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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1091401
異議申立番号 異議2003-70397  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-03-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-12 
確定日 2003-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3313547号「チップサイズパッケージの製造方法」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3313547号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3313547号の発明についての出願は、平成7年8月30日に特許出願され、平成14年5月31日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年9月16日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
請求項1を、「【請求項1】(a)集積回路がそれぞれ形成された、四辺を有する複数の半導体チップ領域を有し、前記複数の半導体チップ領域の周辺上に、前記四辺に沿って複数の電極がそれぞれ形成された半導体ウエハを準備する工程と、
(b)前記半導体ウエハの表面を樹脂で覆うことによって封止する工程と、
(c)前記複数の電極が形成された位置とは異なる前記複数の半導体チップ領域のそれぞれの中央側で前記四辺に沿った前記複数の電極が外部との電気的接続をとるために、前記複数の電極に各々の一端が電気的に接続され、かつ、各々の他端が前記半導体チップ領域の四辺の各々の側から中央側に向かうように、複数の配線を前記半導体ウエハを封止する前記樹脂上に形成する工程と、
(d)前記半導体チップ領域の中央側に位置する前記複数の配線上に、前記外部との電気的接続をとる複数の半田ボールをそれぞれ形成する工程と、
(e)前記複数の配線及び前記半田ボールが形成された後、前記樹脂によって封止された前記半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程とを含むことを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。」と訂正する。
(なお、訂正請求書の(3)訂正事項(A)には、「(e)前記複数の配線及び前記複数の半田ボールが」と記載されているが、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の記載に基づき上記のとおり認定した。)
(2)訂正事項b
請求項2、請求項3及び請求項4を削除する。
(3)訂正事項c
請求項5を、請求項番号を繰り上げ「請求項2」にすると共に、「請求項1から4のいずれか1項に」を、「請求項1」と訂正する。
(4)訂正事項d
請求項6を、請求項番号を繰り上げ「請求項3」にすると共に、「請求項1から5」を、「請求項1又は2」と訂正する。
(5)訂正事項e
請求項7を、請求項番号を繰り上げ「請求項4」にすると共に、「請求項1から6」を、「請求項1から3」と訂正する。
(6)訂正事項f
請求項8を、請求項番号を繰り上げ「請求項5」にすると共に、「請求項1から7」を、「請求項1から4」と訂正する。
(7)訂正事項g
請求項9を、請求項番号を繰り上げ「請求項6」にすると共に、「請求項1から8」を、「請求項1から5」と訂正する。
(8)訂正事項h
請求項10を、請求項番号を繰り上げ「請求項7」にすると共に、「請求項9記載」を、「請求項6記載」と訂正する。
(9)訂正事項i
請求項11を、請求項番号を繰り上げ「請求項8」にすると共に、「請求項9又は10」を、「請求項6又は7」と訂正する。
(なお、上記訂正事項c〜iにおいて、請求項の引用記載についての訂正は、訂正請求書の(3)訂正事項欄には記載されていないが、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の記載に基づき上記のとおり訂正事項として認定した。)

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項aは、請求項1に記載された(b)工程の「半導体ウエハの表面を樹脂によって覆う工程」を、明細書段落【0044】の「本発明によれば、このパッケージは小さいままで、強度的にも、耐湿等においてもいわゆるモールドパッケージと同等の信頼性を持つものである。」、及び段落【0058】の「第1実施例、第2実施例はバンプ形成後、樹脂封止する工程を用いている。」との記載に基づき、「半導体ウエハの表面を樹脂で覆うことによって封止する工程」と樹脂で封止する工程を限定し、次いで、(c)工程を、請求項2に基づき限定し、更に請求項3の限定を(d)工程として追加し、そして、(d)工程を、請求項4に基づき「(e)前記複数の配線及び前記半田ボールが形成された後、前記樹脂によって封止された前記半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。又該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)上記訂正事項b〜iは、特許請求の範囲の請求項1の訂正に基づき訂正後の請求項1と整合するよう他の請求項の記載を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。又該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて
1.特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1〜4号証を提出し、訂正前の請求項1〜11に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、これを取り消すべき旨主張している。

甲第1号証:特開平1-196856号公報(以下、「刊行物1」という)
甲第2号証:特開平5-218042号公報(以下、「刊行物2」という)
甲第3号証:特開平6-124954号公報(以下、「刊行物3」という)
甲第4号証:特開平5-218039号公報(以下、「刊行物4」という)

2.本件発明
本件特許の請求項1〜8に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」という)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(a)集積回路がそれぞれ形成された、四辺を有する複数の半導体チップ領域を有し、前記複数の半導体チップ領域の周辺上に、前記四辺に沿って複数の電極がそれぞれ形成された半導体ウエハを準備する工程と、
(b)前記半導体ウエハの表面を樹脂で覆うことによって封止する工程と、
