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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1089801
異議申立番号 異議1999-71389  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-11-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-15 
確定日 2003-10-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2811595号「カラー画像処理方法」の請求項1ないし25に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2811595号の請求項1ないし25に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2811595号の請求項1ないし25に係る発明は、平成2年1月12日に出願(優先権主張日平成1年1月13日)され、平成10年8月7日にその設定登録がなされ、その後、相原光政より特許異議の申し立てがなされ、平成12年2月15日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年6月5日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
1-1.訂正事項A
特許請求の範囲の【請求項1】、【請求項8】【請求項13】中の、
「第1校正において入力装置を中間色空間に適合するように校正するステップと」を、それぞれ「第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと」と訂正する。

1-2.訂正事項B
特許請求の範囲の【請求項1】、【請求項8】及び【請求項13】中の、
「第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するように校正するステップと」を、それぞれ、「第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと」と訂正する。

1-3.訂正事項C
特許請求の範囲の【請求項1】中の、
「前記入力色データを前記入力装置から収集するステップと」を、
「入力色データを前記入力装置から収集するステップと」と訂正する。

1-4.訂正事項D
特許請求の範囲の【請求項1】中の、
「前記中間色空間データを前記出力装置へ出力するステップを含んでおり」を、「前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップを含んでおり」と訂正する。

1-5.訂正事項E
特許請求の範囲の【請求項1】中の「前記中間色空間データを前記出力データへ変換するステップが」を、「前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際」と、また、【請求項8】及び【請求項13】中の、「前記中間色空間データを前記出力色データへ変換する前記変換ステップが」を、「前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際」と、それぞれ訂正する。

1-6.訂正事項F
特許請求の範囲の【請求項1】中の、
「・・・また前記中間色空間は均等色空間である、入力色データを出力色データへ変換する方法において、」を、「・・・また前記中間色空間は均等色空間であり・・・」と訂正する。

1-7.訂正事項G
特許請求の範囲の【請求項1】中の「前記処理ステップが、装置従属色出力値へ変換されたとき・・・」、及び【請求項8】、【請求項13】中の、「前記処理ステップが装置従属色出力値へ変換されたとき・・・」を、それぞれ、「前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したとき・・・」と訂正する。

1-8.訂正事項H
特許請求の範囲の【請求項1】中の、
「・・・出力値との間の最短ベクトル距離として決定される・・・」を、「・・・出力値との間の最短ベクトル距離に基づいて決定される・・・」と訂正する。

1-9.訂正事項I
特許請求の範囲の【請求項8】及び【請求項13】中の、
「入力色データを前記入力装置から収集するステップと」を、
「入力色データを前記入力装置の色データから収集するステップと」
と訂正する。

1-10.訂正事項J
特許請求の範囲の【請求項8】及び【請求項13】中の、
「前記中間色空間データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり」を、
「前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり」
と訂正する。

1-11.訂正事項K
特許請求の範囲の【請求項8】及び【請求項13】中の、
「前記調整装置従属色値が前記中間色空間内の少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ・・・」を、
「前記調整装置従属色出力値が前記中間色空間内の少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ・・・」と訂正する。

1-12.訂正事項L
特許請求の範囲の【請求項13】中の、
「・・・すべての色入力値を前記プリント不可能値が・・・」を、
「・・・全ての色入力値を前記プリント不可能な座標値が・・・」と訂正する。

1-13.訂正事項M
特許請求の範囲の【請求項18】及び【請求項22】中の、「前記色データを前記出力装置へ出力するステップとを含」との記載を、「前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含」と訂正する。

1-14.訂正事項N
特許請求の範囲の【請求項18】中の、「前記入力色域を複数の部分に分割するステップと」との記載を、「前記入力色域を複数の部分空間に分割するステップと」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
2-1.訂正事項A及びBについて
訂正事項A及びBは、第1校正及び第2校正が、その都度行われるものではないことを明りょうにすると共に、「校正する」のを、明細書に記載されている、ルックアップテーブルを用いるものに特定するために、「あらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成する」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、該訂正事項は、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-2.訂正事項Cについて
請求項1には、それ以前に「入力色データ」の記載はなく、「前記入力色データ」の記載は、意味を不明瞭にするものであるものを、訂正事項Cは、「前記」の記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、該訂正事項は、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-3.訂正事項Dについて
訂正事項Dは、「中間色空間データを出力装置へ出力するステップ」を含むものを、「第2校正に従って中間色空間データを出力色データへ変換するステップ」と「出力色データを出力装置へ出力するステップ」を含むものに特定するものであり、また、この点は、「この均等色空間データを、続いて、第2校正に従って出力CMY色データへ変換する。そして最終的には、この出力CMY色データを出力装置へ出力というものである。」(特許公報第9欄第11〜14行)の記載等により支持されている。
したがって、訂正事項Dは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-4.訂正事項Eについて
訂正事項Eは、「前記中間色空間データを前記出力データへ変換するステップが」ないし「前記中間色空間データを前記出力色データへ変換する前記変換ステップが」の記載では、第2校正におけるステップなのか、実際の入力データを出力データへ変換するステップなのか不明確であるので、第2校正におけるステップであることを明確にするものであるし、また、上記訂正事項Bにより、第2校正での「校正」は、ルックアップテーブルを用いるものに特定されたため、このルックアップテーブルを作成する際、に特定するものである。
したがって、訂正事項Eは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-5.訂正事項Fについて
請求項1の記載を、「・・・入力色データを出力色データへ変換する方法において、・・・入力色データを出力色データへ変換する方法。」とすることで、「おいて」以前の記載した構成が公知のものであるとは考えていないのに、公知であるという印象を与えているので、「において」を削除すると共に、重複した記載されている「入力色データを出力色データへ変換する方法」を削除するものであるし、該訂正によって発明の構成自体は変わらないから、訂正事項Fは明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-6.訂正事項Gについて
何が装置従属色出力値へ変換されるのか不明確であったものを、「装置独立値」であることを明確にするものであるから、訂正事項Gは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-7.訂正事項Hについて
本件明細書(特許公報第10頁20欄第5〜7行)に、「再現不可能な色については、この色からその色域への最短のベクトル距離を判定することによって、その色を色域の縁部へと移動させるというものである。」と記載されるように、調整装置従属色出力値(再現不可能な色の出力値)は「ベクトル距離に基づいて決定される」ことは記載されているし、また、この場合のベクトルとは、プリント可能な色出力値とプリント不可能色出力値との出力値の差に相当するものであるが、この差の増加は、補正量の増加に結びつくことはあっても、色出力値の増加に結びつかないことは明らかであり、出力値をベクトル距離とすることはあり得ないことである。
したがって、訂正事項Hは、誤記の訂正を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-8.訂正事項Iについて
収集する入力色データとして、入力装置、すなわち、入力装置のデータから、入力装置のデータのうちの色データに特定すると共に、明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、該訂正事項は、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-9.訂正事項Jについて
請求項8及び請求項13において、「前記中間色空間データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり」の前には、「前記第2校正に従って前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するステップ」の記載があり、出力装置へ出力するデータは、「中間色空間データ」でなく、変換後の「出力色データ」の誤記であることは明らかであるから、訂正事項Jは、誤記の訂正を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-10.訂正事項Kについて
請求項8及び13には、これより前に「調整装置従属色値」の記載はなく、また、この「値」が何の値であるか不明瞭であったものを、「出力値」に特定し、これより前に記載のある「調整装置従属色出力値」にするものであるから、訂正事項Kは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-11.訂正事項Lについて
請求項13には、これより前に「プリント不可能値」の記載はないし、また、この「値」が何の値であるか不明瞭であったものを、「座標値」に特定し、これより前に記載のある「プリント不可能な座標値」に合わせるものであるから、訂正事項Lは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、該訂正事項は、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-12.訂正事項Mについて
請求項18及び22には、これより前に「色データ」として、「入力色データ」と「出力色データ」の2つあり、このうちのどちらであるか不明確であるが、出力装置で出力するのは「出力色データ」であることは明らかであり、これに特定する訂正事項Mは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

2-13.訂正事項Nについて
訂正事項Nは、「入力色域を複数の部分に分割する」の記載では、入力色域が分割された「部分」とは、どのようなものか不明瞭であるものを、明細書に記載された「部分空間」にするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、また、新規事項の追加には該当しないし、特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでもない。

