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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1090849
審判番号 不服2002-6714  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-18 
確定日 2004-01-16 
事件の表示 平成 4年特許願第302733号「カメラの測光装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 5月27日出願公開、特開平 6-148715]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年11月13日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年6月16日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「実質的に同じ大きさの多数の測光素子を規則的に配列して形成した測光領域と、
撮影シーンに応じて予め設定される複数の測光モードと、
撮影者の前記撮影シーンの選択により前記複数の測光モードのうちの一つの測光モードを設定する測光モード設定手段と、
前記測光領域を、前記測光モード設定手段により設定された測光モードに応じて形状の異なる複数のグループにグループ化するグループ化手段と、
前記グループ化手段によりグループ化されたグループ毎に算出した補正値を用いて、前記グループ毎の明るさに関する情報を算出するグループ情報検出手段と、
前記複数の測光モードのそれぞれに対応する複数の露出演算式を有し、前記測光モード設定手段により設定された測光モードに応じた露出演算式と、前記グループ情報検出手段により検出されたグループ毎の明るさに関する情報とから、前記撮影者が選択した前記測光モード用の露出値を演算する露出演算手段と、
を備えたことを特徴とするカメラの測光装置。」
2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成15年3月26日付で通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された、特公平2-7010号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開昭56-89026号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3.引用例
引用例1には、
「1 多数の受光素子を配して画面の各部を測光する測光方式において、前記受光素子の出力のうち、最大のものに重み付けしたものと、最小のものに重み付けしたものと、画面位置に応じて重み付けしたものとを加算して輝度情報を算出するようにしたことを特徴とする測光演算方式。
2 前記重み付け係数は、シーンに応じて定められていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の測光演算方式。」(特許請求の範囲)、
「前記重み付け係数K1〜K(i+3)は画面の位置と被写体との関係及びその重要度を統計的に調べ、主要被写体が適正露光になることを主たる目的とし、背景が適正露光になることを従たる目的として、写真の露光状態を総合的に評価して、その値が決められる。
前記個々の受光素子の出力を重み付けする係数K(i+3)は、全てのシーンに対して同一の値を用いてもよいが、シーン分類に応じて変更すれば、最適な重み付け係数を選ぶことができ、露出制御の精度をさらに向上させることができる。
例えば逆光シーンの場合には、画面の上部または周辺部が明るいという特徴があり、この明るさは殆どの場合に10EV以上である。逆に背景の暗いシーン例えばスポットライト照明が当つている被写体では周辺部がが非常に暗く、中心部のやや上方が明るいという特徴がある。
したがつて、逆光シーンでは下部または中心部の輝度が露出制御に重要であり、その位置の輝度Biを重み付けする係数をシーンによって変更することが有効であることが分る。
前記シーン分類は、撮影距離に応じて分類する方法と、画面の輝度分布から例えば順光シーンと逆光シーンのように分類する方法、および前者と後者の方法を併用して更に複雑に分類する方法等がある。」(2頁左欄13行〜38行)、
「第1図において、測光部1は多数の受光素子が隣接して配されており、撮影画面すなわち被写体像の各部の輝度を測定する。この実施例では測光部1として25個のホトダイオード2〜26が用いられており、内部測光方式または外部測光方式によつて画面各部の輝度を測定する。・・・
この輝度演算回路31には、シーン分類回路32からの信号と、カメラ姿勢検出回路33からの信号とが入力され、シーン分類とカメラ姿勢とに応じて重み付け係数K(i+3)の選択が行なわれる。
算出された輝度Bは、露出演算回路34に送られ、露出情報設定回路35から入力されたフイルム感度等の露出情報とともに写真学的演算が行なわれる。そしてこの演算結果が、露出制御回路36に送られ、シャツタ、または絞りもしくはこの両方を制御する。」(2頁右欄10行〜36行)、
「そこで先ず距離情報を利用してシーン分類を行なう場合について説明する。統計的処理によると、撮影距離と被写体との関係は次のようになることが分つた。
遠距離・・・・・空を含む風景(主要部は画面中心部より下側の全面にある。)
中距離・・・・・ポートレート全身像(主要部は中心部に集中する。)
近距離・・・・・ポートレート半身像(主要部はやや上部に広がつている。)
そこで、シーン分類回路32としては、オートフオーカス装置またはレンズに連動して遠距離、中距離、近距離のいずれであるかを示すコード信号を出力する装置が用いられる。そして遠距離の場合には、第1表の重み付け係数に対して、周辺部はより小さく、中心部はより大きくした値が用いられる。また近距離の場合には、周辺部をやや大きくした重み付け係数を用いる。」(3頁左欄42行〜右欄15行)、
が記載されている。
引用例2には、
「(1)画面を複数のゾーンに分割してその各部の輝度を測定する測光装置において、予め細かく分割した多数の受光素子を電気的に接続することにより所望のゾーンに分割したことを特徴とする測光装置。
