分波し、アンテナ1からの受信信号を低域通過フィルタ3bに送り、高周波スイッチ3aにて受信部Rxdをオンにして低域通過フィルタ3bを通過した受信信号を受信部Rxdに送る。なお、GSM系4を用いる場合にも同様の動作にて送受信される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の従来の移動体通信装置の1つであるデュアルバンド携帯電話器によれば、DCS系、GSM系の高周波スイッチのオン・オフを高周波スイッチの送信部側に接続した別々の2つの制御電源のみで制御するため、送信時に、DCS系の高周波スイッチとGSM系の高周波スイッチとが異なる動作をするため、オフ側の高周波スイッチが歪むという問題があった。また、送信時の高周波スイッチの制御が複雑になるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、送信時の歪みを抑制し、送信時の制御を簡略することができる複合高周波部品及びそれを用いた移動体通信装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述する問題点を解決するため本発明の複合高周波部品は、第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源で全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする。
【0010】
また、第1から第3のポートを有するとともに、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成されたダイプレクサと、第1から第3のポートを有するとともに、第1及び第2のスイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、該第1のポートを該第2、第3のポートのいずれかに切り換える複数の高周波スイッチと、第1、第2のポートを有するとともに、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成された複数のフィルタを備え、前記ダイプレクサの第1のポートがアンテナに接続され、前記ダイプレクサの第2、第3のポートがそれぞれ前記複数の高周波スイッチの第1のポートに接続されるか、または、前記複数のフィルタを介して接続され、前記複数の高周波スイッチの第2のポートがそれぞれ送信部に接続され、前記複数の高周波スイッチの第3のポートがそれぞれ受信部に接続されており、前記複数のフィルタは、前記複数の高周波スイッチの第1のポートもしくは第2のポートに接続されており、前記第1及び第2のスイッチング素子はそれぞれ第1及び第2のダイオードであり、前記複数の高周波スイッチはそれぞれ、前記第1のポートと前記第2のポートを結ぶ経路に直列に前記第1のダイオードが、前記第1のポートと前記第3のポートを結ぶ経路とグランドとの間に前記第2のダイオードがそれぞれ接続されるものであり、前記複数の高周波スイッチのオン・オフが、前記複数の高周波スイッチの第2のポート側に接続される共通の第1の制御電源と、前記複数の高周波スイッチの第3のポート側に接続される共通の第2の制御電源とで全ての前記第1及び第2のダイオードが同時にオンまたはオフするように制御されることを特徴とする。
【0011】
また、前記複数のフィルタが、前記複数の高周波スイッチと前記送信部との間に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、前記第1及び第2のスイッチング素子、前記第1乃至第3のインダクタンス素子、及び前記第1乃至第3のキャパシタンス素子が、セラミックスからなる複数のシート層を積層してなるセラミック多層基板に内蔵、もしくは搭載されるとともに、前記セラミック多層基板に形成される接続手段によって接続され、前記受信部に接続される複数の外部端子が、グランドとなる外部端子を挟んで、前記セラミック多層基板の側面に設けられることを特徴とする。
【0013】
また、前記高周波スイッチを構成する前記第1及び第2のスイッチング素子が、前記セラミック多層基板に搭載され、前記ダイプレクサを構成する第1のキャパシタンス素子が、前記ダイプレクサを構成する第1のインダクタンス素子を介して、前記セラミック多層基板の積層方向に配置され、前記フィルタを構成する第3のキャパシタンス素子が、前記フィルタを構成する第3のインダクタンス素子を介して、前記セラミック多層基板の積層方向に配置されることを特徴とする。
