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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08C |
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管理番号 | 1090705 |
審判番号 | 不服2000-18552 |
総通号数 | 51 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-11-24 |
確定日 | 2004-01-13 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第230633号「制御機器-センサ間の配線構造」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 3月26日出願公開、特開平 5- 73795]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成3年9月10日に特許出願されたものであり、平成12年10月12日付けで拒絶査定(同月24日発送)がされ、これに対して同年11月24日に審判が請求され、当審において平成14年7月25日付けで拒絶の理由を通知(同月30日発送)したところ、その指定期間内である同年9月30日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。 2.本願請求項に係る発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年9月30日提出の手続補正書により全文補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「制御機器(66a)と、 前記制御機器(66a)と電気的に接続され、ワークの吸着状態等を検出するセンサ(15)と、 前記制御機器(66a)とセンサ(15)との間に接続された信号伝達手段と、 からなり、前記センサ(15)は接地され、前記信号伝達手段は、制御機器(66a)から導出される制御信号を授受するとともに、前記センサ(15)からの検出信号を制御機器(66a)に対して送給する信号線(74a)を含む単一の導線部(58)で構成し、前記導線部(58)は、前記センサ(15)に対して電源を供給する電源線を有しないことを特徴とする制御機器-センサ間の配線構造。」 3.当審で通知した拒絶の理由の要点 本願発明は、本願の出願日前に頒布された以下の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物1 特開平3-38110号公報 刊行物2 実願昭53-118188号(実開昭55-34381号) のマイクロフィルム 刊行物3 実願昭55-168671号(実開昭57-92296号) のマイクロフィルム 刊行物4 特表平2-500791号公報 刊行物5 特開昭60-263208号公報 4.引用刊行物に記載された発明 4-1. 刊行物1 当審の拒絶理由通知書で引用した刊行物1乃至5のうち、刊行物1には、以下の記載がある。 (1)「センサ本体1は第1図に示すようにコ字状の切欠き部が設けられ、圧力導入パイプ2を介して与えられる圧力を検出するセンサ部3を有しており、その出力が測定値出力回路4を介してアナログ値として出力される。この信号はセンサ本体1よりリニア出力としてコード5を介して外部に出力され、同時にオン/オフ出力回路6にも与えられる。オン/オフ出力回路6にはこのリニア出力及びマルチプレクサ7からの基準信号が与えられており、測定値出力回路4からのリニア出力を所定の圧力値で弁別して二値信号として外部に出力するスイッチ回路部である。センサ本体1内にはオンオフ出力回路6の閾値を設定するための可変抵抗器VR1を含む第1の閾値設定回路8が設けられ、その閾値はマルチプレクサ7の一方の入力端に与えられる。」(公報第2頁左下欄第16行乃至右下欄第11行) (2)第3図(a)には、「オン/オフ出力回路6」からの信号線が「オン/オフ出力」として「センサ本体1」の外部に出されているのが見て取れる。また、「GND」という記載が見て取れる。 (3)第1図には、「センサ本体1」に接続され参照番号「5」が付された1本のコードが見て取れる。 したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「外部と電気的に接続されたセンサ本体1と、前記外部とセンサ本体1との間に接続されたコード5とからなり、前記センサ本体1はGNDに接続され、前記コード5は、前記センサ本体1からの出力を外部に対して出力する信号線を含む一本のものである外部-センサ間の配線構造。」 