(c)前記複数の電極が形成された位置とは異なる前記複数の半導体チップ領域のそれぞれの中央側で前記四辺に沿った前記複数の電極が外部との電気的接続をとるために、前記複数の電極に各々の一端が電気的に接続され、かつ、各々の他端が前記半導体チップ領域の四辺の各々の側から中央側に向かうように、複数の配線を前記半導体ウエハを封止する前記樹脂上に形成する工程と、
(d)前記半導体チップ領域の中央側に位置する前記複数の配線上に、前記外部との電気的接続をとる複数の半田ボールをそれぞれ形成する工程と、
(e)前記複数の配線及び前記半田ボールが形成された後、前記樹脂によって封止された前記半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程とを含むことを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項2】 請求項1記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の電極にそれぞれ接続される複数のバンプを形成する工程を含んでおり、前記複数の配線は、前記複数のバンプを介して前記複数の電極にそれぞれ接続されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項3】請求項1又は2のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の配線は、アルミニウム又は銅を用いて形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の配線を覆うように、前記樹脂の上に半田レジストを供給する工程を有することを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記樹脂は、エポキシ樹脂を用いて形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項6】 請求項1から5のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の電極を露出させる保護膜を前記半導体ウエハの表面上に形成する工程を含むことを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項7】 請求項6記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記樹脂は、前記保護膜上に形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項8】 請求項6又は7記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記保護膜は、PSGを用いて形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。」

3.刊行物の記載事項
(1)刊行物1(特開平1-196856号公報)
(1a)「[1]電極(2)および表面安定化膜(3)が形成されてなる半導体ウェーハ(1)上に、高分子化合物よりなる膜(4)を形成し、
半導体ウェーハ(1)をチップに分割するダイシングライン(1D)に沿い、各ダイシングライン(1D)の隣接する交点間の一部領域(16)を除いた領域に形成される十字型のパターン(17)と、前記電極(2)に対接する領域に形成されるパターン(18)とを有する第1のマスク(15)を使用して、前記高分子化合物よりなる膜(4)をパターニングし、前記高分子化合物よりなる膜(4)の前記電極(2)に対応する領域に開口(5)を形成し、前記ダイシングライン(1D)上の一部領域(16)を除く領域において前記高分子化合物よりなる膜(4)を除去して、溝(19)を形成し、金属膜(6)を形成し、該金属膜(6)をパターニングして前記電極(2)に接する領域からバンプ形成領域に延在する金属膜(6)を残留し、・・・半導体装置用バンプ形成方法。
[2]前記高分子化合物はポリイミド、または、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項第1項記載の半導体装置用バンプ形成方法。」(請求項1、2)
(1b)「[従来の技術]半導体チップ上に、TAB(Tape Automated Bonding)、または、CCB(Controled Collapse Bonding)用のバンプを形成する場合の従来技術について、図面を参照して説明する。・・・」(2頁右下欄5〜9行)
(1c)「[発明が解決しようとする課題]TABまたはCCB用のバンプを形成する場合、上記のように、ポリイミド等の膜が使用される。これは、ポリイミド等がα線を吸収するため、半導体装置のα線対策として有効であることと、機械的ストレスを吸収し、PSG等の表面安定化膜にクラックが発生しないようにするためである。ところで、半導体ウエーハ上にポリイミド等の膜4および7を形成する際、ポリイミドを塗布した後80℃程度の温度で熱風乾燥を行う。この際、ポリイミド等の膜が収縮し、半導体ウエーハに反りが生ずる。このため、バンプ形成用マスクのマスク位置合わせが困難となる。また、ポリイミド等の膜はダイシングしにくいので、ダイシングの際、ポリイミド膜にクラックが生ずることがある。」(3頁左上欄16行〜右上欄12行)
(1d)「本発明の目的は、これらの欠点を解消することにあり、半導体ウエーハに反りが発生することがなくバンプ形成用マスクのマスク位置合わせが容易にでき、また、半導体ウエーハをダイシングする時ポリイミド等の膜にクラックが生ずることなく、しかも、バンプ形成のためメッキ処理を完全に実施できるように改良した、半導体装置用バンプ形成方法を提供することにある。」(3頁左下欄2〜9行)
(1e)実施例の説明として、「第6図参照
電極2およびPSGよりなる表面安定化膜3が形成されてなる半導体ウエーハ1上にポリイミド等の膜4を10〜20μm厚に形成し、」(第4頁右上欄下から5行〜下から2行)」、
「第9図参照
アルミニウム、銅等の金属を全面に数μm厚に蒸着法等を使用して形成し、パターニングして電極2とバンプ(図示せず)とを接続する引き出し層6を残留する。」(4頁左下欄下から3行〜右下欄2行)、
「第1図参照
バリアメタル膜9を1電極としてメッキをなし、開口11上にバリアメタル膜9に接触して、金、半田等よりなる20〜200μm厚のバンプ12を形成する。レジスト膜10およびバンプ形成領域以外のバリアメタル膜9を除去し、ダイシングライン1Dにそってダイシングし、半導体ウェーハ1を各半導体装置チップに分割分離する。」(5頁左上欄1〜8行)、が記載されている。

(2)刊行物2(特開平5-218042号公報)
(2a)「【0008】本発明は、・・・、半導体装置の熱膨張係数と熱膨張係数が異なる実装用基板に、フリップチップ接続(実装)した場合でも、その後の熱ストレスにより電極バンプ部での破損,破断現象などが全面的に回避され、かつすぐれた放熱性を呈し、信頼性の高い機能を保持・発揮する半導体装置の提供を目的とする。」(【0008】)