【0014】
また、前記複数の高周波スイッチを構成する第2のインダクタンス素子がチョークコイルからなり、該チョークコイルが前記セラミック多層基板に搭載されることを特徴とする。
【0015】
本発明の移動体通信装置は、上記に記載の複合高周波部品を用いたことを特徴とする。
【0016】
本発明の複合高周波部品によれば、高周波スイッチのオン・オフを、高周波スイッチの送信部側に接続される共通の第1の制御電源、及び高周波スイッチの受信部側に接続される共通の第2の制御電源で制御するため、高周波スイッチの制御を簡略化することができる。
【0017】
本発明の移動体通信装置によれば、制御を簡略化した高周波スイッチを有する複合高周波部品を用いるため、移動体通信装置の送信、受信の制御を簡略化することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の複合高周波部品の第1の実施例の回路図である。複合高周波部品10は、ダイプレクサ2、DCS系3をなす高周波スイッチ3a、フィルタ3b及びGSM系4をなす高周波スイッチ4a、フィルタ4bからなる。
【0019】
そして、ダイプレクサ2の第1のポートP11にはアンテナ1が、第2のポートP12にはDCS系3のフィルタ3bの第1のポートP31dが、第3のポートP13にはGSM系4のフィルタ4bの第1のポートP31gがそれぞれ接続される。
【0020】
また、DCS系3において、フィルタ3bの第2のポートP32dには高周波スイッチ3aの第1のポートP21dが接続され、高周波スイッチ3aの第2のポートP22dには送信部Txdが、第3のポートP23dには受信部Rxdがそれぞれ接続される。
【0021】
さらに、GSM系4において、フィルタ4bの第2のポートP32gには高周波スイッチ4aの第1のポートP21gが接続され、高周波スイッチ4aの第2のポートP22gには送信部Txgが、第3のポートP23gには受信部Rxgがそれぞれ接続される。
【0022】
ダイプレクサ2は、第1のインダクタンス素子である第1のインダクタL11,L12、及び第1のキャパシタンス素子である第1のコンデンサC11〜C15で構成される。
【0023】
そして、第1のポートP11と第2のポートP12との間に第1のコンデンサC11,C12が直列接続され、それらの接続点が第1のインダクタL11及び第1のコンデンサC13を介して接地される。
【0024】
また、第1のポートP11と第3のポートP13との間に第1のインダクタL12と第1のコンデンサC14とからなる並列回路が接続され、その並列回路の第3のポートP23側が第1のコンデンサC15を介して接地される。
【0025】
高周波スイッチ3a(4a)は、第1及び第2のスイッチング素子である第1及び第2のダイオードD1d,D2d(D1g,D2g)、第2のインダクタンス素子である第2のインダクタL21d〜L23d(L21g〜L23g)、及び第2のキャパシタンス素子である第2のコンデンサC21d〜C23d(C21g〜C23g)で構成される。なお、第2のインダクタL21d(L21g)は並列トラップコイルであり、第2のインダクタL22d(L22g)はチョークコイルである。
【0026】
そして、第1のポートP21d(P21g)と第2のポートP22d(P22g)との間にカソードが第1のポートP21d(P21g)側になるように第1のダイオードD1d(D1g)が接続され、第1のダイオードD1d(D1g)には第2のインダクタL21d(L21g)と第2のコンデンサC21d(C21g)とからなる直列回路が並列に接続される。
【0027】
また、第1のダイオードD1d(D1g)の第2のポートP22d(P22g)側、すなわちアノードは第2のインダクタL22d(L22g)及び第2のコンデンサC22d(C22g)を介して接地され、第2のインダクタL22d(L22g)と第2のコンデンサC22d(C22g)との接続点には、高周波スイッチ3a(4a)のオン・オフを制御する共通の第1の制御電源Vc1が接続される。
【0028】
さらに、第1のポートP21d(P21g)と第3のポートP23d(P23g)との間に第2のインダクタL23d(L23g)が接続され、第2のインダクタL23d(L23g)の第3のポートP23d(P23g)側は第2のダイオードD2d(D2g)及び第2のコンデンサC23d(C23g)を介して接地され、第2のダイオードD2d(D2g)のアノードと第2のコンデンサC23d(C23g)との接続点は抵抗Rd(Rg)を介して接地される。
【0029】