3.独立特許要件の判断
下記、「III.特許異議申立について」に示すように、訂正後の本件請求項1〜25に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に違反するものではなく、また、他の不特許事由に該当するものも認められない。
したがって、訂正後の本件請求項1〜25に係る発明は、出願に際して独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について
1.本件発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許第2811595号の請求項1ないし25に係る発明は、上記訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし25に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
入力色データを前記入力装置から収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際、前記中間色空間データを処理することによって、入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを含んでおり、また前記中間色空間は均等色空間であり、
前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したときに前記出力装置によって再現されることが不可能な装置独立色出力値であるプリント不可能装置独立色出力値を少なくとも1つ特定するステップと、前記特定されたプリント不可能装置独立色出力値を再現するための前記出力色域内にある調整装置従属色出力値を決定するステップとを含んでおり、
前記調整装置従属色出力値は前記中間色空間内において前記プリント不可能色出力値と前記出力装置によりプリント可能な色出力値との間の最短ベクトル距離に基づいて決定されることを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項2】前記入力色域が前記入力装置の全色城の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項3】前記入力色域が入力画像の全色域の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項4】前記最短ベクトル値距離が、前記中間色空間内の1つの座標を一定に保ちつつ決定されることを特徴とする請求項1に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項5】前記中間色空間が明度座標、彩度座標および色相座標により特定されていることを特徴とする請求項4に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項6】前記一定に保たれる1つの座標が、明度座標であることを特徴とする請求項5に記載の入力色データを出力色へ変換する方法。
【請求項7】前記一定に保たれる座標が、明度座標と更に前記色相座標であることを特徴とする請求項6に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項8】入力色データを出力色データへ変換する方法であって、
第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
入力色データを前記入力装置の色データから収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際、前記中間色空間データを処理することによって、入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを含んでおり、また、前記中間色空間は均等色空間であり、
前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したときに前記出力装置によって再現されることが不可能な装置独立色出力値であるプリント不可能装置独立色出力値を少なくとも1つ特定するステップと、前記特定されたプリント不可能装置独立色出力値を再現するための前記出力色域内にある調整装置従属色出力値を決定するステップとを含んでおり、
前記調整装置従属色出力値は前記中間色空間内において決定され、
前記調整装置従属色出力値が前記中間色空間内の少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ、少なくとも1つの第2の座標に関してそのゼロと各々の前記プリント不可能座標値の間に存在する全ての色入力値を、前記プリント不可能値が前記出力色域内に位置するようになるまで最短ベクトル距離に圧縮することにより決定されることを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項9】前記中間色空間が、明度座標、彩度座標および色相座標により特定されていることを特徴とする請求項8に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項10】前記第2の座標が彩度座標であることを特徴とする請求項9に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項11】前記入力色域が前記入力装置の全色域の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項12】前記入力色域が入力画像の全色域の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項13】入力色データを出力色データへ変換する方法であって、
第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
入力色データを前記入力装置の色データから収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際、前記中間色空間データを処理することによって、入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを含んでおり、また、前記中間色空間は均等色空間であり、
前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したときに前記出力装置によって再現されることが不可能な装置独立色出力値であるプリント不可能装置独立色出力値を少なくとも1つ特定するステップと、前記特定されたプリント不可能装置独立色出力値を再現するための前記出力色域内にある調整装置従属色出力値を決定するステップとを含んでおり、
前記調整装置従属色出力値は、前記中間色空間内において決定され、前記調整装置従属色出力値が前記中間色空間内の少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ、少なくとも1つの第2の座標に関して前記出力色域の外縁と前記プリント不可能な座標値との間に存在する全ての色入力値を前記プリント不可能な座標値が前記出力色域の外縁に位置するように最短ベクトル距離にクリッピングすることにより決定されることを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項14】前記中間色空間が明度座標、彩度座標および色相座標により特定されていることを特徴とする請求項i3に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項15】前記第2の座標が彩度座標であることを特徴とする請求項14に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項16】前記出力色域が前記入力装置の全色域の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項17】前記入力色域が入力画像の全色域の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項18】入力色データを出力色データに変換する方法であって、
第1校正において入力装置を入力色域を規定する中間色空間に適合するように校正するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するように校正するステップと、
前記入力色データを前記入力装置から収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間デ「夕を前記出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第1校正のステップは、複数のカラー・パッチを測色方式で測定し、前記カラー・パッチに対応する装置独立色入力値の集合を得るステップと、
前記入力装置を用いて前記カラー・パッチに対応した装置従属色入力値の集合を得るステップと、
前記入力色域を複数の部分空間に分割するステップと、
前記装置独立色入力値と前記装置従属色入力値との間の関係を、前記部分空間の各々毎に個別に規定することにより、前記カラー・パッチに関する前記装置独立色入力値と前記装置従属入力値とを相関させるステップと、
前記カラー・パッチによりあらわされていない入力に対応させるため、その他の装置独立色入力値を前記集合に基づいて計算するステップと、
前記その他の装置独立色入力値の前記計算ステップは、前記関係を用いて前記部分空間の各々ごとに別個に実行され、前記装置独立色入力値と前記装置従属入力値に基づいて、前記入力色データを前記中間色空間データへマッピングしている入力ルックアップ・テーブルを作成するステップとを含むことを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項19】前記装置独立色入力値を前記部分空間に亙って平滑化するステップを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項20】前記平滑化が、その中に前記色入力値が位置する前記部分空間に関する前記関係のうち1つの関係と、当該部分空間に隣接する前記部分空間のうちの少なくとも1つの部分空間に基づいた前記関係のうちの別の1つの関係とを用いて内挿された値の重み付け平均値を用いて前記装置独立入力値のうちの少なくとも幾つかを内挿することにより実行されることを特徴とする請求項19に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項21】前記平滑化が、前記内挿に続いて前記装置独立色出力値の各々について当該入力値に尤も近接した所定個数の色入力値との間の平均値を算出することにより実行されることを特徴とする請求項19に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項22】入力色データを出力色データへ変換する方法であって、
第1校正において入力装置を中間色空間に適合するように校正するステップと、
第2校正において出力装置を出力色域を規定している前記中間色空間に適合するように校正するステップと、
前記入力色データを前記入力装置から収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含み、
前記第2校正ステップが、前記出力装置を用いて、装置従属色出力値の集合を得るために複数のカラー・パッチをプリントするステップと、
前記カラー・パッチを測色方式で測定し、前記カラー・パッチに対応した装置独立色出力値の集合を得るステップと、
前記出力色城を複数の部分空間に分割するステップと、前記装置独立出力値と前記装置従属出力値との間の関係を、前記部分空間の各々ごとに個別に規定することにより、前記装置独立色出力値と前記装置従属色出力値とを相関させるステップと、
前記集合に基づいて前記カラー・パッチによっては表されていない出力に対応するためのその他の装置独立色出力値を算出するステップと、
前記その他の装置独立色出力値の算出は前記関係を用いて前記部分空間の各々ごとに個別に実行され、前記装置独立色出力値と前記装置従属色出力値とに基づいて、前記中間色空間データを前記出力色データへマッピングする出力ルックアップ・テーブルを作成するステップを含む
ことを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項23】前記装置独立色出力値を前記部分空間の全域に亙って平滑化するステップを更に含んでいることを特徴とする請求項22に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項24】前記平滑化がその中に前記色出力値が位置する前記部分空間に関する前記関係の内の1つの関係と当該部分空間に隣接する前記部分空間の内の少なくとも1つの部分空間に基づいた前記関係のうちの別の1つの関係とを用いて内挿された値の重み付け平均値を用いて、前記装置独立色出力値のうちの少なくとも幾つかを内挿することにより実行されることを特徴とする請求項23に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【請求項25】前記平滑化が、前記内挿に続いて前記装置独立色出力値の各々について、当該色出力値に最も近接した所定個数の色出力値との間の平均値を算出することにより実行されることを特徴とする請求項23に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。」

2.特許異議の申立て理由の概要
特許異議申立人 相原光政は、証拠として、
甲第1号証(特開昭61-277267号公報)
甲第2号証(特開昭61-288662号公報)
甲第3号証(KONIKA TECHNICAL REPORT Vol.1 JAN.1998,P.99〜105)
甲第4号証(特開昭61-7774号公報)
甲第5号証(特開昭63-254889号公報)
参考資料(特開昭60-105376号公報、特開昭61-10362号公報)を提示し、
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」)〜請求項25に係る発明(以下、「本件発明25」という。)は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、
特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである旨主張している。

3.甲号各証の記載事項
(1)甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(1a)「2つの混合成分、単一成分及び白成分を有する特殊色データに正規化映像色データを変換し、ハードコピーデータの所定範囲外の映像色データを該所定範囲内に変換できるように上記特殊色データを処理し、該処理された特殊色データをハードコピー色データに変換して、ハードコピーの色を映像表示の色に合わせることを特徴とする色合わせ方法。」(特許請求の範囲)
(1b)「[問題を解決するための手段及び作用]・・・・・その結果、映像色に一致するハードコピー色を表わすシアン、マゼンタ及び黄色(CMY)の値が得られる。RGB入力を必要とするコピーに対しては、CMY値のビットを補完する。」(第3頁左上欄下から第2行〜右上欄第15行)
(1c)「XYZ空間からMSW空間への変換は、3×3マトリックスの掛算
〔B〕*〔X,Y,Z〕=〔M,S,W〕・・・・・(8)
を意味し、RGB空間からXYZ空間への変換も3×3マトリックスの掛算を意味するので、RGB空間からMSW空間への直接変換
〔A〕*〔B〕*〔R,G,B〕=〔M,S,W〕・・・・・(9)
を利用してもよい。」(第4頁右下欄第2〜9行)
(1d)「RGB空間及びMSW空間の両方を共通XYZ空間に関連させているので、XYZ空間が映像色の世界をハードコピー色の世界から分離する。」(第4頁右下欄第9〜12行)
(1e)「MSW空間の白成分が負の場合、要求された色は過飽和であり、ハードコピーに再生できない。負の白の値は零に設定する。これは、映像色範囲(14)内であるが、ハードコピー色範囲(16)外の色(22)と等価である。白の零合わせは、ハードコピーの白(18)を範囲外の映像色(22)に接続する線(24)に沿って、ハードコピー色範囲(16)の周辺(26)に達するまで色をひっぱる。・・・・・色が映像範囲内であるが、ハードコピー範囲外の場合、その色を範囲内の色に合わせ、色の差を保持する色にその色を合わせる。」(第4頁右下欄第13行〜第5頁左下欄第8行)
(1f)「適当なCMY表により・・・・新たなCMYベクトル〔C’、M’、Y’〕を発生し、このベクトルをハードコピー装置に出力するか・・・RGBベクトル〔R’,G’,B’〕を決定する。」(第6頁右上欄第11〜16行)