(2b)「【0011】【作用】本発明に係る半導体装置においては、図1に要部構成例を断面的に示すごとく、第1のボンディングパッド8が配置された領域よりも内側で、かつ所要の半導体素子領域9aが形成されている領域面の絶縁層10b上に、露出して第2のボンディングパッド11が配置され、これらは前記絶縁層10bおよび層間絶縁層10aを介して、たとえば多層的に配設された配線12で接続されている。つまり、実装用基板7面にフェースダウンで実装・接続される電極バンプ13は、半導体基板9′の半導体素子領域9aが形成されている領域面上に配置された構成を成しているため、実装用基板7面に対する接続に関与する領域面(接続に要する実効面積)が低減された形となる。したがって、半導体装置9に加わる実効的な熱膨張も小さくなるので、実装用基板7および半導体装置9の熱膨張係数の相違に起因する電極バンプ13に加わるストレスも軽減され、もって熱ストレスに対する信頼性の向上が図られる。しかも、この構成では、半導体装置9の半導体素子9a領域での発熱は、前記第2のボンディングパッド11面上の電極バンプ13を介して容易に実装用基板7側へ放熱されることになる。
【0012】また、前記第2のボンディングパッド11は、それぞれ面積が、第1のボンディングパッド8の面積よりも大きく設定されているため、電極バンプ13も比較的大きく形成し得ることになるので、フリップ接続(実装)時の位置合わせを容易に成し得るとともに、接続強度の改善も図り得る。」(【0011】【0012】)
(2c)「【0015】図2は本発明に係る半導体装置9の構成例を平面的に示したもので、9′は半導体基板、9aは前記半導体基板9′面に形設された半導体素子領域、8は前記半導体基板9′面の半導体素子領域9aが形設された領域の外側に配置された第1のボンディングパッド、13は前記半導体素子領域9a面上に配線12を備えた図示されていない絶縁層を介して表面に設けられた第2のボンディングパッド11面上に積層して配置された電極バンプである。そして、この図からも分かるように、前記第1のボンディングパッド8は第2のボンディングパッド11にそれぞれ対応しており、前記絶縁層に単層もしくは多層的に絶縁して配置された配線12によって電気的に接続した構成を成している。 ・・・
【0017】先ず、所要の半導体領域9aが所定面に形設された半導体基板9′を用意し、前記半導体領域9aの各半導体素子を接続する所要の配線,半導体領域9aの外周部への対応する第1ボンディングパッド8形成,パッシベーション膜14の形成を行う。その後、前記パッシベーション膜14上に、たとえばポリイミド前駆体・・・をスピンコートし、選択露光,・・・現像処理を施して、前記第1ボンディングパッド8面を開口・露出させてから、・・・イミド化させて第1の絶縁層 10aを形成する(図3)。
【0018】次に、前記形成した第1の絶縁層 10a面上に、・・・Al/Ti層を全面的に被着・形成してから、この Al/Ti層上にエッチングレジスト・・をスピンコートし、プリベーク,選択露光,現像処理を施して、前記第1ボンディングパッド8に接続するエッチングレジストパターンを形成する。こうして、所要のエッチングレジストパターンを形成した後、・・・Al層を、・・・順次エッチングしてから、エッチングレジストを剥離・除去して配線12を形成する(図4)。」(【0015】〜【0018】)、が記載されている。

(3)刊行物3(特開平6-124954号公報)
(3a)「【0001】【産業上の利用分野】 本発明はチップ部品が搭載される素子基板等の電極表面にはんだバンプを形成するはんだバンプの形成方法に関するものである。」(【0001】)
(3b)「【0011】本実施例のはんだバンプの形成は次のようにして行われる。まず、図1の(a)に示されるように、基板1の表面上に電極2を形成後、この電極2間および電極上面の端縁部6を囲んではんだレジスト膜3を形成する。次いで、本実施例では印刷スクリーン15を用い、図1の(b)に示されるように、電極2の露出表面上に局部的に前記フラックス5を塗布する。
【0012】次に、図1の(c)に示すように、メタルマスク4を基板表面に当てがい、フラックス塗布部をメタルマスク4の開孔壁面14で囲み、このメタルマスク4の開孔部8にはんだボール7を投入する。この状態、すなわち、マスク4を付けたままで、基板全体を例えばトンネル炉等によって加熱し、はんだボール7を溶融して前記電極2の露出表面にはんだバンプを形成し、メタルマスク4を取り外して作業を終了する。」(【0011】【0012】)、が記載されている。

(4)刊行物4(特開平5-218039号公報)
(4a)「【産業上の利用分野】 本発明は、半田バンプを外部接続端子とするフリップチップ構造の半導体装置に関する。」(【0001】)
(4b)「【0003】【従来の技術】 図5は従来の半田バンプ方式のフリップチップ構造半導体装置(以後フリップチップと略称する)の一例の模式図で、(a) は平面図、(b) はバンプ配設領域断面図、(c) はバンプ部拡大断面図、図6はその配線基板上への搭載状態を示す模式断面図である。
【0004】図5の(a) (b) 及び(c) に示すように従来の半田バンプ方式のフリップチップは、集積回路(図示せず)等が形成された半導体チップ1上に珪酸ガラス等からなる表面保護膜2が形成され、この表面保護膜2に半導体チップ1上の所望のアルミニウム(Al)配線(図示せず)を表出する電極窓3を形成し、この電極窓3上に例えば下層からクロム(Cr)層4a、銅(Cu)層4b、金(Au)層4cが順次積層されてなるバリアメタル層4を介して例えば鉛(Pb)?錫(Sn)合金からなる半田バンプ5が溶着された構造を有していた。」(【0003】【0004】)、が記載されている。

4.当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、金型を用いることなく、工程数を低減して、低価格化を図ることができ、LSIの保護が十分なチップサイズパッケージの製造方法を提供することを目的として、請求項1記載の工程(a)〜(e)からなるチップサイズパッケージの製造方法、即ち「半導体ウエハの表面を樹脂で覆うことによって封止する工程と、四辺に沿った複数の電極が外部との電気的接続をとるために、半導体チップ領域の四辺の各々の側から中央側に向かうように、複数の配線を前記樹脂上に形成する工程と、前記複数の配線上に、外部との電気的接続をとる複数の半田ボールを形成する工程と、前記複数の配線及び前記半田ボールが形成された後、前記樹脂によって封止された前記半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程」を含むことを特徴とするものである。
これに対して、刊行物1には、上記摘記事項(1a)(1e)によれば、「複数の電極2がそれぞれ形成された複数の半導体装置チップ領域を有する半導体ウェーハ1上にポリイミド等の膜4を形成し、このポリイミド等の膜4上に、電極2に接続される金属膜(引き出し層)6を形成し、金属膜6の、ダイシングライン1D上の一部領域16を除く領域に対応する溝19側とは反対側にバンプ12形成用の開口8が形成され、バンプ12が形成された後に半導体ウェーハ1が各半導体装置チップに分割分離される」ことが記載され、また、上記摘記事項(1c)によれば、「発明が解決しようとする課題」欄には、「TABまたはCCB用のバンプを形成する場合、ボリイミド等の膜が使用される」、「半導体ウエーハ上にポリイミド等の膜4および7を形成する際、ポリイミドを塗布した後80℃程度の温度で熱風乾燥を行う。この際、ポリイミド等の膜が収縮し、半導体ウエーハに反りが生じる。このため、バンプ形成用マスクのマスク位置合わせが困難となる」と記載され、そして、実施例に記載されているとおりのバンプ形成方法が記載されている。