フィルタ3b(4b)は、第3のインダクタンス素子である第3のインダクタL31d(L31g)、及び第3のキャパシタンス素子である第3のコンデンサC31d,C32d(C31g,C32g)で構成される。
【0030】
そして、第1のポートP31d(P31g)と第2のポートP32d(P32g)との間に第3のインダクタL31d(L31g)が直列接続され、第3のインダクタL31d(L31g)には第3のコンデンサC31d(C31g)が並列に接続される。
【0031】
また、第3のインダクタL31d(L31g)の第2のポートP32d(P32g)側は第3のコンデンサC32d(C32g)を介して接地される。
【0032】
ここで、図1の回路構成を有する複合高周波部品10の動作について説明する。まず、DCS系3(1.8GHz帯)の送信信号、あるいはGSM系4(900MHz帯)の送信信号を送信する場合には、DCS系3の高周波スイッチ3a、及びGSM系4の高周波スイッチ4aの送信部Txd,Txg側に接続される共通の第1の制御電源Vc1から制御電圧3Vを印加してDCS系3の高周波スイッチ3aの第1及び第2のダイオードD1d,D2d、及びGSM系4の高周波スイッチ4aの第1及び第2のダイオードD1g,D2gをオンすることにより、DCS系3の送信信号が高周波スイッチ3a、フィルタ3b及びダイプレクサ2を、あるいはGSM系4の送信信号が高周波スイッチ4a、フィルタ4b及びダイプレクサ2を通過し、アンテナ1からそれぞれ送信される。
【0033】
なお、ダイプレクサ2により、DCS系3の送信信号がGSM系4に、GSM系4の送信信号がDCS系3にそれぞれ回り込まず、アンテナ1にのみ流れるようにしている。また、DCS系3のフィルタ3bではDCS系3の2次高調波及び3次高調波を、GSM系4のフィルタ4bではGSM系4の3次高調波をそれぞれ減衰させている。
【0034】
次いで、DCS系3及びGSM系4の受信信号を受信する場合には、DCS系3の高周波スイッチ3aの送信部Txd側、及びGSM系4の高周波スイッチ4aの送信部Txg側に接続される共通の第1の制御電源Vc1から制御電圧0Vを印加してDCS系3の高周波スイッチ3aの第1及び第2のダイオードD1d,D2d、及びGSM系4の高周波スイッチ4aの第1及び第2のダイオードD1g,D2gをオフすることにより、DCS系3の受信信号がDCS系3の受信部Rxdに、GSM系4の受信信号がGSM系4の受信部Rxgにのみ流れるようにしている。
【0035】
なお、ダイプレクサ2により、DCS系3の受信信号がGSM系4に、GSM系4の受信信号がDCS系4に、それぞれ回り込まないようにしている。
【0036】
図2は、図1の回路構成を有する複合高周波部品の要部分解斜視図である。複合高周波部品10は、セラミック多層基板11を含み、セラミック多層基板11には、図示していないが、ダイプレクサ2を構成する第1のインダクタL11,L12、第1のコンデンサC11〜C15、DCS系3の高周波スイッチ3a、フィルタ3bを構成する第2及び第3のインダクタL21d,L23d,L31d、第2及び第3のコンデンサC21d,C22d,C31d,C32d、並びに、GSM系4の高周波スイッチ4a、フィルタ4bを構成する第2及び第3のインダクタL21g,L23g,L31g、第2及び第3のコンデンサC21g,C22g,C31g,C32gがそれぞれ内蔵される。
【0037】
また、セラミック多層基板11の表面には、チップ部品からなるDCS系3の高周波スイッチ3aを構成する第1及び第2のダイオードD1d,D2d、第2のインダクタ(チョークコイル)L22d、第2のコンデンサC23d及び抵抗Rd、並びに、GSM系4の高周波スイッチ4aを構成する第1及び第2のダイオードD1g,D2g、第2のインダクタ(チョークコイル)L22g、第2のコンデンサC23g及び抵抗Rgがそれぞれ搭載される。
【0038】
さらに、セラミック多層基板11の側面から底面に架けて、12個の外部端子Ta〜Tlがスクリーン印刷などでそれぞれ形成される。これらの外部端子Ta〜Tlのうち、5個の外部端子Ta〜Teはセラミック多層基板11の一方長辺側、5個の外部端子Tg〜Tkはセラミック多層基板11の他方長辺側、残りの2個の外部端子Tf,Tlはセラミック多層基板11の相対する短辺のそれぞれの側にスクリーン印刷などにより形成される。
【0039】
そして、これらの外部端子Ta〜Tlは、ダイプレクサ2の第1のポートP11、高周波スイッチ3a,3bの第2及び第3のポートP22d,P23d,P22g,P23g、高周波スイッチ3a,3bの第1の制御電源Vc1に接続される端子、並びにグランド端子となる。
