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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1091460
異議申立番号 異議2002-72927  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-12-06 
確定日 2003-11-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3290065号「光走査装置及びカラー画像形成装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3290065号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3290065号に係る発明についての出願は、平成8年2月21日に特許出願したものであって、平成14年3月22日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、ペンタックス株式会社、ならびに岡林茂により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年8月11日付けで訂正請求されるとともに特許異議意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のa〜dのとおりである。
訂正事項a.請求項1を「光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光にfθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面上に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを、主走査面のみ移動自在とするよう主走査方向に直行する二方向の位置がずれないように保持する案内部と、前記補正レンズを、前記案内部の所定の位置に固定する固定手段と、を備えることを特徴とする光走査装置。」と訂正する。
訂正事項b.請求項3の「固定手段は、補正レンズの主走査方向の一端を案内部の所定の位置に固定する接着剤であることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。」を、
「固定手段は、補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤であることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。」と訂正する。
訂正事項c.明細書【0007】段落の「【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光を前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを主走査方向にのみ移動自在に保持する案内部と、前記補正レンズを前記案内部の所定の位置に固定する固定手段とを備える。したがって、補正レンズを主走査方向にのみ移動させ、補正レンズの主走査方向の位置決めをすることができ、これにより、fθ誤差が小さくなる。」を
「【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光にfθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを主走査方向にのみ移動自在とするよう主走査方向に直行する二方向の位置がずれないように保持する案内部と、前記補正レンズを前記案内部の所定の位置に固定する固定手段とを備える。したがって、補正レンズを主走査方向にのみ移動させ、補正レンズの主走査方向の位置決めをすることができ、これにより、fθ誤差が小さくなる。」と訂正する。
訂正事項d.明細書【0009】段落の「請求項3記載の発明は、請求項1記載の光走査装置における固定手段が補正レンズの主走査方向の一端を案内部の所定の位置に固定する接着剤である。したがって、環境条件が変化して補正レンズが膨張したり収縮したりした際に補正レンズの主走査方向の位置がずれるのを防止できるため、環境条件が変化した際にfθ誤差が大きくなることが防止される。」を
「請求項3記載の発明は、請求項1記載の光走査装置における固定手段が補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤である。したがって、環境条件が変化して補正レンズが膨張したり収縮したりした際に補正レンズの主走査方向の位置がずれるのを防止できるため、環境条件が変化した際にfθ誤差が大きくなることが防止される。」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否等
訂正事項aについて
請求項の訂正である訂正事項aの「fθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズ」,「補正レンズを、主走査面のみ移動自在とするよう主走査方向に直行する二方向の位置がずれないように保持する案内部」の点は、それぞれ当初明細書【0003】段落「fθ誤差の補正を行う補正レンズ」,当初明細書【0007】段落「補正レンズを主走査方向にのみ移動自在に保持する。」の記載に基づくものであって、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められ、特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。

訂正事項bについて
請求項の訂正である訂正事項bの「固定手段は、補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤」の点は、当初明細書【0038】段落「この例では、補正レンズ42のSOSセンサ43側の端部のみを接着剤で前記支持部に接着・・・」並びに同明細書【0028】段落「主走査方向の走査の開始位置側にSOS(Start Of Scan)センサ43が設けられている。」の記載に基づくものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、特許請求の範囲を拡張または変更するものでもない。

訂正事項cについて
発明の詳細な説明の記載を訂正する訂正事項cは、上記請求項1の訂正(訂正事項a)に対応してこれと整合させようとするものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

訂正事項dについて
発明の詳細な説明の記載を訂正する訂正事項cは、上記請求項3の訂正(訂正事項b)に対応してこれと整合させようとするものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

2-3.むすび
以上のとおりであるので、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項において準用する第126条第2項及び同条第3項の規定に適合するので訂正を認める。

3.取消理由についての判断
3-1.取消理由通知の概要
平成15年5月30日付取消理由通知の概要は、本願請求項1〜5に係る発明は刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るというものである。
刊行物1:特開平2-308213号公報(異議申立人岡林茂が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭61-242160号公報(異議申立人岡林茂が提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平6-75181号公報(異議申立人ペンタックス株式会社が提出した甲第2号証)

3-2.本件発明
本件の請求項1〜5に係る発明は、訂正請求書の特許請求の範囲1〜5に記載された次の事項により特定されるとおりの以下のものである。(以下、本件発明1〜5という。)
「【請求項1】光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光にfθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを、主走査方向のみ移動自在とするよう主走査方向に直交する二方向の位置がずれないように保持する案内部と、前記補正レンズを、前記案内部の所定の位置に固定する固定手段と、を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】固定手段は、補正レンズを案内部の所定の位置に固定する板バネであることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】固定手段は、補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤であることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項4】補正レンズは、主走査方向への力を受ける凸部又は凹部を備えることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項5】色別に感光体の表面に静電潜像を形成する光走査装置を備えたカラー画像形成装置において、前記光走査装置は、請求項1,2,3又は4記載の光走査装置であることを特徴とするカラー画像形成装置。」