ここで、「半導体ウェーハ1上にポリイミド等の膜4を形成」することは、上記摘記事項(1c)に記載されるとおり、半導体装置のα線対策として有効であることと、機械的ストレスを吸収し、PSG等の表面安定化膜にクラックが発生しないようにするためであって、半導体チップを外気から保護し封止する機能までを有するものとはいえない。
そうすると、刊行物1の記載は、TABまたはCCB用のバンプを形成するものであるから、半導体ウェーハを分割分離した各半導体装置チップは、TABまたはCCBに適用されることが前提となっているものである。そして、TAB用半導体装置チップは、通常、TABテープに搭載された後に、樹脂で封止されるものであって(必要ならば、特許異議意見書に添付された参考資料1〜3参照)、本件発明1での構成、即ちまず、半導体ウエハの表面を樹脂で覆うことによって封止する工程、その後、複数の配線及び半田ボールが形成された後、樹脂によって封止された半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程を有するものとは、全く異なっている。
刊行物2には、半導体装置の熱膨張係数と熱膨張係数が異なる実装用基板に、フリップチップ接続(実装)した場合でも、その後の熱ストレスにより電極バンプ部での破損,破断現象などが全面的に回避され、かつすぐれた放熱性を発揮する半導体装置の提供を目的とて、本件発明1での(c)工程に類似した構成、即ち四辺に沿った複数の電極が外部との電気的接続をとるために、半導体チップ領域の四辺の各々の側から中央側に向かうように、複数の配線を絶縁層上に形成する工程が記載されていることにはなるが、本件発明1での複数の配線及び半田ボールが形成された後、樹脂によって封止された半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程を有することの記載はなく、又この点を示唆するものでもない。
また、刊行物3には、基板の表面上に複数の電極を形成し、これらの複数の電極を露出させるように基板の表面をはんだレジスト膜で覆い、電極の上面にフラックスを塗布した後、電極上に、はんだボールを溶融することよって、はんだバンプを形成すること、刊行物4には、半導体基板の表面における複数の電極窓上にバリアメタル層及び半田バンプを形成することについては記載されているが、上記した本件発明1での特徴となる構成についての記載はなく、又この点を示唆する記載もない。
そうすると、上記刊行物1〜4の記載からは、本件発明1で特定する構成を導き出すことはできず、本件発明1を各刊行物の記載から当業者が容易に想到することができたとすることはできない。

そして、本件発明1は、上記した構成により明細書に記載の「(1)LSIチップと同じ面積のチップサイズパッケージを得ることができる。また、樹脂をチップ表面に被着しているので、いわゆる樹脂モールドとほぼ同じ信頼性を保証できる。すなわち、パッケージは小さいままで、強度的にも、耐湿等においても、いわゆるモールドパッケージと同等の信頼性を確保することができる。(2)上記(1)の効果に加え、LSIの表面の強度と接続の信頼性を高めることができる。(3)上記(1)の効果に加え、LSIのパッド電極と半田ボールとの位置を任意に変更でき、接続の自由度を高めることができる。(4)パッケージ化の作業を全てウエハ単位で行えるため、工数が少なく、低価格化を実現できる。このように、ウエハのカッティングを最後に行うので、各パッケージ当たりの工数が少なくなり、低価格化を実現できる。(5)上記(4)の効果に加え、LSIをウエハから切り出す前に、そのウエハ全面に補強板を接着するようにしたので、LSIを機械的に補強することができ、確実にウエハから切り出しを行うことができる。(6)金型を用いないので、エポキシ樹脂に離型剤を添加する必要はない。また、樹脂との接着を促進するシランカップリング剤等を有効に用いることができた。(7)上記(6)と同様な、チップサイズパッケージを製造することができる。」という各刊行物の記載からは予測することのできない格別な効果を奏しているものである。

したがって、本件発明1は、刊行物1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2〜8について
本件発明2〜8は、本件発明1を引用して更に構成を限定するものであるから、上記本件発明1についてと同じ理由により、刊行物1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)なお、当審で取消理由に引用した特開平5-55278号公報には、半導体ウエハを裏面研削により薄く加工しても半導体ウエハ破損が生じないようにすることと同時に、2次元的な電気的導通経路を最小にして実装面積を小さくし、かつ、樹脂厚みおよび半導体チップ厚みを最小にして実装高さを小さくすることを目的として(【0008】)、「【請求項1】半導体チップの側面および下面が露出し、前記半導体チップ上面にこれとほぼ同一の大きさを有する樹脂部が形成され、前記樹脂部の上面から突起電極が突設されていることを特徴とする半導体装置。【請求項4】前記樹脂部から突起電極先端部および半導体ウエハの切断領域を露出させた後に、樹脂部最表面および切断領域表面に絶縁保護強化膜を形成し、切断領域を切断することを特徴とする特許請求項1に記載の半導体装置の製造方法。」なる発明が記載されている。
しかしながら、当該引用発明は、半導体ウエハ1の電極パッド上に、円柱状の突起電極5を形成し、つぎに、第2の工程で半導体ウエハ1上に突起電極5の上端部を覆う程度の厚みで樹脂膜3を形成し、最後に、半導体ウエハ1を完全にダイシングブレードにて削りとり、1個1個の半導体チップ2に分離するものであるが、該樹脂膜3上に半導体領域から四辺の各々の側から中央側に向かう複数の配線を形成することは記載されていない。そして、当該引用発明は、2次元的な電気的導通経路を最小にして実装面積を小さくするために、半導体ウエハ上の電極パッドに対して、垂直方向に突起電極を形成することが必須であるから、該樹脂膜3上に2次元的に複数の配線を形成するようにすることは、容易には想到し得ない。
よって、当該引用発明を参酌しても本件発明1〜8は、各刊行物の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜8に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
チップサイズパッケージの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)集積回路がそれぞれ形成された、四辺を有する複数の半導体チップ領域を有し、前記複数の半導体チップ領域の周辺上に、前記四辺に沿って複数の電極がそれぞれ形成された半導体ウエハを準備する工程と、