(2).甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「(1)入力カラー画像信号の彩度及び明度の範囲が出力系の彩度及び明度の再現範囲と比較して、大きい場合、入力カラー画像信号の彩度及び明度を出力系の彩度及び明度に所定の関数で圧縮写像することにより出力系のカラー画像信号を得ることを特徴とするカラー画像信号処理方法。」(特許請求の範囲第1項)
(2b)「以上ふりかえってみると予め決められた関数fL、fu、fγを用いて入力のRGBから出力のR’G’B’が一意に決定できることがわかる。従って、以上の部分は入力のRGBをアドレス入力するテーブル変換用メモリ(ROM10で構成することが可能である。」(第2頁左下欄第13〜18行)
(2c)「また、先述の実施例において、圧縮ROM10と対数変換ROM20、マスキングROM30を分離して、各々ROMで構成したが入力のRGBから一意に出力が決まるのであるから、これらをまとめて、1つのROMで構成してもよい」(第3頁左下欄第7〜12行)

(3).甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(3a)「4 色の圧縮・・・・・表現しようとするものと色が出力媒体側にない場合(出力側の方が小さい)は色の圧縮という問題が出てくる。・・・・・現在までの結論としては、色相は変えず、彩度・明度を高彩度部でより強く圧縮する・・・・・出力側の色再現範囲外の色を圧縮する条件には上述の他には次の4つが考えられる。
(1)明度を一定にしておく。
(2)最も色差の近いところに移す。・・・・・」(第103頁)
(3b)第103頁の「図4 色の圧縮」には、入力側の色再現範囲と出力側の色再現範囲を示す線が記載されている。
(3c)「5 補間法を用いた色再現
色再現問題は前述のように、出力データ値とそのときの色座標の対応をとることである。・・・・・出力データ値の空間(以後、YMC空間と呼ぶ)と色の座標値の空間(以後、Luv空間と呼ぶ)の対応を得るために、YMCの信号値をそれぞれ4等分して組み合わせた5×5×5のカラーパッチを実際に出力して測定し、その隙間は滑らかに変化するものとして、周囲からの重み平均により補間する。(前掲の色再現範囲はこの手法による)・・・・・ある色座標が与えられたときに、その色座標が8つのサンプル点で囲まれるどの6面体に入るかを検索し、その6面体(=サンプル点)のデータを元に立体の分割・検索を繰り返すことで、逐次近似を行う(図6、×印1)。」(第104頁)
(3d)「6 補間法を用いた色補正方法・・・・・色補正演算にも補間法を用いて、入力と出力の対応をある間隔で求めてメモリに記憶させておき、その間隔は重み係数のLUTと乗算累積器を用いて、補間演算する」(第105頁)

(4).甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(4a)「(1)原画像情報を複数の色信号として検出する手段と、この手段により得られる色信号を輝度・色差信号の組に変換する手段と、この手段により得られる輝度・色差信号の組を出力形態に適合した出力用信号に変換する手段と・・・・カラー画像出力装置。」(特許請求の範囲第1項)
(4b)「この発明における変換テーブルは出力可能な色と対応をもたない組に対しては、・・・・・誤差距離Eを最小とするような色信号の組(x1,x2,x3)に対応する出力用信号値と同じ出力用信号値を割当てて構成される。」(第2頁左下欄下から第4行〜右下欄第4行)

(5).甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(5a)「(1)出力系の色再現範囲の方が入力系の色再現範囲より狭いとき、上記出力系の色再現範囲を越えるような色分解画像情報が入力したときには、これに対応した出力系の値をその出力表色系の無彩色方向に圧縮し、圧縮して得た値をその出力表色系の値をして修正使用するようにしたことを特徴とする色分解画像修正方法。」(特許請求の範囲)
(5b)「上述した実施例は以下のようにも変形することができる。・・・・・第6に、色空間座標の変換は、(B、G、R)、(L*、u*、v*)、(X、Y、Z)などにも適用できることは容易に理解できよう。
出力系の色再現範囲外の色T’は必ずしも、出力系の色再現範囲の境界面の色T* に圧縮する必要はなく、境界面よりも若干内側の色に置き換えることもできる。・・・・・これを示したのが、第25図であって、この場合、入力系の色再現範囲の境界面上の色T1’は、出力系の色再現範囲の境界面上のT1* に置き換え、それにより内側の色で出力系の色再現範囲外の色T2’、T3’は夫々出力系色再現範囲の色に置き換えるものである。」(第11頁右下欄第9行〜第12頁左下欄第4行)
(5c)第19頁の「第25図」には、L* u* v* 空間での、入力系の色再現範囲と出力系の色再現範囲、また、入力系の色再現範囲を示す線上のT1’から、出力系の色再現範囲を示す線上のT1* への矢印が記載されている。

4.対比・判断
4-1.本件発明1について
本件は、「画像複製システム内における画像データの色処理のための方法を提供すること、種々の入力装置又は出力装置について利用することができるその種の方法を提供すること、入力装置ないし出力装置の交換を容易にするその種の方法を提供すること、入力装置と出力装置との間の色域の不整合に対処するための補正を行うその種の方法を提供すること」(特許公報第5頁第10欄第30〜37行参照)を目的として、本件発明1に記載された構成、特に、第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、第2校正において出力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その構成に基づいたルックアップテーブルを作成するステップとを有し、また、入力色データを出力色データへの変換は、第1校正に従って入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、第2校正に従って中間色空間データを出力色データへ変換するステップとの2つのステップで行うようにするものである。
(甲第1号証について)
これに対して、甲第1号証には、「2つの混合成分、単一成分及び白成分を有する特殊色データに正規化映像色データを変換し、ハードコピーデータの所定範囲外の映像色データを該所定範囲内に変換できるように上記特殊色データを処理し、該処理された特殊色データをハードコピー色データに変換して、ハードコピーの色を映像表示の色に合わせることを特徴とする色合わせ方法。」(特許請求の範囲)に関し、収集した入力色データを各種の処理を施して出力色データを得、これを出力装置へ出力すること、また、中間色空間データへ変換することについても記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、本件発明が目的とする、入力装置又は出力装置を交換を容易にすることについての記載はないし、入力色データを収集するステップより前の、「第1校正において・・・校正し・・・ステップ」及び「第2校正において・・・校正し・・・ステップ」の2つのステップついての具体的な記載はない。また、校正に従って入力データを出力データへ変換するのに、多数段の変換を行うものが記載されるのみで、第1校正に従うステップと第2校正に従うステップの2つのステップで行うことについては、示唆する記載もない。
(甲第2号証について)
甲第2号証には、「カラー画像信号処理方法」(発明の名称)に関し、第1図に、RGBを中間色空間Luv(本件明細書中でも用いられている)に変換することも記載されている。
しかしながら、甲第2号証には、本件発明が目的とする、入力装置又は出力装置を交換を容易にすることについての記載はないし、校正に従って入力データを出力データへ変換するには、多数の変換工程を有する、例えば、ROMにより一括して行うことも記載されているが、本件発明でいう、第1校正の一部と第2校正の一部を一括して行うことを示していて、本件の特徴とする、第1校正に従う入力データを中間色空間データへ変換するステップと、第2校正に従う中間色空間データを出力データへ変換するステップとの2つのステップにより変換することについては、記載も示唆もされていない。
(甲第3〜5号証について)
次に、甲第3号証には、「色の圧縮」(第103頁)、「補間法を用いた色再現」(第104頁)及び「補間法を用いた色補正方法」(第105頁)に関する発明が記載され、カラーバッチを実際に出力して測定することも記載されている。また、甲第4号証には、「画像像情報を複数の色信号として検出する手段と、この手段により得られる色信号を輝度・色差信号の組に変換する手段と、この手段により得られる輝度・色差信号の組を出力形態に適合した出力用信号に変換する手段・・・・カラー画像出力装置。」(特許請求の範囲第1項)に関する発明が、甲第5号証には、「出力系の色再現範囲の方が、入力系の色再現範囲より狭いとき、上記出力系の色再現範囲を越えるような色分解画像情報が入力したときには、これに対応した出力系の値をその出力表色系の無彩色方向に圧縮し、圧縮して得た値をその表色系の値をして修正使用するようにしたことを特徴とする色分解画像修正方法。」(特許請求の範囲)に関する発明が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲第3〜5号証には、本件の特徴とする、第1校正に従う入力データを中間色空間データへ変換するステップと、第2校正に従う中間色空間データを出力データへ変換するステップとの2つのステップにより入力データを出力データへ変換することについては、記載も示唆もされていない。
(まとめ)
してみると、入力装置又は出力装置の交換を容易にすることについて、また、第1校正に従う入力データを中間色空間データへ変換するステップと、第2校正に従う中間色空間データを出力データへ変換するステップとの2つのステップにより入力データを出力データへ変換することについての記載がない甲第1〜5号証を組合せることで、上記の構成を有する本件発明1に、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4-2.本件発明8及び13について
本件発明8及び13は、本件発明1と、「第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、第2校正において出力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その構成に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、第1校正に従って入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、第2校正に従って中間色空間データを出力色データへ変換するステップ」の構成を有する、すなわち、2つのステップにより入力データを出力データへ変換する点で共通するものである。
そして、本件発明1は、4-1.本件発明1について、の項に記載したように、2つのステップにより入力データを出力データへ変換することで、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、同様の理由により、本件発明8及び13は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

4-3.本件発明18及び22について
本件発明18及び22は、「第1校正において入力装置を中間色空間に適合するように校正するステップと、第2校正において出力装置を中間色空間に適合するように校正するステップ」とを有し、また、入力色データを出力色データへの変換は、「第1校正に従って入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、第2校正に従って中間色空間データを出力色データへ変換するステップと」の2つのステップで行う点で、本件発明1と共通するものである。
そして、本件発明1は、4-1.本件発明1について、の項に記載したように、2つのステップにより入力データを出力データへ変換することで、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、同様の理由により、本件発明18及び22は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