【0040】
また、セラミック多層基板11上には第1及び第2のダイオードD1d,D1g,D2d,D2g、第2のインダクタL22d,L22g、第2のコンデンサC23d,C23g、及び抵抗Rd、Rgを覆うように金属キャップ12が被せられる。
【0041】
図3(a)〜図3(h)、図4(a)〜図4(f)は、図2の複合高周波部品のセラミック多層基板を構成する各シート層の上面図及び下面図である。セラミック多層基板11は、酸化バリウム、酸化アルミニウム、シリカを主成分としたセラミックスからなる第1〜第13のシート層11a〜11mを上から順次積層し、1000℃以下の焼成温度で焼成することにより形成されるそして、第1のシート層11aの上面には、セラミック多層基板11の表面に搭載される第1及び第2のダイオードD1d,D1g,D2d,D2g、第2のインダクタL22d,L22g、第2のコンデンサC23d,C23g及び抵抗Rd,Rgを実装するためのランドLaがスクリーン印刷などで印刷され、形成される。
【0042】
また、第3及び第10のシート層11c,11jの上面には、導体層からなるストリップライン電極SL1〜SL8がスクリーン印刷などで印刷され、形成される。さらに、第4〜第8及び第12のシート層11d〜11h,11lの上面には、導体層からなるコンデンサ電極Cp1〜Cp18がスクリーン印刷などで印刷され、形成される。
【0043】
また、第7、第9、第11及び第13のシート層11g,11i,11k,11mの上面には、導体層からなるグランド電極G1〜G4がスクリーン印刷などで印刷され、形成される。さらに、第13のシート層11mの下面(図4(f))には、外部端子Ta〜Tlがスクリーン印刷などで印刷され、形成される。
【0044】
また、第1〜第11のシート層11a〜11kには、所定の位置に、ランドLa、ストリップライン電極SL1〜SL8、ストリップライン電極SL1〜SL8、及びグランド電極G1〜G4を接続するためのビアホール電極VHa〜VHkが設けられる。
【0045】
この際、ダイプレクサ2の第1のインダクタL11,L12がストリップライン電極SL6,SL7で形成される。また、DCS系3の高周波スイッチ3aの第2のインダクタL21d,L23dがストリップライン電極SL2,SL4で、DCS系3のフィルタ3bの第3のインダクタL31dがストリップライン電極SL8で、それぞれ形成される。
【0046】
さらに、GSM系4の高周波スイッチ4aの第2のインダクタL21g,L23gがストリップライン電極SL1,SL3で、GSM系4のフィルタ4bの第3のインダクタL31gがストリップライン電極SL5で、それぞれ形成される。
【0047】
また、ダイプレクサ2の第1のコンデンサC11がコンデンサ電極Cp6,Cp9で、第1のコンデンサC12がコンデンサ電極Cp3,Cp6で、第1のコンデンサC13がコンデンサ電極Cp17とグランド電極G4とで、第1のコンデンサC14がコンデンサ電極Cp9,Cp11で、第1のコンデンサC15がコンデンサ電極Cp16とグランド電極G4とで、それぞれ形成される。
【0048】
さらに、DCS系3の高周波スイッチ3aの第2のコンデンサC21dがコンデンサ電極Cp5,Cp8で、第2のコンデンサC22dがコンデンサ電極Cp13とグランド電極G2とで、それぞれ形成される。また、DCS系3のフィルタ3bの第3のコンデンサC31dがコンデンサ電極Cp8,Cp12で、第3のコンデンサC32dがコンデンサ電極Cp18とグランド電極G4とで、それぞれ形成される。
【0049】
また、GSM系4の高周波スイッチ4aの第2のコンデンサC21gがコンデンサ電極Cp4,Cp7で、第2のコンデンサC22gがコンデンサ電極Cp13とグランド電極G2とで、それぞれ形成される。また、GSM系4のフィルタ4bの第3のコンデンサC31gがコンデンサ電極Cp7,Cp10で、第3のコンデンサC32gがコンデンサ電極Cp15とグランド電極G4とで、それぞれ形成される。
【0050】
上述の第1の実施例の複合高周波部品によれば、DCS系及びGSM系の高周波スイッチのオン・オフを送信部側に接続される共通の第1の制御電源で制御するため、送信時に、DCS系及びGSM系の高周波スイッチを同時にオンすることができる。したがって、送信時における高周波スイッチの高調波歪みを小さくすることができ、複合高周波部品の特性を向上させることができる。
【0051】