(b)前記半導体ウエハの表面を樹脂で覆うことによって封止する工程と、
(c)前記複数の電極が形成された位置とは異なる前記複数の半導体チップ領域のそれぞれの中央側で前記四辺に沿った前記複数の電極が外部との電気的接続をとるために、前記複数の電極に各々の一端が電気的に接続され、かつ、各々の他端が前記半導体チップ領域の四辺の各々の側から中央側に向かうように、複数の配線を前記半導体ウエハを封止する前記樹脂上に形成する工程と、
(d)前記半導体チップ領域の中央側に位置する前記複数の配線上に、前記外部との電気的接続をとる複数の半田ボールをそれぞれ形成する工程と、
(e)前記複数の配線及び前記半田ボールが形成された後、前記樹脂によって封止された前記半導体ウエハを個々のチップサイズパッケージに分割する工程とを含むことを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項2】 請求項1記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記複数の電極にそれぞれ接続される複数のバンプを形成する工程を含んでおり、
前記複数の配線は、前記複数のバンプを介して前記複数の電極にそれぞれ接続されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項3】 請求項1又は2のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記複数の配線は、アルミニウム又は銅を用いて形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記複数の配線を覆うように、前記樹脂の上に半田レジストを供給する工程を有することを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記樹脂は、エポキシ樹脂を用いて形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項6】 請求項1から5のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記複数の電極を露出させる保護膜を前記半導体ウエハの表面上に形成する工程を含むことを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項7】 請求項6記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記樹脂は、前記保護膜上に形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【請求項8】 請求項6又は7記載のチップサイズパッケージの製造方法において、
前記保護膜は、PSGを用いて形成されることを特徴とするチップサイズパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LSIのパッケージに係り、特に、LSIチップと略同じ大きさのチップサイズパッケージの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、例えば、(1)“日経マイクロデバイス”1995年2月号 P.96〜97(2)“チップサイズパッケージ技術”サーキットテクノロジVol.9No.7 P475〜478に記載されるようなものがあった。
【0003】
従来、この種のパッケージは、μ-BGA、チップサイズパッケージ、CSP等種々の名前で呼ばれ、また色々なタイプのチップサイズパッケージが開発されている。
【0004】
図8はかかる従来のチップサイズパッケージの一部破断斜視図である。
【0005】
この図に示すように、LSIチップ1に半田蒸着と銅バンプを形成後、モールド樹脂2により樹脂封止し、外部端子用の半田バンプ3をつける。なお、4は配線パターン、5は電極パッドである。結果として、略LSIと同じ大きさのパッケージを得ることができる。
【0006】
また、図9は従来のチップサイズパッケージのうちテープキャリア方式の一部破断斜視図である。
【0007】
この図において、LSIチップ5の表面には弾性のある接着剤6をコートし、LSIの各パッドにはフレキシブル配線7を接続し、且つこのフレキシブル配線7には半田バンプ9が形成されている。この半田バンプ9の周囲には、ポリイミドフィルム8等で形成され、前記した弾性のある接着剤6でこのLSIに固定されている。10は保護枠である。結果として、略LSIと同じ大きさのパッケージを得ることができる。
【0008】
すなわち、このパッケージでは、LSIをバンプを有するポリイミド配線基板に実装し、次に、これを目的の配線基板に実装する形態をとっていた。
【0009】
他の形態のパッケージにおいても、配線が施されたLSIチップを、配線基板に実装するようにしている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように、従来のチップサイズパッケージでは、LSIをウエハから切り出した後、各々のチップサイズパッケージを作製することになるので、専用の金型を必要とし、低価格化の障害となっていた。
【0011】
また、従来のチップサイズパッケージでは、LSIを配線基板に実装するのに2回実装することとなり、工程数が多くなり、結果として高価格になる。
【0012】
更に、LSIをウエハから切り出した後、各々のチップサイズパッケージを作製することとなるので、その作製が煩雑であり、製造の信頼性上も問題である。
【0013】
また、従来エポキシ樹脂のモールドに関してはモールドに離型剤が添加されていた。これは金型と樹脂との接着を防ぐ目的のものであるが、LSI及びその周辺の金属との接着力が弱くなり、信頼性低下につながった。
【0014】
更に、今までにもLSIにバンプを直接作製し、これをフェースダウン方式で基板に実装する方法は提案され、実用化している。しかし、この方法ではLSIの保護が全くなされておらず、機械的にも弱いものであった。
【0015】
本発明は、上記問題点を除去し、金型を用いることなく、工程数を低減して、低価格化を図ることができ、LSIの保護が十分なチップサイズパッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、〔1〕チップサイズパッケージの製造方法において、集積回路がそれぞれ形成された、四辺を有する複数の半導体チップ領域を有し、前記複数の半導体チップ領域の周辺上に、前記四辺に沿って複数の電極がそれぞれ形成された半導体ウエハを準備する工程と、前記半導体ウエハの表面を樹脂によって覆う工程と、前記複数の電極が形成された位置とは異なる複数の半導体チップ領域のそれぞれの中央側で、前記四辺に沿った複数の電極が外部との電気的接続をとるために、前記複数の電極にそれぞれ電気的に接続される複数の配線を前記樹脂上に形成する工程と、前記複数の配線が形成された半導体ウエハを個々の半導体チップに分割する工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