3-3.刊行物の記載事項
刊行物1:「該レーザーユニット25Bkより・・・ポリゴンミラー27Bkで反射されたレーザービーム24Bkは、fθレンズ29Bkにより感光体14Bk上に結像し、ポリゴンミラー27Bkの回転により、感光体Bk上を走査する。」(2頁左下欄6〜16行)
「それぞれの色のレーザービーム走査装置12Bk,12C,12M,12Yに送られる。プリンタ部3には、図の例では4組の記録装置13C、13M、13Y、13Bkが並んで配置されている。・・・記録装置13Cはレーザービーム走査装置12Cの外に感光体14C・・・を有する。」(2頁左上欄10行〜同頁左上欄15行目)
「・・・第2図において、fθレンズ41、42からなる組の中、移動調整され得るのはfθレンズ42である。このfθレンズ42はその一端側、図中左端側がレンズホルダ50の段部50Aに係合された上、板ばね46で押圧支持されている。」(5頁左上欄8〜10行)
「fθレンズ42の多端側、図中右端部の平坦なレンズ面がレンズホルダ50の平坦な受け面50Bに当接された上、対向するレンズ面より板ばね51にて押圧支持されている。」(5頁左上欄16〜19行)

刊行物2:「位置調整用穴24へ位置調整ピン23を挿入し、このピン23をX方向およびY方向に微動させながら受光部アッセンブリ20を動かし、受光面16と光ビームの軌跡18とを一致させる。」(3頁左上欄20行〜同頁右上欄3行)

刊行物3:「このfθレンズ1のレンズ有効部の周囲には成形性を良くするために縁どりが付けられており、特に底部には光学フレーム40などに安定して精度よく固定できるような基準面が設けられていて、さらに3のような光学フレーム40などに接着固定するための接着用座面も設けられている。」(明細書【0014】段落)

3-4.対比・判断
本件発明1について
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載のものとを比較すると、刊行物1記載のものにおける「レーザーユニット25Bk」,「感光体14Bk」,「ポリゴンミラー27Bk」,「fθレンズ42」,「平坦な受け面50B」,「板ばね46」はそれぞれ本件発明1における「光源」,「被走査面」,「偏向部」,「補正レンズ」,「案内部」,「固定手段」に相当する。
本願発明1の「光走査装置」の点は、刊行物1の上記「レーザービーム24Bkは、fθレンズ29Bkにより感光体14Bk上に結像し、ポリゴンミラー27Bkの回転により、感光体Bk上を走査する。」の記載からみて、刊行物1に包含されている。
また本件発明1の「前記偏向部により偏向された前記光にfθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズ」の点は、刊行物1には直接記載されていないが、刊行物1には「fθレンズ」の記載があり、このレンズがfθ誤差の補正のために設けられていることは当業者ならば自明であるから、この点は、刊行物に記載されているに等しい事項である。
よって両者は、「光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを、主走査方向のみ移動自在とするように保持する案内部と、前記補正レンズを、前記案内部の所定の位置に固定する固定手段と、を備える光走査装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:
本件発明1の「案内部」が、「補正レンズを主走査方向のみ移動自在とするよう主走査方向に直交する二方向の位置がずれないように保持する」のに対し、刊行物1には、この点が記載されていない点。

上記相違点について検討する。
刊行物1には上記の「第2図において、fθレンズ41、42からなる組の中、移動調整され得るのはfθレンズ42である。このfθレンズ42はその一端側、図中左端側がレンズホルダ50の段部50Aに係合された上、板ばね46で押圧支持されている。」(5頁左上欄8〜10行)、「fθレンズ42の多端側、図中右端部の平坦なレンズ面がレンズホルダ50の平坦な受け面50Bに当接された上、対向するレンズ面より板ばね51にて押圧支持されている。」(5頁左上欄16〜19行)及び「上記偏心軸52はビーム偏向面と垂直にその長手方向を設定されている。ビーム偏向面と平行な面内において光軸O-Oと直行する方向がビーム偏向方向であり、fθレンズ両端面に対向して位置している弾性体53および偏心軸52を結ぶ線は上記ビーム偏向方向と一致する。」(5頁右上欄5〜11行)と記載されていることから、刊行物1の偏心軸52はfθレンズ42をビーム偏向方向(本願発明1の主走査方向に相当する。)にのみ移動させる機能を有しており、ビーム偏向方向に直交する二方向に移動させることは想定していないことが読みとれることから、この点は刊行物1の技術的事項を別の形で表現したものにすぎないものである。
特許権者は、刊行物1のfθレンズ42が両端をそれぞれ段部50Aと板ばね46,受け面50Bと板ばね51によって保持されている点に対して、平成15年8月11日付特許異議意見書において、「刊行物1記載の発明は、レンズホルダの段部及びレンズホルダの平坦な受け面に当接した上で対向するレンズ面より板バネにて押圧支持するものである。すなわち、平坦な受け面に当設させることで、光軸方向のみ(つまり一方向のみ)に対して位置がずれないように保持するものにすぎないものである。」(4頁2〜7行)と主張している。
しかし刊行物1記載の発明において、板バネの押圧力により摩擦が生じるので、「光軸方向」以外の方向にもある程度の保持力がはたらいていることは自明である。そして本件発明1の「主走査方向に直交する二方向の位置がずれないように保持する」点について、本願の実施例を参酌すると、「案内部49」は溝状の形状をしており、その溝に「補正レンズ」がはめ込まれることが図5からみてとれ、図1のZ方向(上側方向)に対する保持力は重力によるものであるが、重力による保持であっても本件発明1の「主走査方向に直交する二方向の位置がずれないように保持する」ものと解することができるのであれば、刊行物1記載の発明における、板バネの押圧力による保持力もその範疇に入るものと解される。
よって、上記主張は採用するにたらないものである。

したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明を別の形で表現したにすぎないものであって当業者が任意に設計し得る程度のものである。

本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の固定手段を「補正レンズを案内部の所定の位置に固定する板バネ」と技術的に限定するものである。
刊行物1には「このfθレンズ42はその一端側、図中左端側がレンズホルダ50の段部50Aに係合された上、板ばね46で押圧支持されている。」(5頁左上欄9〜10行)と記載されており、「板バネ46」は上記本件発明2の「板バネ」に相当するので、本件発明2は、本件発明1と同様に刊行物1に記載された発明を別の形で表現したにすぎないものであって当業者が任意に設計し得る程度のものである。

本件発明3について
本件請求項3に係る発明は、本件請求項1に係る発明の技術事項をさらに「固定手段は、補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤」と技術的に限定するものである。
刊行物1には、他の実施例として「このfθレンズ42はその一端側、図中左端側がレンズホルダ45の段部45Aに係合された上、板ばね46で押圧支持されている。」と記載されており、これは本件請求項3の「固定手段は、補正レンズの主走査方向の端部を案内部の所定の位置に固定する」との事項に相当する。また刊行物3には「このfθレンズ1のレンズ有効部の周囲には成形性を良くするために縁どりが付けられており、特に底部には光学フレーム40などに安定して精度よく固定できるような基準面が設けられていて、さらに3のような光学フレーム40などに接着固定するための接着用座面も設けられている。」(明細書【0014】段落)と記載されており、また、補正レンズのどちらの端部を固定するかは当業者が適宜実施し得る設計的事項に過ぎないから、本件請求項3に係る発明は、刊行物1記載の発明の「板ばね46」による固定を刊行物3記載の「接着固定」で置換することにより、当業者が容易に想到し得るものである。

本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の技術事項を、
「補正レンズは、主走査方向への力を受ける凸部又は凹部を備える」と技術的に限定するものである。
刊行物2には「位置調整用穴24へ位置調整ピン23を挿入し、このピン23をX方向およびY方向に微動させながら受光部アッセンブリ20を動かし、受光面16と光ビームの軌跡18とを一致させる。」(3頁左上欄20行〜同頁右上欄3行)と記載されている。
刊行物2記載の「位置調整穴24」は本件請求項4の「凹部」に相当し、本件発明4がレンズに関するものであるのに対し、刊行物2は「受光部アッセンブリ」に関するものであるが、「受光アッセンブリ」の位置決め技術を「レンズ」の位置決めに適用することに困難性はない。
よって、本件請求項1に係る発明と同様の技術的事項については、上記と同様であるから、本件発明4は、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用することにより当業者が容易に想到しえるものである。

本件発明5について
本件請求項5に係る発明は、本件請求項1ないし4に係る発明の技術事項をさらに「色別に感光体の表面に静電潜像を形成する光走査装置」と技術的に限定するものである。刊行物1の上記「それぞれの色のレーザービーム走査装置12Bk,12C,12M,12Yに送られる。プリンタ部3には、図の例では4組の記録装置13C、13M、13Y、13Bkが並んで配置されている。・・・記録装置13Cはレーザービーム走査装置12Cの外に感光体14C・・・を有する。」の事項は、上記「色別に感光体の表面に静電潜像を形成する光走査装置」と相違がない。
よって本件請求項5に係る発明は、本件請求項1ないし4に係る発明と同様の理由により、刊行物1記載の発明と同一あるいは刊行物1ないし3から当業者が容易に想到し得たものである。