(2)前記接続をスイツチで行なうことにより、ゾーン分割を任意に変更することができるようにしたことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の測光装置
(3)各部分につけられたウエイトの近いものを接続することにより所望のゾーンに分割したことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の測光装置」(特許請求の範囲)、
「第2図は受光素子アレイを示すものである。前記測光部7はIC基板10上に集積化技術によつて多数のホトダイオード100〜163が一定の間隔で形成されている。」(2頁右上欄7行〜10行)、
「第5図は本発明装置を用いた露出制御装置の実施例を示すものである。前記リード線で並列に接続され、ゾーン分割に応じてグループ化されたホトダイオードは、演算増幅器15a〜15nにそれぞれ接続されている。この演算増幅器15a〜15nでは、抵抗16a〜16nと、フイードバツク回路に接続した抵抗17a〜17nの比によつてそれぞれのゲインが調整される。このゲインは、ホトダイオードの画面位置の重要度に応じて調整される。したがつて、各ゾーン毎に重み付けされることになる。」(2頁左下欄13行〜右下欄4行)、
「カメラの測光装置では、1個の受光素子アレイを用いて、シーンを分類し、この分類に応じて各ゾーンの重み付けを変えて測光したり、あるいはカメラ姿勢に応じてゾーン分割を変更するのが望ましい。」(3頁左上欄11行〜15行)、
「このゾーン毎のデータの取り込み後に、各ゾーン毎のデータに係数を掛けて重み付けしてから加算し、またはあるゾーンについては減算して輝度情報を算出する。この輝度情報の演算後に、フイルム感度情報等の露出情報とともに露出演算が行なわれ、シヤツタ情報または絞り情報を算出する。」(3頁左下欄9行〜15行)、
が記載されている。
4.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1の「受光素子」、「測光部」、「シーン」、「シーン分類」、「シーン分類回路」、「露出演算回路」は、本願発明の「測光素子」、「測光領域」、「撮影シーン」、「測光モード」、「測光モード設定手段」、「露出演算手段」に相当するから、両者は、「実質的に同じ大きさの多数の測光素子を規則的に配列して形成した測光領域と、撮影シーンに応じて予め設定される複数の測光モードと、撮影者の前記撮影シーンの選択により前記複数の測光モードのうちの一つの測光モードを設定する測光モード設定手段と、露出演算手段とを備えたことを特徴とするカメラの測光装置。」という点で一致し、
本願発明では「測光領域を、測光モード設定手段により設定された測光モードに応じて形状の異なる複数のグループにグループ化するグループ化手段と、前記グループ化手段によりグループ化されたグループ毎に算出した補正値を用いて、前記グループ毎の明るさに関する情報を算出するグループ情報検出手段と、複数の測光モードのそれぞれに対応する複数の露出演算式を有し、前記測光モード設定手段により設定された測光モードに応じた露出演算式と、前記グループ情報検出手段により検出されたグループ毎の明るさに関する情報とから、露出値を演算する露出演算手段」を備えているのに対して、引用例1に記載された発明では「シーン分類に応じて個々の受光素子の出力を重み付けする係数が変更され、算出された被写体の輝度と、フイルム感度等の露出情報とによって露出演算する露出演算回路」を備えたものである点(相違点1)、
本願発明では、「撮影者が選択した測光モード」であるのに対して、引用例1に記載された発明では、「シーン分類回路のより求められるシーン分類」である点(相違点2)の2点で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について、
引用例2には、1個の受光素子アレイを用いて、シーンを分類し、この分類に応じて各ゾーンの重み付けを変えて測光すること、具体的には、ゾーン分割に応じてグループ化されたホトダイオードが各ゾーン毎に重み付けされ、そしてこのゾーン毎のデータの取り込み後に、各ゾーン毎のデータに係数を掛けて重み付けしてから加算し、またはあるゾーンについては減算して輝度情報を算出し、この輝度情報の演算後に、フイルム感度情報等の露出情報とともに露出演算が行なわれる旨の記載がある。そして、この「ゾーン」は本願発明の「グループ」に相当するから、この引用例2に示される技術思想を引用例1に記載された発明に適用して本願発明のように構成することは、当業者が格別困難性を要することなく想到しうるものと認められる。
相違点2について、
本願の発明の詳細な説明中には、本願発明の手動にて設定される測光モードの具体的な例として、「ポートレートモード」や「風景モード」が示されている。そして、引用例1には、本願発明の「測光モード」に相当する「シーン分類」として、例えば風景やポートレートに適したシーン分類が距離情報に依存して自動的に設定されたり、画面の輝度分布から順光シーンや逆光シーンのようにシーン分類が自動的に設定されることが示されている。そして、引用例1におけるこれら自動的に行われるシーン分類の設定を撮影者が単に手動にて行うようにする程度のことは、当業者が格別困難性を要することなく適宜なしうるものと認められる。
結局、この相違点も格別なものではなく、また、前記各相違点を総合的に検討しても奏される効果は当業者が当然予測できる範囲内のものと認められる。
5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-10-08 
結審通知日 2003-10-28 
審決日 2003-11-10 
出願番号 特願平4-302733
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横林 秀治郎前川 慎喜越河 勉  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 柏崎 正男

青木 和夫
発明の名称 カメラの測光装置  

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