〔2〕上記〔1〕記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の配線は、各々の一端が前記複数の電極に接続され、かつ、他端が前記半導体チップ領域の四辺の各々の側から中央側に向かうように、前記樹脂上に形成されることを特徴とする。
【0018】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の電極が形成された位置とは異なる前記半導体チップ領域の中央側で、前記複数の配線に接続される複数の半田ボールを形成する工程を有することを特徴とする。
【0019】
〔4〕上記〔3〕記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記半導体ウエハは、前記複数の半田ボールが形成された後に、個々の前記半導体チップに分割されることを特徴とする。
【0020】
〔5〕上記〔1〕から4のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の電極にそれぞれ接続される複数のバンプを形成する工程を含んでおり、前記複数の配線は、前記複数のバンプを介して前記複数の電極にそれぞれ接続されることを特徴とする。
【0021】
〔6〕上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の配線は、アルミニウム又は銅を用いて形成されることを特徴とする。
【0022】
〔7〕上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の配線を覆うように、前記樹脂の上に半田レジストを供給する工程を有することを特徴とする。
【0023】
〔8〕上記〔1〕から〔7〕のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記樹脂は、エポキシ樹脂を用いて形成されることを特徴とする。
【0024】
〔9〕上記〔1〕から〔8〕のいずれか1項に記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記複数の電極を露出させる保護膜を前記半導体ウエハの表面上に形成する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
〔10〕上記〔9〕記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記樹脂は、前記保護膜上に形成されることを特徴とする。
【0026】
〔11〕上記〔9〕又は〔10〕記載のチップサイズパッケージの製造方法において、前記保護膜は、PSGを用いて形成されることを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は本発明の第1実施例を示すウエハの平面図、図2は図1のA-A′線におけるチップの製造工程断面図である。
【0029】
図1においては、1枚のウエハが示されており、前処理を終了し、更に各LSIの電極にバンプを形成した状態を示している。
【0030】
この図において、101,102,103,104…は各LSIであり、実線C1,C3,C5,C2,C4,C6,C8に沿ってウエハから切り取られる。
【0031】
201,202,203,204,205,206,207,208は各LSIにおける電極であり、通常は1μm厚のアルミニウムが用いられる。301,302,303,…,308はバンプであり、この実施例では、いわゆるスタッド方式(ワイヤボンディングの技術を用い、ボンディング時のボールをバンプとする)を用いた。
【0032】
また、電極201,202,203,204,205…は、各々1辺が50〜100μmの長方形または正方形の形状をなしており、バンプ301,302,303…は通常各々最大直径が30〜60μmで高さもほぼ同じ値である。
【0033】
以下、図1に示されるLSI104のA-A′線に沿ったウエハサイズチップの製造方法について図2を参照しながら説明する。
【0034】
(1)まず、図2(a)に示すように、100はLSI104を保護するためのPSG膜(酸化膜)であり、電極204,205上のバンプ304,305はワイヤボンディング技術で作製されるので先端がくびれた形状になっている。次工程前に1バンプ当たり6〜10gの加重をかけ、各バンプの高さを揃え、また各バンプの先端の表面を平坦にしておくと都合がよい。
【0035】
バンプの材質としては金、または銅が望ましい。両者とも、通常の技術で作製することができる。特に、金のスタッド方式のバンプに関しては、製造装置も販売され、LSIの前工程を変更することなく作製することができる。
【0036】
また、銅バンプに関してはボンディング時、Arに水素を添加したガス雰囲気が必要であり、またボンディング圧力も若干大きめなため、LSIのアルミ電極の厚さを2μm程度と通常より厚くする必要が生じたが、条件を最適化することにより、良好な銅のスタッド方式のバンプを得ることが可能であった。
【0037】
最近、錫-鉛を主成分にした半田ワイヤをボンディングして、半田のバンプをLSIのアルミ電極に形成する技術も実用化されている。この技術を用いると容易に半田バンプ301,302,303,304,305…を形成することができ、更に続行する工程も容易になる。
【0038】
(2)全てのアルミ電極にバンプを形成、加圧後、図2(b)に示すように、ウエハ全面にエポキシ樹脂200を被着し、ホットプレスにより押圧、加熱しつつ硬化させる。プレスによる圧力は、15〜20kg重/cm2、温度は80〜100℃、硬化時間にほぼ1時間を要した。この押圧工程により、バンプ301,302,303,304,305…の平らな突起上面がエポキシ樹脂200の表面に露出する。樹脂はエコボンド(エマーソンアンドカミング社製の商品名)のように硬化前後における体積変化率の低いものを用いた。樹脂や押圧条件により、バンプ301,302,303,304,305…の平らな突起上面にエポキシ樹脂200が薄く残存する場合がある。この時は表面をサンドペーパー、またはサンドブラスト等で若干研磨することで露出させることができた。
【0039】
(3)次に、通常の工程により、図2(c)に示すように、バンプ301,302,303,304,305…の平らな突起上面に半田ボール604,605を設置する。エポキシ樹脂200上に半田レジストが存在してもよい。これらの工程はウエハ全域にわたって行われる。半田ボール604,605を設置後、図1の実線C1,C3,C5,C2,C4,C6,C8に沿ってウエハをカッティングする。
【0040】
上記のようにして、カッティングを行ったチップサイズパッケージを以下に示す。
【0041】
図3は本発明の第1実施例を示すチップサイズパッケージの斜視図である。
【0042】
この図の点線で示した50は、このチップサイズパッケージを補強するための補強板である。このチップサイズパッケージは、表面にエポキシ樹脂をコーティングしているので十分な強度を持つが、使用する前においては、更なる強度を必要とする場合がある。ウエハカッティング前、補強板50を張り付けることにより、極少ない工程で、補強板付きチップサイズパッケージを得ることができる。
【0043】
この様な構造になっているから、LSIチップと同じ面積である。