4.むすび
以上のとおりであるから本件発明1ないし5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
光走査装置及びカラー画像形成装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光にfθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、
前記補正レンズを、主走査方向のみ移動自在とするよう主走査方向に直交する二方向の位置がずれないように保持する案内部と、
前記補正レンズを、前記案内部の所定の位置に固定する固定手段と、を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
固定手段は、補正レンズを案内部の所定の位置に固定する板バネであることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
固定手段は、補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤であることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項4】
補正レンズは、主走査方向への力を受ける凸部又は凹部を備えることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項5】
色別に感光体の表面に静電潜像を形成する光走査装置を備えたカラー画像形成装置において、前記光走査装置は、請求項1,2,3又は4記載の光走査装置であることを特徴とするカラー画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、像担持体に静電潜像を形成する光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光走査装置は、半導体レーザから出射されたレーザ光をポリゴンミラーにより偏向して感光体等の被走査面にレーザ光を走査させる。
【0003】
このような光走査装置には、像面湾曲やfθ誤差の補正を行う補正レンズを備えるものがある。
【0004】
ところで、fθ誤差は、ポリゴンミラーや補正レンズの主走査方向の位置決め精度により変化する。そして、ポリゴンミラーや補正レンズの主走査方向の位置決め精度を良くすることによりfθ誤差を小さくすることができる。
【0005】
また、補正レンズの主走査方向の位置決めをして補正レンズを固定することができる光学レンズ保持装置が考えられ、実開昭63-137310号公報に記載されている。この光学レンズ保持装置では、光学レンズの三方向の面のそれぞれを基準面に突き当て、光学レンズを保持する保持部に基準面より低いランド部を設け、このランド部に光硬化性接着剤を流し込んで光学レンズを固定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、実開昭63-137310号公報に記載されている光学レンズ保持装置では、ポリゴンミラーの主走査方向の位置決め精度が悪くなると、fθ誤差が大きくなることがある。このとき、画像品質が悪くなる。特に、異なる色の画像を転写紙に転写し、転写紙上で色重ねしてカラー画像を形成するカラー画像形成装置においては、fθ誤差により色ずれが生じるという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光にfθ誤差の補正を行って前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを、主走査方向のみ移動自在とするよう主走査方向に直交する二方向の位置がずれないように保持する案内部と、前記補正レンズを前記案内部の所定の位置に固定する固定手段とを備える。従って、補正レンズを主走査方向にのみ移動させ、補正レンズの主走査方向の位置決めをすることができ、これにより、fθ誤差が小さくなる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光走査装置における固定手段が補正レンズを案内部の所定の位置に固定する板バネである。従って、補正レンズの主走査方向の位置を調整するとき、補正レンズが主走査方向に移動するように板バネが補正レンズを固定する力を弱くすることができるため、補正レンズの主走査方向の位置の微調整が容易になる。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の光走査装置における固定手段が補正レンズの主走査方向の走査の開始位置側の端部のみを案内部の所定の位置に固定する接着剤である。従って、環境条件が変化して補正レンズが膨張したり収縮したりした際に補正レンズの主走査方向の位置がずれるのを防止できるため、環境条件が変化した際にfθ誤差が大きくなるのが防止される。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の光走査装置における補正レンズが、主走査方向への力を受ける凸部又は凹部を備える。従って、主走査方向への力を凸部又は凹部にへ与えることにより、補正レンズを主走査方向に移動させることができるため、補正レンズの主走査方向の位置の微調整が容易になる。
【0011】
請求項5記載の発明は、色別に感光体の表面に静電潜像を形成する光走査装置を備えたカラー画像形成装置において、前記光走査装置が請求項1,2,3又は4記載の光走査装置である。従って、fθ誤差の小さな光走査装置を使用して感光体上に光を走査させることにより、感光体間のfθ誤差のバラツキを小さくすることができるため、色ブレが防止され、画像品質が悪くなるのが防止される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態の光走査装置を図面に基づいて説明する。本実施の形態の光走査装置を適用した画像形成装置を図2に示す。まず、画像形成装置1について説明する。この画像形成装置1は、転写紙2にカラー画像を形成するカラー画像形成装置である。