4-4.本件発明2〜7、9〜12、14〜17、19〜21、23〜25について
本件発明2〜7、9〜12、14〜17、19〜21、23〜25は、それぞれ、本件発明1、8、13、18、22の何れかを引用して記載し、さらに構成を付加するものであるが、上記4-1.本件発明1について〜4-3.本件発明18及び22について、で説示したとおり、本件発明1、8、13、18、22は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、同様の理由により、本件発明2〜7、9〜12、14〜17、19〜21、23〜25も、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし25に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし25に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
カラー画像処理方法
(57)【特許請求の範囲】
1.第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
入力色データを前記入力装置から収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際、前記中間色空間データを処理することによって、入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを含んでおり、また前記中間色空間は均等色空間であり、
前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したときに前記出力装置によって再現されることが不可能な装置独立色出力値であるプリント不可能装置独立色出力値を少なくとも1つ特定するステップと、前記特定されたプリント不可能装置独立色出力値を再現するための前記出力色域内にある調整装置従属色出力値を決定するステップとを含んでおり、
前記調整装置従属色出力値は前記中間色空間内において前記プリント不可能色出力値と前記出力装置によりプリント可能な色出力値との間の最短ベクトル距離に基づいて決定されることを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
2.前記入力色域が前記入力装置の全色域の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
3.前記入力色域が入力画像の全色域の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
4.前記最短ベクトル値距離が、前記中間色空間内の1つの座標を一定に保ちつつ決定されることを特徴とする請求項1に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
5.前記中間色空間が明度座標、彩度座標および色相座標により特定されていることを特徴とする請求項4に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
6.前記一定に保たれる1つの座標が、明度座標であることを特徴とする請求項5に記載の入力色データを出力色へ変換する方法。
7.前記一定に保たれる座標が、明度座標と更に前記色相座標であることを特徴とする請求項6に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
8.入力色データを出力色データへ変換する方法であって、
第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
入力色データを前記入力装置の色データから収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際、前記中間色空間データを処理することによって、入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを含んでおり、また、前記中間色空間は均等色空間であり、
前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したときに前記出力装置によって再現されることが不可能な装置独立色出力値であるプリント不可能装置独立色出力値を少なくとも1つ特定するステップと、前記特定されたプリント不可能装置独立色出力値を再現するための前記出力色域内にある調整装置従属色出力値を決定するステップとを含んでおり、
前記調整装置従属色出力値は前記中間色空間内において決定され、
前記調整装置従属色出力値が前記中間色空間内の少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ、少なくとも1つの第2の座標に関してそのゼロと各々の前記プリント不可能座標値の間に存在する全ての色入力値を、前記プリント不可能値が前記出力色域内に位置するようになるまで最短ベクトル距離に圧縮することにより決定されることを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
9.前記中間色空間が、明度座標、彩度座標および色相座標により特定されていることを特徴とする請求項8に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
10.前記第2の座標が彩度座標であることを特徴とする請求項9に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
11.前記入力色域が前記入力装置の全色域の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
12.前記入力色域が入力画像の全色域の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
13.入力色データを出力色データへ変換する方法であって、
第1校正において入力装置を中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するようにあらかじめ校正し、その校正に基づいたルックアップテーブルを作成するステップと、
入力色データを前記入力装置の色データから収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第2校正において、前記中間色空間データを前記出力データへ変換するためのルックアップテーブルを作成する際、前記中間色空間データを処理することによって、入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを含んでおり、また、前記中間色空間は均等色空間であり、
前記処理ステップが、装置独立値を装置従属色出力値へ変換したときに前記出力装置によって再現されることが不可能な装置独立色出力値であるプリント不可能装置独立色出力値を少なくとも1つ特定するステップと、前記特定されたプリント不可能装置独立色出力値を再現するための前記出力色域内にある調整装置従属色出力値を決定するステップとを含んでおり、
前記調整装置従属色出力値は、前記中間色空間内において決定され、
前記調整装置従属色出力値が前記中間色空間内の少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ、少なくとも1つの第2の座標に関して前記出力色域の外縁と前記プリント不可能な座標値との間に存在する全ての色入力値を前記プリント不可能な座標値が前記出力色域の外縁に位置するように最短ベクトル距離にクリッピングすることにより決定されることを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
14.前記中間色空間が明度座標、彩度座標および色相座標により特定されていることを特徴とする請求項13に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
15.前記第2の座標が彩度座標であることを特徴とする請求項14に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
16.前記出力色域が前記入力装置の全色域の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
17.前記入力色域が入力画像の全色域の範囲であることを特徴とする請求項13に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
18.入力色データを出力色データに変換する方法であって、
第1校正において入力装置を入力色域を規定する中間色空間に適合するように校正するステップと、
第2校正において出力装置を前記中間色空間に適合するように校正するステップと、
前記入力色データを前記入力装置から収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含んでおり、
前記第1校正のステップは、複数のカラー・パッチを測色方式で測定し、前記カラー・パッチに対応する装置独立色入力値の集合を得るステップと、
前記入力装置を用いて前記カラー・パッチに対応した装置従属色入力値の集合を得るステップと、
前記入力色域を複数の部分空間に分割するステップと、
前記装置独立色入力値と前記装置従属色入力値との間の関係を、前記部分空間の各々毎に個別に規定することにより、前記カラー・パッチに関する前記装置独立色入力値と前記装置従属入力値とを相関させるステップと、
前記カラー・パッチによりあらわされていない入力に対応させるため、その他の装置独立色入力値を前記集合に基づいて計算するステップと、
前記その他の装置独立色入力値の前記計算ステップは、前記関係を用いて前記部分空間の各々ごとに別個に実行され、前記装置独立色入力値と前記装置従属入力値に基づいて、前記入力色データを前記中間色空間データへマッピングしている入力ルックアップ・テーブルを作成するステップと
を含むことを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
19.前記装置独立色入力値を前記部分空間に亙って平滑化するステップを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
20.前記平滑化が、その中に前記色入力値が位置する前記部分空間に関する前記関係のうち1つの関係と、当該部分空間に隣接する前記部分空間のうちの少なくとも1つの部分空間に基づいた前記関係のうちの別の1つの関係とを用いて内挿された値の重み付け平均値を用いて前記装置独立入力値のうちの少なくとも幾つかを内挿することにより実行されることを特徴とする請求項19に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
21.前記平滑化が、前記内挿に続いて前記装置独立色出力値の各々について当該入力値に尤も近接した所定個数の色入力値との間の平均値を算出することにより実行されることを特徴とする請求項19に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
22.入力色データを出力色データへ変換する方法であって、
第1校正において入力装置を中間色空間に適合するように校正するステップと、