【0044】
本発明によれば、このパッケージは小さいままで、強度的にも、耐湿等においてもいわゆるモールドパッケージと同等の信頼性を持つものである。
【0045】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0046】
図4は本発明の第2実施例を示すウエハのチップとなる部分の平面図、図5はそのウエハのチップの断面図(図4のB-B′断面図)、図6は本発明の第2実施例を示すチップサイズパッケージの斜視図である。なお、第1実施例と同じ部分については、同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0047】
これらの図において、402,404,405,407はエポキシ樹脂200上に形成された配線金属であり、半田ボールの位置をアルミ電極の真上の位置から移動させるためのものである。この配線金属を形成する工程は、例えばアルミニウム蒸着、ホトリソ、エッチング工程で行えばよく、なんら新しい技術は使用しない。メッキ技術によってもよい。半田ボール601,602,603,604,605,…を設置するため半田レジスト500を形成する。
【0048】
この実施例では、第1実施例のように、接続用の半田ボールをLSIのアルミ電極の真上に形成するのではなく、平面的に離れた場所に形成する。
【0049】
図5に示すように、まず、第1実施例のように、LSI104の各アルミ電極204,205上に、スタッドバンプ304,305をたて、次に、エポキシ樹脂200を被着、押圧、加熱して、加工後、このエポキシ樹脂200の表面に配線金属404,405を形成し、更に半田レジスト500を塗布後、半田ボール604,605を設置する。
【0050】
最後にウエハをカッティングしてLSIを切り出す。
【0051】
このように、半田ボール形成後、一枚のウエハをカッティングした一個のLSIに相当する部分を拡大すると、図6のようになる。
【0052】
この実施例では、バンプ形成後、半田ボール移動のための配線金属の形成を行った。エポキシ樹脂形成前に半田ボール移動のための配線金属の形成を行うことも可能である。
【0053】
図7はかかる本発明の第3実施例を示す配線金属の形成を先に行った場合のチップサイズパッケージの要部断面図である。図5と同じ部分については、同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0054】
この図において、704,705は半田ボールの位置を移動するための配線金属804,805はバンプである。
【0055】
上記実施例によれば、接続用の半田ボールが所望の場所にあるチップサイズパッケージを容易に得ることが可能である。
【0056】
特に、第1実施例と同様に、ウエハのカッティングを最後に行うようにしたので、各パッケージ当たりの工数が少なくなり、低価格化を実現できる。また、エポキシ樹脂のLSIへの接着力も十分なものが得られる。
【0057】
第1実施例、第2実施例共にバンプはスタッドバンプとして説明した。しかし通常のメッキによるバンプを用いても、十分に本発明を実施することが可能であった。
【0058】
また、第1実施例、第2実施例はバンプ形成後、樹脂封止する工程を用いている。しかし、樹脂を全面に被着後、この樹脂を部分的に必要箇所に応じてホトリソ技術等で除去し、除去箇所に無電解メッキなどでバンプを形成する手法も有効であった。
【0059】
図10〜図12は本発明の第4実施例を示す図であり、図10は本発明の第4実施例を示すチップサイズパッケージの製造工程断面(図11のC-C′線断面)図、図11はそのチップサイズパッケージの平面図、図12はそのチップサイズパッケージの斜視図である。
【0060】
ウエハの全体平面図は、第1実施例と同様であるのでここでは図示は省略する。
【0061】
以下、そのチップサイズパッケージの製造方法を図10を用いて説明する。
【0062】
(1)まず、図10(a)に示すように、LSI104を保護するためのPSG膜(酸化膜)100が形成される。アルミ電極204,205に接続されるバンプ304,305はワイヤボンディング技術で作製されるので先端がくびれた形状になっている。
【0063】
バンプの材質としては金、または銅が望ましい。両者とも、通常の技術で作製することができる。特に、金のスタッド方式のバンプに関しては、製造装置も販売され、LSIの前工程を変更することなく作製することができる。
【0064】
また、銅バンプに関してはボンディング時Arに水素を添加したガス雰囲気が必要であり、またボンディング圧力も若干大きめなため、LSIのアルミ電極の厚さを2μm程度と通常より厚くする必要が生じたが、条件を最適化することにより、良好な銅のスタッド方式のアルミニウムを得ることが可能であった。
【0065】
最近、錫-鉛を主成分にした半田ワイヤをボンディングして半田のバンプをLSIのアルミ電極に形成する技術も実用化されている。この技術を用いると容易に半田バンプ304,305…を形成することができ、更に続行する工程も容易になる。
【0066】
(2)次に、図10(b)に示すように、全てのLSI104のアルミ電極204,205にバンプ304,305を形成し、加圧による先端平坦化後、このウエハ全面に銅箔1400(例えば、15μmの厚さ)を鑞付けする。この銅箔1400表面に、予め錫あるいは半田等を1μm程度の厚さにメッキしておき、このメッキ膜(図示なし)とバンプ304,305とを低温鑞付けする。
【0067】
次に、この銅箔1400とLSI104間にエポキシ樹脂1200を注入、加熱硬化させる。樹脂は、エコボンド(エマーソンアンドカミング社製の商品名)のように、硬化前後における体積変化率の低いものを用いた。LSI104と銅箔1400間の距離は40μm前後であるから、毛細管現象により効率よく、また、確実に樹脂1200を充填でき、また、LSI104表面、銅箔1400面との接着性も極めて良好であった。なお、バンプ材料が半田である場合は、銅箔に予め錫、半田等をメッキしなくても容易にバンプと銅箔を接続できた。
【0068】
(3)次いで、図10(c)に示すように、銅箔1400をエッチング加工し、所望の配線金属1404,1405をエポキシ樹脂1200上に形成した。銅箔1400のエッチング加工は、例えば、感光性のドライフィルムを銅箔1400にコーティング後、マスクを用いて露光、現像等の処理を行った後、塩化第二鉄の溶液による銅の選択エッチングにより行った。
【0069】
(4)次に、電極1404,1405を形成後、半田ボール604,605を設置するため半田レジスト1500を塗布し、その後、半田ボール604,605を所定の場所に設置する。
【0070】
このようにして得られたチップサイズパッケージの平面を図11に示す。
【0071】
この図において、1401,1402,1403,1404,1405…は樹脂1200上に形成された銅箔からなる配線金属であり、601,602,603,604,605は半田ボールである。
【0072】
LSIのアルミ電極201,203,206,208についてはその真上に外部回路との接続点を設置するようにしてある。アルミ電極204,205については、それぞれの場所に設置されたバンプ(304,305等)を通して、外部回路との接続点を移動するよう設計されている。