【0013】
この画像形成装置1には、中央に前記転写紙2を搬送する転写紙搬送ベルト3が配置されている。前記転写紙搬送ベルト3の上面側には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色の画像を形成して前記転写紙2に転写する画像形成部4Y,4M,4C,4Bが前記転写紙2の搬送方向に沿って等間隔に順次配置されている。前記画像形成部4Y,4M,4C,4Bのそれぞれには、感光体5Y,5M,5C,5Bが回転自在に設けられている。前記画像形成部4Y,4M,4C,4Bの上方には、前記感光体5Y,5M,5C,5Bを露光して静電潜像を形成する光走査部6Y,6M,6C,6Bが配置されている。
【0014】
前記転写紙搬送ベルト3の下方には、前記転写紙2を給紙する給紙部7が配置されている。前記転写紙搬送ベルト3よりも前記転写紙2の搬送方向の下流側には、前記転写紙2に転写された画像を定着させる定着部8と、この定着部8により画像が定着された前記転写紙2を排紙する排紙部9とが順に配置されている。
【0015】
前記画像形成部4Y,4M,4C,4Bは、電子写真プロセスにより各色に応じた画像を形成する。イエローの画像を形成して前記転写紙2に転写するイエロー用の前記画像形成部4Yには、前記感光体5Yが回転自在に設けられている。前記感光体5Yの周囲には、前記感光体5Yを一様に帯電する帯電器10Yと、前記光走査部6により形成された静電潜像を現像する現像器11Yと、現像された画像を前記転写紙2に転写させる転写ローラ12Yと、前記感光体5Yをクリーニングするクリーニング器13Yと、前記感光体5Yを除電する除電器14Yとが配置されている。他の前記画像形成部4M,4C,4Bの構成は、イエロー用の前記画像形成部4Yの構成と同様である。よって、前記画像形成部4M,4C,4Bについては、その説明を省略する。
【0016】
前記搬送ベルト3は、駆動ローラ15と従動ローラ16とに掛け渡されたエンドレスベルトである。前記搬送ベルト3は、前記感光体5Y,5M,5C,5Bと前記転写ローラ12Y,12M,12C,12Bとの間を通るように配置されている。前記搬送ベルト3に当接する位置には、この搬送ベルト3に所定の張力を加えるテンションローラ17が配置されている。前記駆動ローラ15には、図示しないモータが連結されている。前記駆動ローラ15は、前記モータにより回転して前記搬送ベルト3を所定の速度で前記感光体5Y,5M,5C,5Bに沿って移動させる。前記従動ローラ16の上方には、前記搬送ベルト3上で前記転写紙2がずれないように前記転写紙2を前記搬送ベルト3に静電吸着させる吸着部18が配置されている。
【0017】
前記給紙部7には、前記転写紙2を積載する給紙カセット19が設けられている。前記給紙カセット19の上方には、前記転写紙2を一枚ずつ給紙する給紙ローラ20が配置されている。前記給紙部7には、前記給紙カセット19から給紙された前記転写紙2が前記搬送ベルト3の上面側へ搬送される搬送経路21が形成されている。前記搬送経路21には、前記転写紙2を搬送する搬送ローラ22が配置されている。前記搬送経路21には、前記感光体5Y,5M,5C,5Bの回転に同期させて前記転写紙2を前記搬送ベルト3へ搬送するレジストローラ23が配置されている。
【0018】
前記定着部8には、前記転写紙2を加熱加圧して前記転写紙2に画像を定着させる定着ローラ24が配置されている。
【0019】
前記排紙部9には、前記定着部8により画像が定着された転写紙2を排紙する第一の排紙ローラ25が配置されている。前記第一の排紙ローラ25よりも前記転写紙2の搬送方向の下流側には、前記転写紙2が排紙される第一及び第二の排紙トレイ26,27が設けられている。前記第一の排紙トレイ26は、前記画像形成装置1本体の上部に形成されている。前記第二の排紙トレイ27は、前記画像形成装置1本体の側面(図2中、左側)に形成されている。前記第一の排紙ローラ25と前記第一の排紙トレイ26との間には、前記転写紙2が搬送される排紙経路28が形成されている。前記排紙経路28には、前記転写紙2の搬送方向を切り替える切換爪29と、前記転写紙2を排紙する第二の排紙ローラ30とが配置されている。
【0020】
従って、前記画像形成装置1では、図示しないスタートボタンが押されると、給紙ローラ20及び搬送ローラ22が回転し、給紙カセット19に積載されている転写紙2が一枚ずつ分離されて給紙され、搬送経路21に沿って搬送される。そして、感光体5Y,5M,5C,5Bの回転に同期させてレジストローラ23により転写紙2が搬送ベルト3へ搬送され、転写紙2が吸着部18により搬送ベルト3に静電吸着されて搬送ベルト3と共に転写紙2が移動する。
【0021】
このとき、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に応じた画像情報に基づいて光走査部6Y,6M,6C,6Bにより各感光体5Y,5M,5C,5Bが露光され、静電潜像が形成される。例えば、イエロー用の画像形成部4Yでは、感光体5Yが帯電器10Yにより一様に帯電され、イエローの画像情報に基づいて光走査部6Yにより感光体5Yが露光され、感光体5Y上に静電潜像が形成される。この静電潜像が現像器11Yにより現像され、現像された画像が転写ローラ12Yにより搬送ベルト3上の転写紙2に転写される。その後、感光体5Yは、クリーニング器13Yによりクリーニングされ、除電器14Yにより除電されて次の動作に備える。