第2校正において出力装置を出力色域を規定している前記中間色空間に適合するように校正するステップと、
前記入力色データを前記入力装置から収集するステップと、
前記第1校正に従って前記入力色データを中間色空間データへ変換するステップと、
前記第2校正に従って前記中間色空間データを前記出力色データへ変換するステップと、
前記出力色データを前記出力装置へ出力するステップとを含み、
前記第2校正ステップが、前記出力装置を用いて、装置従属色出力値の集合を得るために複数のカラー・パッチをプリントするステップと、
前記カラー・パッチを測色方式で測定し、前記カラー・パッチに対応した装置独立色出力値の集合を得るステップと、
前記出力色域を複数の部分空間に分割するステップと、
前記装置独立出力値と前記装置従属出力値との間の関係を、前記部分空間の各々ごとに個別に規定することにより、前記装置独立色出力値と前記装置従属色出力値とを相関させるステップと、
前記集合に基づいて前記カラー・パッチによっては表されていない出力に対応するためのその他の装置独立色出力値を算出するステップと、
前記その他の装置独立色出力値の算出は前記関係を用いて前記部分空間の各々ごとに個別に実行され、前記装置独立色出力値と前記装置従属色出力値とに基づいて、前記中間色空間データを前記出力色データへマッピングする出力ルックアップ・テーブルを作成するステップを含む
ことを特徴とする入力色データを出力色データへ変換する方法。
23.前記装置独立色出力値を前記部分空間の全域に亙って平滑化するステップを更に含んでいることを特徴とする請求項22に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
24.前記平滑化がその中に前記色出力値が位置する前記部分空間に関する前記関係の内の1つの関係と当該部分空間に隣接する前記部分空間の内の少なくとも1つの部分空間に基づいた前記関係のうちの別の1つの関係とを用いて内挿された値の重み付け平均値を用いて、前記装置独立色出力値のうちの少なくとも幾つかを内挿することにより実行されることを特徴とする請求項23に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
25.前記平滑化が、前記内挿に続いて前記装置独立色出力値の各々について、当該色出力値に最も近接した所定個数の色出力値との間の平均値を算出することにより実行されることを特徴とする請求項23に記載の入力色データを出力色データへ変換する方法。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、広くは、画像形成媒体上の画像形成に関するものであり、より詳しくは、オリジナルのカラー画像に関する入力データに対して処理を施すことにより、出力画像を観察した者が、入力画像と出力画像との間で色が緊密に一致していると知覚するようにする、フル・カラー画像を形成するための方法に関するものである。
(発明の背景)
画像形成システムの実際の品質即ち知覚されるところの品質の良し悪しは、そのかなりの部分が、出力画像がどの程度まで入力画像に整合しているように見えるかにかかっている。入力カラー画像がコピーされて出力カラー画像とされるカラー画像複製システムの場合には、入力と出力との間の整合は、対象の無彩色情報に加えて、更に色内容にも関係するものとなる。即ち、様々な色の様々な陰影と強度とを適切に整合させなければならない。理想的には、出力画像の色は、入力画像の色と見分けが付かないようにすべきである。
コピーを作成する場合には、例えば、米国特許第4399209号や同第4440846号に記載されているような種類の、感光性材料の上にコピーするという方法もある。この種の出力媒体を用いる場合には、出力データは、シアン、マゼンタ、及びイエローという形で与えられなければならない。出力装置及び出力媒体の種類が異なれば、出力データの形態としてまた別の形態が必要とされることになる。
色内容に関して出力画像を入力画像に適切に整合させるためには、出力装置に対し、入力装置に適合させるためのカラー校正を施す必要がある。このカラー校正は、典型的な例としては、手動により、そして主観的に行なわれており、また各々のカラー・チャネルごとに個別に実行されている。その結果、その校正は、手間のかかる、試行錯誤的な方法となっており、更には、その校正による適切な整合状態は、それに関係した特定の入力装置と出力装置との間でしか保たれないという結果にもなっている。大規模なカラー画像形成システムにおいては、入力装置又は出力装置が別のものに交換されることがあるが、そのような交換を行なうためには、校正を再度実行しなけれならないようになっている。
第2の問題として、いかなる入力装置も、その「色域」、即ちその入力装置が検出可能な色の範囲には、限界があるという事実に起因する問題がある。また、これと同時に、出力装置についても、その出力装置が再現可能な「色域」には限界がある。所与の画像複製装置においては、その入力色域と出力色域とは、通常、それらの存在範囲が同一ではなく、また実際のところ、それら2つの領域が重なり合っていない部分が、かなりの広さに亙って存在している。
このことは、出力装置がプリントすることのできる色を入力装置が検出できないという場合には、単に、その出力装置によってプリント可能な全領域を利用できないという状況を余儀なくされるだけで、特に問題とはならないことが多い。より深刻なのは、ある入力色が検出されているにもかかわらず、その入力色を出力装置が再現できないという状況である。そのような特定の画素を単に空白のまま残しておくわけにはいかないため、そのような情報をどのように表現すべきかについて、何らかの判定を下さねばならない。斯かる判定は、色域の、その全ての部分について実際に試して定めるようにすることも不可能ではないが、それでは、非常に手間のかかる仕事となってしまう。更には、それでは、異なった種類の入力装置又は出力装置が交換して使用されるような装置に適用する場合には、全く実際的なものではなくなってしまう。
従って、入力情報を複製して出力画像情報とする際に、用いられる具体的な入力装置及び出力装置がいかなるものであるかにかかわらず利用することのできるような画像処理方法が、要請されている。更には、斯かる方法は、入力装置及び出力装置の交換を容易に行なえるようにするものでなければならず、また、選択された入力装置と出力装置との間の色域の不整合に対処する補償を行なえるものでなければならない。
(発明の要約)
従って本発明は、入力色データを出力色データへ変換する方法であって、入力色データを入力装置から収集するようにした方法を提供するものである。続いて、この入力データを、所定の中間色空間に対応するデータへ変換し、この中間色空間は好ましくは均等色空間とするのが良い。次にこのデータを中間色空間データから出力色データへ変換し、そして出力装置へ出力するようにしたものである。
また本発明は、別法として、好ましくはRGB色データである入力色データを、好ましくはCMY色データである出力色データへ変換する方法であって、第1校正において入力装置を、好ましくは均等色空間である中間色空間に適合するように校正するようにした方法で提供するものである。更に、第2校正において、出力装置をこの同じ均等色空間に適合するように校正する。入力RGB色データを入力装置から収集し、そして第1校正に従って均等色空間データへ変換する。この均等色空間データを、続いて、第2校正に従って出力CMY色データへ変換する。そして最終的には、この出力CMY色データを出力装置へ出力というものである。
前記第1校正は、複数のカラー・パッチを測色方式で測定し、それによって、それらのカラー・パッチに対応する複数の装置独立色入力値から成る、装置独立色入力値の集合を得るステップを含むものとすることができる。更に、それらのカラー・パッチを前記入力装置に用いて測色し、それによって、それらのカラー・パッチに対応する複数の装置従属色入力値から成る、装置従属色入力値の集合を得る。それらの装置独立色入力値と装置従属色入力値とを相関させ、そして、前記集合に基づき、前記カラー・パッチによって表わされていない入力に対応するためのその他の装置独立色入力値を内挿する。更には、それらの装置独立色入力値と装置従属色入力値とに基づいて、入力RGB色データから均等色空間データへのマッピングのための入力ルックアップ・テーブルを作成するというステップを含むものとすることができる。
前記第2校正は、前記出力装置を用いて、装置従属色出力値の集合に応じた複数のカラー・パッチをプリントするステップを含むものとすることができる。更に、それらのカラー・パッチを測色方式で測定し、それによって、それらのカラー・パッチに対応する複数の装置独立色出力値から成る、装置独立色出力値の集合を得る。それらの装置独立色出力値と装置従属色出力値とを相関させ、そして、前記集合に基づき、前記カラー・パッチによっては表わされていない出力に対応するためのその他の装置独立色出力値を内挿する。更には、それらの装置独立色出力値と装置従属色出力値とに基づいて、均等色空間データから出力CMY色データへのマッピングのための出力ルックアップ・テーブルを作成するというステップを含むものとすることができる。
均等色空間データを出力CMY色データへ変換する前記変換ステップは、均等色空間データを処理することによって前記入力装置の入力色域を前記出力装置の出力色域に整合させる処理ステップを、含むものとすることができる。また、この処理ステップは、装置従属出力値へ変換されたときに前記出力装置によって表わされることが不可能な装置独立色値である、プリント不可能装置独立色値を少なくとも1つ特定するステップを含むものとすることができる。続いて、このプリント不可能色出力値を表わすための調整装置従属色値を決定するのである。
前記調整装置従属色値は、均等色空間内において決定される。この調整装置従属値は、この均等色空間内における、前記プリント不可能色出力値と前記出力装置によりプリント可能な色出力値との間の最短ベクトル距離として決定されるようにすることができる。この最短ベクト距離は、均等色空間内の座標のうちの少なくとも1つの座標を一定に保ちつつ決定されるようにすることができる。
好適実施例においては、前記均等色空間は、明度座標、彩度座標、及び色相座標により規定される空間とすることができる。その場合に、一定に保たれる前記1つの座標は、明度座標とすることができる。更には、色相座標も一定に保たれるようにすることができる。場合によっては、明度座標は更に圧縮を必要とすることもある。
以上とは別の方式として、前記調整色値が、均等色空間内の2つの座標を一定に保ちつつ、第3の座標に関してそのゼロと前記プリント不可能座標値との間に存在する全ての色入力値を、前記プリント不可能値が前記出力色域内に位置するようになるまで圧縮することにより、決定されるようにすることもできる。このような場合であって、しかも、前記均等色空間が、明度座標、彩度座標、及び色相座標により規定されている空間である場合には、前記第3の座標は、彩度座標とすることができる。
従って、本発明の目的は、画像複製システム内における画像データの色処理のための方法を提供すること、種々の入力装置又は出力装置について利用することのできるその種の方法を提供すること、入力装置ないし出力装置の交換を容易にするその種の方法を提供すること、及び、入力装置と出力装置との間の色域の不整合に対処するための補正を行なうその種の方法を提供することにある。