また、高周波スイッチの制御を簡略化することができるため、この複合高周波部品を搭載した移動体通信装置の送信、受信の制御を簡略化することができる。
【0052】
さらに、第1の制御電源が1つになるため、この複合高周波部品を実装するプリント基板などの実装基板上の配線、配置などが簡単になり、実装基板の小型化が実現する。これに伴い、この複合高周波部品を搭載した移動体通信装置の小型化を実現することができる。
【0053】
また、複合高周波部品をなすダイプレクサ、高周波スイッチ及びフィルタを、セラミックスからなる複数のシート層を積層してなるセラミック多層基板に一体化するため、ダイプレクサと高周波スイッチとの間の整合調整が容易となり、ダイプレクサと高周波スイッチとの間の整合調整を行なう整合回路が不要となる。したがって、複合高周波部品の小型化が可能となる。ちなみに、1つのダイプレクサ、2つの高周波スイッチ、及び2つのフィルタを6.7mm×5mm×2mmの大きさに一体化することが可能となった。
【0054】
さらに、ダイプレクサが、第1のインダクタ、及び第1のコンデンサで構成され、高周波スイッチが、ダイオード、第2のインダクタ、及び第2のコンデンサで構成され、フィルタが、第3のインダクタ、及び第3のコンデンサで構成されるとともに、それらがセラミック多層基板に内蔵、あるいは搭載され、セラミック多層基板の内部に形成される接続手段によって接続されるため、複合高周波部品が1つのセラミック多層基板で構成でき、小型化が実現できる。加えて、部品間の配線による損失を改善することができ、その結果、複合高周波部品全体の損失を改善することが可能となる。
【0055】
また、波長短縮効果により、インダクタとなるストリップライン電極の長さを短縮することができるため、これらのストリップライン電極の挿入損失を向上させることができる。その結果、複合高周波部品の小型化及び低損失化を実現することができる。したがって、この複合高周波部品を搭載する移動体通信装置の小型化及び高性能化も同時に実現できる。
【0056】
図5は、本発明の複合高周波部品の第2の実施例の回路図である。複合高周波部品30は、ダイプレクサ2、DCS系3をなす高周波スイッチ31a、フィルタ3b及びGSM系4をなす高周波スイッチ41a、フィルタ4bからなる。
【0057】
このうち、ダイプレクサ2、DCS系3のフィルタ3b及びGSM系4のフィルタ4bの構成は、図1の第1の実施例の複合高周波部品10と同じである。
【0058】
高周波スイッチ31a(41a)は、第1及び第2のスイッチング素子である第1及び第2のダイオードD1d,D2d(D1g,D2g)、第2のインダクタンス素子である第2のインダクタL21d〜L23d(L21g〜L23g)、及び第2のキャパシタンス素子である第2のコンデンサC21d〜C23d(C21g〜C23g)で構成される。なお、第2のインダクタL21d(L21g)は並列トラップコイルであり、第2のインダクタL22d(L22g)はチョークコイルである。
【0059】
そして、第1のポートP21d(P21g)と第2のポートP22d(P22g)との間にカソードが第1のポートP21d(P21g)側になるように第1のダイオードD1d(D1g)が接続され、第1のダイオードD1d(D1g)には第2のインダクタL21d(L21g)と第2のコンデンサC21d(C21g)とからなる直列回路が並列に接続される。
【0060】
また、第1のダイオードD1d(D1g)の第2のポートP22d(P22g)側、すなわちアノードは第2のインダクタL22d(L22g)及び第2のコンデンサC22d(C22g)を介して接地され、第2のインダクタL22d(L22g)と第2のコンデンサC22d(C22g)との接続点には、高周波スイッチ31a(41a)のオン・オフを制御する共通の第1の制御電源Vc1が接続される。
【0061】
さらに、第1のポートP21d(P21g)と第3のポートP23d(P23g)との間に第2のインダクタL23d(L23g)が接続され、第2のインダクタL23d(L23g)の第3のポートP23d(P23g)側は第2のダイオードD2d(D2g)及び第2のコンデンサC23d(C23g)を介して接地され、第2のダイオードD2d(D2g)のアノードと第2のコンデンサC23d(C23g)との接続点には、抵抗Rd(Rg)を介して、高周波スイッチ31a(41a)のオン・オフを制御する共通の第2の制御電源Vc2が接続される。
【0062】