【0022】
他の画像形成部4M,4C,4Bにおいても、各色の画像情報に基づいて感光体5M,5C,5B上に形成される静電潜像が異なるだけで、前述のイエロー用の画像形成部4Yにおける動作と同様の動作が行われて各色の画像が形成され、搬送ベルト3と共に移動する転写紙2に順次転写される。よって、画像形成部4M,4C,4Bの動作については、その説明を省略する。
【0023】
そして、各色の画像が転写された転写紙2は、半径の小さい駆動ローラ15上で搬送ベルト3から分離され、定着部8へ搬送される。定着部8で転写紙2に転写された画像が定着され、転写紙2が第一又は第二の排紙トレイ26,27へ排紙される。
【0024】
次に、イエロー用の前記画像形成部4Yに設けられている前記感光体5Yを露光してその感光体5Yに静電潜像を形成するイエロー用の前記光走査部6Yを図3及び図4に基づいて説明する。前記光走査部6Yは、イエローの画像情報に基づいて光源である半導体レーザ31を駆動して半導体レーザ31から所定のタイミングでレーザ光を出射させ、このレーザ光を偏向部32により偏向して被走査面である前記感光体5Y上にレーザ光を走査させる。
【0025】
図3に示すように前記半導体レーザ31と前記偏向部32との間には、前記半導体レーザ31から出射されたレーザ光の光路に沿ってコリメータレンズ33と、スリット34と、シリンダレンズ35と、第一のミラー36と、平凸レンズ37とが配置されている。前記コリメータレンズ33は、前記半導体レーザ31から出射されたレーザ光を略平行光に変換する。前記スリット34は、所定の幅のレーザ光のみを透過させる。前記シリンダレンズ35は、副走査方向(図3中、紙面に垂直な方向)にのみパワーを有して副走査方向の集光を行う。前記平凸レンズ37は、主走査方向(図3中、上下方向)の集光を行う。
【0026】
前記偏向部32には、前記平凸レンズ37を透過したレーザ光を反射する反射面を有するポリゴンミラー38が配置されている。前記ポリゴンミラー38には、前記ポリゴンミラー38を回転させ、前記反射面に入射するレーザ光の入射角を所定の範囲内で変化させるスキャナモータ39が連結されている。
【0027】
図3に示すように前記光走査部6Yには、前記偏向部32により偏向されたレーザ光の光路を折り曲げる第二及び第三のミラー40,41と、この第三のミラー41により反射されたレーザ光を前記感光体5Y上で結像させる補正レンズ42とが配置されている。前記補正レンズ42は、入出射面共非球面であり、樹脂形成により作成され、主走査方向に長く形成されている。前記ポリゴンミラー38の反射面の形状と前記補正レンズの非球面形状との組合せで像面湾曲やfθ誤差の補正が行われるように形成されている。
【0028】
また、前記光走査部6Yには、主走査方向の走査の開始位置側にSOS(Start Of Scan)センサ43が設けられている。前記光走査部6Yには、前記第三のミラー41により反射されたレーザ光を前記SOSセンサ43へ反射させるSOSミラー44と、このSOSミラー44により反射されたレーザ光を前記SOSセンサ43に結像させるSOSレンズ45が配置されている。前記SOSセンサ43は既存のセンサである。よって、その説明は省略する。
【0029】
また、前記ポリゴンミラー38の反射面は、副走査断面内において前記補正レンズ42に関し、前記感光体5Yと共役な関係にあるように形成され、ポリゴンミラー38の回転軸に対する各反射面毎の角度誤差、いわゆる面倒れの出ないように形成されている。
【0030】
従って、光走査部6Yでは、イエロー用の画像情報に基づいて半導体レーザ31が半導体レーザ駆動部により駆動されて所定のタイミングでレーザ光を出射する。半導体レーザ31から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ33、スリット34、シリンダレンズ35、第一のミラー36及び平凸レンズ37を介してポリゴンミラー38の反射面へ入射する。このとき、ポリゴンミラー38がスキャナモータ39により回転し、反射面に入射するレーザ光の入射角が所定の範囲内で変化して反射面で反射するレーザ光が偏向される。その後、レーザ光が第二及び第三のミラー40,41により反射される。反射されたレーザ光を補正レンズ42で結像して感光体上に走査させる。
【0031】
このとき、ポリゴンミラー38の反射面の形状と、補正レンズの非球面形状との組合せにより、像面湾曲及びfθ特性の補正が行われる。
【0032】
他の前記光走査部6M,6C,6Bの構成及び動作は、各色の画像情報に基づいてレーザ光を出射させるタイミングが異なるだけで、イエロー用の前記光走査部6Yと同様である。よって、他の前記光走査部6M,6C,6Bについての説明は省略する。
【0033】
次に、前記補正レンズ42を図1及び図5に基づいて説明する。前記補正レンズ42は、支持部46により支持されている。前記補正レンズ42には、レーザ光の入出射面を除く他の四面に直方体状の補強部47が形成されている。この補強部47は、前記補正レンズを補強するために形成されている。前記補強部47の主走査方向(図1中、X方法)の両端付近には、主走査方向への調整力を受ける凹部48が形成されている。
【0034】
前記支持部46には、前記補正レンズ42及び前記補強部47を主走査方向にのみ移動自在に保持する案内部49が形成されている。
【0035】
前記補強部47及び前記案内部49は、その補強部47をその案内部49に当接させることにより前記補正レンズ42の主走査方向に直交する二方向(図1中、Y方向及びZ方向)について前記補正レンズ42の位置決めがされるように形成されている。
【0036】