本発明のその他の目的並びに利点は、以下の説明、添付の図面、並びに請求の範囲から、容易に理解することができよう。
(実施例)
本発明の方法は、様々な画像媒体への画像形成に関連して利用できるものであるが、以上に説明したミード(Mead)の画像形成媒体には特に良好に適用することができるため、本発明の方法を説明するに際しては、このミードの媒体に関連させて説明することにする。更にまた、本発明は様々な画像形成システムに利用できるものであるが、具体的な一例のシステムとして、第1図には画像形成システム100を示してある。このシステムは、画像データを表現するカラー画像を、ミード画像形成媒体上に形成するものである。この図示の実施例においては、画像は最終的な複写シートへ転写されるようになっており、この複写シートは、ミード画像形成媒体の一実施例に沿って用いられる現像剤を含むものである。
第1図に示す画像形成システム100は入力データ源装置102を含んでおり、この装置102は、画像形成媒体上に形成すべき画像を規定する画像データを提供するものである。この入力データ装置102は、オリジナルを複製するためのスキャナであっても良く、また、その他のデータ源、例えばコンピュータ・グラフィック・システム等であっても良い。この画像データは画像システム・コントローラ104へ送られるようになっており、この画像システム・コントローラ104は、その画像データを受取ってそれを信号に変換するためのデータ処理手段を含んでおり、この変換された信号は出力装置又は書込み手段へ送られる。図示の実施例においては、この書込み手段は出力スキャナ・コントローラ106を含んでおり、この出力スキャナ・コントローラ106は、画像システム・コントローラ104から、振幅信号及び/またはパルス幅信号を受取るものである。この出力スキャナ・コントローラ106は更に、レーザ・ダイオード1078、動的合焦系110、並びにガルバノメータ・ミラー系112の制御も行なう。ガルバノメータ・ミラー系112は、合焦されたレーザ・ビームの走査を行ない、この走査は、光バルブ114上をX方向とY方向との両方向において行なうものであり、それによって、この光バルブ上に様々な大きさ、濃度、及び/または形状のマークが発生されるようになっている。
光バルブ114は、図示したものは、サーマル・スメクティック型の3個の光バルブを収容した回転式タレットにより構成されており、それら3個の光バルブは、好ましくは液晶式光モジュレータ114A、114B、114Cによって構成するのが良く、第1図にはそれらのうちの光モジュレータ114Aが走査位置にあるところが示されており、この走査位置は、その光モジュレータ上に画像形成を行なうための位置である。3個の光モジュレータ114A〜114Cを使用することによって完全な3色画像を形成することが可能となっているが、ただしこれが可能であるためには、言うまでもなく、入力画像データが完全な3色画像情報を提供していることが前提条件であり、この3色画像情報は、典型的な場合としては、赤、緑、及び青(RGB)の3原色の色情報である。このRGB入力情報は、本明細書に詳述する方式に従って、処理され、そして対応する適当な出力色情報へと交換される。この出力色情報は、例えばシアン、マゼンタ、及びイエロー(CMY)の3色の色情報である。変換によって得られたシアン画像情報が、例えば光モジュレータ114Aへ転送されたならば、続いて、変換によって得られたマゼンタ画像情報が光モジュレータ114Bへ転送され、そして、変換によって得られたイエロー画像情報が光モジュレータ114Cへ転送される。図示の実施例においては3つの液晶式光モジュレータ114A〜114Cが用いられているが、別のブラック画像情報やその他の原色情報のための、更なる光モジュレータを使用しても良く、また、実際に、単一のフル・カラー光モジュレータを使用することさえ不可能ではない。
図示の実施例においては、光モジュレータ114A〜114Cは、それらの光モジュレータの一方の側から書込みを行ない、そして他方のプリント側から読出しを行なう種類のものであり、この読出しは、適当な化学線の放射を光モジュレータ114A〜114Cで反射させ、そしてそれを、画像を形成すべき媒体の上に合焦させることにより行なう。液晶式光モジュレータの好適例を第2図に示す。このモジュレータはセル114aを含むものであり、このセル114aは液晶の層114bをその中に収容している。適当なスメクティック-A級の液晶材料であれば、どのようなものも使用可能である。この液晶材料に熱を加えると、この液晶材料はアイソトロピック状態へ変化して、光散乱性領域を形成する。この後、この液晶が冷えたならば、この液晶はスメクティック状態へと復帰する。そのときには、書込みが行なわれた散乱性領域は、この特定の液晶材料のスメクティック温度範囲内では安定状態にあり、それゆえ、書込まれた情報は保存されることになる。
セル114aは、一対の透明基板層114cと114dとによって支持されており、それらの基板層は、好ましくはガラスにより形成されるものである。基板層114dと液晶材料114bとの間には、透明な導電材料の層114eが配置されている。この透明層は、好ましくはインジウム-スズ酸化物で形成されるものである。第2の導電層114fが、層114eの反対の側において液晶層114bに隣接して配置されており、この第2導電層114fは、以下に詳述する理由により、例えばアルミニウム等の反射性の材料で形成されている。層114eと層114fとは、互いに共同して、液晶セル114aの消去に用いられる導体として機能するものである。これらの層114eと層114fとの間に電場を発生させることにより、液晶を再配列してその全体を非分散性の透明状態とすることができるのである。
基板層114cと層114fとの間には、反射防止層114gと赤外線吸収層114hとが配置され、反射防止層114gは好ましくは誘電体材料で形成し、また赤外線吸収層114hは好ましくはアルミニウム及び/またはクロムで形成する。セル114a上へ情報を書込むには、赤外レーザ・ダイオード等のレーザ源にレーザ・ビームを発生させ、そしてそのレーザ・ビームが、第2図にビーム114iで概略的に示してあるように、セル114a上へ照射されるようにする。このビーム114iは透明基板層114cを透過して吸収層114hへ入射する。このレーザの放射が吸収されることにより、吸収層114hには熱が発生する。そしてこの熱は、反射層114fを介して層114b内の液晶材料に作用し、それによって、記録すべき画像情報に対応する散乱性領域が生成される。
セル114a内の散乱性領域は、第2図では、その領域の全体をまとめて114jで示している。この散乱性領域においては、液晶の分子はランダムな配列状態にあり、これは、非散乱性領域内の分子が均一な整列状態にあるのと対照的である。書込みがなされた領域の高散乱性の部分の形が、書込みがなされなかった領域の低散乱性の部分の形と対照をなすことによって、マークが観察されるようになるのである。
液晶材料の上に書込みを行なうメカニズムが熱的なものであるため、マークを液晶材料内で効果的に「成長」させることが可能となっている。レーザ・ビーム114iに熱吸収層114hの加熱を行なわせると、先ず最初に、この吸収層114hのうちの、このレーザ・ビームの断面の内側に位置する部分の内部に、熱が加えられることになる。しかしながら、その熱が比較的長い時間に亙って加えられた場合には、その熱は熱伝導によりこのビームの断面を超えて広がって行き、それによって、このビーム114iの直径より大きな径のマークが形成されることになる。更にまた、このビーム内の放射の強度は、均一ではなく正規分岐分布をなしており、中央領域が周辺領域より大きな強度を有している。従って、ビーム141iによる露光を比較的短時間で終了させることにより、このビームの直径よりも小さな径のマークを書込むことも、可能となっている。本好適実施例の装置に関して判明しているところに拠れば、直径が20ミクロンのレーザ・ビームを用いた場合には、直径が約7〜100ミクロンの範囲内にあるマークを書込むことが可能である。
セル114aへの書込みが完了したならば、投影光をガラス基板114dを通してこのセルの上へ投射することによって、画像を感光性媒体上に投影することができる。この投影光は、そのうちの幾分かは、図に光線114kで示したように液晶層114bの非散乱性領域へ入射する。ここへ入射した光は、液晶材料を透過して、反射層114fによって反射される。続いてこの投影光は、液晶材料114bとガラス基板層114dとを透過して返され、そして感光性媒体上に投射されてその媒体を露光する。光線114mで示すように、散乱性領域の上へ投射された投影光は、ランダムな方向を向いている分子によって散乱される。従って感光性媒体へはその入射光のうちの極めて僅かな部分しか到達せず、そのためその媒体は実質的に未露光状態のまま残されることになる。
図示の実施例においては、適当な位置へ、即ち第1図に示す光モジュレータ114Cの位置へと回転された光モジュレータの、そのプリント側の側面へ向けて化学線の放射源116が配設されている。この化学線は、フィルタ・ホイール118内のフィルタのうちの1つを透過させられ、それによって、シアン、マゼンタ、及びイエローの夫々に対応する周波数を有する放射が、114Cの位置に置かれている光モジュレータで反射された上、レンズ系120によって画像形成媒体の上に合焦されるようになっている。光モジュレータ114A〜114Cとフィルタ・ホイール118とは同期して回転させられ、それによって所与の光モジュレータに対して、その光モジュレータに必要なフィルタリングが施されるようになっている。
ミード画像形成媒体は、先に引用したミードの特許に記載されているような変形転写式のものであるが、図示の実施例においては、そのミード画像形成媒体121が、その媒体の連続的なロール122の形態で供給されるようにしてある。この媒体121は、スクロールされることにより露光ステーション124を通過するようになっており、この露光ステーション124においては、放射源116から放射されて光モジュレータ114Cの位置に置かれた光モジュレータにより反射された化学線によって、この媒体121に画像形成処理が施される。露光ステーション124において画像形成処理を完了した画像形成媒体121は、転写シート126の供給源と同期するようにして搬送される。画像形成媒体121の画像形成処理領域は、1枚の転写シート128と重ね合わされ、そして、加圧用ローラ130等を通過させられる。これによって、画像の現像が行なわれると共に、その画像が転写シート128へ転写され、その結果、画像データ源102から提供された画像データに対応する画像の複製132が得られる。この複製された画像は続いてスタック134に積み重ねられ、また、使用済みの画像形成媒体121は巻き取りリール136に巻き取られる。
画像データ手段102の一例としては、シャープ社(Sharp)から供給されているドキュメント・スキャナがあり、このスキャナは1インチあたり300画素の密度でサンプリングを行ない、そして画像即ち走査中のドキュメントの標本画素の各々ごとに、3原色(RGB)の各1色につき8ビットづつの情報を発生するものである。従って画像データは、この画像形成システム100が複製すべき画像の、標本画素の各々について、最大24ビットまでの情報(即ち3原色RGBの各1色につき8ビットづつの情報)を含むことになる。その結果、入力データは、走査されているオリジナルの標本画素の3原色の各1色ごとに、256段階のレベルの強度を表わし得るものとなっている。