4-2. 刊行物3 当審の拒絶理由通知書において、周知技術を示すものとして引用した刊行物3には、以下の記載がある。 (1)「第3図は本考案の基本原理図を示すもので、第3図において第2図と対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。」(第4頁第4乃至6行) (2)第2図と第3図には、1乃至10の同一符号が用いられているのが見て取れる。 (3)「一般に信号伝送装置においては、例えば第1図に示すように相互に一定の距離をもって隔置された制御回路(1)及び被制御回路(2)間に電源ライン(3)、信号線(4)及び共通線(5)と3本の通信線を配し、電源回路(6)から電源ライン(3)及び共通線(5)を介して夫々制御回路(1)及び被制御回路(2)に電源電圧を供給する形態をとっている。 従って特に制御回路(1)及び被制御回路(2)の間隔が大きくなり、例えば制御回路(1)により遠隔地に配された被制御回路(2)を制御する場合、両者間に使用される通信線の本数を減らすことは、配線処理やコスト的な面からも極めて有用である。 そこで第2図に示すように制御回路(1)の出力側及び被制御回路(2)の入力側に夫々直流阻止用コンデンサ(7)及び(8)を設け、電源回路(6)から制御回路(1)への電源電圧の供給を、電源ライン(3)の一部、抵抗器(9)、信号線(4)、抵抗器(10)及び電源ライン(3)の一部を介して行なうことにより電源ライン(3)の大部分が削除され、制御回路(1)及び被制御回路(2)間の通信線を実質的に3本より2本に減らすことが提案されている。」(第1頁第17行乃至第2頁第17行) (4)「上述の如く本考案によれば・・・両回路間の通信線として従来電源ライン,信号線,共通線と最低3本の通信線が必要であったものを、扱う信号の種類とは無関係に、信号線と共通線の2本の通信線とすることができ、もってコストダウンを達成できると共に3本のコードと特殊なコードを用いることなく市販で容易に入手可能なACコードでもよいので汎用性がある。 また通信線が減ることによりそれだけノイズ等妨害信号を拾う率も少なくなるので、装置の信頼性を向上できる。」(第10頁第4乃至18行) (5)「なお上述の実施例では本考案をステレオ装置の遠隔制御に適用した場合に付いて説明したが、これに限定されることなく、その他の信号伝送システムにも同様に適用できることは云うまでもない。」(第10頁第19行乃至第11頁第2行) 5.対比 本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「センサ本体」、「コード」、「GNDに接続」、「出力」、「出力する」は、それぞれ、本願発明の「センサ」、「信号伝達手段」、「接地」、「検出信号」、「送給する」に対応する。 したがって、本願発明と刊行物1に記載された発明とは、「外部と、前記外部と電気的に接続されたセンサと、前記外部とセンサとの間に接続された信号伝達手段とからなり、前記センサは接地され、前記信号伝達手段は、前記センサからの検出信号を外部に対して送給する信号線を含む単一の導線部で構成した外部-センサ間の配線構造。」の点で一致し、他方、以下の点において相違する。 5-1.相違点1 本願発明における「センサ」は「ワークの吸着状態等を検出するセンサ」であるとされているのに対して、刊行物1はこのような記載がされていない。 5-2.相違点2 本願発明では、「外部」は「制御機器」と特定されており、また、「信号伝達手段」は「制御機器から導出される制御信号を授受するとともに、センサからの検出信号を制御機器に対して送給する信号線を含む単一の導線部で構成」すると特定されている。 他方、刊行物1に記載された発明は、「外部」が「制御機器」であるか否か不明であり、また、信号伝達手段は「センサからの検出信号を外部に対して送給する信号線を含む単一の導線部で構成」されてはいるものの、「制御機器から導出される制御信号を授受するとともに、センサからの検出信号を制御機器に対して送給する単一の導線部で構成」するものではない。 5-3.相違点3 本願発明における導線部は「センサに対して電源を供給する電源線を有しない」と特定されているのに対して、刊行物1はこのような記載がされていない。 6.当審の判断 6-1.相違点1について 本願発明における「センサ」は、「ワークの吸着状態等を検出するセンサ」と、「等」を用いて記載されているから、本願発明の他の構成と矛盾しない限りにおいて全ての種類のセンサをその技術範囲とする。 そして、刊行物1の、第1図に示された圧力センサの形状、及び、4-1.(1)の記載から理解されるセンサの動作、並びに、以下の刊行物6乃至8に記載された周知の工業計測用センサの形状、及び、動作を併せ考えれば、刊行物1に記載された発明のセンサは、本願発明の他の構成とも何ら矛盾するものではない。 