前記補正レンズ42の主走査方向の両端には、その補正レンズ42を前記支持部46に押し付けてその補正レンズ42を固定する固定手段である板バネ50が配置されている。前記板バネ50は、ビス51により前記支持部46に固定されている。
【0037】
このような構成において、補正レンズ42は、補強部47を案内部49に当接させることにより主走査方向に直交する二方向Y,Zについて位置決めが行われ、主走査方向の位置が板バネ50により固定される。
【0038】
また、ポリゴンミラー38の位置決め精度が悪く、ポリゴンミラー38が予め設定されている位置からずれて固定されることがある。このような場合には、補正レンズ42の主走査方向の位置を調整する。このとき、補正レンズ42を主走査方向に微動させることができるようにビス51を緩める。そして、走査速度を測定する既存の測定器(図示せず)と、凹部48に挿入される爪部(図示せず)と、この爪部を微動させる既存のメカニカルステージ(図示せず)とを用い、走査速度を測定器で測定しながら、メカニカルステージで爪部を主走査方向に微動させて主走査方向の両端の走査速度が所望の走査速度と一致したとき、ビス51を締めて補正レンズ42を固定する。また、この例では、補正レンズ42のSOSセンサ43側の端部のみを接着剤で前記支持部46に接着して補正レンズ42を固定する。このとき、接着剤には、市販の嫌気性接着剤、瞬間接着剤や光硬化性接着剤を用いる。
【0039】
このように、補正レンズ42を主走査方向にのみ移動させ、走査速度が所望の走査速度となるようにポリゴンミラー38の位置に合わせて補正レンズ42の主走査方向の位置決めをすることにより、ポリゴンミラー38及び補正レンズ42の主走査方向の位置決め精度を良くすることができるため、fθ誤差が小さくなる。また、主走査方向に直交する二方向Y,Zの位置がずれないように補正レンズ42を案内部49で保持することができるため、ポリゴンミラー38の位置に合わせて補正レンズ42の主走査方向の位置を調整する調整工程が簡略化される。さらに、補正レンズ42の主走査方向の位置を調整するとき、補正レンズ42が主走査方向に移動させするようにビス51を緩め、板バネ50が補正レンズ42を固定する力を弱くすることができるため、補正レンズ42の主走査方向の位置の微調整が容易になる。また、補正レンズ42の一方の端部のみを接着剤で支持部46に接着して補正レンズ42を固定することにより、使用環境温度が変化した際に補正レンズ42と支持部46との膨張量の違いにより生じる補正レンズの主走査方向の位置のずれを防止できるため、使用環境温度が変化した際にfθ誤差が大きくなるのが防止される。さらに、補正レンズ42のSOSセンサ43側の端部のみを支持部46に固定することにより、使用環境温度が変化した際に主走査方向の走査の開始位置側を基準に補正レンズが膨張又は収縮するため、使用環境状態が変化した際に生じるfθ誤差を小さくなる。また、凹部48を形成することにより、凹部48に爪を挿入し、メカニカルステージで爪を主走査方向に微動させて補正レンズ42を主走査方向に微動させることができるため、補正レンズ42の主走査方向の位置の微調整が容易になる。さらに、光走査部6Y,6M,6C,6Bそれぞれのfθ誤差が小さくなるので、光走査部6Y,6M,6C,6Bにおけるfθ誤差のバラツキが小さくなる。従って、色ブレが防止され、画像品質が悪くなるのが防止される。
【0040】
なお、本実施の形態においては、凹部48が形成された補正レンズ42について説明したが、凸部が形成された補正レンズ42でも良い。この場合には、補正レンズ42に形成された凸部を加える爪を用いてメカニカルステージでその爪を微動させるようにする。
【0041】
また、本実施の形態においては、凹部48に挿入された爪を主走査方向に移動させるものとしてメカニカルステージについて説明したが、凹部48に挿入された爪を主走査方向に移動させるものがメカニカルステージに限定される訳ではない。
【0042】
さらに、ポリゴンミラー38や補正レンズ42が予め設定されている位置からずれた際の走査位置のずれを光線追跡シミュレーションによって求めた結果を図6に示す。図6において、横軸は主走査方向の位置であり、縦軸は副走査方向の位置である。図6中、□は所望の走査位置(狙いとする設計値)を示し、×は光線追跡シミュレーションによって求められた実際の走査位置を示す。図6では、走査位置のずれをわかりやすくするため、光線追跡シミュレーションによって求められた走査位置(×)と所望の走査位置(□)と間隔を図中に示したスケールに拡大して示した。
【0043】
図6(a)は、補正レンズ42を予め設定された位置に配置し、ポリゴンミラー38を予め設定された位置から主走査方向に0.008mm(8μm)ずらして配置した際の走査位置のずれを求めた結果である。
【0044】
このとき、主走査方向の位置ずれが最大で31.6μm、絶対値平均で29.9μmとなり、副走査方向の位置ずれが最大で0.1μm、絶対値平均で0.1μmとなり、斜め方向の位置ずれが最大で31.6μm、絶対値平均で29.9μmとなった。このように、主走査方向の位置ずれの最大値と絶対値平均が近いことから、ポリゴンミラー38のみを予め設定された位置から主走査方向に0.008mm(8μm)ずらして配置した際の走査位置のずれがfθ誤差の変化を伴わない単純な平行移動であると推測できる。
【0045】
図6(b)は、補正レンズ42を予め設定された位置に配置し、ポリゴンミラー38を予め設定された位置から主走査方向に0.1mmずらして配置した際の走査位置のずれを求めた結果である。
【0046】
このとき、主走査方向の位置ずれが最大で395.1μm、絶対値平均で373.9μmとなり、副走査方向の位置ずれが最大で1.3μm、絶対値平均で0.8μmとなり、斜め方向の位置ずれが最大で395.1μm、絶対値平均で373.9μmとなった。