【0073】
半田ボール601,602,603、604,605,…の設置後、図1のように、点線C1,C3,C5,C2,C4,C6,C8に沿ってウエハをカッティングする。カッティング後のLSI104が図12に示されている。
【0074】
図12に示した700は、このチップサイズパッケージを補強するための補強板である。このチップサイズパッケージは表面にエポキシ樹脂をコーティングしているので十分な強度を持つが、使用する前においては、さらなる強度を必要とする場合がある。ウエハカッティング前、補強板700を張り付けることにより、極少ない工程で、補強板700付きチップサイズパッケージを得ることが可能である。
【0075】
また、エポキシ樹脂をチップ表面に被着しているので、いわゆる樹脂モールドと略同じ信頼性を保証できる。
【0076】
従来文献に示したように、従来のチップサイズパッケージはLSIのダイスカッティング後、パッケージを行っていた。しかし、本発明ではパッケージ化の作業を全てウエハ単位で行えるため、工数が少なく、低価格化を実現できる。
【0077】
従来のエポキシ樹脂のモールドに関してはモールドに離型剤が添加されていた。これは金型と樹脂との接着を防ぐ目的のものであるが、LSI及びその周辺の金属との接着力が弱くなり信頼性低下につながった。
【0078】
しかし、本発明の技術では金型を用いないので、エポキシ樹脂に離型剤を添加する必要はない。また、樹脂との接着を促進するシランカップリング剤等を有効に用いることができた。
【0079】
本発明によれば、このパッケージは小さいままで、強度的にも、耐湿等においてもいわゆるモールドパッケージと同等の信頼性を持つものである。
【0080】
本発明においては、バンプはスタッド方式として説明した。しかし通常のメッキによるバンプを用いることも当然可能であり、他の手法でもよい。またバンプの材料も銅、金、錫-鉛半田のみでなく、他の材料の使用も可能である。
【0081】
ウエハ全面のバンプに張り付ける箔を銅箔として説明したが、これ以外に金箔、コバール板等を用いても良好なチップサイズパッケージを得ることができた。
【0082】
また、各バンプとの接続は、低温鑞付けではなく、高温圧接、超音波接続等を用いても可能であった。この場合、銅箔に半田メッキ、錫メッキ等は不要であった。
【0083】
銅箔のパターニングはドライフィルムを用いる手法で説明したが、レジストをコーティングする手法等の方法でも十分対応しえるものである。
【0084】
銅箔とLSI間にエポキシ樹脂を毛細管現象で注入したが、例えばポリイミド樹脂等、他の系統の樹脂でも対応可能である。
【0085】
外部回路との接続は半田ボールで行うとして説明したが、接続予定場所に金属片を溶接して接続端子とすることも可能である。あるいは導電性塗料を必要箇所に塗布してもよい。
【0086】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0087】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0088】
(1)LSIチップと同じ面積のチップサイズパッケージを得ることができる。
【0089】
また、樹脂をチップ表面に被着しているので、いわゆる樹脂モールドとほぼ同じ信頼性を保証できる。
【0090】
すなわち、パッケージは小さいままで、強度的にも、耐湿等においても、いわゆるモールドパッケージと同等の信頼性を確保することができる。
【0091】
(2)上記(1)の効果に加え、LSIの表面の強度と接続の信頼性を高めることができる。
【0092】
(3)上記(1)の効果に加え、LSIのパッド電極と半田ボールとの位置を任意に変更でき、接続の自由度を高めることができる。
【0093】
(4)パッケージ化の作業を全てウエハ単位で行えるため、工数が少なく、低価格化を実現できる。
【0094】
このように、ウエハのカッティングを最後に行うので、各パッケージ当たりの工数が少なくなり、低価格化を実現できる。
【0095】
(5)上記(4)の効果に加え、LSIをウエハから切り出す前に、そのウエハ全面に補強板を接着するようにしたので、LSIを機械的に補強することができ、確実にウエハから切り出しを行うことができる。
【0096】
(6)金型を用いないので、エポキシ樹脂に離型剤を添加する必要はない。また、樹脂との接着を促進するシランカップリング剤等を有効に用いることができた。
【0097】
(7)上記(6)と同様な、チップサイズパッケージを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すウエハの平面図である。
【図2】図1のA-A′線におけるチップの製造工程断面図である。
【図3】本発明の第1実施例を示すチップサイズパッケージの斜視図である。
【図4】本発明の第2実施例を示すウエハのチップとなる部分の平面図である。
【図5】本発明の第2実施例を示すウエハのチップの断面(図4のB-B′線断面)図である。
【図6】本発明の第2実施例を示すチップサイズパッケージの斜視図である。
【図7】本発明の第3実施例を示す配線金属の形成を先に行った場合のチップサイズパッケージの要部断面図である。
【図8】従来のチップサイズパッケージの一部破断斜視図である。
【図9】従来のチップサイズパッケージのうちテープキャリア方式の一部破断斜視図である。
【図10】本発明の第4実施例を示すチップサイズパッケージの製造工程断面(図11のC-C′線断面)である。
【図11】本発明の第4実施例を示すチップサイズパッケージの平面図である。
【図12】本発明の第4実施例を示すチップサイズパッケージの斜視図である。
【符号の説明】
50,700 補強板
100 PSG膜(酸化膜)(保護膜)
101,102,103,104 LSI
200,1200 エポキシ樹脂
201,202,203,204,205,206,207,208 電極(アルミニウム)
301,302,303,304,305,306,307,308,804,805…バンプ(スタッドバンプ)
402,404,405,407,704,705,1401、1402,1404,1405 配線金属
500,1500 半田レジスト
601,602,603,604,605 半田ボール
1400 銅箔
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-10 
出願番号 特願平7-221760
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 川真田 秀男中澤 登  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 伊藤 明
市川 裕司
登録日 2002-05-31 
登録番号 特許第3313547号(P3313547)
権利者 沖電気工業株式会社
発明の名称 チップサイズパッケージの製造方法  
代理人 大西 健治  
代理人 大西 健治  

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