したがって、刊行物1に記載された発明のセンサは、本願発明の「ワークの吸着状態等を検出するセンサ」の技術範囲に含まれるものであり、この点は実質的な相違点ではない。 刊行物6 特開平2-269929号公報 刊行物7 特開平2-212728号公報 刊行物8 特開平3-81634号公報 6-2.相違点2について センサからの検出信号を外部に対して送給する装置において、「外部」が「制御機器」であり、かつ、信号伝達手段が「制御機器から導出される制御信号を授受するとともに、センサからの検出信号を制御機器に対して送給する」ものは、周知であり、例えば、以下の刊行物に記載されている。 刊行物9 特開昭59-114930号公報 刊行物10 特開昭58-48198号公報 刊行物11 特開平3-163201号公報 刊行物1に記載された発明、及び、刊行物9乃至11に例示されるような周知の発明は、いずれも、センサからの検出信号を外部に対して送給する装置であり、工業計測や制御などの計装分野に適したものと認められる。しかも、刊行物9乃至11においては、センサとして、圧力センサが例示されている。 以上のような技術分野の共通性に鑑みれば、刊行物1に記載された発明において「外部」を「制御機器」とし、かつ、制御信号授受用の信号線をコード5内に追加して「信号伝達手段」を「制御機器から導出される制御信号を授受するとともに、センサからの検出信号を制御機器に対して送給する信号線を含む単一の導線部で構成」することは、当業者が必要に応じて容易になしうる設計的事項に過ぎない。 6-3.相違点3について 信号伝送装置において、回路間の通信線として従来電源ライン,信号線,共通線と最低3本の通信線が必要であったものを、信号線と共通線の2本の通信線とする構成は、刊行物3に例示されるように周知である。また、刊行物1に記載された発明がセンサの信号を外部に対して送給する構成を有するものである点に鑑みれば、刊行物3に例示されるような信号伝送装置に関する周知技術を、刊行物1に記載された発明の導線部に採用することは、当業者が適宜に行いうることに過ぎない。 なお、請求人は、当審の拒絶理由通知に対する意見書において、「なお、引用例3には、制御回路と被制御回路との間の電源ラインの大部分を削除して、制御回路および被制御回路間の通信線を・・・3本から2本に減らすことが開示されておりますが、引用例3は制御回路と被制御回路との間の配線構造をその対象とするものであり、本願発明のように制御機器とセンサとの間の配線構造に適用されるものではありません。 一般的にセンサは、検出手段として機能するものであり、制御回路からの制御信号によって制御される被制御対象(被制御回路)とされるものではないからです。従って、引用例3では、制御する側(制御回路)と制御される側(被制御回路)との間の電源線を削除しようとする技術的思想が開示されています。」と主張している。 しかしながら、通信線の本数を削減するという目的は、その奏する効果からみて信号伝送装置一般に共通するものであるから、意見書における請求人の主張は採用できない。 また、センサに対して電源を供給する電源線を削減する技術は周知であり、例えば、以下の刊行物に記載されている。 刊行物12 実願昭59-191978号(実開昭61-107098号) のマイクロフィルム 刊行物13 特開平2-85040号公報 6-4.結論 そして、本願発明の作用、効果をみても、刊行物1に記載された発明、及び、周知、慣用の技術が奏する作用効果であって格別のものということはできない。 したがって、本願発明は、当審で通知した拒絶の理由に示した刊行物1に記載された発明、及び、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7.むすび 以上の通り、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、当審で通知した拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-10-28 |
結審通知日 | 2003-11-04 |
審決日 | 2003-11-20 |
出願番号 | 特願平3-230633 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G08C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 白石 光男 |
特許庁審判長 |
瀧 廣往 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 樋口 信宏 |
発明の名称 | 制御機器-センサ間の配線構造 |
代理人 | 千葉 剛宏 |
代理人 | 佐藤 辰彦 |