画像システム・コントローラ104は3つのサブシステムから構成されている。即ち、デジタル画像処理サブシステム150がハーフトーン並びに色の処理を行ない、データ・バッファ/同期化サブシステム152がこのデジタル画像処理サブシステム150からの処理済み画像データの搬送の同期化を行ない、そして、変調コントローラ・サブシステム154がそのデジタル画像データを実際のパルス幅信号及び/または振幅信号へと変換するようになっており、この信号が、レーザー108を制御して液晶式光モジュレータ114への書込みを行なわせるようになっている。
デジタル画像処理サブシステム150は、オリジナルの画像データを取り出してそれを再量子化するものであり、この再量子化は、このシステムにより画像形成がなされる際に、このオリジナルが空間的及び色彩的に再現されるようにするために行なうものである。この再量子化には幾つかの操作が必要とされる。先ず第1に、ハーフトーン処理が要請されている場合には、画像形成データに対しスレショルド処理を施すことになる。このスレショルド処理はマルチレベルのものであり、これは、従来の2値化スレショルド処理の延長上にある処理である。2値化スレショルド処理はバイレベルの出力を発生するものであり、即ち、入力データが8ビットの場合であれば、0からXまでの値に対しては例えば「0」という値を割当て、また、X+1から255までの値に対しては例えば「1」という値を割当てるものであり、ここでXは0と255との間の任意の値である。
マルチレベル・スレッショルド処理方式においては、データが2n個の異なった「箱」即ち値の中へ仕分けられ、ここでnはデータをそのビット数へと減縮させるところのビットの個数であり、この減縮は、入力レベルの有り得るレベル数を、2n個の異なった段階へと分類することによって行なわれる。従って各々の「箱」は、ある範囲に亙る複数個の可能入力レベルを包含すると共に、1つの可能出力レベルを代表するものとなっている。それらの「箱」は各々が互いに等しい個数の入力増分を含むようにしても良く、或いは、それらの増分が不均一に分布しているようにしても良い。従って所与の標本画素のグレイ・スケール値に対し、そのグレイ・スケール値が最も近接している出力レベルの値が割当てられることになる。簡単な1つの具体例を挙げるならば、8ビットの入力は256とおりのレベルを含んでいる。出力が4ビットであれば、夫々が17個の増分から成る段階を16段階、各々に規定することができ、その場合の出力レベルは「0」、「17」、「34」、というように「255」まで定められることになる。従って、この具体例では、マルチレベル・スレショルド処理方式に基づいて8ビットの情報を処理して4ビットの出力に、即ち、16とおりの異なったレベルにしているのである。
一般的な2値化エラー低減方式、例えばフロイト-シュタイベルクの誤差拡散/ディザ法(Floyd Steinberg error diffusion anddithering techniques)等も、本発明においてはマルチレベルの用途に対応できるように拡張してある。
本発明に係る色処理は、入力RGB色データを、書込み手段へ供給される出力CMY色データへ変換するために、1つないし複数の操作を必要とするものである。この変換を実行するに際しては、入力色を正確に出力色に整合させることが必要とされるばかりでなく、使用される入力装置及び/または出力装置に存在する限界に対処するための補償を行なうことも必要とされる。
色処理を行なうためには、先ず第1に、入力装置並びに出力装置に校正を施してカラー・パレットを設定する必要がある。この校正手順は、入力データ及び出力データの絶対色座標を利用する測色方式で行なうようにしてある。この方式によれば、カラー画像データをいかに取扱うかについての判定を、感覚に起因する誤差が非常に小さくて済む方法で、下すことが可能となる。
先ず、入力装置の校正について説明する。この校正手順については、第3図のフローチャートにその概要を示してある。先頭のステップ(ブロック200)は、着色剤の組の複数の色サンプル、即ちカラー・パッチを得るステップであり、ここでその着色剤の組とは、これに対しスキャナの校正をしたいところのものである。それらのカラー・パッチを測色方式で測定し(ブロック202)それによって特定の観察条件についての装置独立値(即ち、個々の装置に依存しない値)を得る。斯かる測色方式の測定法として、公知となっているどのような方法を用いても良く、また、それによって得られる測色効果は、どのような変数を用いて表わされるものであっても良い。ただし、それは、その特性が当業界において一般的に確立されている均等色空間内において、作用するものであることが好ましい。一例を挙げるならば、その種の空間の1つに、L*、u*、v*、として規定されている色空間があり、この色空間は、明度、彩度、及び色相から成る円筒座標を用いて扱われるものである。この色空間は、有彩色及び無彩色の成分のベクトルを、互いに独立的に、且つ略々静止性を保った状態で操作することができるという、有利な特性を持っている。
次に、実際に複製に使用される問題の入力装置を用いて、上記の同じ複数のカラー・パッチを走査する(ブロック204)。この情報をデジタル化してコンピュータに格納し、そして、この同一カラー・パッチに対応する、そうして得た装置従属値(即ち、個々の装置に依存する値)と、先に得た装置独立値とを互いに関係づける(ブロック206)。装置独立値から装置従属値への退行処理を実行し(ブロック208)それによってそれらの値の間の関係を決定する。次に、所望の階調解像度の中間値を内挿法により求め(ブロック210)、そして、装置従属値から装置独立値へのマッピングのためのルックアップ・テーブルを作成する(ブロック212)。
出力装置の校正に関しても、以上と同様の手順を用い、この校正手順については、その概要を第4図に示してある。この校正手順では、一連の装置従属信号が出力装置へ送られ、そしてこの出力装置が1組のカラー・パッチを生成する(ブロック220)。それらのカラー・パッチは続いて測色方式で測定し(ブロック222)それによって特定の観察条件についての装置独立値を得る。先の装置従属出力値と、こうして得た装置独立出力値とを相関させ(ブロック224)、そして、装置従属値から装置独立値への退行処理を実行する(ブロック226)。所望の階調解像度で、その他の装置従属値を、内挿法により求める(ブロック228)。装置独立値から装置従属出力値へのマッピングのためのルックアップ・テーブルを作成する(ブロック230)。
入力用と出力用とを問わず、装置独立値から装置従属値への退行処理を実行するために用いられる幾つかの方法を、開発した。いずれの方法を選択するかは、システムに使用される装置の性質とデータの種類とに応じて決定されることになる。その装置に測色計に関するクォリティー・ファクタ[Q]が高い場合には、3つの等式と3つの未知数とからなる簡単な方程式を立てて、その方程式の従属式と独立値との間の行列回転に関して解くようにすれば良い。この方法は、入力スキャナに関してはそのスキャナが平均的観察者の等色関数と同様に「見る」ものであり、且つ、そのスキャナの原色応答がそれら等色関数の線形組合せである場合に、適用し得る方法である。
しかしながら、典型的な場合にはそのようにはならず、その原因は、測色計に関するクォリティ・ファクタが低く、また、その他の非線形性が存在していることにある。特にそのことが言えるのは、典型的な出力装置であって、個々の出力システムにより示される特徴的な感光特性曲線によって部分的に特徴付けられている高度に非線形的な手順を通してそのCMY原色が形成されるような、出力装置の場合である。従って、色空間全域に亙ってシステムが線形性を有するとの前提に基づいた、この全域的適合法では、充分に正確な結果は得られないことがある。
以上とは別の方法として、色空間の全体を、より小さな複数の色空間から成る、複数の部分集合へと分解し、それらの色空間の各々に対して、適当な1組の方程式を適合させるという方法がある。この方法は、それらの部分空間内の局所的な線形性を前提としたものであり、特にサンプリング周波数が高い場合には極めて有効な方法である。従って先ず、それらの部分空間の各々について、その所望の点に幾何学的に近接している幾つかの点を特定する。色空間をRGB或いはCMYへ適合させる適合関数を選択し、それを適用し、そして、その点を算出する。以上の手順を、対象とする色空間の中に存在する、必要とされる内挿解像度の全ての点について、反復して実行する。
出力装置を校正するための以上の方法の1つの具体例を、第5A図〜第5C図のフローチャートに示す。この手順を開始したならば(ブロック240)、システムを初期化して(ブロック242)全てのパラメータ、ポインタ、並びにそれらの類をリセットする。それと同時に、色空間の「色域」を複数の部分空間へと分割する。装置従属色データに従って出力装置により既にプリントが完了されているカラー・パッチを処理し(ブロック244)、この処理においては、それらのカラー・パッチをプリントするために使用した装置従属データをメモリから読出し(ブロック246)、そして、測色方式により測定する装置独立データを取得して(ブロック248)その装置独立データを均等色空間の値へ変換する(ブロック250)。
全てのカラー・パッチの処理を完了したならば(ブロック252)、コンピュータ・ディスプレイのスクリーンないしその類のものを用いて、色空間の色域においてプリントされ測色されたカラー・パッチの分布状況をディスプレイするようにしても良い(ブロック254)。その装置色域の外に位置する部分空間、即ちそれらカラー・パッチに対応する点を含まない部分空間の、その夫々に対し、その部分空間が最も近接しているカラー・パッチのパッチ・ナンバを割当てる(ブロック256)。
各々の部分空間を出力データへ適合させる適合処理が開始されたなら(ブロック258)、先ず最初に、考慮の対象としている部分空間が、この装置色域内に包含されるものであるか否かを調べる(ブロック260)。もし包含されるものでなければ、その部分空間については適合処理をそれ以上実行することなく、別の部分空間を選択する。この色域内に存在する部分空間については、その部分空間内に位置するカラー・パッチであって、それらに基づいて続いて適合処理が実行されることになるカラー・パッチを選択する(ブロック262)。装置独立値から独立変数のための所望のモデルを作成し(ブロック264)、そして、C、M、ないしはYの対応する従属変数を、実行中の適合処理に応じて割当てる(ブロック266)。この部分についての、装置独立値の関数としての装置従属値の適合処理のため、このモデルの調節可能なパラメータを算出する(ブロック268)。
各部分空間の適合処理が完了したならば(ブロック270)、出力値の各組合わせを、所望のテーブル階調解像度で、入力値の関数として算出し始める(ブロック272)。所与の点(出力値の組合せ)を指定するテーブルのインデックスを装置独立値へと変換し(ブロック274)、そして、その点がどの部分空間内に位置しているのかを判定する(ブロック276)。その部分空間が出力色域内にはない場合には(ブロック278)、その点に対して、最も近い色値を割当てる(ブロック280:尚、ブロック256を参照のこと)。一方、その部分空間が出力色域内にある場合には、その部分空間のパラメータを用いて、その点に対応する装置従属値を算出する(ブロック282)。それらの値をルックアップ・テーブルに格納したならば(ブロック284)、このルーチンを、全ての点の処理が完了するまで(ブロック286)反復して実行する。