ここで、図5の回路構成を有する複合高周波部品20の動作について説明する。まず、DCS系3(1.8GHz帯)の送信信号、あるいはGSM系4(900MHz帯)の送信信号を送信する場合には、DCS系3の高周波スイッチ31a、及びGSM系4の高周波スイッチ41aの送信部Txd,Txg側に接続される共通の第1の制御電源Vc1から制御電圧3Vを印加し、DCS系3の高周波スイッチ31a、及びGSM系4の高周波スイッチ41aの受信部Rxd,Rxg側に接続される共通の第2の制御電源Vc2から制御電圧0Vを印加してDCS系3の高周波スイッチ31aの第1及び第2のダイオードD1d,D2d、及びGSM系4の高周波スイッチ41aの第1及び第2のダイオードD1g,D2gを確実にオンすることにより、DCS系3の送信信号が高周波スイッチ31a、フィルタ3b及びダイプレクサ2を、あるいはGSM系4の送信信号が高周波スイッチ41a、フィルタ4b及びダイプレクサ2を通過し、アンテナ1からそれぞれ送信される。
【0063】
なお、ダイプレクサ2により、DCS系3の送信信号がGSM系4に、GSM系4の送信信号がDCS系3にそれぞれ回り込まず、アンテナ1にのみ流れるようにしている。また、DCS系3のフィルタ3bではDCS系3の2次高調波及び3次高調波を、GSM系4のフィルタ4bではGSM系4の3次高調波をそれぞれ減衰させている。
【0064】
次いで、DCS系3及びGSM系4の受信信号を受信する場合には、DCS系3の高周波スイッチ31aの送信部Txd側、及びGSM系4の高周波スイッチ41aの送信部Txd側に接続される共通の第1の制御電源Vc1から制御電圧0Vを印加し、DCS系3の高周波スイッチ31aの受信部Rxd側、及びGSM系4の高周波スイッチ41aの受信部Rxg側に接続される共通の第2の制御電源Vc2から制御電圧3Vを印加してDCS系3の高周波スイッチ31aの第1及び第2のダイオードD1d,D2d、及びGSM系4の高周波スイッチ41aの第1及び第2のダイオードD1g,D2gを確実にオフすることにより、DCS系3の受信信号がDCS系3の受信部Rxdに、GSM系4の受信信号がGSM系4の受信部Rxgにのみ流れるようにしている。
【0065】
なお、ダイプレクサ2により、DCS系3の受信信号がGSM系4に、GSM系4の受信信号がDCS系4に、それぞれ回り込まないようにしている。
【0066】
上述の第2の実施例の複合高周波部品によれば、DCS系及びGSM系の高周波スイッチのオン・オフを送信部側に接続される共通の第1の制御電源と、受信部側に接続される共通の第2の制御電源とで制御するため、送信時に、DCS系及びGSM系の高周波スイッチの第1及び第2のダイオードの全てを確実にオンにし、DCS系及びGSM系の高周波スイッチを確実に同時にオンすることができる。したがって、送信時における高周波スイッチの高調波歪みをより小さくすることができ、複合高周波部品の特性をより向上させることができる。
【0067】
また、第1及び第2の制御電源がそれぞれ1つになるため、この複合高周波部品を実装するプリント基板などの実装基板上の配線、配置などが簡単になり、実装基板の小型化が実現する。これに伴い、この複合高周波部品を搭載した移動体通信装置の小型化を実現することができる。
【0068】
図6は、本発明の複合高周波部品の第3の実施例の回路図である。複合高周波部品30は、第1の実施例の複合高周波部品10(図1)と比較してDCS系3をなすフィルタ3b、及びGSM系4をなすフィルタ4bの配置位置が異なる。
【0069】
すなわち、DCS系3をなすフィルタ3bが高周波スイッチ3aと送信部Txdとの間に、GSM系4をなすフィルタ4bが高周波スイッチ4aと送信部Txgとの間にそれぞれ配置される。
【0070】
上述の第3の実施例の複合高周波部品によれば、フィルタが高周波スイッチと送信部との間に配置されるため、送信時に、送信部にある高出力増幅器の歪みをこのフィルタで減衰させることができる。したがって、受信部側の挿入損失を改善することができる。
【0071】
図7は、本発明の複合高周波部品の第4の実施例の外観を示す要部分解斜視図である。複合高周波部品40は、第1の実施例の複合高周波部品10(図1)と比較してDCS系3及びGSM系4をなす高周波スイッチ3a,4aを構成する並列トラップコイルL21d,L21g及びチョークコイルL22d,L22gがチップコイルからなり、それらがセラミック多層基板11上に搭載される点で異なる。
【0072】