【0047】
図6(c)は、補正レンズ42を予め設定された位置に配置し、ポリゴンミラー38を予め設定された位置から主走査方向に0.1mmずらして配置した後、光走査部6Yを主走査方向に0.395mmずらして配置した際の走査位置のずれを求めた結果である。
【0048】
このとき、主走査方向の位置ずれが最大で35.7μm、絶対値平均で21.1μmとなり、副走査方向の位置ずれが最大で1.3μm、絶対値平均で0.8μmとなり、斜め方向の位置ずれが最大で35.7μm、絶対値平均で21.2μmとなった。このように、光走査部6Yを主走査方向に0.395mmずらして配置することにより、主走査方向の両端部の走査位置を所望の走査位置とすることができる。しかし、これ以上の調整は不可能であり、副走査方向の位置ずれの最大値35.7μmがfθ誤差となる。画像形成装置1ではfθ誤差35.7μmにより色ずれが生じる。
【0049】
図6(d)は、ポリゴンミラー38を予め設定された位置から主走査方向に0.1mmずらして配置した後、補正レンズ42を予め設定された位置から主走査方向に0.1mmずらして配置し、光走査部6Yを主走査方向に0.369mmずらして配置した際の走査位置のずれを求めた結果である。
【0050】
このとき、主走査方向の位置ずれが最大で3.3μm、絶対値平均で2.0μmとなり、副走査方向の位置ずれが最大で0.4μm、絶対値平均で0.3μmとなり、斜め方向の位置ずれが最大で3.3μm、絶対値平均で2.0μmとなった。このように、補正レンズ42を予め設定されていた位置から主走査方向に意図的にずらして配置することにより、fθ誤差が大幅に軽減されることが理解される。
【0051】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、光源から出射された光を偏向して被走査面に前記光を走査させる偏向部と、前記偏向部により偏向された前記光を前記被走査面上の所定の位置に結像させる補正レンズとを備え、前記光源から出射された前記光を前記偏向部により偏向し、前記光を前記補正レンズにより前記被走査面上の所定の位置に結像させて前記被走査面に前記光を走査させる光走査装置において、前記補正レンズを主走査方向にのみ移動自在に保持する案内部と、前記補正レンズを前記案内部の所定の位置に固定する固定手段とを備えるので、補正レンズを主走査方向にのみ移動させ、補正レンズの主走査方向の位置決めをすることができ、これにより、fθ誤差が小さくなる。
【0052】
請求項2記載の発明によれば、固定手段が補正レンズを案内部の所定の位置に固定する板バネであるので、補正レンズの主走査方向の位置を調整するとき、補正レンズが主走査方向に移動するように板バネが補正レンズを固定する力を弱くすることができ、これにより、補正レンズの主走査方向の位置の微調整が容易になる。
【0053】
請求項3記載の発明によれば、固定手段が補正レンズの主走査方向の一端を案内部の所定の位置に固定する接着剤であるので、環境条件が変化して補正レンズが膨張したり収縮したりした際に補正レンズの主走査方向の位置がずれるのを防止でき、これにより、環境条件が変化した際にfθ誤差が大きくなるのを防止できる。
【0054】
請求項4記載の発明によれば、補正レンズが主走査方向への力を受ける凸部又は凹部を備えるので、主走査方向への力を凸部又は凹部にへ与えることにより、補正レンズを主走査方向に移動させることができ、これにより、補正レンズの主走査方向の位置の微調整が容易になる。
【0055】
請求項5記載の発明によれば、色別に感光体の表面に静電潜像を形成する光走査装置を備えたカラー画像形成装置において、前記光走査装置が請求項1,2,3又は4記載の光走査装置であるので、fθ誤差の小さな光走査装置を使用して感光体上に光を走査させることができ、感光体間のfθ誤差のバラツキを小さくすることができるため、色ブレが防止され、画像品質が悪くなるのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態の光走査装置の補正ミラーの支持構造を示す斜視図である。
【図2】
カラー画像形成装置を示す縦断正面図である。
【図3】
光走査装置を示す縦断側面図である。
【図4】
光走査装置を示す縦断正面図である。
【図5】
補正レンズの支持構造の分解斜視図である。
【図6】
偏向部の位置ずれとそれに伴う走査位置のずれを光線追跡シミュレーションによって求めたものである。
【符号の説明】
1 カラー画像形成装置
2 転写紙
5Y 被走査面、感光体
5M 被走査面、感光体
5C 被走査面、感光体
5B 被走査面、感光体
31 光源
32 偏向部
42 補正レンズ
48 凹部
49 案内部
50 固定手段、板バネ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-30 
出願番号 特願平8-33289
審決分類 P 1 652・ 121- ZA (G02B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田部 元史  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 稲積 義登
畑井 順一
登録日 2002-03-22 
登録番号 特許第3290065号(P3290065)
権利者 東芝テック株式会社
発明の名称 光走査装置及びカラー画像形成装置  
代理人 井上 正則  
代理人 松岡 修平  
代理人 井上 正則  

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