こうして得られたテーブルの退行プロットをディスプレイに表示して、この得られた結果を検証することができる(ブロック288)。続いてこのテーブルを、後刻実際の画像データと併せて使用するために、適当な記憶装置に書込む(ブロック290)。出力校正はこれにて完了する(ブロック292)。
第2の方法として、色空間の色域の中の各々のデータ点について、局所的な適合処理を実行するという方法がある。走査されそして測色方式で測定された複数の点について、その相関処理を完了したならば、1つの未知の点を選択する。この点の値を、経験的に判定されているこの点に最も近い所定個数(例えば3個)の点を特定することによって、決定する。そして、この点に関する均等色空間データからRGBデータないしCMYデータへの退行処理を、この点のみについて個々に実行する。
この第2の方法は、先に説明した部分空間を用いる方式と比較して、処理速度が相当に遅い。しかしながら、得られる結果は、はるかに高精度である。いずれにしても、これらの方式はどれも満足すべき結果を与えるものであり、出力される結果に対する要求事項の如何に応じて、いずれかを採用すれば良い。
どちらの方式についても言えることであるが、特に部分空間方式を採用する場合には、作成されるルックアップ・テーブルに対して何らかの平滑化手段を適用する必要がある。さもなくば、部分空間と部分空間との間に不連続が生じるおそれがあり、その不連続が、最終的な画像に望ましからざる陰影線等を発生させることになる。考えられる1つの方式として、均等色空間からRGBないしCMYへの退行処理として、データ点がある部分空間の中央からその部分空間に隣接した別の部分空間へ向って移動し、またその隣接部分空間の中へと移動するとき、係数を調節ないし重み付けするようにした退行処理を行なうという方式がある。また考えられる第2の方式として、各々の点を、その点に最も近い所定個数の点との間で、平均化するという方式もある。
以上の校正処理、退行処理、及び平滑化処理を施して得られた結果は、そのエントリ・インデクスがRGB或いはCMYであってその出力がある色空間XYZ又は他の色空間であるところのテーブルに入力される。ここで特に認識しておくべき重要なことは、その他の種類の色空間は、それらの大部分がXYZの解析的変形であるということである。従って、XYZ以外のいかなる色空間座標でも、例えば均等色空間のような色空間座標でも、このテーブルの出力として用いることができる。このことは、色処理を均等色空間内において測色方式で実行できるようにする場合に、重要となることがある。
更に認識しておくべきこととして、画像形成システムが安定状態に入ったならば、入力装置ないし出力装置の測色式校正は、一度だけ実行すれば良い処理となるということである。この校正は測色式であるため、異なった入力装置ないし出力装置への交換が行なわれる場合にも、単にその特定の装置についてこの校正を反復して実行するだけで、その交換を行なうことができる。
不運にも、多くの入力データ画素が、その出力色の色域内にはない座標を持っていることもあり得る。入力画像の色が出力着色剤パレットにより可能とされている色域の範囲外に存在しているという状況に対処するための幾つかの方法を、開発した。それらのうちの1つの実施例は、再現不可能な色については、この色からその色域への最短のベクトル距離を判定することによって、その色を色域の縁部へと移動させるというものである。別の実施例は、無彩色成分をできる限りそのまま保存すると共に、有彩色成分のみを調節して、色相の不変性を略々そのまま保存しつつ、その色をその色域へ移動させるようにしたものである。また更に別の実施例として、以上のような色の切落しを行なわないようにしたものもある。この実施例は、全ての色に対して圧縮処理を施すことによって、入力色の色範囲が出力色の色範囲の中に丁度包含されるようにするというものである。更には、この圧縮処理を、選択的にそして非線形的に行なうようにすることもでき、それによって、量子化された全ての無彩色レベル及び色相レベルについて、色相をできる限りそのまま保存しつつ、有彩色成分を圧縮して、その有彩色レベル及び無彩色レベルにおいて可能なその出力範囲内にその有彩色成分が包含されるようにすることができる。同様の圧縮処理を、彩度、明度、色相、ないしはその他の色の計量要素の関数として実行するようにすることも可能である。
特に色域の不一致に対処する補正を行なうためには、均等色空間L*、u*、v*が有利である。無彩色情報は円筒の軸に平行に延びている軸によって表わされるため、この情報を独立的に処理することは比較的容易である。同様に、色相も、一定の色相角に沿って操作を行なうようにすることにより、保存することができる。言うまでもないことであるが、処理を実行するに際しては、色空間座標の任意のものを一定に維持しながらそれを実行することができ、また、様々な状況においては、種々の座標、ないしは座標の組合せを一定に維持することが望ましいことがあり得る。
入力装置の色域が出力装置の色域より狭い場合にも、以上と同様の操作を実行することができる。一般的に行なわれることではないが、色データの拡張を行なうことができ、そうすれば、出力装置の出力能力を最大限に利用することができるようになる。
以上の色処理は、画像独立形式(画像に依存しない形式)と画像従属形式(画像に依存する形式)とのいずれの形式でも実行することができる。画像独立形式の処理を実行する場合には、色処理を実行してのデータのルックアップ・テーブルを作成する際に、入力装置の入力色域のその全体を考慮することになる。これは、速度が重要な要因とされている場合に、好ましいものとなり得る。その理由は、色域の比較を一度だけ実行すれば良いからである。また一方、入力装置により記録された入力画像の色域だけを用いてルックアップ・テーブルを作成するという、画像従属形式を採用することもできる。時間が重要な要因ではない場合には、この形式が好ましいものとなり得る。その理由は、出力色域を最大限に利用することができるからである。この点は、画像独立形式の場合と対照的であり、即ち画像独立形式では出力色域の一部分が、入力色域のうちの入力データを包含していない部分に対応しているために、使用されないことがあり得るからである。
処理が完了した画像データは、デジタル画像処理サブシステム150からデータ・バッファ/同期化サブシステム152へ送られ、このサブシステム152は、この画像データをバッファリングし、そしてこの画像データを、インターフェース/コントロール回路153を介して、出力スキャナ・コントローラ106のレーザ・ビーム位置決めシステム106Aと同期させるように機能するものである。このデータ・バッファ/同期化サブシステム152から送出される、処理済み画像データは、変調コントローラ・サブシステム154へ送られ、そこでは、振幅信号及び/またはパルス幅信号が、この処理済み画像データに対応するように選択される。処理済み画像データを振幅信号及び/またはパルス幅信号へ変換するこの変換処理は、少なくとも1つのパルス幅/振幅変調(PWAM)テーブル156をアドレスすることにより実行されるようになっており、図に示したものでは、変調コントローラ・サブシステム154内に複数のPWAMテーブル156が備えられている。この図示の実施例においては、全てのデジタル画像処理が、デジタル画像処理サブシステム150内で行なわれるようになっている。しかしながら、容易に理解されるように、この処理を、サブシステム150と152と154との間で分担させるようにすることもできる。
1つないし複数のPWAMテーブル156が必要な振幅変調情報及び/またはパルス幅変調情報を収容するようになっており、この情報は、出力スキャナ・コントローラ106へ送られるようになっている。PWAMテーブル156から読出されるこの情報は、レーザ108によって発生されるレーザ・ビームのパルス幅及び/または振幅を決定するものであり、このレーザ・ビームが、第1図に示すように光モジュレータ114へ照射される。PWAMテーブル156に収容する情報は、画像形成を行なう媒体の特性(例えばその媒体の色特性等)や、画像システム100の様々なパラメータ(例えば露光減の強度や書込みレーザの走査速度等)、画像形成される特定の色、それに使用される光モジュレータ114の特性等を含む様々な情報に基づいて、選択することができる。以上のシステムないし媒体に関するパラメータやその他のパラメータのうちの1つないし幾つかは、静的に提供されるようにしても良く、また、形成される画像が最適化されるようにするための動的フィードバックを行なうことによって提供されるようにしても良い。
PWAMテーブルに関するその他の詳細事項は、1987年5月11日付出願の米国特許出願第048156号という特許出願に記載されており、同米国特許出願はこの言及をもって本開示に包含される。
本明細書において説明した以上の種々の方法は本発明の好適実施例を構成するものであるが、本発明がそれらの具体的な方法に限定されるものではなく、従って、本発明の範囲を逸脱することなく変更を加え得るということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明を用いることのできる、画像形成システムのブロック図である。
第2図は、本発明に使用するのに適した液晶式光モジュレータの構造を示す図である。
第3図は、入力装置の校正手順の概要を示すフローチャートである。
第4図は、出力装置の校正手順の概要を示すフローチャートである。
第5A図、第5B図、及び第5C図は、出力装置の校正手順を詳細に示すフローチャートである。
尚、図中、
100……画像形成システム、
102……入力装置、
104……画像システム・コントローラ、
106……出力スキャナ・コントローラ、
108……レーザ・ダイオード、
110……動的合焦系、
112……ガルバノメータ・ミラー系、
114A、114B、114C……液晶式光モジュレータ、
120……レンズ系、
121……画像形成媒体、
126……転写シート、
150……デジタル画像処理サブシステム、
152……データ・バッファ/同期化サブシステム、
153……インタフェース/コントロール回路、
154……変調コントローラ・サブシステム、
156……パルス幅/振幅変調テーブル(PWAMテーブル)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-08 
出願番号 特願平2-6087
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B41J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 芝 哲央  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 番場 得造
六車 江一
登録日 1998-08-07 
登録番号 特許第2811595号(P2811595)
権利者 エレクトロニクス フォー イメイジング インコーポレイテッド
発明の名称 カラー画像処理方法  
代理人 佐々木 宗治  
代理人 大村 昇  
代理人 小林 久夫  
代理人 木村 三朗  
代理人 木村 三朗  
代理人 大村 昇  
代理人 小林 久夫  
代理人 佐々木 宗治  

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