上述の第4の実施例の複合高周波部品によれば、高周波スイッチの並列トラップコイル及びチョークコイルがQ値の高いチップコイルからなるため、周波数帯の異なる複数のシステムに対しても同形状のチップコイルを使用することができる。したがって、周波数帯域の変更による設計変更が容易になるため、短時間で設計変更ができ、その結果、製造コストの低減が実現できる。
【0073】
また、並列トラップコイル及びチョークコイルのQ値が高くなるため、通過帯域が広帯域になるとともに、より低損失が実現できる。
【0074】
図8は、移動体通信機であるデュアルバンド携帯電話器の構成の一部を示すブロック図であり、1.8GHz帯のDCSと900MHz帯のGSMとを組み合わせた一例を示したものである。デュアルバンド携帯電話器50は、アンテナ1及び複合高周波部品10(図1)を備える。
【0075】
そして、複合高周波部品10のポートP11にはアンテナ1が、ポートP22d,P23d,P22g,P23gには、DCS系の送信部Txd、DCS系の受信部Rxd、GSM系の送信部Txg、GSM系の受信部Rxgが、それぞれ接続される。
【0076】
上述のデュアルバンド携帯電話器によれば、小型でかつ高周波歪みの少ない複合高周波部品を用いているため、この複合高周波部品を搭載する移動体通信装置の小型化及び高性能化が実現できる。
【0077】
なお、上記の複合高周波部品の第1〜第4の実施例において、デュアルバンドが、DCSとGSMとの組み合わせである場合について説明したが、DCSとGSMとの組み合わせに限定されるものではなく、例えば、PCS(Personal Communication Services)とAMPS(Advanced Mobile Phone Services)との組み合わせ、DECT(Digital European Cordless Telephone)とGSMとの組み合わせ、PHS(Personal Handy‐phone System)とPDC(Personal Digital Cellular)との組み合わせ、などに使用することができる。
【0078】
また、2系統の信号経路を有する場合について説明したが、3系統以上の信号経路を有する場合についても同様の効果が得られる。
【0079】
さらに、上記の移動体通信機の実施例において、移動体通信機であるデュアルバンド携帯電話器に図1の複合高周波部品が使用される場合について説明したが、図5〜図7の複合高周波部品を使用しても同様の効果が得られる。
【0080】
【発明の効果】
請求項1の複合高周波部品によれば、複数の高周波スイッチのオン・オフを送信部側に接続される共通の第1の制御電源で制御するため、送信時に、複数の高周波スイッチを同時にオンすることができる。したがって、送信時における高周波スイッチの高調波歪みを小さくすることができ、複合高周波部品の特性を向上させることができる。
【0081】
また、高周波スイッチの制御を簡略化することができるため、この複合高周波部品を搭載した移動体通信装置の送信、受信の制御を簡略化することができる。
【0082】
さらに、第1の制御電源が1つになるため、この複合高周波部品を実装するプリント基板などの実装基板上の配線、配置などが簡単になり、実装基板の小型化が実現する。これに伴い、この複合高周波部品を搭載した移動体通信装置の小型化を実現することができる。
【0083】
請求項2の複合高周波部品によれば、複数の高周波スイッチのオン・オフを送信部側に接続される共通の第1の制御電源と、受信部側に接続される共通の第2の制御電源とで制御するため、送信時に、複数の高周波スイッチの第1及び第2のダイオードの全てを確実にオンにし、DCS系及びGSM系の高周波スイッチを確実に同時にオンすることができる。したがって、送信時における高周波スイッチの高調波歪みをより小さくすることができ、複合高周波部品の特性をより向上させることができる。
【0084】
また、第1及び第2の制御電源がそれぞれ1つになるため、この複合高周波部品を実装するプリント基板などの実装基板上の配線、配置などが簡単になり、実装基板の小型化が実現する。これに伴い、この複合高周波部品を搭載した移動体通信装置の小型化を実現することができる。
【0085】
請求項3の複合高周波部品によれば、フィルタが高周波スイッチと送信部との間に配置されるため、送信部に構成する高出力増幅器による送信信号の歪みを減衰させることができる。したがって、受信部の挿入損失を改善することができる。
【0086】
請求項4及び請求項5の複合高周波部品によれば、複合高周波部品をなすダイプレクサ、高周波スイッチ及びフィルタが、セラミックスからなる複数のシート層を積層してなるセラミック多層基板に内蔵、あるいは搭載されるため、ダイプレクサと高周波スイッチとの間の整合調整が容易となり、ダイプレクサと高周波スイッチとの間、及び高周波スイッチとフィルタとの間に整合調整を行なう整合回路を設ける必要がなくなる。
【0087】
したがって、部品点数を減らすことができるため、複数の信号経路を有するマイクロ波回路を形成する回路基板の小型化が可能となる。
【0088】
また、請求項4及び請求項5の複合高周波部品によれば、ダイプレクサが、第1のインダクタンス素子、及び第1のキャパシタンス素子で構成され、高周波スイッチが、スイッチング素子、第2のインダクタンス素子、及び第2のキャパシタンス素子で構成され、フィルタが、第3のインダクタンス素子、及び第3のキャパシタンス素子で構成されるとともに、それらがセラミック多層基板に内蔵、あるいは搭載され、セラミック多層基板に形成される接続手段によって接続されるため、複合高周波部品が1つのセラミック多層基板で構成でき、小型化が実現できる。加えて、部品間の配線による損失を改善することができ、その結果、複合高周波部品全体の損失を改善することが可能となる。
【0089】
また、波長短縮効果により、各インダクタンス素子となるストリップライン電極の長さを短縮することができるため、これらのストリップライン電極の挿入損失を向上させることができる。その結果、複合高周波部品の小型化及び低損失化を実現することができる。
【0090】
請求項6の複合高周波部品によれば、複数の高周波スイッチを構成する第2のインダクタンス素子のうち、チョークコイル及び並列トラップコイルがチップコイルであるため、高周波スイッチを低損失に設計できるとともに、広帯域化が可能となる。
【0091】
請求項7の移動体通信装置によれば、小型でかつ高周波歪みの少ない複合高周波部品を用いているため、この複合高周波部品を搭載する移動体通信装置の小型化及び高性能化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の複合高周波部品に係る第1の実施例の回路図である。
【図2】
図1の複合高周波部品の要部分解斜視図である。
【図3】
図2の複合高周波部品のセラミック多層基板を構成する(a)第1のシート層〜(h)第8のシートの上面図である。
【図4】
図2の複合高周波部品のセラミック多層基板を構成する(a)第9のシート層〜(e)第13のシートの上面図及び(f)第13のシートの下面図である。
【図5】
本発明の複合高周波部品に係る第2の実施例の回路図である。
【図6】
本発明の複合高周波部品に係る第3の実施例の回路図である。
【図7】
本発明の複合高周波部品に係る第4の実施例の要部分解斜視図である。
【図8】
図1の複合高周波部品を用いた移動体通信機の構成の一部を示すブロック図である。
【図9】
従来の移動体通信機の構成の一部を示すブロック図である。
【符号の説明】
10,20,30,40 複合高周波部品
2 ダイプレクサ
3,4 信号経路(DCS系、GSM系)
3a,4a,31a,41a,32a,42a 高周波スイッチ
3b,4b フィルタ
11 セラミック多層基板
11a〜11m シート層
50 移動体通信機(デュアルバンド携帯電話器)
C11〜C15 第1のキャパシタンス素子
C21d〜C23d,C21g〜C23g 第2のキャパシタン素子
C31d,C32d,C31g,C32g 第3のキャパシタン素子
D1d,D1g 第1のスイッチング素子
D2d,D2g 第2のスイッチング素子
L11,L12 第1のインダクタ素子
L21d〜L23d,L21g〜L23g 第2のインダクタ素子
L31d,L31g 第3のインダクタ素子
Vc1 第1の制御電源
Vc2 第2の制御電源
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-30 
出願番号 特願平10-334361
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 江口 能弘工藤 一光  
特許庁審判長 西川 正俊
特許庁審判官 橋本 正弘
吉見 信明
登録日 2002-05-10 
登録番号 特許第3304900号(P3304900)
権利者 株式会社村田製作所
発明の名称 複合高周波部品及びそれを用いた移動体通信装置  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 阿部 豊隆  
代理人 長谷川 芳樹  

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